エルフになって勇者と一緒に魔王を倒しに行く話

トゥの飲酒泥酔イベント 試作

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悦さんから頂いた「酒癖が悪い」というアイディアから出来た泥酔イベントを試作しますた。
立ち寄った都市で酒場を見つける。→カークが行きたそうにしている→休憩も必要だからとトゥに許可される。→喜び勇んで酒場に入る。トゥは魔王軍に悟られないために変装をしているという設定(これは後に変更するかもしれない)
以下、そのイベント。


バルカンでもっとも繁盛しているらしい酒場は、やはり辺境の都市らしく粗雑な作りをしていた。タルトスの中心部の酒場に比べればかなり見窄らしく見えるが、雑然とした店ごしらえには何とも言えない暖かみがある。こういう昔ながらの雑多な酒場は嫌いではない。
興味深そうに他の客を見回すトゥの手を取ってガヤガヤとした客たちの間をすり抜ける。ちょうど二人分空いていた客席に座り、逸る気持ちを抑えて目前で盃を磨く店主に注文をする。酒を口にするのは本当に久しぶりだ。13歳の頃に父の蒸留酒を盗み飲みして味をしめてから、すっかりその世界に魅了されてしまった。嗜む程度にしか呑んではいなかったが、それでもここ数週間も口にしていないのは堪えるものがある。

「店主、酒をくれ」
「あいよ。悪いが蜂蜜酒しか置いてないぞ」

太い腕に刺青を刻んだ禿頭の店主は悪びれもせずにそう言った。文句を言おうものなら絞め殺すぞと言わんばかりのいかつい顔つきだ。蒸留酒があれば一番良かったのだが、醸造種も好きなので問題はない。蜂蜜酒はその名の通り蜂蜜を発酵させて作る酒で、まったりとした甘さが特徴の酒だ。それに柑橘系の果汁を絞ったり、冷水で割ったりすると飲みやすくてなかなか美味いのだ。

「構わない。久しぶりの酒なんだ。ありつけるだけで嬉しいものさ」
「そりゃよかった。ほら、うちの自慢の蜂蜜酒だ。……で、そちらの“奥方”はどうするんだ?」
「え?」

手早く盃に蜂蜜酒を注いだ店主がちらと俺の隣に視線を飛ばした。聞きなれない言葉に首を傾げながらそちらに目をやれば、同じようにキョトンと目を丸くしたトゥと目があった。なるほど、そういえば蜂蜜酒は昔から精力剤としても用いられ、子作りに励む新婚夫婦の友としても重宝されていた。確かに酒場に男女が二人で来て男が蜂蜜酒を飲めば、“そういう関係”なのだと見るのは当然だろう。
俺の妻だと思われたことに気付いたらしいトゥが唇をふるふると震えさせ、それを隠すようにフードを深くかぶり直す。その初々しい反応に思わず微笑みが口端ににじみ出てしまう。

「悪いね、僕の妻は恥ずかしがり屋なんだ。なあ、トゥ」
「し、知りません」

妻、という言葉にビクリと肩を跳ねさせる。恨みがましそうにフードの下から俺をジロリと睨んでくるが、きゅっと結ばれた唇は変わらず羞恥に震えたままで少しも怖くなかった。
彼女は、いつもは平然とした態度で俺と同衾したり目の前で着替えを始めようとしたりと無防備に振舞う。しかし、いざ俺と恋仲であると他人に思われたり、俺が意識して彼女を一人の女と見るような言動をすると、途端に顔を赤らめて黙りこくってしまう。この少女の男性経験の無さの証明だ。これほど美しいのに誰にも手を付けられなかったというのは奇跡に等しい。本当に、エルフの世界の男は見る目がない。

「トゥ、君も飲むか?……というか、酒を飲んだことはあるのか?」
「い、いえ。私の世界では飲酒はある年齢に達していないと出来ませんでした。私はまだその年齢には達していないので、経験はありません」
「へえ!酒を飲むのに制限があるなんて、驚いたな」

