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白銀の討ち手

己の妄想をネットという広大な海へ送り出すことに若干躊躇いつつも実行してみるブログ。現在は『白銀の討ち手』という灼眼のシャナの二次小説をarcadiaさんにて執筆中。

【ブリジットという名の少女】 Her name is Charis!! 一覧まとめ 【三次創作】 

Her name is Charis! !

 漫画『ガンスリンガー・ガール』の二次創作小説『ブリジットという名の少女』の三次創作でございます。今までまとめを作ってなかったので、続きが完成間近なこのタイミングで一覧をまとめた記事を作成しました。余裕がある時に作っておかないと。
 この拙作は、僕が『ブリジットという名の少女』を読んで深く感銘を受けた結果、ただただ「ブリジットを救いたい!」という情念に突き動かされてハイテンションのままに書いたものです。事後承諾にはなりましたが、作者様であるH&Kさんには許可も頂けました。その懐の広さに感謝です。ああ、H&Kさん。貴方と直にあっていっぱいお話をお伺いしたいです……。
 偉大なるH&Kの作品には完成度もストーリーも伏線も何もかもが遠く及ばないですが、もしも、ブリジットの物語にIFの世界を望まれる方がおられましたら、読んで頂ければ幸いです。鬱クラッシャーとTS娘の融合作品、ぜひご堪能くだしあ!






<Her name is Charis!! 第一部一覧>
第一話 前編
第一話 後編
第二話
第三話
第四話
第五話
第六話 前編
第六話 中編
第六話 後編

<ファッキング☆ガンスリ劇場>
シリアス好き?ひゃあ、ブラウザバックだ!【なんぞこれ】
H&Kさんに怒られても文句は言えない【ガンジーですら助走をつけて殴るレベル】

<Her name is Charis!! 第二部一覧>
第一話
第二話 前編
第二話 後編
第三話 前編
第三話 中編その1
第三話 中編その2
第三話 中編その3
第三話・後編その1
外伝 前編
外伝 中編
外伝 後編その1
外伝 後編その2
外伝 後編その3
外伝 後編その4

<名状しがたいオマケ的な何か>

ちょっとしたコネタ
ヒャーリスプロフィール
ブリジットはどこに行ったのかを妄想した 前編
ブリジットはどこに行ったのかを妄想した 後編
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【8/16改訂】輝けケアキュア☆紫陽花の季節(後編)【少し更新。頑張るぞ】 

未分類

タイトルままです。少し長くなってきたので、前編後編に分けてハーメルンさんに投稿しました。書いてて楽しい。プリキュア、ちゃんと見たことないけど、参考資料として見てみるとけっこう面白い。




 気がついたら、ルキナは青年の小さなアパートのベッドで眠っていた。きちんと整理されて清潔感はあるが、それを差し引いても狭くて古い部屋だった。半身を起こそうとしたが、肉体は鉛のように無反応だった。感覚を頼って自身の様子を調べてみると、ズタボロの服は脱がされ、代わりに青年のシャツを着せられているようだった。洗濯したばかりの洗剤の匂いが清々しい。気を失っている間に、温かいお湯に浸した布で身体を隅々まで拭かれたのだろう。全身が火照っていて、なのに風呂に入った後のようなさっぱりした心地よさも感じる。肘や膝の擦り傷は包帯や絆創膏で丁寧に処置されていた。血が巡り始めた頭でボンヤリと部屋を見回すと、青年は顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。なにか、見てはいけないものを仕方なく見てしまったかのような。その理由に、中身が少年であるルキナはすぐに思い至った。

「……ロリコン」
「ち、ちがっ!? だ、だって、濡れた服を脱がさなきゃ風邪ひいただろうし、だ、だいぶ汚れてたし、怪我もしてたしっ!? そもそも年の差がありすぎるし! ていうか、君、気がついたのかい!?」

 飛び上がってバタバタと否定し始めた青年の様子に、ルキナは口角に力を込めて意地の悪い笑みを形作ってみせた。それでも、青年のこちらを窺う目が気の毒そうに沈むのを見て、自分がどんな無様な様をしているのかは想像できた。きっと、同情と哀れみを誘うような悲壮な相貌をしているに違いなかった。そう考えると、自嘲の笑みだけはちゃんと浮かべることが出来た。青年の目はますます沈んだ。なぜ、そんなに悲しそうな顔をするのか。まるで自分のことのように。ルキナには到底理解が及ばなかったが、やがて訪れた疲労による眠気に疑問は押し流された。
 次に目が覚めても、ルキナは放り出されてはいなかった。相変わらず青年のベッドを占領して寝かされていた。てっきり愛想を尽かされて元の公園に捨てられると思っていたのに。半目を開けて青年の姿を探すと、彼はちょうどルキナの膝の包帯を取り替えようとしていた。彼女の白い太ももの付根、何も穿いていないむき出しの|そこ《・・》を見ないように目線を天井で泳がせながら、不器用な手付きで。

