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夏コミで、白銀の討ち手のイラストがキミの手に!!?? &映画の感想 &エルフになって~の試作

 ←最近のことと、映画の感想! →神降臨のお知らせ!!!
 はい、タイトル通りですよ!! 僕のネット小説デビュー作(エタってないのに限る)である『白銀の討ち手』のイラストを多数描いて頂いた件(くだん)さんが、この度夏コミに出陣されることになりました。なんとその際、ブースにおわす件さんにお願いをすると、スケブに白銀の討ち手のTS主人公、サユを描いて貰えるのです!!
ちなみに僕はナマのサユイラストをすでに所有しております。ヒャーリスのイラストもプレゼントして頂きました。どちらも最高です。素晴らしいです。可愛すぎます。繊細なタッチで描かれたTS娘たちは、スラリと引き締まった容姿の中に精悍さと爽やかさと儚さと無邪気さ、そして不思議な妖艶さを持っています。それぞれの魅力がそれぞれを邪魔せずに共存し、じっと見ていても飽きることはありません。マジで素敵ってことだよ言わせんな恥ずかしい。
件さんのサークルは『黒髪心中』というお名前です。夏コミに参戦される方がおりましたら、ぜひぜひ件さんの御前に馳せ参じてくだせえ!!!





そして話は変わりますが、『ワイルド・スピード ユーロ・ミッション』を観て来ました。
長くは言わない。深くは語らない。自分の目で見に行けばいい。これは映画館で見ないともったいない。
「シリーズ最高傑作!」なんて謳い文句は珍しくもないだろうが、この作品こそがまさにそうだ。シリーズの中でも『ユーロ・ミッション』がもっともクールで、クレイジーで、エクスプロージョンラブで、なんというかもうマジでイカしてる。冒頭シーンからすでにカッコイイ。何から何まで、カーアクションの原点にして頂点というべきスーパードライビングシーンがコレでもかというほど詰まってる。今までのワイルド・スピードシリーズが大好きだという人はお腹いっぱいで満足感以上のものを感じて映画館を後に出来るに違いない。
凄すぎて何も言えねえ。前作のレベルを一気に飛び越えてる。特殊レーシングカー、吹っ飛ぶ高級車、何でも破壊する戦車、巨大輸送航空機、なんでもござれ。特に最後のラストバトルシーンは凄すぎて心臓が止まりそうになった。息を呑む映画は久しぶりだ。
だけど最後の最後に、この映画は「嘘だろオイ!?」と驚かせてくれた。エンディングロールが流れ始めても、どうか席を立たないでほしい。いや、立ってはいけない。次回に繋がる伏線という以上に、新しい敵の姿にあっと驚かされる。東京渋谷のど真ん中で爆走するマツダRX-7に、その油断を突いたトヨタクラウン(だったかな?)が体当たりをして粉微塵に吹っ飛ばす。RX-7に乗っていたのはドミニクメンバーの仲間。そして、それを叩き潰したクラウンから降りてきた特等のイケメンは………と、トランスポータ――――!!??
ああ、コレ以上は言わないほうがいい。続きは映画館でどうぞ。また見に行きたい。






そしてそして、『エルフになって勇者と一緒に~』の試作品をアップ。土日とケータイの電源を切って執筆に励むも、もう少しというところで完成できなかった。おそらくこの数日中には完成できると思う。トゥとカークの距離感を近づけたいと思っていたけど、ちょっと急き過ぎたかなと思ったりしてる。最初は友達感覚だったのがいつの間にか……というTS作品が好きなので、そういう流れにしたいんだけども、不自然なものイヤだ。うーむ、どうしたものか。






ジャーンジャーン!! ゲェーッ、大隊長―――!!