セシアーヌでは、酒は大人も子どもも楽しむものという考えが一般的だ。特に男は12、3歳も過ぎれば父親と盃を酌み交わすようになるものだ。亜人類には母乳代わりに赤子に酒を飲ませる種族もいると聞くし、娯楽の少ない平民にとって酒とは身近なものだ。
その一方、エルフの世界では飲酒には制限が掛けられているという。エルフは長命な種族であるから、きっと何十年も生きてようやく酒を口にすることが許されるのだろう。それまでの間、何を楽しみにすればいいのか。俺には想像もつかない苦痛だ。エルフに生まれなくてよかった。

「これもいい機会かもしれない。よかったら飲んでみるかい?」
「あなたは私に、法を破れと言うのですか?」
「“郷に入れば郷に従え”っていうだろ?」

おどけて混ぜっ返せば、トゥは眉根を寄せて「むう」と悩む表情を浮かべる。エルフに生まれなくて本当によかった。なぜなら、こうして無垢な少女にちょっとした冒険をさせる楽しみを味わえなくなるからだ。
今なお悩む彼女の背中を押すために、目の前で蜂蜜酒を一口呷って見せる。店主の手作りであろう地酒はかなり濃厚で、濃い甘みの中に酒特有のぴりりとしたスパイスが効いていて喉を心地よく刺激する。バルカンで一番繁盛するだけはある。

「うん、美味い。蜂蜜の酒だから甘いよ。きっと気に入るさ。……何なら、水で薄めてもらうかい?」
「―――いいえ、結構です。そのまま頂きます」

誂うように譲歩をすれば、侮られるのを嫌う彼女は必ずムキになる。伝説のエルフの扱い方も堂に入ってきた俺の手から盃をもぎ取り、琥珀色の液面に銀の双眸を映す。鼻を近づけてくんくんと香りを嗅いだりして警戒する様子はまるで子犬のようだ。

「やっぱり、薄めてもらおうか?」
「そ、その必要はありません。お酒くらい何ですか。果実酒と大して変わりません」

ついに決意したトゥが、そのままぐいと盃を傾ける。細い喉が小刻みに膨らんで濃厚な酒を体内に流し込んでいく。今更になって気付いたが、彼女が口をつけた盃の縁は、俺が最初に口をつけた場所と同じだった。この件を言うとさすがに怒られそうだから、いつか誂う時のために黙っておくことにしよう。
一気に盃を乾かしたトゥが「ぷはぁ」と肺から息を吐き出す。初めての飲酒というのに嘘偽りはなく、喉と頭を熱くする初めての感覚に硬直している。だが、尖った耳がピクピクとしきりに揺れているのを見るに、決して気に入らなかったわけではないようだ。

「店主、お代りをくれ。今度は二杯頼む」
「なんだ、奥方はイケる口なのか?」
「はは、どうやらそうらしい」

エルフは人間よりも優れた種族であるのだから、おそらく酒にも強いだろう。その証拠に、純白の肌はほんのりと桜色に染まっただけでほとんど変化していない。目深に被ったフードに隠れて見えないが、きっと平気そうな表情をしているに違いない。
酒飲み仲間が増えるというのはいつ何時であっても嬉しいものだ。これからは旅の途中に二人で酒を嗜む機会もあるだろう。魔王を倒すという大役を背負った身ではあるが、それくらいの休息をとっても罰は当たるまい。
店主からお代わりの酒を受け取り、自分とトゥの前に置く。

「次の酒が来たよ、トゥ。いつも堅苦しいんだから、たまには羽目を外した方がいい。ほら、乾杯を―――」
「にゅへへ」
「―――うん?」

今、妙な鳴き声のようなものが聞こえた気がした。トゥの声にも似ていたが、それにしては間抜けだ。

「……と、トゥ?」

トゥの顔がゆっくりと持ち上がり、フードに隠れていた面差しが顕になる。そこには、いつも通り知的に引き締まった涼しげな美貌――――――とはかけ離れた、うっとりと恍惚に蕩けた表情が浮かんでいた。

「×××―――×××××!××××―――××××――――!!」
「わっ!?わっ!?ちょ、トゥ!?いったいどうしたんだ!?」

突然エルフ語で大声を上げ始めたトゥに、周囲の視線が一斉に集まる。唐突な変貌にギョッと目を見開いた店主が「大丈夫か」と声をかけてくるが、ちっとも大丈夫じゃない。にへら~と顔を綻ばせて理解できない言語を宙に放つトゥには理性の欠片も見られない。間違いなく、酔っ払っている。

