二次創作

殿下は従者の~の後編試作【改々】

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毎日少しずつ更新されてます。






「それで、アタシの注意をちゃんと聞かずに原液のまま飲ませちゃったわけね」
『ああ、そうだ!僕の不注意だった!反省した!ちゃんと改める!だから助け―――わっ、綾狩、今電話中だからくっつくのはヤメっ、ひっ!』

受話器の向こう側で槍仁が狼狽の悲鳴を上げる。その声が台詞に反してまったく嫌そうでないことと、赤子が親指に吸い付くような水音が送話器の間近で聞こえることからして、首筋に口づけでも落とされているのだろう。チュパチュパと愛撫される度にひぃひぃと間の抜けた喘ぎ声を漏らす美丈夫の声は聞いていて股間に|クル《・・》ものを覚えるけど、他人の男を寝取る趣味はないのでグッと我慢する。誰も言ってくれないけど、アタシは良いオンナだと思う。

「クリスマスにじゃれ合いながら独り身のアタシに電話かけてくるなんて、親王殿下もいい根性してるじゃない。なにそれ、自慢なわけ?失礼しちゃうわァ」
『そんなこと言わないで、何か解決策を教えてくれ!』
「はいはい、わかったわよ。原液のままだと、効果は何倍にも伸びるわ。今回の薬の量だと―――そうねえ、飲ませてから2時間ってとこね。その間、綾狩ちゃんはそのまんまよ。解決策は“薬が切れるまで待て”ね」
『げ、解毒薬とかはないのか!?ひっ、くすぐった、耳たぶは、ぃひっ!?』
「あるわけないでしょ、“毒”じゃないんだから。それに、綾狩ちゃんとそういうことしたかったんじゃないの?」
『た、確かに嬉しい気持ちもあるが、これは行きすぎだ!僕は綾狩の本心をほんの少し確かめたかっただけで、反則を使って一気にこういう関係に飛び越えたかったわけじゃ―――うッ!?あ、当たって、』
『当てているんですよ、槍仁さまぁ』

ガタゴトと椅子が引っくり返る物音に鼓膜を叩かれて思わず受話器から耳を離す。取っ組み合いをしているような騒音で、弓之宮邸でどんな珍事が起こっているのか容易に想像がつく。世界に冠たる大日本帝国の皇族に連なる一人が最新鋭の電装義肢に手篭めにされそうになっているわけだ。字面にすると余計わけが分からなくなる。
他人の耳に入れば「御国の恥」と帝国全土から槍玉に挙げられそうなこの珍事は、アタシの胸にそっと締まっておくことにしよう。やっぱりアタシは良いオンナだ。どうして誰も貰ってくれないのか不思議で仕方がない。

『ぐ、グスタフ!まだ切ってないよな?電話は繋がっているな!?』
「はいはい、まだ聞いてるわよ。でももう切るけどね」
『そんな殺生な!頼む、こっちに来てくれ!二時間も堪えられそうにない!』
「無理言わないでよ。アタシは今、京帝大で学会演説の真っ最中なんだから。
ねえ、もっと前向きに考えなさいよ。綾狩ちゃんがそこまで色ボケになったってことは、アンタを心から好いてくれてたって証拠じゃない」
『それは、まあ、そうなんだが』

モゴモゴと口篭った声は、嬉しさ半分、葛藤半分といった感じだ。ほんのちょっと心を覗くことにも躊躇するくらい頭のカチコチな奴だから、媚薬で発情期の雌猫みたいにしてしまったことに罪の意識でも抱いているのだろう。|予定《・・》と違って原液のまま飲まされたとはいえ、あの娘ももう少し加減を考えればよかったのに。……ああ、あの娘も頭が固かったっけ。ホントにお似合いの二人だ。

「ま、あと二時間の辛抱よ。どうせ記憶は保存されないんだし、今のうちに出来ることを楽しみなさい。いつもならしてくれないようなことをさせられるチャンスじゃない。あ、でもあんまり|オイタ《・・・》しちゃダメよ」
『な、なんだよそれは』
「オイタはオイタよ。綾狩ちゃんは生まれた時から女の子じゃないんだから、|される《・・・》ことへの耐性は薄いわ。そこんところを気遣って、イザという時は優しく扱ってあげんのよ。まずは相手を怯えさせない接吻の仕方から教えてあげるから耳かっぽじって―――」
『もういい!わかった!二時間くらいなんだ、そのくらい堪えてみせるさ!間違いなんて犯すものか、これでも誇り高き皇族の端くれ―――ひょアっ!?そ、ソレは触っちゃいけません!!』