……って感じで振り返ったカークの顔は、それはそれは憎々しげな顔をしてた。あのいけ好かない金髪とは色々と因縁があるということが一目でわかる顰めっ面だ。カークも自分は元貴族とか言ってたし、貴族同士で何かいざこざがあったんだろう。
中世の西洋騎士とそっくりの鎧を着込んだ集団と、その中心にいる男を見る。たしか、名前はクアムべレベレなんとかだったかな。いや、ベロベロだったっけ? まあなんでもいいや。見た目はハリウッドスターも裸足で逃げ出すような美貌だというのに中身の残念っぷりがドロドロと空気に染み出てる。普通の女ならあらやだイケメンじゃないのと見惚れるのかもわからんが、オレにはあいつの笑顔の裏側が透けて見えて寒気しか覚えなかった。「トゥ様お美しすぎワロタ」みたいなくすぐったい羨望の眼差しとは正反対の「さあどこから食べてやろうか」みたいな害意120パーセントの目をしてやがる。

「……っ!」

ブルルッと背筋が震えて思わず自分の身体を抱きしめる。
元は男だったからアイツがどんなことを考えてるのかはすぐにわかる。超絶美少女が目の前に現れたら思わずイケないことを考えてしまうのは男の| 性 《さが》だ。誰だってそーする。俺だってそーする。だけど、見られる側がこんなにゾッとするとは思わなかった。そういう視線《・・・・・・》は初めてで免疫がないだけに、余計に不快感が募ってジクジクした胸焼けが込み上げてくる。こういうのを視姦っていうんだろう。世界が世界ならセクハラで訴えられるレベルだ。
……ところで、さっきからチラチラとカークがこちらの顔を気まずそうに窺ってきていたりするわけだが。「俺はあんなに下品じゃなかったよな?」と声にならない声が問いかけてくる。残念だがカーク君よ、湖でオレを覗いていた君の視線も似たようなものだったぞ。

『では、依頼通り、私は“|彼《・》”を呼んでくるよ。その間に、あの騎士団長とこっちの第一村人、どっちが良いか選んでおくといい。どちらに転んでも楽しめるように君は創ってある。楽しむのは主に私だが、君も慣れればそれなりに楽しいかもしれない』
「お前を楽しませるつもりなんざ毛頭ないっつーの。ほら、さっさと働け! ゲラァウッ!」
『やれやれ。1000年前然り、とことん不敬極まりないエルフだねぇ』

と言いつつも怒る素振りすら見せない。自分の世界がピンチだからオレを召喚したというのに、この余裕たっぷりな態度はまるでそぐわない。ミステリアスと言えば聞こえはいいが、怪しすぎて信用出来ない。コイツはクセェ――――ッ!隠し事してるニオイがプンプンするぜ―――!って感じだ。
眉を潜めたオレに意味深な一瞥を向けると、妖精(神)は苦笑をこぼしてフッと姿を消した。半分は賭けだったが、オレの指示を素直に聞いたことからしてサポート役を担う気はあるらしい。まあ、立ってるものは親でも使えということわざもあるくらいだし、神さまだって有効活用してもいいだろう。

ううう、しっかし気持ちが悪いな。変態金髪野郎め、まだ見てやがる。ひとのことを頭のてっぺんからつま先までぢろぢろと観察しやがって。
あの目に舐め回されていると、自分がショーウインドウのマネキンになったみたいですごく不快だ。ちょっとでも気を弱めると、「このままアイツの下に行ったら何をされるんだろう」「どんな扱いを受けるんだろう」という嫌な想像が首をもたげてきてサアっと頭から血の気が引く。妖精の言ってた“慣れれば楽しめる”って、もしかして|そういう《・・・・》意味?
空腹のストレスも重なってオレの不快指数がスーパーマッハで急降下だ。“ただしイケメンに限る”が何時どこでも通用するわけじゃないんだぞ!?

「……トゥ、こっちへ」
「ひゃわっ」

突然、二の腕を強く掴まれたと思ったら、自分と変態の間に壁が立ちはだかった。油断してて女の子みたいな悲鳴をあげてしまったことをうぬぬと後悔しつつ、壁を見上げる。細身だけどよく鍛えてることがわかる、筋肉の凹凸が目立つ壁―――カークの背中だった。動きに合わせてつんと鼻をつく臭いが漂ってくる。滲んだ汗で肌にへばり付いた麻のシャツが、カークがこれ以上ないほどに緊張してることを伝えてくる。

「?」

どうして乱暴に腕を引っ張ったのか、どうしてそんなにガチガチに強張ってるのか、首をひねってしばし考える。

―――ああ、護ってくれたのか。

ポンと手を叩いて納得する。変態金髪野郎の視線を遮るために自分の身体で壁を作ったんだ。汗が吹き出すほど緊張してるのは、その変態が怖い上司だからだ。つまりコイツは、上司の怒りを買う危険とオレの悪寒を取り除くことを天秤にかけて、オレの方を選んでくれたというわけだ。エルフ様のためなら自己犠牲の躊躇わない。今まで会った騎士よりもずっと騎士らしい。オレが女なら間違い無く惚れてるね。さすがはオレの見込んだ召使い1号だ。褒めて遣わす!

