エルフになって勇者と一緒に魔王を倒しに行く話

『エルフになって~』今のところここまで完成

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『衛士』とは、皇室守護を司る特別な位地にある騎士を指す。皇帝陛下の君命を至上とし、陛下の身辺警護はもちろんのこと、御内儀や血族の方々の護衛から皇宮内外の警備、果ては皇室に関係する犯罪の捜査や処罰に至るまで、幅広い管轄と権限を有する誉れ在る役職だ。陛下のおわす階層へ続く“玉の門”を警衛するこの壮年の男も、それに当てはまる。

「ならば、早く道を開けろ!貴君が我らの道を妨げることは、陛下の御意を妨げているのと同じだぞ!」
「な、何度も言っている通りだ、アールハント小隊長!陛下へのお目通りは許可できない!た、例え―――伝説のエルフ様をお連れしていたとしても、だ!」

前言を撤回しよう。誉れ在る役職|だった《・・・》と説明したほうが正しい。ろくに論拠も答弁できずにただ否定ばかり繰り返す衛士にむらむらと怒りがこみ上げてくる。そんな体たらくだから陛下から信用されなくなったのだとなぜ気付かないのか。

5年前、前任の騎士団大隊長であったカレイジャス公爵が突如汚職の罪で投獄され、現在のクアム・ベレ・ガーガルランド公爵が騎士団大隊長に就任してから、衛士の名誉は地に落ちたと言っても過言ではない。
衛士は、騎士団に所属する騎士の一員ではあるが、命令系統が異なる。近衛兵である彼らは騎士団大隊長の命令に従う必要はなく、陛下からの命令にのみ忠実に従わなければならない。しかし、そんな建前が今となっては有名無実と化していることは周知の事実だ。本来ならばあらゆる組織や階級に対して中立の立場で捜査を行わねばならない衛士が、ガーガルランド家に与する貴族家には一切の手出しをしない。その不平に異議を唱えた者にばかり衛士が強引に詮議を迫れば、もはや裏で誰が手を引いているのかは一目瞭然だ。古くから衛士を輩出してきた由緒ある貴族家が排斥され、衛士を担う騎士が次々とガーガルランド公爵家と縁のある家の出身者に取って代わられてからは、衛士の依怙びいきは目に見えてひどくなった。
衛士が誉れある近衛兵だった時代は過ぎ去った。騎士の中の騎士と羨望の眼差しを向けられていた誇りは消え失せた。もしそうでなければ、トゥを迎えに行く役目を陛下から任ぜられたのは、俺ではなく衛士の誰かになっていただろう。それが不幸なのか幸運なのかについてはさて置くことにするが。

「カーク、ここで立ち止まっている暇はありません。貴方は騎士である前に勇者なのです。くだらない| 柵 《しがらみ》に囚われてはいけません。魔族であろうが衛士であろうが、立ち塞がる障害は尽く跳ね除けるのです」
「エルフ様、何ということを仰るのか!?」

物騒な台詞に面食らって叫ぶ衛士から目を外し、背後の“エルフ様”―――トゥを肩越しに見返る。月光の如き純銀に煌めく双眸は、俺に「為すべきことを為せ」と告げている。人間社会の低俗な世事に左右されない彼女は、まるで地上を見下ろす月そのものようだ。月を擁する俺が今さら躊躇いを感じる必要など無い。
不甲斐ない衛士に不満を覚えたのか、トゥの頬にカッと赤みがさす。これ以上、衛士の無様な姿を彼女に見せるのは人間全体の恥晒しにしかならない。赤面して怒るトゥに頷きを返し、再び眼前の衛士と顔を突き合わせる。こちらが腹を括ったことを察した衛士がギクリと仰け反る。

「き、貴様、正気か!?衛士に手を出すなどあってはならんことだぞ!?」
「先の彼女の言葉を聞いたはずだ。そこを退いてもらおう」

一歩、すり足で相手の間合いに踏み込む。衛士が慌てて腰に帯びた剣に手を伸ばすが、俺が二歩目を踏み方が早かった。衛士が帯刀する剣は儀礼用に華美な装飾が施された長剣で、間合いに深く食い込まれれば抜刀すら儘ならない役立たずだ。それに対し、こちらは腰の長剣の他にも身体中に短剣を仕込んである。精鋭の近衛兵だった頃ならさて置き、腑抜けた今の衛士に遅れを取るつもりは毛頭ない。