「その硬いモノは浮き出た骨盤であって決して君が想像しているモノではない」と必死で言い訳をする声には説得力のカケラも見当たらないけど、本人が大丈夫と言っているのだから放っておこう。もしも皇族の誇りとやらが煩悩によって崩れ落ちた場合でも、電装義肢の身体は妊娠しないから取り返しがつかないことにはなるまい。現代の科学技術は“生命の奇跡”を再現するまでには未だ至っていないのだから。

『それはいけません!骨が浮き出るほど空腹だというのなら言ってくださればよろしいのに!しばしお待ちください。すぐに綾狩が心をこめてお食事の支度をして参ります!』
『わああッ、ち、違う!早まっちゃダメだ―――ッ!!』

自分が藪を突いてしまったことを悟った槍仁が喚き声を上擦らせる。
私も一度だけ食べたことがあるが、綾狩ちゃんの作る手料理はとても|アレ《・・》だ。ほんの数年前までは武家の男子としての教育しか受けて来なかったのだから料理の腕は期待できないと想像していたけど、その想像を遥かに越える腕前だった。その味は、調理の行程が増えれば増えるほど、綾狩ちゃんが気合を入れれば入れるほど、反比例して|アレ《・・》な方向に急下降爆撃をぶちかますのだ。

『いつも通り、焼くだけ煮るだけの簡単な料理にしようじゃないか!それで僕は満足だ!』
『ご心配なく、今日は成功しそうな気がするのです!頑張って作りますので、槍仁さまはそこでお待ちくださいませ!』

電話機を介して、槍仁の皮膚からサーッと血の気が引いていく様子が透けて見えた。気の毒だけど、これもご主人様の宿命だ。「学会が片付いたら顔出してあげるわよ」と一言送話器に吹き込み、槍仁が助けを求めようと口を開く前にガチャンと通話を切る。電装義肢の技術をより進歩させるためにも、|明日の学会発表《・・・・・・・》の準備は欠かせない。

「でもでも、羨ましいわあ。アタシも早く恋人が欲しい。ベッドの中で良いオトコと暖めあいたいっ」

熱っぽく呟いて|自室《・・》の椅子で腰をクネクネと動かす。そう、ここはアタシの自室。帝国京都大学での電装義肢技術の学会発表は明日に行われる予定だ。だから本当は今すぐにでも弓之宮邸に駆けつけられるのだけど、そこは空気を読んで嘘も方便というわけだ。

「ホント、アタシってよく出来たオンナよねえ」

脱毛してツルツルになった頬を撫でてうっとり自画自賛。毎日お手入れを欠かさない美白なお肌は常にピチピチたまご肌。どうしてオトコが寄ってこないのか本当に不思議だ。

「そうだ、明日の学会に参加する若手の研究者を摘み食いしてみようかしら。槍仁に似て童顔の男の子だと最高ネ。うふふ、楽しみだわぁ!!」





「ううっ、なにやら物凄い寒気が!?」

突然、巨大な舌が背筋を這ったような錯覚に襲われてブルリと身震いする。まるで何者かに影から狙われているかのようだ。もしかしたら僕の命を狙う軍需産業の刺客かもしれない。綾狩が|こんな具合《・・・・・》だから、今襲撃を受けると命にかかわる。

「槍仁さま、ア~ンしてくださいませ」
「……綾狩、ちなみにその料理の正体は何なのかな?」
「見てお分かりになりませんか?卵焼きですよ。今日こそは、きっと美味しく出来たはずです。さあ、お口をお開け下さい。冷めてしまいます」

新妻のような楽しげな微笑みを背景に、僕が知っている卵焼きではないナニカがズイと突き出される。緑褐色に染まった砂団子のようなものが卵焼きであるというのなら、たとえ自動車を指差しても「これは卵焼きだ」と言い張れるに違いない。
前言を撤回しよう。僕の命は現在進行形で危険に晒されている。僕を護ってくれるはずの綾狩の手料理という恐ろしい暗殺兵器によって大きな危機に瀕している。僕に不平を言う資格はないが、綾狩の手料理は非常に|アレ《・・》だ。完璧な従者である彼女の唯一の欠点が、それだ。