「アールハント小隊長。貴公、何のつもりだ? 何を考えているのかは知らぬが、馬鹿な真似はするな。
私の目が正しければ、そこにおわす御方は伝説のエルフ様に相違あるまい。その輝く美貌と妖精の姿がその証だ。エルフ様であれば、皇帝陛下及び騎士団の総意により今代勇者として公認された私がお迎えするべきであろう。さあ、その御方を此方へお連れするのだ」

クアムの声は、遠くまで突き抜けるようなアルトの音色だった。不必要に力んでいて、居丈高な命令口調だ。それを最後まで聞いたカークの筋肉がギリリと軋む。雑巾をきつく絞った時のような、なけなしのナニカを絞り出す音。絞り出したのは、|覚悟《・・》だ。
だから次の返答はきっと、

“お断り致します、大隊長閣下。”
「お断り致します、大隊長閣下」

……うん、決めた。しばらくは、カークがオレの勇者でいいや。

「……なんだと?」
「お言葉ですが、大隊長閣下。私は現在、皇帝府からの主命に従って行動しています。陛下の主命が何よりも優先されるのは、閣下もご存知のはず」
「あ、あ、アールハントッ! き、貴様、無礼だぞっ!? 大隊長閣下に向かってそのような口を叩くなど―――」
「失礼ながら、フュリアス上級騎士閣下。無礼なのは貴方方であると諫言致します。エルフ様を早急に御前に召し出すようにお命じになったのは他ならぬ我らが君主、クオラ・ベレ・ドゥエロス皇帝陛下であると申し上げたはず。貴方方は今、陛下にお目通り願おうとする私を阻んでおられるのです」
「ぅ、むう、それは……」

カークバリアの向こう側で言葉の鍔迫り合いが繰り広げられる。だけど、不思議とさっきまでの不安とか寒気は感じなくなっていた。代わりに、布団に包まってるみたいなあったかい安心感を覚える。頼もしい|バリア《カーク》のおかげだ。
同じ男に庇われているというのに不思議と嫌な気はしない。それどころか、頼り甲斐のある背中にトクンと胸を揺さぶられる。むわっとした汗の臭いもなぜか気にならない。心なしか、腹の奥底がキューッと引き締まるような不思議な感覚もする。
ハッ! そうか、これが信頼出来る仲間を得た喜びというやつに違いない! こみ上げてきた熱い心情に面映ゆいものを感じてムフフと自然に口元が綻ぶ。実は、親友というのを得たのはこれは人生初なのだ。親の仕事の都合で転校続きだったからこれは嬉しい。
二人で力を合わせ、時に共闘し、時に拳を交え、夕焼けを見上げる丘で「なかなかやるじゃねえか」「フッ、お前もな」と讃え合いながら寝っ転がる―――。憧れていた昭和スタイルな親友像が頭に浮かぶ。親友と言うよりも、何だか本当に兄弟が出来たみたいで胸がホッコリする。よし、“召使い1号”から“ブラザー1号”に格上げしてやろう。褒めちぎって遣わす!

「―――だ、大隊長閣下? 恐れながら、か、鍵なら、確かに―――」
「―――衛士よ。隠さずとも良い―――」

さて、いろいろと話は進んでいるようだが、実はもうすでに手は打ってあったりする。妖精にやる気がちゃんとあれば、もうすぐ|目的の人物《・・・・・》のところに辿り着いてるはずだ。期せずして|時間稼ぎ《・・・・》をすることになっているカークにそのことを教えてやりたいが、どうにも口を挟みにくい雰囲気だから黙っていよう。今のうちにこれからのことも考えておきたいし。

「―――貴公、それでも衛士か!? 鍵は、鍵はどこだ!?―――」
「―――おおお俺には家族が―――け、けども、え、え、エルフ様を謀るなんて恐れ多いことは俺にはとても―――」

