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エルフになって勇者と一緒に魔王を倒しに行く話

エルフになって~ 第十二幕 試作Ver.4.0

 ←神降臨のお知らせ!!! →エルフになって~  もう少しで完成
コメント返信遅れてすんませんっ!








一行に囲まれながら案内されたのは、豪華絢爛なハイパースイートルームだった!
部屋全体を黒の下地で統一していて、金銀の輝きが強調されてる。だだっ広くて開放的で、そこら中の装飾品がキラキラしてる。高い天井から幾つもぶら下がったでっかいシャンデリアとか、純金で縁取りされた漆塗りの家具とか調度品とか、どれか一つでも質屋に持っていけばしばらく遊んで暮らせそうだ。20人くらいが囲めそうな長机は堂々としてて、その上に盛りつけられたカラフルで新鮮そうな果物たちが芳醇な香りを漂わせてる。
フランスの宮殿を思わせる豪華さに、思わず「ほふぁ」と変な嘆息が漏れる。トゥちゃんもうため息しか出ないよ。大隊長ってこんなところに住めるの?

「さあ、エルフ様。どうぞ|執務室《・・・》へ」

あ、執務室だったんですか。そうですか……。
てっきりここがクアムの部屋だと思い込んでたことが恥ずかしくて無言のまま扉をくぐる。そうだよね、コイツの屋敷ってすぐ隣だったもんね。わざわざこっちで生活しないよね。
オレの後に続いてカークが足を踏み入れると、背後で執務室付きらしい衛兵が扉を閉じた。樫みたいな材質の扉が重苦しい音を立ててガチャンと施錠され、閉じ込められたことを悟ったカークが身を固くする気配がした。
オレたちの身柄を自分の根城に抑えて安心したのか、余裕の笑みを貼りつけたクアムが慇懃な所作で腰を折る。

「ようこそ、我がセシアーヌ皇国騎士団大隊長執務室へ。私の代で伝説のエルフ様をお迎え出来たことは無常の喜びにございます。このような狭苦しく見窄らしい部屋に貴女様をお通しするのは気が引けますが、ここは皇宮内に割り当てられた私の唯一の部屋なのです。これでも私の代になってから多少は手を加えたのですが、あまり華美に過ぎるのも騎士としての―――いやさ、|勇者《・・》としての矜持に反するので敢えて質素に抑えております。|御気色《みけしき》を害されたなら何卒ご容赦頂きたい」

“勇者”をことさら強調して再び余裕の笑み。一緒に入室した上級騎士たちがうんうんとこれ見よがしに頷く。隣のカークからチリリと熱い気配が漂った気がするけど、オレはそれよりも別のことに驚かされていた。
たらりと背筋に汗を伝わせながら改めて部屋の内部を見回してみる。栄華ここに極まれりといった綺羅びやかな内装なのに、これでも質素にしているらしい。絨毯やカーテンに目を向けると、金糸が幾重にも編み込まれてるのがわかった。靴履いたまま金を足蹴にして平気でいられるブルジョアはすげえ。オレならもったいなくて踏めないね。
下手なことを言うと田舎者だってバカにされそうだから、別に興味ありませんよふふん的なオーラを装いつつさらりと礼に応える。

「生憎と、いちいち内装を気にする感性は持ちあわせておりません。お心遣いだけ容れましょう、|大隊長殿《・・・・》」

お前を勇者と認めた覚えはない、と含めて返した言葉に、クアムの双眸が意外そうにすっと窄まる。周囲の上級騎士たちもオレの素っ気ない態度を見て動揺に波打つ。女は無条件で金持ちイケメンにクラクラキャーキャーすると思い込んでいたのかもしれんが、お生憎様、オレは立派な男の子なのだ。
「どうして自分に惚れないんだ?」と言わんばかりの顔のクアムをツンとした目でじっと見据える。見据えられたクアムは、だけど余裕の表情を崩さない。「それならそれで攻略のしがいがある」みたいな女の扱いに馴れた物腰に苛立ちが募る。女ったらしで金持ちでリア充とかなにそれ。エビフライぶつけんぞ。絶対にお前なんかを勇者と認めてやるもんか!

「……そうでしたな。まだ、貴女とは出会ったばかりで互いのことをよく知らない。名乗りあってもいないし、そもそも貴女はこの世界に来たばかりだ。もしかしたら私のことを誤解されているのかもしれない」

言いながら部屋の中央部分を占領する重厚な長机に歩み寄り、傍にいた巨体の騎士に目配せする。クアムの屋敷の前でアタフタしてたモスコとかいう男だ。モスコは一瞬ポカンと間抜け面で呆けて、見兼ねた他の騎士から何か耳打ちされて大慌てで円筒形の何かを戸棚から取り出した。ガシャガシャと鎧を音立ててそれを机の上に広げる。大きな一枚の羊皮紙は、見てみると巨大な地図のようだった。
 金糸で縁取られた豪華な地図を背に、クアムが仰々しい動作で膝を折って頭を垂れる。