なぜなら―――綾狩は、モノを食べることが出来ないからだ。
味覚を感知するための装置も、摂取した食物を分解する装置も、全て戦闘用の部品に取って代わられている。嗅覚も数値化された情報を処理するばかりで、実際の“匂い”を嗅ぐことはできない。彼女が摂取できるのは主機関を動かすための高濃度過酸化水素とメタノールのみだ。全身式電装義肢は、本来は肉体に障害を抱えた皇族のために宮内省で極秘に開発されていたものだった。まだ試作段階だったそれを皇族でない綾狩に与えるためには、“皇族護衛用”という名目を付けて宮内省に頼み込むしかなかった。結果として、綾狩は人外の力と引き換えに味覚と嗅覚を欠損し、料理の味付けを自分で確認することが出来なくなってしまった。
綾狩自身も、口にしないだけで心の底ではそれを恨んでいるかもしれない。そうしてしまったのは他ならぬ僕自身だから不平を言う資格はない。異臭を放つ緑褐色の砂団子を全力の笑顔を浮かべて頬張ることしか出来ないのだ。
しかし、考えようによってはこの状況は決して悪いことばかりではない。想い人の手料理以上に美味なものなどこの世にはない。そこにはどんな美食よりも愛情が篭められているではないか。舌で転がしてみればわかる。強烈な酸味と脳が拒否するほどの苦味が絶妙なバランスで で   


で ででで  で


「―――ほぁァッ!?」
「……あの、槍仁さまの心臓の鼓動が6秒ほど聞こえなかったのですが、やっぱり……?」
「お、美味しかった!美味しかったとも!うん、凄く美味しかった!味の向こう側というのはとても綺麗な光景だった!父が『何回追い返せば気が済むんだ』と川の向こう岸で怒鳴っていてね!?あははは……は……」

乾いた笑い声で場を和ませようと努力する。自力で蘇生を終えた直後にこれほどの励ましが出来ることは賞賛に値すると思う。とは言え、嘘をつけないという僕の元来の性格はこういう時にばかり裏目に出る。
空気が沈み、苦しい笑い声が虚しく吸い込まれて消える。今度こそはと期待に目を輝かせていた綾狩の顔に見る見る影が差していくのを前に、僕は自分のフォローがまたしても失敗に終わったことを悟った。
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~ Comment ~

 

これはこれは・・・( ̄∇ ̄)
二時間が楽しみですなぁ
どう転んでもニヤニヤできる
キャーグスタフサンステキッ!!
件さんの綾狩のイラストもイメージぴったりでかっこよかったです!

NoTitle 

>ナコトさん
綾狩のイラスト、凛々しくてかっこよくて、イメージにピッタリですよね!!文章だけではアヤフヤなキャラクターに形を頂けたことで、命が吹き込まれたような気すらします。件さんにも、ナコトさんにも、心の底から感謝しまくりです!!ありがてえ!!ありがてえ!!(;∀;)

NoTitle 

ほうほう、まあ、色々言いたいことはあるが、一先ずこれは確定だな。

「それなんてエロゲですかー!」

おいおい、一服盛る筈が一発搾られる展開になるなんてな。何それ素敵。
母ちゃーん! 綾狩の母ちゃーん! あなたの娘さん、皇族手籠にして赤飯炊く気ですよー!
凛々しくて尽くす系でエロいとか最高じゃね? 家のヒロインにもそこら辺の魅力が欲しい所ですな。

イラスト可愛い~(^-^) 

こんな娘がメロメロになって尽くすとは、素晴らしいエロげですな。
凜としたクールビューティーが崩れてゆく姿は何故にこんなに萌えるのか。
綾狩って確か、電子機器の塊だから結構重かったと思うので、その重さで甘えられたら結構危険だったり。
甘えてくる綾狩の結構な重量に、女の子に「重い」なんて傷つける言葉を言わないでやせ我慢している優男を妄想しました(笑)

NoTitle 

>enkidさん
>凛々しくて尽くす系でエロいとか最高じゃね
も ち ろ ん 最 高 で す !

綯ちゃんにもリセルちゃんにもそれぞれ魅力がありますよね。リセルのツンデレはまさに見事なツンデレっぷりだと思いますよ。自分の本心を認められず、だけど言動の端々に好意が見え隠れするところはニヤニヤできます。彷徨えるピウスはマジでもっと評価されるべき。異論は認めない。

>名無しさん
イラスト可愛いですよねえ。カッコ可愛いというのはまさにこのことです。普段キリッと引き締まっているからこそ、メロメロになった姿が余計に引き立つと思うのです。綾狩は重量75キロもあるのでかなり重いです。組み伏せられたら大の大人でも抵抗は難しいのです。その設定も活用して、さらなるニヤニヤ展開を書いていくつもりですたい!!
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