声を荒げる周囲から意識を切り離し、顎に手を添えてふむと思考を巡らせてみる。頭を使うことには馴れてないからカロリーを消費して余計に腹が減りそうだけど、どうせもうすぐカークん家のヤギ鍋にありつけるから構わない。

現状で一番重要なことを考えてみる。まずなんといっても、この世界を魔王軍の手から救わないことにはオレのセレブライフは実現しないという大前提がある。酒池肉林の実現は世の男のロマンなのだが、ロマンに辿り着くためには多くの障害を乗り越えなくてはならないのも世の常だ。この障害を如何にスピーディーかつ楽に乗り越えるか、というのが当面の問題なのだ。
さて、相手が“軍隊”というからには、こっちにも対抗勢力がないと心許ない。だけど、カーク曰く、『残された人類側の戦力は質・経験ともに乏しく、逆に魔王軍は勢いづいている』のだとか。真正面からぶち当たって戦争おっ始めても魔王軍を倒せる公算は小さいという。この時点ですでに頭が痛い。1000年は勇者とエルフたった二人で乗り込んだらしいが、果たして俺とカークに真似できるのかは不安だ。出来るなら前回よりも良い条件で挑みたい。
ここで気になるのは、今現在の勢力図・戦力差がどうなっているかだ。歴史の授業とか戦術ゲームをちょこっとと齧ったくらいだから詳しく分析なんて出来ないけど、情報を仕入れておくに越したことはない。特に、自軍の数とか魔王軍の数とか、どこまで侵攻を許していてどこまで防げているのか、どこをどう通れば安全で快適なのかは知っておきたい。“敵を知り己を知れば百戦危うからず”と昔の人も言ってるし。

「―――どうだ、妻子は元気か? 年頃の娘がいたよな? 今年の税負担は重いと聞くが、家の財政の具合はどうだ? んん?」
「―――あ゛、あ゛、」
「くっ……!」

あ、なんだか雲行きが怪しいかも?
口論の戦況が不利になってきたのを察して、カークの肩越しにそっと様子を覗いてみる。耳に入るクアムの嫌味な口調がいちいち癇に障る。第一印象が最悪だから余計にそう思える。こんな奴が幅を利かせてるってことは、カークみたいな模範的な貴族はこの世界では少数派なのかもしれない。

たとえ、オレやカークが考えている以上に人類側の戦力が大きくて、クアムがそれらを一手に握る権力者だとしても、コイツを頼りたくはない。絶対に良くないことを要求してくるだろうし、自分に逆らったカークに害を加えるのは明らかだ。せっかくの戦力だって保身のために使い潰すのは目に見えてる。もったいないけど、人類側の戦力を全面的に頼るのは無理そうだ。となると、考えられる手は―――

「トゥ、」

張り詰めた声が耳元で囁かれる。咄嗟に唇をきゅっと閉じたと同時に、またもや手を握られてぐいっと引き寄せられる。今度は悲鳴をあげなかった。偉いぞオレ。

「安心してくれ。君をあいつらには渡さない」
「状況はとても絶望的に見えますが、貴方に何か良い策があるのなら耳を貸すくらいはしてあげましょう」
「ああ。相手は上級騎士だ。みんなそれなりに強い。だから、5、6人までなら何とかなる。俺が切り込んで食い止めるから、その間にそいつから鍵を奪って扉を開けて欲しい。エルフ相手ならそいつはさほど抵抗しないはずだ」

押し殺した声は、追い詰められていることをありありと示していた。鬼気迫る表情を間近に突きつけられてギョッと息を呑む。
|それなり《・・・・》って、|なんとかなる《・・・・・・》って……あっちは10人くらいいるんですけど。しかも完全武装なんですけど。
見栄張って格好つけてるのかと一瞬だけ訝る。でも、察知能力が敏感になってるはずの俺でさえ、カークがいつの間にか柄を握ってすでに戦闘態勢を整えていることに気づけなかった。ゆらりと滲み出た鋭い気配―――“殺気”を感じて、長いエルフ耳がピンと突っ張る。
思い返せば、アールハントの名前を出した途端、そこで縮こまってる衛士はビビリあがっていた。数でも装備でも勝ってるはずのクアムの部下たちも、カークがすぐに斬り掛かれる身構えを終えたことを悟ってギクリと歩を引いた。何より、湖で最初に出会った時、カークはオレが思いっきりぶん投げた豪速球を居合斬りで弾き飛ばすなんて離れ業をやってのけてる。
もしかして、アールハント家ってのは剣術の名門とかだったりするんだろうか。だとしたら、カークがここまで恐れられる手練だってことも頷ける。