「申し遅れました。我が名はクアム・ベレ・ガーガルランド。古くはこの皇国全てを支配していた皇家の末裔にして、皇国最大の貴族であるガーガルランド侯爵家の現当主の座に就いております。そして、皇帝陛下よりこの皇国を守護する騎士団の大隊長という御役目を拝命しております。何卒宜しく―――っと、」

こちらの手を取って手の平に口付けをされそうになったから、そうはさせるかとさっと身を引いて頭だけでちょこんと返礼する。

「ご丁寧な名乗りに感謝致します、大隊長殿。御存知の通り、私は此度にこのセシアーヌに召喚されたエルフです。私の名前はこちらの世界では正しく発音できないので、どうぞ“トゥ”と呼んで頂きたく思います」
「……トゥ様、ですか。実にお美しい名前だ。まるで精霊神の紡いだ祝詞のようですな」

露骨な御機嫌取りにゾワワッと背筋が逆立つ。男に名前を褒められても嬉しくないわい!
「それはどうも」とだけ返して薄く開いた目で睨む。おべっかが肩透かしに終わったクアムがフッと嘲笑う。ヤロー、まだ余裕たっぷりだな。

「私について、そこの貴族崩れの|不調法《ぶちょうもの》から何を吹きこまれたのかは甚だ存じ上げないが、それならそれで構わない。だが、一方だけの言い分ではなく、私の意見もお聞きになって頂けるのでしょうな?
セシアーヌ皇国の命運が掛かったこの| 大戦 《おおいくさ》に勝利を収める力を有しているのは誰か、勇者に相応しいのが誰か、それを今より仔細に説かせて頂きたい」

なるほど、早くも権力アピールと来たか。クアムにとっては印象を挽回するチャンスなんだろうが、オレにとってもこれは良い機会だ。図らずも、オレが知りたかった敵味方の戦力差とか騎士団が取る作戦とかを教えてもらえるわけだ。

「仰る通り、片方だけの言い分のみで判断をするのは不公平です。ぜひ貴方の口から、窮迫した現状を打破するための策をお聞かせ頂きたく思います。策があれば、の話ですが」
「言うまでもありませぬ。魔王軍など何するものぞ。反撃の構えはでに滞り無く終えております。
エクサニ、トゥ様にご報告の準備を急げ」
「はっ、只今」

クアムの部下が収納庫らしきところから紙束や色付けされた積み木を運び出してくる。赤い積み木が地図の至る所に散りばめられ、一際大きな黒い積み木が真ん中にどかっと鎮座する。そこが首都ってことなんだろう。覗いてみると、たしかに『セシアーヌ皇国首都』と記されてある。
……あ、オレこの世界の文字もちゃんと読めるんだ。今まで見たことのあるどんな国の文字とも似てない。ミミズが這ったみたいなヘンテコな文字だなぁ。

「……トゥ」

カークの不安そうな耳打ち。とんがり耳は人間だった頃より敏感みたいで、先端に掛かる息がくすぐったい。

「心配いりません、カーク。私は一度決めたことは覆しません。|我が種族《エルフ》に二言はないのですから」

日本男児に二言はないと口にしたつもりだったが、そこは修正された。

「もちろん信じてる。君がクアムを選ぶとは露とも思ってない。だけど、時間が経つにつれてこちらはどんどん不利になる。今頃は奴の息のかかった不届き者が城中にいるはずだ。脱出が難しくなる」
「それも心配いりません。今頃、妖精が何とかしています」
「妖精が?」
「ええ。あの者にもしっかり働いてもらわなければ。貴方もどんどんこき使って構いませんよ」
「はは、その度胸はさすがにないよ」

言って、耳打ちを終える。同時に「準備完了しました」という部下の報告。
クアムの目配せに応じて、一人の壮年の騎士が一歩踏み出した。戦況報告書らしい紙束を手にしてることからして、こいつが参謀役だな。クアムよりも少し年上で、片目にモノクルを掛けてる。スンスンと鼻をひくつかせると、体臭というか纏っている空気がクアムと通じるものを覚えた。

「フュリアス子爵。今回の魔王討伐軍の軍師役で、大隊長の従兄弟だ。都合のいいことしか言わないから気をつけてくれ」
「なるほど」

カークの囁きに小さく頷く。オレの観察眼も捨てたもんじゃない。というか、この身体になってから鼻も効くようになったみたいだ。女は男よりも嗅覚が鋭いと聞いたことがあるけど、こういうことだろうか?