「……ロリコン」
「だあっ!? だ、だから違うって! 子どもがなんてことを言うんだ! ていうか、起きたなら起きたって言ってくれよ!」

 青年の慌てふためく様子が滑稽だった。ルキナはくつくつと低く笑った。またやってやろうと思った。
 青年は、なぜかルキナの面倒を見始めた。立ち上がることすら補助を必要とするルキナに付きっきりとなり、甲斐甲斐しく世話をし、介抱をした。ルキナは抵抗しなかった。ノライヌを拾ったのなら、拾い主の好きにすればいい。そんな捨て鉢の心境で、ルキナは無気力に青年の親切を受け入れた。それに、青年が作るお粥は、味は薄いが、また食ってもいいと思えるほどには美味かった。誰かの手料理は久しぶりだった。
 一週間ほどして、ルキナがしばらく目を覚ましていられるほどに体力が回復すると、青年はルキナの素性を問い質すことはせず、逆に自身の身の上を話し始めた。ルキナは、青年もまた、親の愛情を受けて不自由なく育てられた者だろうと勝手に思い込んでいた。だが、青年は孤児だった。孤児院で育ち、里親を転々とし、自立してからは画家になる夢を追いかけて独学で絵を描き、大成を目指している。
 青年は自分の生い立ちを、さも悔いなどないというように、楽しそうに言い聞かせた。意外な事実に、ルキナは目を見張ってあらためて部屋を見回した。整頓されているのは、質素にしなければ生きていけないからだった。必死に働いてなんとか生計を立てているに違いないことは、まだ子どものルキナにも察することが出来た。そこに、満足に動くことも出来ないノライヌを背負い込む余裕なんて、ないはずだ。
 だというのに、青年はそんな負担はおくびにも出さず、ルキナの気を紛らわすかのように自分の絵画を見せた。自信作から失敗作まで、包み隠さず、エピソードも添えて。特に花をモチーフにして描くことを青年は得意としているようだ。ルキナは芸術の醜美について目が肥えていないのでそれがどんなレベルなのか判断がつかなかったが、思わず「本物みたい」と声を漏らすほどには巧かった。青年は、その一言だけでとても喜んだ。まるで、好きな女の子から容姿を褒めてもらえたガキンチョのように、ウキウキして舞い上がっていた。ルキナは青年の反応に首を傾げながら、油絵の具で丹念に描かれた紫陽花の絵をじっと見ていた。ろくに手入れされていない花壇の物陰で今にも消え入りそうなのに、踏ん張って色鮮やかな花を咲かせる、健気な紫陽花。絵画自体がひどく濡れてしまっていて台無しになっているが、それでも描いた人間の優しさまで透かし見えるような、不思議と目が離せない魅力があった。青年は、そんなルキナの横顔を眺めて、満足そうに頷いた。

「それは、君を拾った日に完成したんだ」

 記憶を辿り、初めて会った時に青年がなにか四角い荷物を持っていたことを思い出す。ルキナを傘で覆う際に、水たまりに放り出していた。だから、こんなふうに台無しになったのだ。とてもキレイな絵なのに、自分のせいで。嫌味の一つでも言われるのかと予想し、なぜか「青年から嫌われるのはイヤだ」と我知らずぎゅっと唇を結んで身構えたルキナに対し、青年は正反対のことを告げた。

「きっと、運命だな。もっと素敵で美人な紫陽花に出会うための布石だったんだ。うん、そうに違いない。うん」

 青年は、やはり満足そうに頷いていたが、自分が口にしたことが存外こそばゆく、片手では足りないほど年下な少女に対して使うセリフではなかったことにはたと気がついて、とても照れくさそうにはにかんだ。ルキナといえば、学が足りず、そもそも中身が少年なので、青年の歯が浮くような遠回しの台詞についてはちっとも心に響かなかった。むしろ、青年に怒られなかったことへの安堵感で胸中はいっぱいになっていた。ルキナが青年の言葉の真意に察しがついていない様子に、青年は残念そうな、ホッとしたような、形容しがたい表情を滲ませた。
 
 さらにルキナの容態が安定して、一人で一通りのことが出来るようになると、青年は早朝と夕方と深夜に出かけるようになった。自転車に乗って急いでどこかへ行って、しばらくしたらまた帰ってくる。新聞配達や、その他のバイトを掛け持ちしているらしかった。帰ってきたら、ルキナの世話をして、絵のスケッチをいくつか描いて、参考書を見て勉強をしていた。いつ眠っているのか不思議だった。

「美術教師をしながら、子どもに絵の楽しさを教えて、絵も描いて、コンクールに出展して、賞を獲りたい。美術教師、いいだろう? 僕にとってはこの上ない天職だと思うんだ」

 青年はニコニコと満面の笑みを携えて、古本屋で買ってきたらしい使い古しの参考書に何ごとか書き込んでいた。何をしているのか尋ねたルキナに、青年は「教師になるための勉強をしてるんだ」と説明した。並大抵の努力ではない。おそろしく大変に違いないのに、そんなことなど苦にも思っていないかのようだった。実際、青年にとっては本当に苦じゃないのだろう。どんな時も、青年は心から楽しそうだった。誇らしげに、嬉しげに、「絶対に実現するんだ」と夢を語る青年の顔を、ルキナは直視できなかった。夢を語る青年を疎ましく思ったからではない。そんな青年を|疎ましいと《・・・・・》|思わなくなった《・・・・・・・》自分自身を認めたくなかったからだった。少し前の自分なら、きっとどんな汚いことをしてでも青年の夢を挫けさせようと性根の曲がった嫌がらせの一つや二つを実行していただろう。しかし今は、とてもそんな気にはなれなかった。青年の悲しそうな顔を想像すると、それだけで胸が締め付けられた。何故そうなるのか、ルキナは理解できなかった。微かに残っていた少年だった頃の|性意識《ほんのう》|が理解することを拒否していた。
 そんな自身の変化から目を背けるように、ルキナは青年に強い口調で問うた。