改めてカークの勇者適正の高さに感心していると、握られていた手がヌルッと生暖かく濡れていることに気付いた。節くれだった手がこちらの手をギュッと一際強く握る。片方の手元でジャキリと鋭い金属音が鳴り、日本刀みたいな片刃剣の銀の刀身を垣間見せる。

「……カーク、まさか、」

驚いて見上げれば、覚悟完了!と言わんばかりの強い眼差し。吹っ切れて穏やかさすら混ざり出した瞳で、カークが考えていることを理解する。

「扉を潜ったら、振り返らずにそのまま施錠してくれ。急いで供人の誰かを見つけて陛下への謁見を願い出るんだ。そして、クアム以外の誰かを勇者に選んでくれ。
そうだ。騎士ではないが、俺の親友にタイベリアスという魔術師がいる。普段は軽薄だが、信用できるし才厚い男だ」


―――こいつ、死ぬ気だ。

直感で理解して、ぞわっと全身から血の気が引いた。カークの気色に気圧されて言葉が出ない。
死ぬ覚悟を決めた人間の瞳は、思いの外優しい色をしていた。ふっと片頬を緩ませて笑顔すら浮かべている。まるで死に場所を見付けたとでも言うような―――|ようやく死に《・・・・・・》|追いつかれた《・・・・・・》とでも言うような、何かから解放された人間の表情だ。
誇りのためなら死を選ぶ。己の価値を低めるくらいなら戦って死ぬ。忠義のためなら喜んで命を差し出す。大昔のおサムライさんみたいな奴だ。そういう真っ直ぐなところが信用できると思ったんだけど、幾らなんでも愚直すぎやしないか!?

手に入れたばかりのブラザー1号がオレの手をそっと離して一歩遠ざかる。「はいここでネタばらし! もう手は打ってるから心配すんな!」と急いで口にしないといけないのに、初めて目にする|本物の戦士《・・・・・》の雰囲気に呑まれてぐっと喉が詰まる。死を覚悟した顔に呆然とするオレに満足気なほほ笑みを向け、騎士がさっと踵を返す。儚い後ろ姿はまさにマミる直前のマミさんの如しだ。
このまま放っておいたら、コイツはあの集団に挑みかかる。宣言通りに5、6人を叩きのめして、オレが逃げるのを見届けて、7人目に斬られて殺される。オレは血を吹き出して倒れ伏すカークの姿を目に焼き付けながら扉を閉じる―――。そこまで脳裏に浮かんで、心が拒絶を叫んだ。

そんなのイヤだ。絶対イヤだ。そんなことされても全然嬉しくない。
せっかく異世界で心を許せる仲間を得られたのに、これから冒険の始まりだってのに、いきなりカークを失うなんてイヤだ。もっとカークと色んなことを話したいし、カーク自身のことも知りたい。
でも、それより何より、大事なことがある。とても重要なことだ。これをしないことにはカークからは絶対に離れてはいけない。

再び腹の奥がキューッと引き締まる。空っぽの胃が|いい加減にしろ《ぐぅ~~~~っ》と高く唸る。

もし、ここでカークが死んでしまったら―――|ヤギ鍋が《・・・・》食べられない《・・・・・・》!!

「“もう何も怖くない”なんて台詞を思い浮かべたのなら、今すぐに撤回しなさい。それは不吉の前兆です」
「えっ―――? ぃにぃででッ!?」

空腹のあまり、カークの顔にヤギ鍋が重なって見える。グツグツと美味しそうに煮える鍋に手を伸ばして握ると、そこはちょうどよくカークのほっぺただった。薄くスライスされた肉の赤身と色とりどりの野菜が良い感じに煮立っている。これを口にするまでは絶対にカークを離さない。
鍋が逃げないようにぐいぐいと引っ張って、マミさんモドキ(♂)の目をじっと睨めあげる。ティロ・フィナーレなんて言わせねーよ!?

