詰まってます。&『美しい毎日』の試作（未だ冒頭のみ）

年内に『白銀の討ち手』の更新に辿り着くのは無理っぽいです。『美しい変化～』で詰まってます。まさか最終回を作るのがこれほど難しいとは思わなかった。全てのフラグを回収しつつ、後味をさっぱりしたものにして、読んでくれている人の期待を裏切らないように美しくまとめるというのは予想以上に難しい。あっと驚く演出も考えていたけど、それをどこにどうやって組み込もうかというのにも気を使う。何ともかんとも、なかなか進まない。何とか年内には『美しい変化～』を終わらせたい。頑張ろう、としか言えない。
でも年賀状も書かないと……。めんどくさっ！でも職場の人たちには絶対に送らないといけないし。それも頑張ろう。HALO４のプレイ動画見てる暇ないよ！ｳﾀﾚﾀﾜ-！！！


リンジー：由来は「水たまり（墜ちた雨）の島」
レッドスカイ：意味は「曙光（光をもたらす者）」

---

（謎視点）

金色の髪は『金星』、ファーストネームは『堕天』、ラストネームは『曙光』。この名前ほど私を象徴するに相応しいものはないと確信し、このキャラクターに憑依をした。土から作られた者たちの子孫はやはり先祖と同じく愚鈍で、誰も私の正体に気付かない。だからこそ可愛げがあるのだが。
輝かしい夢を抱いていたのに、天におわす支配者様の心ない差配によって理不尽な最期を遂げた迷える子羊たち。私には、この者たちがかつての己と重なって見えた。雲上にふんぞり返る王様によって理不尽な|運命《さだめ》に突き落とされる姿を見て、放っておけなくなった。本当に全知全能だというのなら、なぜ未来ある若者の命を無碍に枯らすのか。真に完全無欠だというのなら、なぜ自らの子の悲涙をなおざりにするのか。
だから私は、理不尽を是とする支配者への当て付けとして、この救済の世界を創った。これでも元は七大天使を従えて天地創世を補佐した大天使長だ。一から宇宙を生み出すことは叶わないが、人間の造った偽のセカイを|本物の世界《・・・・・》に昇華させて宇宙の隙間に構築するくらいはできる。依り代をエロゲーにしたのは、志半ばで死にゆく若者たちの脳裏に共通して現れた媒体であったからというのも大きな理由の一つだが、単純に私の趣味であることも大きい。土人形たちの欲望と空想の産物は、全宇宙でも比類無い叡智と愛に満ちている。それらは私の神としての側面でもある。
一度死んだはずの|９人《・・》の若者たちは、この叡智と愛に満ちた世界で新しい人生を謳歌している。この者たちが笑顔を浮かべることが、ひいては無能な王様への嫌がらせにもなるのだ。私はその幸せな横顔を傍らで見守りながら、心のなかでニヤついて悦に浸るという寸法だ。

―――が、どうにもその計画が上手くいっていない。どいつもこいつも、心のドコかに凝りを残して生きている。全員を主人公にするわけにはいかないからと発想を転換させてヒロインとして生まれ変わらせてみたのだが、それが思わぬ齟齬を生じさせてしまったらしい。面倒だからと記憶をリセットするの行程を省いたことや、いきなり男を女に憑依させたことなど反省する点は少しだけあるが、それにしたってこれではわざわざ骨を折ってやった私が馬鹿みたいだ。
現に、ああやって寂しげに野球少年たちを見つめる横顔なんぞ、名残推しくてたまらないと言わんばかりだ。大人しく美しい女としての人生を楽しめばいいのに、前世の記憶を気にするから未練を引きずることになるのだ。まったく、土人形の分際で世話のやけるものだ。

「どうしたんべや、生徒会長？一人でボソボソ呟いで、何か悩み事でんあんべ？」


（もう少し続く）



（ここから楓視点）

非現実に形を与え、心躍る空想世界へ万人を誘う|魔法《・・》。その世界では、あらゆる人間が“新しい自分”と特別な力を手にして華々しく活躍できる。初めてその世界に熱中した時から、自分もこの手で創ってみたいと思った。理想を仕事にするために私は勉強を始めた。資格があった方がいいと聞いたから、それも取得しようと頑張った。あの時、俺にはたしかに理想があった。熱意を傾ける夢があった。
だけど、今はいらない。そんな夢、もう諦めたんだ。俺の―――……ううん、|私《・》の望むものはもう手に入ってる。こうして私の手を握ってくれている。痛くないように柔らかく、でも離さないように強く握ってくれている。
夜月 龍彦。この世界の中心。この物語の主人公。私の全て。私の太陽。
ずっと騙していたのに、私のことを嫌いにならなかった不思議な人。こんな私を好きだと言ってくれた優しい人。私の命よりも大切な人。私は、今が一番幸せ。これ以上を願えば、新しい人生を与えてくれたカミサマに怒られてしまう。何より、こんな女の子らしくない夢を持っているなんて知られたら、この人に嫌われてしまうかもしれない。それだけは絶対にイヤだ。この人に拒絶されるのなら死んだほうがマシ。
だから私は、喜んで夢を捨てる。

「タッちゃん、こっち行こう」
「俺は構わんが、こっちだと遠回りにならないか？」
「いいの。寄りたいところを見つけたから」

自分でも声が硬くなっているのがわかる。繋いだ手を介して背後でタツヒコが訝しる気配がする。タツヒコは鈍そうに見えて、実はとても鋭い。ずっと一緒にいたからよく知ってる。私が未練たらしく|あれ《・・》を避けるから不審に思ったに違いない。また余計な心配をかけてしまう。嫌われてしまう。じくじくと滲む後悔に唇を噛み締める。

「なあ、もしかしてお前、ゲームに何か思うところでも―――
「そんなことよりっ！」

以前に朝香 楓を演じていたように、表情筋を意識してさも楽しそうな笑顔を作る。鏡の前で何度も練習した、朝香 楓そっくりの無邪気な笑顔を|被る《・・》。

「ねえ、こっち来て！ワンちゃんがプルプル震えてすっごく可愛いんだよ！」
「お、おう」

ごめんなさい。貴方に相応しいヒロインになると誓ったのに、私はまだうじうじと前世を引きずってる。