「カーク!カーク!そこに座りなさい!カーク!」
「何度も言わなくてもすぐ隣にいるし、もう座ってるよ」

しかも、質の悪い酔い方だ。

「ヒック!いいですかぁ、カーク。勇者としての心得というのもが、貴方には、足りていないと思、ヒククッ!、思いますです、んひゅっくッ!今からわらひが、じっくり、おひえてあげまひゅ!えへへ、噛んじゃったぁ」

さらに言うなら、めんどくさい酔い方だ。

「うん、わかった。俺が悪かったということはよくわかった。法律は破っちゃいけないよな。反省する。だから今日はもう寝よう。宿に帰ろう。な?」
「やど?……宿で、寝るの?」
「うん、寝よう。わかってるとは思うけど、もちろん別々にね」
「もう寝ちゃうの?なんで?今すごく楽しいよ?カークと一緒にお酒呑むの楽しいよ?」
「うっ!?」

そうやって寂しそうな顔をされると非常に心苦しい。まるで心臓を握られているかのように胸が切なくなる。ああ、ダメだ!胸元にしがみついて上目遣いで懇願するのはやめてくれ!目を逸らせないじゃないか!

「呑もう、もっと呑もう。いっぱい呑もう。私、蜂蜜酒大好き!カークと同じくらい好き!」
「……と奥方は言ってるが、どうする?」
「――――蜂蜜酒、あるだけ全て、持ってきてくれ」
「……安くしといてやるよ」




「……ん、ふぁあ~」

うん、今日もいい朝だ。……って、ありゃ?いつの間に俺眠ってたんだ?つーか、ここどこだ?……ああ、泊まってた宿のベッドか。さっきまでカークと一緒に酒場にいたはずなんだけどなあ。カークに蜂蜜酒を呑まされた辺りから記憶が無い。ああ、そうか。きっとあの酒を飲んだ後、酔って気絶してしまったんだ。たしかに甘くて美味しかったけど、アルコール強そうだったしなあ。ひっくり返って、その後カークが運んでくれたんだろう。
でも、あの蜂蜜酒は美味かったなあ。また飲んでみたい。カークも酒は好きみたいだし、また今度も一緒に着いて行ってみよう。
つーか、カークはどこだ?

「カーク、どこです?……なぜそんなところで寝ているのですか?」

どこにいるかと思ったら、ベッドの近くの床に転がってた。大の字で死んだように倒れていて、見た目にも顔が真っ青なのがわかる。きっと酒の飲み過ぎでこうなったんだろう。自重しないからこういう醜態を晒すハメになるんだ。どうしようもない奴だな、まったく。

「起きなさい、カーク。それでも勇者ですか、情けない」
「ぅぅ……あ、頭が痛い……。トゥ、何も覚えていないのか……?」
「覚える?いったい何をです?」

ナンノコッチャ?さっぱり意味がわからない。酔っぱらいの言うことはよくわからん。

「……もう二度と、君に酒は飲ませない」

ええーっ!?ど、どうしてそうなるんだよ!?

「な、何故です!?蜂蜜酒はあんなに美味しかったのに!」
「エルフが年齢制限をしている理由がよくわかった。君たちの種族はきっと酒に弱いんだ。そうに違いない。そこまで考えなかった俺が悪かった。だけど、これだけは言わせてくれ、トゥ」
「な、何ですか?」
「……誰彼かまわず口付けをしようとするのは、ダメだ……。ガクッ」

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~ Comment ~

NoTitle 

カーク(が酒を好きなの)と同じくらい好き!ですねわかります
  • #382 ティ・エススキー(1852~1858) 
  • URL 
  • 2012.07/13 09:17 
  • [Edit]  ▲EntryTop 

イギリスの飲酒制限はもっと低いぜ! 

かの国はなんと8歳くらいらしいね。
ビールはおいしいっていとこの兄ちゃんは言ってたけど、俺は炭酸系ダメなんだよなぁ……。
酒の強い弱いってどういう要素で決まるんでしょうね?