「その台詞を述べた者は私の世界にもいましたが、次の瞬間には首から上がなくなっていました。死に繋がる忌むべき台詞です。命は大切にしなくてはなりません」
「わ、わひゃっひゃ! わひゃっひゃはら、ひゅにぇるにょはひゃめひぇくりぇ!!」
「いいえ、ちっともわかっていません。軽々しく自分を犠牲にしようとするなんて大馬鹿者のすることです。そんなことをされても、私はこれっぽっちだって嬉しくありません。
私の勇者は、貴方です。この世界でカーク・アールハントただ一人です。私がそう決めたのです。他の誰でもありません。他の誰にもできません。それなのに、一人で格好つけて散るなど絶対に絶対に認めませんっ」

思いつく限りの説得の言葉を紡ぐ。言語変換フィルターを通過してだいぶナヨナヨした感じになってしまったが、空腹のせいでいちいち口にする言葉のことなんて考えきれない。まあ本心には違いないから問題ないだろう。
家庭の事情もあって一人でいることには慣れてる。孤独に放り出されることには多少の耐性はある。だけど、友だちが自分のために死んだなんてことがあったら、例え酒池肉林が実現したって後味が悪すぎて意味が無い。その場にカークもいてくれた方がきっと心から楽しめる。

「わ、か、り、ま、し、た、か?」
「……ひゃい」
「なら、よろしい」

念押しすると、コクリと小さく頷いてくれた。よかった、わかってくれたか。カークが臨戦態勢を解くのを確認して、ホッと胸を撫で下ろす。あ、息苦しいと思ったら胸をカークに押し付けてたみたいだ。必死になってて気が付かなかった。カークも顔を赤くするくらい苦しかったのなら言ってくれればいいのに。

それにしても、肝が冷えた。妖精(神)がチンタラとサボってるせいで、もう少しでカークを無駄死にさせるところだったじゃないか。自分の命を軽んじるような癖があるにしても、こんなに勇者適正の高い人間はそうそう見つかるものじゃない。オレたちの出会いは妖精(神)も意図してない偶然だったのかもしれないけど、こいつの実力や性格に触れていると|エルフ《オレ》とカークが巡りあうことは運命だったようにも思えてくる。
頬を抓っていた手を離し、腫れて赤くなった頬をやんわりと撫でてやる。ヒリヒリと火照っていて、強く抓り過ぎたかなと今さらになってちょっと後悔する。空腹の怒りに身を任せてはいけない。半分は自分にも言い聞かせるように、「頭を冷やせ」と紡ぐ。

「頭を冷やしなさい。そんなことをすれば、貴方が殺されるだけではなく、この衛士や家族にもあの男の怒りの矛先が向きます。それは貴方の望む所ではないはずです。
それに、忘れたのですか? 私はこの世界に来たばかりです。右も左も分かりません。心を通わせられるのは貴方だけです。どうか、一人にしようなどとは考えないで」
「二度としない。先祖と父母と精霊神に誓って本当だ。だけど、この状況をどうにかしないことには―――」
「その通りです。だから、私は貴方の策に耳を貸すくらいはすると言ったではないですか」
「……?」

ご主人さまからトンチンカンなことを言われて不思議がる大型犬みたいに、首をはてなと傾げる。その仕草に思わずキューッと胸が締め付けられる。コイツは本当に強くて、真っ直ぐで、優しい。しっかり手綱を握ってやらないと勝手に突っ走ってしまいそうだ。だから放っておけなくなる。どうにも死に急ぎたがるような素振りも見え隠れするし、その辺の理由も後々で聞いて、じっくり矯正してやることにしよう。
とりあえず、今はこのトゥちゃんに任せんさい。エルフ号は大船なのだ。百人乗ってもだいじょーぶ!

「私に任せなさい。これでも悪知恵は回る方なのです。それとも、私が信用出来ませんか?」
「いいや。どの道、俺には他の策が思いつかない。君に任せる」
「よろしい。では、今より私たちはあの男の下へ下ります。予備の鍵を受け取りに行くのです。反論は無し。いいですね?」
「…………君が、そう言うのなら」

たっぷり3秒ほどの沈黙の後、渋々といった感じで了承する。カークからしてみればクアムに降参したのも等しい選択だから受け入れがたいだろうけど、そこは我慢してほしい。|これからの判断材料として、騎士団長《アイツ》から聞きたいことはたくさんある。
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~ Comment ~

 

件さんが夏コミ参戦! しかもイラスト集だと〜。
行くしかないじゃないか! サークル名も分かりましたし、よーし! 待ってろ夏コミ!!