「どうして、私を|匿う《・・》の?」

 青年の顔面が凍りついた。青年の家にテレビは無い。だけど、このご時世だ。ルキナは、自分の映像が街頭テレビで流されるのを何度も観た。それを見上げる大衆の反応は、すべてルキナへの悪態だった。人々を護る正義のケアキュアたちに対して、散々な嫌がらせや妨害をしてきたルキナの悪名は有名だ。青年だって、彼女の容姿は知っているはずだ。だからこそ、青年は倒れたルキナを病院に連れて行かず、警察などに突き出したりもせず、常に薄手のカーテンを閉めて外からルキナの姿を見咎められないようにしていたのだ。ルキナも、当初からその疑問を脳裏に浮かばせていた。「本当にロリコン野郎で、欲望を満たす目的のために誘拐されたのかもしれない」とも考えたが、自暴自棄になっていた彼女は「どうにでもなれ」とやさぐれていた。だが、青年の人柄に触れ、予想していた目的が不明瞭になっていくに連れて、ルキナの混乱は増すばかりだった。

「どうして、そんなに優しくするの? 私が誰だか、わかってるくせに」

 知らず、汗ばんだ両の手が布団をぎゅうっと握り締めていた。冷静を装っても、ルキナの心中は今まで経験したことのない感情の渦でムチャクチャに波立っていた。親からの否定の言葉なんて聞き飽きた。社会からの否定も慣れっこだ。だが、目の前の青年からは否定されたくない。その矛盾がルキナの胸の内を荒らしていた。青年はなんと言えばいいかと言葉を選ぶかのように逡巡していた。その間にも、ルキナの脳内では青年が何度も口汚く彼女を罵り、部屋から追い出される想像が再生されていた。やがて青年の口がゆっくりとスローモーションのように開かれる。次に投げつけられるであろう台詞を座して待つことに堪えきれず、ルキナは思わず腰を上げて逃げ出しそうになり、

「君の絵を、描いてみたいと思ったんだ」
「……はあ?」

 予想外すぎる回答に、脱力してペタンとその場に座り込んだ。




(途中。以下はツイッターでの原案まま。これから改訂)





しかし画家志望の夢を諦めず、ひたすら努力していた。傷が回復すると絵のモデルになってくれとせがまれた。渋々承諾して完成した作品を見て、青年は最高傑作が出来たと飛び上がって喜んだ。その絵は確かに良く出来ていた。TS魔法少女は、忘れていた感情を思い出し、小さく微笑んだ。

TS魔法少女と、それを拾った画家志望の青年の奇妙な共同生活が一ヶ月ほど続いたある日、青年が自分の絵を売り込みに出掛けた。TS魔法少女は青年の部屋にいて、「自分は何をしているのだろう。何をしてきたのだろう」と自問しながら膝を丸めていた。すると、窓の外、街の方から悲鳴と爆発が聞こえた。


魔法の気配に心身が反応し、慌ててテレビを付ける。テロップが流れ、『青年画家が魔人に人質にとられた』という速報を目にした瞬間、TS魔法少女は自分でもわからない衝動に駆られて玄関を飛び出した。石を踏んだ裸足に血が滲み、息が苦しくなり、喉が掠れて肺が痛んでも、TS魔法少女は走り続けた。


現場には魔法少女達がすでに駆けつけていたが、人質のために派手に戦えず、苦戦していた。しかも魔人は画家から夢のエネルギーを吸い取って力を増していた。青年の手から一枚の絵が滑り落ち、広がる。そこに描かれた少女の見知った顔に魔法少女達は驚く。その背後から、「待て!」と大きな声が響いた。

振り返ると、ブカブカのTシャツを羽織った悪の魔法少女が荒い息を吐きながら魔人を睨みつけていた。握った両手は怒りに震えている。魔人は嘲笑う。「俺に歯向かうのか。それもいいが、そうするともう元には戻れないぞ」。TS魔法少女は、一瞬足りとも迷わず、「キャハハハ」と心からの嘲笑を迸らせる。



「その人の夢に──私の大切な人の夢に比べれば、そんなこと、くっだらな~い!」。嘲笑うような口調に涙を浮かべ、覚悟を決めた少女が腕を高く掲げる。目も眩む紫色の輝きが柱となって彼女を包み、次の瞬間、かつて他者の努力と理想を全否定していた魔法少女が、他者を救うために立ちはだかっていた。

それでも苦戦するTS魔法少女。魔人と契約したため、同じ属性の攻撃では効果的な打撃は与えられない。歯噛みする背中に、複数の手が添えられる。振り返れば、正義の魔法少女達の頼もしい笑顔。「誰かの夢を護りたいと願うのなら、貴方はもう正義の魔法少女よ!」。

「私が──?」。次の瞬間、TS魔法少女の装束が眩い輝きを放ち、ウェディングドレスのような豊かな装飾が花開く。それは、正義の魔法少女にしか与えられないパワーアップフォーム。「これで五人揃った!」。正義の魔法少女達に混じり、横並びになる。
(途中)



夢を持たない私でも、誰かの夢は守れる。守ってみせる。

導火線に火がついたような笑み

誰かの夢を護りたいという願い

アンタだってテレビくらい見てるはず。だったら、私が誰なのか、知ってるんでしょう?