それはそうと、酔った後のドキドキなイベントが見られなかったのは残念ですが、こちらの急所を的確に貫くお話でした。流石は主さん。
この2人の掛け合いを見るにだいぶ冒険を重ねているようですね。
それでふと思ったんですけど、お酒の味を覚えたからには、蜂蜜酒以外の酒にも手を出そうとすると思うんですよ。

そして酒と勘違いして飲んでしまったのが、実はびや……ん?なんだか首筋のあたりが妙にヒヤッと……?

 

なんというニヤニヤ(笑)キス魔のシーンは見たかったですな~。
蜂蜜酒って飲んだことないので、味が気になります。
このパターンだと、酒豪のハゲ親父VSトゥの飲み比べ!
とか妄想が広がります。

カークェ 

苦労しているようですね。カークは。

そういえば主さんは、花言葉はお好きですか?
可憐な花には意味があるものです。
こっちの世界にも花言葉があって、トゥがカークにあげた花がの意味がとんでもないものだったりしたらとか習慣の違いとかを出すのもありかなぁ?と妄想

二次ファンから来ました 

二次ファンの方で読ませていただいた隆之介です。

此方の方も楽しく読ませていただきました。

酔っぱらいトゥも可愛いですね、脳内挿し絵の龍炎狼牙さんの昔の漫画でも酔っぱらった悪魔っ娘のネタがあったから脳内変換楽勝でした。

第二挿し絵候補のTonyさんで脳内変換すると何故かトゥの目がグルグル状態に…

お話のネタを思い付いたのですが、年若い皇帝陛下を絡めて見るのはどうでしょうか?
トゥに対して少年らしい好意を抱いて彼女達の後ろ楯となって成長していくもよし、「月刊マガジンの『龍狼伝』」の漢の皇帝のように「天女に懸想」するもよし、主人公達とは別視点での物語も盛り上がるかと思います。

何かの参考にでもなれば幸いです。

NoTitle 

>ティ・エススキー(1852~1858) さん
享年6歳!?短っ!だが、その生き様は見事なものに違いない!!
トゥはさらっと爆弾発言をするようなキャラクターなので、その度にカークの心を揺らして慌てふためかせたいですwww

>上条信者さん
イギリスェ……。8歳から酒飲めるとか凄い国だ(;´∀`)
これはまだまだ試作の試作なので、ドキドキイベントも書くやもしれません。キス魔になったトゥがカークにキスした後、硬直するカークを突き飛ばして他の客にまでキスしようとして慌てて止めたらまたキスされるとか。

>媚薬
媚薬イベント!そういうのもあるのか!
媚薬を飲んだのに気づいたけど言うのが恥ずかしいから黙っているトゥと、その様子を見てドキドキするカークとか。もしくは欲望に弱いトゥがカークに襲いかかるとか。うむ、妄想の幅は無限だ!!

>名無しさん
キス魔のシーンは後々に追加すると思います。描いたらきっと面白くなりそうです。酔が冷めた後、カークの首筋にキスマークを発見して「女たらし!」と怒るトゥとか。

>悦さん
僕の描く男の主人公は、大抵振り回されて苦労してますwww女の子をリードするキャラクターも描いてみたいですね。その逆で、周りに振り回される女の子も書いてみたいです。

>花言葉
世界が違えば、当然言い伝えも慣習も、人々が自然に懐く考えも違ってくる。トゥにとっては何気ない仕草やプレゼントも、カークにとってはびっくり仰天なものになる。世界が違うことを利用したイベントはまったく考えていなかったです。これはいい!ありがとうございます!!
誰か他の脇役キャラ(女性、もしくはオカマ)が、トゥに「これをカークに上げれば元気が出るわよ!この花の香りには傷を癒す効果があるの!」と言って花を手渡す。トゥは何も知らずに花を持っていく。元貴族で博識のカークはその花を見てドキマギしだすがトゥは首を傾げる。花言葉は『あなたを失いたくない』。そんなイベントを想像しますた。

NoTitle 

>隆之介さん
おお!こちらにもコメントを頂けてありがとうございま―――す!!
皇帝についてもっと深く広く描写すれば、トゥの美しさとか影響力とか、貴族たち動揺とか腐敗ぶりとか、皇帝自身の成長が描けて物語がもっと面白くなりそうですね!!超参考になりました!!!
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