「如何に爵位を失ったとはいえ、アールハントの剣術が冴えを失ったとは思わない方がいい。貴君も剣の心得があるのなら彼我の力量を見抜けないはずはない。貴君と殺し合いをする気はない。|俺《・》はただ、この世界を救いたいだけだ。頼む、そこを退いてくれ」
「ぅぐ、ぬう……く、くそ……っ!」

衛士が柄を握ったままの姿勢でぶるぶると身動ぐ。額に汗を滲ませながらしばし抵抗の緒を探した後、やがて項垂れるように柄から手を離した。引き際を見定める程度の実力はあったらしい。無駄な戦いをせずに済んだことに内心でホッと嘆息する。
恨めしそうに俺を睨め付ける衛士が扉の前から身を引けば、重厚な観音扉の全景が現れる。玉の門より先に立ち入ったことはないが、父から聞いた話ではこのすぐ先に|供人《ともびと》たちの控え室があったはずだ。彼らに至急取り次ぎを願って、陛下に拝謁しよう。
扉に手を掛けようとして、鍵がかかったままであることに思い至る。どうやらまだ素直に通す気はないようだ。脅し足りなかったかと歯噛みして目を向け

「……!」

すでに俺の代わりにトゥが糾弾の睨みを効かせていた。死に勝る罰を与えんとしているかのように厳しい剣幕に、我知らず身体が硬直する。俺ですら皮膚が強張る感覚を覚える眼光は、堕落したヒトの罪を断罪する神代の刀身を想起させる。

「え、エルフ様、私はただ指示に従っただけなのです。決して御身を害する意思などはございません。どうか、お許しを……」
「衛士よ。その指示というのは、貴方が忠を尽くすべき者から与えられたものですか?」
「い、いえ、違います。ですが、あの方に逆らえるはずが……」

硬質な声音に貫かれた衛士がガクガクと震え上がり、兜を脱いで低く頭を垂れる。
“あの方”―――十中八九、クアムのことだろう。皇宮内の各所には遠隔会話の魔法が張り巡らされている。それを使って何か含ませられたに違いない。権力の前にひれ伏すしかない男の姿は怒りを通り超えて憐憫すら誘う。しかし、これが今の人間という種族の実情なのだ。
呆れて物も言えないのか、熱り立っていた細肩からスッと力が抜ける。まさか「人間を救うのに嫌気が差した」と言われるのかと息を呑む。だが、次に紡がれた言葉に、その心配は杞憂に過ぎないと思い知らされた。

「他者に言い訳をするのは構いません。ですが、自分に言い訳をするのはおやめなさい。そんなことをしても、自分を許せなくなるだけです」

―――自分に言い訳をするな。
それはまるで祝詞のように、魂を根底から揺らした。叱るようで励ますようなその強い言葉に、衛士も俺もハッとして目を見張る。彼女は、衛士として情けない体たらくに怒気を漲らせていたのではなかった。己の心に嘘をつくその姿に怒りと嘆きを覚えていたのだ。思えば彼女は、俺に勇者としての自覚を持てと迫った時も「誇りと自信を忘れるな」と叱咤してくれた。きっと彼女は、どんなに俺たち人間が堕落しても見捨てはしないのだろう。怠惰の泥にまみれた手を力強く握って「諦めるな」と引っ張りあげてくれるに違いない。エルフが救世主だと言われる所以は単純な能力ではなく、その優しさ故であるのかもしれない。
この儚げな少女が|救世主《エルフ》と呼ばれる種族の一人であることを改めて思い知らされ、知らずに拳に力が籠もる。やはり、断じてクアムの手に貶すわけにはいかない。

「トゥ、急ごう。この扉を越えれば謁見の間はすぐそこだ」
「ええ、わかりました――― っ!!」




全然進んでないねえ。ごーめんなさいよー。
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~ Comment ~

NoTitle 

待つさ、いつまでもな
(副音声:バーサーカー読みたいなぁ……)

NoTitle 

> さん
が、頑張ります……。
あ、でも、朗報があります!なんと新しいバイトが二人も入ってくれたんです!!僕の負担もこれで減るってもんですよ!これで小説書く時間が増えます!!