私に夢なんかない

捨てばち

あなたのために生きていきたい

握ったままの手じゃ、なにも掴めないよ

耳鳴り

連撃

奇跡

君と出会えた

取り繕っても仕方ない
誘拐?
別にいいけど。
投げやり。
違う

君の絵を書きたいと、思ったんだ
はー?
予想外すぎる答え

気がかり
姿を見せない
心配
敵の心配
でも……

自分でも笑っちゃうんだけど

名乗り
口上

【TS小説 8/14改訂】輝けケアキュア☆紫陽花の季節【詩雨さん、オファニムさん、アライズさん、ありがとう】 

未分類

サブタイトル
「いつか彼が紫陽花になるまで」





 半年前。
 平和だった日常は、突如として現れた化け物たちによって破壊された。人々の夢や希望のエネルギーを食らう化け物、『フザケンナー』。そして、それらを束ねる邪悪な魔王。

『夢とは、原動力。すなわち“あらゆるコトの実現へ至る力”だ』

 影しか現さぬ魔王が星々を見上げるように恍惚として呟いた。人間という特異な種族は、歴史上に築いてきた何もかもを、まず夢を描くことから始めた。“空を飛びたい”という夢を描いて、空を飛んだ。“他の星を見てみたい”と夢を描いて、宇宙に飛び出した。たった数百年の間に実現させた驚くべき偉業の全ては、夢のチカラが源だった。夢とは、生きるチカラであり、何かを成し遂げる力だった。では、幾星霜もの人間からその力を吸収し尽くせば───何が出来るだろうか? きっと、何でも出来るに違いない。魔王はそう考えたのだ。
 夢を抜き取られた犠牲者は無気力に苛まれ、立ち直ることは奇跡でも起きない限り不可能だった。彼らの猛威に対し、対抗手段のない人々は為す術なく脅威に晒され、社会には不安が蔓延しようとしていた。



『ケアキュア、プリティチェンジ!』



 そんな中、無辜の人々を護るために颯爽と立ち上がった少女たちがいた。
 伝説の女神の力をその身に宿した、年端も行かぬ少女たち。
 その名を『ケアキュア』。

 輝くドレスに身を包む、ケア・アストレア、ケア・イシュタル、ケア・エオス、ケア・バウト。最初はケア・アストレアとケア・イシュタルの二人だけだったケアキュアは、戦いを経ながら新たな仲間を見つけ、3人となり、4人となった。4人はそれぞれ性格でも攻撃スタイルでも違った特色を持ち、多種多様な形態と戦術を持つフザケンナーに対して勇敢に奮戦した。一歩一歩、苦戦しながらも勝利を掴んでいくその姿は、人々に少しずつ希望を与えた。
 しかし、中盤になって登場した魔王の右腕たる幹部『ゲキヤック』には手も足も出なかった。ワイヤーのように細い肉体と、キツネのような細面の男は、ケアキュアたちの果敢な攻撃にも眉一つ動じることがなかった。ケア・アストレアの苦し紛れの一撃が不意を打たなければ、間違いなく彼女たちはその戦いで敗れていただろう。なぜなら、有効打を受けたゲキヤックはなおも高笑いを途切らせず、実験動物を見るような目を彼女たちに向けていたのだから。
 初めての敗戦に臍を噛むケアキュアたちを前に、彼女たちをサポートする小動物の姿をした妖精が悔しげに言う。

『伝説では、ケアキュアは5人揃って初めて“奇跡の魔法”が使えるんだぱる~……』

 伝説によると、ケアキュアは5人が集結しなければ完成ではないという。現状ではあと一人足りないのだ。まだ見ぬ運命の仲間が、どこかで誘われるのを待っているはず。彼女さえ仲間になってくれれば、勝機はある。
 だが、妖精がいくら飛び回っても、ケアキュアたちが探し回っても、適正がある少女はどこにも見つからない。彼女たちは、魔王を倒すため、仲間を求めながら、フザケンナーの脅威と戦っていた。全ては、人々の夢と希望を護るために。



 3ヶ月前。
 事態は急変した。人々の夢を貪っていたフザケンナーにとどめを刺そうと振り下ろしたケア・アストレアの拳を、どこからともなく現れた華奢な掌がいとも簡単に受け止め、フザケンナーを助けたのだ。渾身のパンチを呆気なく封じられたケア・アストレアは、謎の手の持ち主を確かめようと柳のような腕に視線を走らせ、さらに驚愕した。それは少女で、その姿は自分たちケアキュアにそっくりだったからだ。
 物陰に潜む紫陽花のような紫のドレスが、中断された必殺技の風圧にはためく。同じ暗紫色のツインテールと大きな瞳はまるで刃のように鋭く、ギリギリと引き絞られた瞳孔は攻撃的な内面を隠すことなく表面化している。触れたら指先に血が滲みそうな切れ長の瞳と艷やかな唇が冷たく嘲笑う。

『夢?希望? キャハハハ! そんなもの、くっだらな~い!』

 ケアキュアたちと根底で通ずる姿と力を持ったその少女は、しかし、ケアキュアたちの信じるもの、護りたいもの、それら全てを否定する正反対の存在だった。そして悔しいことに、否定しきれるだけの強大な実力を伴っていた。暗紫色の少女は、自らをルキナと名乗った。