映画感想ですが、自分マックススピードシリーズ見てないんですよね...。ですが、最後のトランスポーターの言葉が凄く気になります! この機会に見に行こっかな〜。

そして試作品投稿お疲れ様です! 仕事が有意義になったことなので、執筆速度が早くなる事を祈っております。

と言うか今回書くこと多いなぁっ! おい! (とても嬉しいです!)

NoTitle 

ほうほう、ついに夏コミ参戦ですか、めでたいことだ。
最近幸福レベルが低水準でしたので、良いこと聞けて幸いでありますなあ。

ええ、私も掻っ捌いたこの腹のように、波往く障害をこじ開けて行く所存でありますよ。

NoTitle 

夏コミか・・・いいな・・・いきたいな・・・
と思ってるけどいけないんだよな・・・
いけたらいこうと思いますw

ぬぅ。 

夏コミか!
そんなご褒美があるなら是非いきたいが、仕事ががが……。>映画
私も昨日観てきました。迫力もさることながら、ラストまで痺れさせてくれましたね。なにを言ってもネタばれになってしまいますが……一言。戦車のシーンの“ダイブ”格好良いよね(≧▽≦)

>エルフになって
ヤバい、トゥが素敵すぎる(*^o^*)
内面を読まずにセリフだけ読むと、凄い男殺しだよね(笑)
この後どうなるか、楽しみにしてます。

トゥさんWWW 

ネタのオンパレードじゃないか(笑)可愛い顔の下でなんつう事をWWW真っ直ぐわんこちゃんのカークが知らないで良かった!しかし可愛いゼ…カーク…君もTSしたら可愛くなるよっっ

自分も見ました~ 

もちろん役名はフランクで愛車はアウディですね分かります(何
あのシリーズは次回までのスパンが短いのと4~6作目まで監督してきた人が『予め3部作構成で話考えてた』と言ってただけあって、ご都合主義的なのはともかく話が進んでも目に見える矛盾が現れないよう展開がしっかりしてるのが作品全体の良さに繋がってるんだと思います。
あとフリップカーパネェ。バットマンビギンズのタンブラーとタメ張れる武骨なカッコ良さ&性能でしたねw
ちなみに戦車はアレ、実際にはガワだけで中身は大型トラックなんだとか。

そして最後にこれだけは言いたい…滑走路長過ぎだろwww

最近調子が良さそうですね 

最近は筆が走っておられるようで喜ばしい限りです。

「エルフになって~」の次回分完成まで頑張ってください。

職場の異動でストレスが減ったこともでしょうが、たくさん映画を見たことも調子が良くなった理由でしょうか?

そこで私からも新作映画の情報をあげてみます。

まずは「スーパーマン」の新作「マン・オブ・スチール」、手錠をかけられたスーパーマンが刑務所にぶちこまれるというポスターを見たのですが、どうも今回は過去作のような明るいストーリーではなく「バットマン」シリーズみたいなアイデンテティに苦しむスーパーマンの物語らしいです。

次に名作アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」の実写化作品「ガッチャマン」、設定を大きく変更しての映画化です。

・すでにギャラクターが世界の半分を制圧

・特殊な鉱石による超人化に適性がある人間を無理やり「ガッチャマン」にして戦わせている

・ゴッドフェニックスが出てくるか分かっていない

・Gー1号「大鷲のケン」役は「侍戦隊シンケンジャー」のシンケンレッドやくの松坂桃李さん

などの情報が…


どちらも8月以降の作品らしいです。

興味をお持ちになられたら幸いです。

NoTitle 

>森羅さん
ぜひとも件さんのサークルを訪ねてみてくだせえ!でもインターンシップも頑張って!
職場が変わって、気分一新、気合一発、やる気爆発です。思えば、大学生の頃は外国人とコミュニケーションを図る仕事がしてみたいかもと漠然と考えていました。そう考えると、大学卒業から6年経って、ようやく自分の就きたかった職種に辿りつけたことになります。今は応援の形ですが、ここで存在感を示して、「お前がいなくちゃダメなんだ!」と言って貰えるようになりたいですね。こうやって前向きに考えてると、不思議と小説を書く手も元気に動いてくれます。人間、やっぱり気分によるものが大きいんですね。皆さんからの期待に答えられるように頑張りまっせ!!