ゆっくりいきましょう 

更新はお待ちしておりますが、あわてずゆっくりとなさってください。

プロ・アマ問わず、人気作家であるため続きを書く苦痛やプレッシャーで書けなくなった方は枚挙にいとまがありません。
あくまでも趣味の執筆活動なのですからご本人が楽しんで書かれることが一番と思いますので。

更新は早いけど内容が荒れている作家さんも多く存在し、読み手としてはそれならば質の高い作品を待つ方が良いと私は考えます。
最強オリ主の無敵蹂躙ストーリーではなく、一捻りしたアイディアと展開が主さんの売りなのですから。

……書籍化されたネット小説は内容が薄いものが多く見られますがそのような作品も「毎日更新」「週一更新」とうたった最強モノが多かったですよね……

それでは失礼しました。

 

いくらでも待ちますよ。
主さんの作品が好きですから、待つことは全然辛くないです。むしろ待つことでドキドキ感が増すくらいで・・・なんというか長らく此方に来てなかった人間のいう事じゃないじゃないですよね。(;´・ω・`)


それでもエルフさんの話も進んで嬉しく思います。
ストレスを溜めない程度に楽しんで執筆活動頑張って下さい。
応援しています。

NoTitle 

>隆之介さん
ありがとうございます!とある方が、小説家になろうの活動報告で、「作者自身が楽しんで書いていない作品は読んでる人間も楽しめない」と言っておりました。ハッとさせられました。楽しんで書く!それが大事ですよね!!
なるべく更新は早めに、でも内容がぐちゃぐちゃにならない程度に、頑張りまっせ!!

>悦さん
おおっ、悦さん!悦さんじゃないか!!また来てくださったんですね!ありがとうございます!!いつでも来てくれていいのよ!!
ストレスを貯めこまないのが僕のいいところなのです。寝たらスッキリサッパリ忘れて記憶リセットです。ここ数日執筆に取り掛かれない状況が続いてしまいましたが、今日仕事から帰ったら、またワクワクしながら執筆に励みたいと思います!!

NoTitle 

なあに、俺もさ。飲もうぜ、兄弟――――――

パッと書けるだけ書いたら妄想するくらいで調度良い気がする。
息抜きに短編書いてた私が通りますよ、と。いや、ちゃんとやってます。やってるんですよ? ぬ、主どんもそうだろう……?

お互いケツ突かれてる状況ですが、更新状況が励みになればいいですなあ……。

NoTitle 

>enkidさん
enkidさんも詰まっているのですか。同士よ!頑張りませう!!
何かキッカケというか思いつきがパッと浮かべば、ダムが崩壊するみたいにアイディアが出てきて話を進められる気がするのです。妄想している内に時々「これいいかも!?」と出てきてはくれるのですが、いざ書き始めると「いや、なんか違う。これじゃない」ってなるんですよねえ。息抜きに映画や小説を見て、自分の中から解決策を出すのではなく、外から吸収するようにしてみるのもいいかもしれないですね。何か面白そうな小説でも買ってこようかなあ。

 

とりあえず黒騎士の設定考えましたぜ

黒騎士
ユイツを待つために自らを不死身のアンデットにし眠りについた前勇者、長い眠りの果てにエルフの微かな面影とその人を待っていたこと以外の全てを忘れる。
その結果魔族と人間関係なくあらゆる戦士に襲いかかる狂犬になってしまった。
トゥを待ち続けていた『彼女』だと思い込み執拗に追いかける。
最初は身体能力の異常に高いだけの敵だったがトゥの後を追いかつての『彼女』との旅をだんだんと思いだし、人間性と剣技を取り戻し更なる強敵になっていく。
姿が変わってしまい再会した魔王がが『彼女』だと気付かずに殺してしまう(魔王なので死にはしない)
抱き付いてきた魔王をベアバックで背骨折りとかだとgood

鬱々しさが足りないと思ってひたすら悲惨な白騎士とか考えたけど口出しすぎかとも思い今回はやめました。

NoTitle 

>さんさん
アイディア提供どもです!!いつもありがとうございます!!トゥの後を追いかけてくるアンデッド騎士、その執念の源を考えると切ないですな。旅を思い出して最後に心を取り戻す救済が欲しいものです。

>抱き付いてきた魔王をベアバックで背骨折りとかだとgood
ひいい、なんというゾクゾク欝展開!さすがさんさん、類稀なるサディストやでぇ……(゚д゚;)
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