『どんなに頑張ったって、報われることなんかない』

 ルキナは夢や希望を燃やす人々をせせら笑い、心を絶望に傾けては、落ち込む様子を眺めて楽しんでいた。ルキナの企みを防ごうとケアキュアたちは幾度となく挑むも、彼女には勝てなかった。ケアキュアの力は、そのまま想いの力と比例している。何かを信じる。誰かを想う。そんな気持ちが強ければ強いほど、その力は強くなる。その方程式に則れば、ルキナの“全てを否定する想い”は想像を超えて強かった。ケアキュア4人が束になってかかっても、ルキナと互角。追い返すだけで手一杯だった。

『キャハハハハ! 邪魔してやる! 夢なんか、希望なんか、ぜんぶぶっ壊してやるんだから! キャハハハハ……』

 優越感に口角を釣り上げ、甲高い嘲笑を辺りに響かせながら、ルキナはまたもや高空へ飛び退っていく。ケアキュアたちは地に伏しながら、何度めかわからない引き分けの悔しさに涙した。



 一週間前。
 それでも、彼女たちの闘志と戦意は押し潰されはしなかった。苦しい時、膝を屈しそうになった時、人々の応援する声が耳に届き、背骨を通って頭の芯を熱し、限界以上のパワーを与えてくれた。そうして、彼女たちはこれまで以上に輝きを増していった。
 “己に何が出来るのか”
 “何を護りたいのか”。
 ケアキュアとなることを選んだ自らの意思を見つめ直し、己の有り様を定義し、大事な人たちとの交流を深め、仲間たちとの絆をより密接に高めていった。ケアキュアとなってから身につけた女神の力に頼りがちだった戦法を見直し、自分が今まで蓄積してきた武芸と融合させ、より自身に相応しい地に足の着いた戦い方へと昇華させた。そうして強くなっていく仲間の姿に触発され、一人ひとりが競うように洗練されていった。自分たちの弱点について忌憚のない意見を交わし、それを無理に消そうとするのではなく、弱みを強みへと変え、どうしても生まれる隙は互いに補えるように練習した。


 半日前。
 そうして努力を重ね、少しずつだが確実に強くなっていく直向きな姿は、街頭テレビに大きく映し出されるようになり、道行く人々の応援に結びついていった。『ケアキュア、再びフザケンナーと戦闘』の速報が流れた途端、慌ただしかった人々の歩みが一斉に止まり、応援の波がメイン交差点を揺らした。頑張れ、ケアキュア、と。

 ───そんな中、とある痩せた少年が、ぼんやりとそれを見上げた。ビルディングの外壁に備え付けられた巨大な液晶画面では、今も人々の希望を守ろうと歯を食い縛って戦うケアキュアたちのキラキラした姿が踊る。熱に侵されたように周囲が興奮まじりのエールを送る中、一人冷淡な様子の少年はボソリと呟く。

『……くだらない。どんなに頑張ったって、報われることなんか絶対にないのに』

 存在感の希薄そうな少年は、周囲に気づかれることなく後退しながらビルとビルの隙間に姿を溶け込ませる。次の瞬間、質量を感じるほどの濃厚な紫光が迸り、ビルの合間を縫って空中へ矢のように跳躍すると、そこからさらに加速。大空を切り裂きながら高々と飛翔した。『キャハハハハ!』と全てを嘲る笑い声を曳きながら。
 それがルキナの本当の姿だった。家庭に恵まれず、友も得られず、本人の努力では到底変えられない不幸な環境に身を置き、夢も希望も持てぬまま生きてきた薄幸の少年。彼こそ、フザケンナーの幹部ゲキヤックによって生み出された、ケアキュアの対となる戦士、ルキナの正体だった。ケアキュアを障害と見なしたゲキヤックは、夢と希望を憎む少年に目をつけ、彼にケアキュアに匹敵する能力と姿を与えたのだった。
 ゲキヤックは、ルキナの戦いを高みから見物していた。ルキナも、自らが実験動物でしかないことを自覚していた。それどころか、きっとルキナとなることには何らかのリスクがあると踏んでいた。それでもよかった。他者の夢と希望を踏み躙ること。自分を見捨て、そ知らぬ顔で前に進んでいく社会を躓かせてやること。周囲の何もかもへの復讐がルキナの力の源だった。だからこそ、ケアキュアたちのキラキラした姿は、まさに火に油を注ぐように彼を苛立たせた。ケアキュアが正の光を煌めかせるほど、ルキナの悪の影は濃ゆさをましていった。
 そしてこの日も、新種のフザケンナーを討滅したばかりのケアキュアたちの眼前にクレーターを穿ち、満を持して登場したルキナは今回も甲高く嘲笑う。

『相変わらず4人しかいないのね。そんなんじゃあ、何時までたっても魔王さまには至れないわ。アンタたちのやってること、ぜ~んぶ無駄なのよ! くっだらな~い! キャハハハハ!』

 だが、ルキナはすぐに異変に気づいた。ケアキュアたちの様子が以前とまるで違っていたのだ。今までなら、彼女たちはルキナの軽薄な言い草に腹を立て、感情に振り回されて年齢そのままにこどもっぽく言い返してきたはずだった。それがどうだ。ルキナを見る彼女たちは、もはや悔しさも滲ませず、困惑の表情も見せず、ルキナに堂々と対峙してみせた。光を発する恒星のような双眸が眩しい。覚悟を決めたと言わんばかりの表情に思わず気圧されそうになる。奇妙なまでに静謐を湛えた雰囲気は、歴戦の戦士そのものだ。

“置いていかれた”。

 確証のない直感が、ルキナとなった少年の内なる劣等感を刺激した。ケアキュアたちは前に進み、成長したのだ。この素っ気ない社会と同じように、少年などには目もくれずに。そう思った途端、ルキナはこめかみに青筋を浮かべ、悪鬼のように唇からはみ出す八重歯をガリッと噛み締めた。ルキナとなれたこと、他者の生殺与奪の権利を握っていたこと、それらに覆い隠されていたコンプレックスが一気に全身に広がり、引け目や恥ずかしさが背筋をゾワゾワと支配した。
 
(そんなこと、認めてたまるか。オレのほうが強いんだ。強くなくてはならないんだ。夢も希望も、現実の厳しさの前には絶対に報われないんだ! そうでなくては、オレが不幸であることの理由がつかないじゃないか!!)