NoTitle 

>enkidさん
チャンスってちょっと周りを見渡すと転がってるものなんだなあ、と思い知っております。仕事を辞めようかとも思い悩んでいたところに他部署への応援のお話が舞い込んできたのには、運命的なものを感じます。日頃の行いは良くも悪くもないと思うのですが、これも大いなる神のご意志なのか!?それともただの人員不足!?きっと後者です!!
大きな幸福は望めませんが、お互い、ささやかだけど充実した幸福を掴めるように励みましょうね!!

>4423さん
4423さんがどちらにお住まいかは存じませんが、夏コミというのは非常に費用と労力を消費する一大イベントなのだそうですね。東京の秋葉原在住の友人も気合い入れないと踏み込めないと言っておりました。でも一生に一度は参加してみたいです。いつか一緒に行けたらいいですね!!

NoTitle 

>名無しさん
仕事の日が楽しみにしてたイベントに重なるほど悲しいものはありません。思い出したら涙が(;_;)
ユーロ・ミッション・最高でしたね!ドミニクが男気溢れすぎててカッコ良すぎワロタ。でも無印の頃から比べるとだいぶ老けましたね。目尻の皺がちょっと寂しいです。
エルフになって、読んでいただきありがとうございます! アホの子エルフとマジメ騎士の掛け合いを楽しんで頂けたら嬉しいです!!

NoTitle 

素晴らしい絵を描いてくれる方と出会えたことは作者冥利につきますね。
自分の作品のキャラが絵になるのを私も見てみたいです。
(´・ω・`)ベ、ベツニウラヤマシクナインダカラネ!!

そうだ! 自分で(その後、kの姿を見たものは……)

コミケに参加とかしたら、ハイになって熱気とかパワーで執筆スピードも上がりそうな気がするんですが、行く機会をなかなか持てません。
仕事もあるしねえ~
こういうとき、学生に戻りたくなるけど、学生は学生でお金ないから! と自分でダメ出し。

●映画
いつもたくさん映画を見ておられるので映画館行きたくなった(´・ω・`)
インスピレーションを得られる映画って作者には宝の山ですもんね。

NoTitle 

>件さん
いつもコメントありがとうございます!m(_ _)m
こういう愚直な性格の人間がパートナーになった場合、TS娘の魅力がどう輝いてくるのか。それを全面に押し出して書いて行きたいです!!

>ゼミルさん
>ちなみに戦車はアレ、実際にはガワだけで中身は大型トラックなんだとか
なん……だと……!? 今世紀一番の驚きです。あれってキグルミみたいなものだったのか。メイキングでどうやって出来てるのかを見てみたいです。
そういえば、この間DVDの宣伝CMで『トランスポーター・シリアス』っていうトランスポーターそのまんまのパクリ映画がありました。ハリウッドはナンでもありやでえ……。

>隆之介さん
感想欄やブログへのコメント、いつもありがとうございます! 隆之介さんからのたくさんのアイディアで『エルフになって~』の設定もだいぶ掘り下げることが出来ました。ありがたやありがたや!
8月は観たい映画がたくさんあります。特にスーパーマンは絶対観たい!! ガッチャマンは……ちょっと不安ですね……。松坂桃李はシンケンジャーの頃からカッコイイ俳優だと思っていたので彼が主役を張るのには不安はありませんが、果たして設定が如何なものか。ううむ、見てのお楽しみですね!

>kさん
学生の頃は、時間はあってもお金はないですからね。お金と時間、それが両方欲しいです。なるべく若い内に!
映画はいいですよ! 仰る通り、インスピレーションの塊です。わずか二時間ちょっとの映像に観客を楽しませる起承転結をギュッと濃縮させています。笑いあり涙あり、手を握りしめて目を見張らせ、時に目を逸らすほどの絶叫を上げさせる映画には幾つもの試行錯誤の結果が結晶化されています。やめ^られないですね。そして今日も僕は映画館へ足を運ぶのです。銀魂楽しみ~。
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