 ルキナの背中から憤怒のエネルギーが放出される。瞬間、亜音速に匹敵する踏み込みからの一撃がケアキュアたちに襲いかかる。けれども、彼女たちは一歩も怯まなかった。驚異的な動体視力は完璧にルキナの動作を看破していた。そのうえで回避を選ばないほどの余裕があった。
 突如として、ケアキュアたちのドレスが神々しい純白の煌めきを放つ。ルキナは後先考えずにその圧倒的な光量の中に踏み込んでいった。焦燥と怒りに我を忘れて、ルキナは眼前のケア・アストレアのシルエットに襲いかかった。今まで常に優位に立っていた彼女は、それが覆ることを想定していなかった。
 必殺技を纏った暗紫色の拳が、華奢な手のひらに受け止められるまで。



 現在。
 夜、人気のまるでない小さな公園。降りしきる大粒の雨に全身を打ち据えられながら、暗紫色の髪の少女は一人呆然と立ち尽くしていた。どこのメーカー製とも知れない男もののパーカーとジーンズはところどころが焼けてボロボロになり、破れた箇所から雪色の肌が覗いている。濡れた生地がぴったりとへばりつき、未熟だが女らしい少女の肉体の起伏を艶っぽく強調していた。変身はとうの昔に解除された。だから、装束はドレスではなく、普段着の安服に戻った。それなのに、肉体だけが、元の少年の姿に戻っていなかった。腹の底に冷えたものを感じながらゲキヤックを呼び出し、問い質した。ゲキヤックは底無しの邪悪な笑みで告げて、早々に踵を返した。

「無闇やたらに変身しすぎて、肉体が元の姿を忘れたのだろう。もともと、お前なんぞに扱える力ではなかったのだ。次に変身したら、この世から跡形もなく消えてしまうだろうよ。もっとも、もうお前に変身する力が残っているとは思えんがな。ははははは……」

 用済みと言わんばかりに早々に立ち去ったゲキヤックの残滓をしばし目で探した後、皮膚をひりつかせる敗北の痛みと絶望に、ルキナの姿のままの少年は微かな薄ら笑いを滲ませる。

「……くっだらな~い」

 それは、他ならない自分に向けた嘲笑だった。ルキナとなるリスクは承知していたはずだった。だけど、いざ直面してみると、こうしてにっちもさっちもいかなくなって右往左往している。この姿では家には帰られない。門前払いされてしまうだけだ。家では、人間らしい扱いを受けていなかった。実の両親のはずなのに、どこで狂ってしまったのか、息子には無頓着となってしまった。注いでくれていた愛情は何時の頃に尽きてしまったのだろう。ろくに食べるものも着るものも与えられず、理不尽に殴られる日々だった。しかし、そんな生き地獄でも、自立の出来ない少年にとっては帰る場所に違いなかった。それが失われるというのは、想像を超えて心に冷たく響いた。足元が崩れてしまった不安感に、ルキナは我知らず震えだしていた。


『ねえ、ルキナ。貴女にも、夢があるはず。そうでしょう?』


 不意に、つい先ほどケア・アストレアから降り注がれた優しげな声音が鼓膜に蘇った。
 ケアキュアたちは、土壇場になって新しい力を獲得した。『誰かの夢を護りたい』という崇高な願いが、彼女たちに女神と同等の力を与えたのだ。それぞれのカラーリングと意匠を保ったまま、個々のドレスはまるで花嫁のように優雅で絢爛なものへと進化し、女神の力は何倍にも、何十倍にも増していた。
 そんなケアキュアたちの新必殺技『ケアキュアフォース』の前に、さしものルキナも抗しきれず、白光の奔流に吹き飛ばされて地を転がった。いくら大地に爪を立てても、膝に力を入れようとしても、痛みに麻痺してしまった身体は言うことを聞いてくれない。ふー、ふー、と口端に泡を吹きながらなおも立ち上がろうとするルキナの目の前に、そっと手のひらが差し出された。そして、ルキナを打ち破った張本人たるケア・アストレアは先の言葉を投げかけたのだった。
 その瞬間、ルキナたる少年を奮い立たせたのは、感化されたヒトの情ではなく、悔しさのみだった。何不自由なく生きて、愛情をめいっぱい享受して、純粋に育てられたであろうケアキュアからの情けは、ノライヌにとってはたまらなく不愉快だった。ガバリと勢いよく起き上がったルキナはケア・アストレアの手を全身全霊をもって弾き、敵意を剥き出しにして叫んだ。

『お前なんかに───お前らなんかに、|オレ《・・》の何がわかるんだ!!』

 驚きと失望に揺れるケアキュアたちの瞳を前に、理由のない居たたまれなさが這い上がってきて、ルキナは勢いのままに飛翔してその場を去った。だが、数キロを飛んだところで初秋の雨に襲われ、変身を維持する体力が失われ、かろうじて人気のない公園に着地したのだった。強制的に解除された変身は、もう二度と出来るものではないことが感覚でわかった。変身するためのエネルギーが、復讐心が、ポッキリと折られてしまっていた。
 必殺技の衝撃か、体調が悪化しているのか、激しい頭痛と耳鳴りがする。腕や足が凍結したように重く感じる。筋肉は異常に発熱しているのに、内臓は不快に冷たく、下腹部は石を飲み込んだように気怠い。ダメージを継承した衣服はところどころは擦り切れ、穴が空いている始末だ。浮浪者のように見すぼらしい。薄汚いノライヌそのものだ。

「……夢なんか、ない」

 くだらなかった。周囲ではなく、自分だけに向けた嘲りだった。自分に関する何もかもがそう思えた。今までやってきたことも、それどころか生きてきたことすらも、果てしなく滑稽なことに思えた。こんなに空っぽな自分など、存在しようがしていまいが、この世は何も変わることはない。誰も求めず、誰にも求められず、誰も愛さず、誰にも愛されず、誰も満たさず、誰にも満たされない。無為で、無意味で、無駄な人生だった。
 ただでさえ虚ろだった暗紫色の瞳から、なけなしの光が消え落ちていく。度重なる変身と、ケアキュアフォースの直撃のダメージによるものだろう。ゲキヤックによる闇の加護を失ったルキナの肉体は機能不全を起こし、立つことも儘ならぬほどに消耗し尽くしていた。暗い雨に打たれて、紫陽花が枯れ果てていく。もう、どうなったって構わない。ついに生命力すら手放し、最後のため息となって喉から吐き出される、その刹那、


「君、大丈夫かい?」


 優しげな男の声が、それをかろうじて堰き止めた。
 力なく目線だけで背後を見やれば、いかにも人の良さそうな、20歳前後の青年が気遣う表情を向けていた。まだ少年らしさが抜けきれていない爽やかな面立ちに、紅葉色のニットと紺色のジーンズというシンプルな装いの男だった。彼は、ルキナの様子が尋常でないことを見て取ると、自分が濡れることなどお構いなしだというように荷物を捨てて駆け寄り、躊躇うことなく自分の傘を差し出して彼女を雨から覆った。そうしてルキナの横顔を心配そうに間近から覗き込み、何事かに驚いた様子でハッとして動きを止めた。お互いの体臭まで嗅ぎ取れるような距離で、その頬がカッと赤くなった気がしたが、ルキナには視認することができなかった。初めて触れた他者からの無償の優しさに心を緩ませてしまったため、張り詰めていた神経が寸断され、気絶してしまったのだ。青年の慌てふためく声がしたかと思いきや、たくましい腕に抱きとめられる感触が肩と背中を包み込み、やがて遠ざかっていった。

せっかくバーサーカーのお茶濁し会の補填設定(読まなくても問題ないです) 

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小林シャーレイの乗機とした架空のF-3S『アリマゴ』について、設定まで考えてたので、それも投稿したいなと。僕が最初に文章を書き始めた時、書いていたのは小説ではなく、自分で想像した設定資料でした。友だちが書いた小説に、勝手に妄想した設定を考えて送りつけてました。今から考えれば、その友だちにとってはきっと面倒くさいことこの上ないことをしていたんでしょう。周りを見ることが苦手な中学生のやりそうなことです。とはいえ、今ではその友だちは小説から離れて、自分がこうして小説を書いているんですから、不思議なもんです。でも、やっぱり設定を考えるのは好きなんです。小説を書くのと同じくらい好きです。もし同じ趣味の人がいたら、僕にも送りつけてくださいませませ。




F-3S コードネーム『アリマゴ』

全長:19.8メートル
翼幅:18.3メートル
運用時重量: 29,955kg 
最大速度:マッハ4.0
所属基地:築城基地(福岡県)

 本機は日本国航空自衛隊が秘密裏に保有する戦闘機である。現在、主力戦闘機として実戦配備されているF-2支援戦闘機の後継機にあたるが、その設計には大きな差異がある。それは、本機が超音速下での空対空戦闘に特化した、世界でただ一機の『死徒迎撃用戦闘機』であることだ。
 開発の発端となったのは、10年前にとある空自パイロットより当時の航空幕僚長に直接提出された論文によるものである。少女の姿をしたそのパイロットは、夜中に幕僚長の私邸に不法侵入し、その書斎にて論文を手渡すと同時に熱弁を語った。『科学で魔性に対抗するためには通常の兵器では不足している』を端緒とした論文は、『死徒を科学力で武装させれば死徒二十七祖だって倒せる』という内容であり、かいつまんでしまえば『私にすごくてつよい機体を寄越せ』という無茶苦茶な要望であった。しかし、この案はその後トントン拍子に承認され、以後、秘密裏に開発・製造が続けられることとなった。この背景には、冬木市での非科学的な爆発現象などが確認されたこと、この世の裏側の論理に従った組織や生物による被害が黙認できるレベルを超えつつあったことが挙げられる。それは、陽の光が当たる世界が、長い間保ってきた暗闇の世界との暗黙の了解を反故にし、反旗を翻す瞬間でもあった。この後、少女の姿をしたパイロットのために、まずF-15イーグル特別改修機が用意されたが、基本設計から半世紀が過ぎていた当該機ではパイロットの求める性能を発揮できなかった。次にF-2支援戦闘機をロッキード・マーティン社の協力によって改修したスーパーF-2が用意され、5年間の任務についたが、ハワイから日本領空に侵入した第二十七祖の一角、第十八位『復讐鬼』エンハウンスとの戦闘によって太平洋上で大破した。パイロットは太平洋の荒波を泳いで帰還するも、健在だったエンハウンスは再戦の意思を燃やしながら回復を遂げ、今度は中国大陸から日本領空に侵入。少女の姿をしたパイロットとのリベンジ・マッチを望んでマッハ4.5で突入してきた。これを迎撃するため、三菱重工業にて最終調整中だった本機が急遽投入されることとなったのである。

 本機は自衛隊のみならず世界にもまた一つとない、唯一の『対死徒用戦闘機』として開発がスタートした。次期主力戦闘機問題に揺れる複雑な情勢下、F-2の後継実証機という被膜を被って誕生した本機は、豊富な資金を背景に、急ピッチで開発が進められた。実証機の側面もあるため、三菱重工業が基本設計と調整を担当し、そのほとんどの部品を国内企業から調達している。F-15などのエンジンをライセンス生産し、技術を高めてきたIHI社は新型大出力ターボファンを開発。これを2基搭載し、双発型とした。これにより、追加燃焼装置(アフターバーナー)を使用せずとも超音速で飛行でき、さらにアフターバーナーを使用することでミサイルなみの飛行速度を得ることができる。また、3次元推力偏向(ベクタード・スラスト)ノズルを採用。補助翼や方向舵などの動翼だけに頼らず、より複雑な動きが可能となった。これを、F-2の製造によって技術が蓄積されたナブテスコ製フライ・バイ・ワイヤシステムによる制御と組み合わせることで、現行の第5世代戦闘機(米国のF-22ラプター、F-35ライトニングが該当する)を大きく上回る空中格闘戦(ドッグファイト)性能を獲得した。ミサイルと同等の速度で空中を自在に移動する死徒との戦闘において、この能力は非常に重要となる。常人であれば、本機が叩き出す速度にも機動にも肉体が耐えきれずに圧死することは確実だが、少女の姿をパイロットにはそよ風のような負担であることから、パイロットへの負担軽減策は度外視されている。

 機種レドーム内には、三菱電機が次期主力戦闘機用に開発した新型のアクティブ・フェーズド・アレイ式火器管制レーダー『J/APG-2』を先行採用している。これにより、人型サイズの目標に対しても高精度な探知が可能となった。その逆に、本機はその全面の塗装が宇部興産製の特殊塗料によってつや消しの黒一色に統一されており、ステルス形状と相まってレーダー反射率は限りなく低くされている。これには、死徒はそのほとんどが夜間に活動するため、必然的に本機も暗闇での任務が基本となるからであり、少しでも敵からの視認性を低めることが目的である。尚、この特殊塗料には、京都東寺にて安置されている空海の蓬髪が溶かし込まれている。これは康保5年(968年)に東寺の長者(管理者)であった観賢により散髪されたものの一部である。この塗料の効果により、死徒などの魔性生物には本機が視認しにくくなり、また非科学的な攻撃に対しても耐久性を高める役割を担っている。さらに、高価な炭素繊維複合材料と合金をふんだんに使用した翼の鋭角部分には、関門海峡の海底部点検中に発見された古代の宝剣を圧延加工した金属板が貼り付けられている。発見された当時もまったく腐食が見られていなかった宝剣は、寿永4年(1185年)に壇ノ浦にて失われたものと推測されたが、宮内庁がその結論を認めることを拒否したため預かりどころが宙に浮いていたところを、発見した民間企業から防衛省傘下企業が展示の名目で買い取り、川口金属工業によって内密に熱間圧延異形形鋼加工が施され、本機の両翼先端部に装備される運びとなった。『クサナギ・ブレード』と名付けられたこの鋭利なブレードは魔性生物に対して強力な毒性を有し、並の怪生物であれば近付けただけで悶死するほどである。これにより、本機は機銃やミサイルといった通常兵装のみならず、翼のブレードによる近接戦闘までも行えるようになった。

 通常兵装についても申し分はないが、仮想敵が仮想敵であるため、偏りがある。直系の親となるF-2が対地・対艦戦闘も担える性能を誇ることに対し、本機は対空戦闘に極特化しており、搭載を想定されたミサイルはすべて空対空ミサイルである。超音速・自利湯誘導式の三菱電機製AAM-4B空対空ミサイル、及び欧州日本共同開発の統合新型空対空ミサイル(メテオールJNAAM)を合計20発、胴体内と翼下にマウントする。機銃はオーソドックスなゼネラル・エレクトリック社製20mmガトリング砲M61バルカンだが、弾頭部は一般的なタングステンではなく、純銀である。

 以上のように、本機はエースオブエースのみに許された高価格・高スペックを誇り、対魔性生物戦闘において事実上、世界最強の機体である。普段は、福岡県の築城基地に配備されており、夜間にのみ緊急出撃している。築城基地が選ばれた理由は、F-2の配備実績が豊富であること、海側に突き出した形状であることから民間人のひと目をしのげることが挙げられる。

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どもども。主(ぬし)です。駄文書きです。趣味は映画と小説とニコニコ動画です。灼眼のシャナやFate/zeroのSSなどを書いてます。小説の小ネタや、短編SS、映画のレビューやちょっとした雑記などを掲載していこうと思います。

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