「僭越ながら、このファレサ・ベレ・フュリアスが戦況のご報告を述べさせて頂きます。
賢くもエルフ様に於かれましては、卑しき魔王の毒牙に苛まれた我が皇国をお救いになるべくこうして御自ら御降臨されたことに、我がフュリアス家末代までも謹んで御礼を申し上げたく―――」
「御託はいりません。早く本題に入ってください」
「―――は、はい。では、まずは我が騎士団の戦力について……」

ったく、いちいち周りくどいことを言わないと喋れないのか! うう、怒ったら余計に腹が減ってきた。机の上にある果物がすごく美味しそうに見えて目が離せない。真っ赤なリンゴっぽい果物なんか丸々と膨らんでて瑞々しく熟れてて、きっと甘いんだろうなあ。こっそり食べられないかなコレ。
顎に手を当てて考えこむフリをしつつ、口端のヨダレを拭う。いや、ちゃんと考えることは考えてるんだけど、やっぱり本能には勝てないんだよ。ジュルリ。女の子は甘いモノに目がないって言うじゃん。男の子だった頃から甘党だったけど。

「我がセシアーヌ皇国騎士団の騎兵が約1万2千騎。各領地より徴収した民兵が8千名、魔術師団が3千名、および傭兵2千名を合わせれば、総兵力2万5千にまで達します。我が皇国有史において前代未聞の大軍団です。魔王討伐軍は堂々たる威容を持って魔王軍の前に立ちはだかりましょう。
さらに特筆すべきは、1000年前と比べて騎士団の武具の水準は大いに向上しているということです。剣帝と呼ばれた先代勇者が自らの剣に選んだイクシオンの刀鍛冶の名剣を今やほとんどの貴族家の騎士が所有していると述べれば、装備の質の躍進が目醒しいことがお分かり頂けるでしょう!!」

いや、そんなドヤ顔で声を張り上げられても……。多いってのは何となくわかるんだけど、関ケ原の戦いとか片方の軍だけでも9万人いたし、地球人のオレにはイマイチ凄さが伝わってこない。セシアーヌじゃこれ以上ないほどの大軍なんだろうけど。でも勇者の名剣が広まってるってのはすごいな。伝説のロトの剣がモブ兵士の標準装備になってるってところか。
……ところでカーク君、君の剣はどうなんだい?
チラリとカークの腰の剣に目を落とす。飾りなんかついてない無骨な鞘と柄は名剣と呼ぶにはずいぶんと使い込まれてて、ハッキリ言うとボロボロだ。視線に気付いたカークがオレから剣を隠しつつ、罰が悪そうに唇を尖らせて囁く。

「一応、|アールハント家《うち》にもイクシオンの剣はあったさ。どの家よりもとびきり古くて立派な“シィンの剣”ってのが。10年前にやむを得ない事情で故郷に置いてきてしまった。でも、剣の腕は剣の質に大きく左右されるわけじゃない」
「ですが、その剣は質素過ぎるというかなんというか、」
「見窄らしいってのは俺が一番気にしてる。これは“シィンの剣”の形状を再現して城下の刀鍛冶に造ってもらったんだ。見た目はあまり冴えないけど良い剣だよ。イクシオンの剣にだって負けないさ。……そりゃ、少しは劣るだろうけど」

負け惜しみ乙! 弘法は筆を選ばずって有名なコトワザもあるけど、モブ兵士がロトの剣装備なのに肝心の勇者がロトの模造刀装備ってのは一緒に冒険するエルフとして恥ずかしい。もっと勇者らしい剣を帯びてもらいたい。魔法効果が付加された剣とかこの世界にあるのかなあ。
 せっかくのスピーチを華麗にスルーされて表情を引き攣らせたファレサがめげずに説明を続ける。

「ま、また、1000年前の魔王侵攻時と大きく違うのは、現在の騎士の装備が全て鉄で作られていることです。これはコサトカの大鉱脈地帯の功徳です」

コン、と自分の鎧を軽く小突いてみせる。重そうだけど、頑丈そうなフルプレートアーマーだ。製鉄技術は中世から近世レベルに達してるらしい。

「言い伝えによれば、この地を発見したのは先代の勇者とされています。魔王復活を見越しての我々への贈り物に違いありませぬ。先代勇者の先見の明により武具は大いに発展し、それに負けじと騎士たちの技と勇気も長い時を経て雄々しく洗練され、魔術の水準も遥かに上がっています。
今の我々は、魔王の力に恐れ慄くしかなかったかつての弱い人類とはもはや比べ物になりませぬ。勇敢なる猛者たち全てを|総動員《・・・》し、一個の鉄槌と化して挑み、1000年前の恥辱を晴らす覚悟です。そこに御身の輝きが加わればまさに鬼に金棒! 伝説の勇者とエルフに率いられた| 武 士 《もののふ》たちの戦意は最高潮に達するでしょう! 一振りの剣となった我が軍の前には魔族など子ヤギの群れ同然! 必ずや、我が神聖なる討伐軍は邪悪な魔王に天誅を下し、その醜き首を高々と掲げながら輝かしき勝利を収むると確信しております!!」
「総動員……?」
「? それがなにか?」
「……いえ、何でもありません。どうぞ続けて」
「で、では、お手元の|輿地図《よちず》を御覧下さい。あれらが現在わかっている魔王軍の数と展開です。我らが勇敢なる斥候が一週間前に伝えて来ました」

促されるままに視線下げる。机の面積いっぱいに広げられた地図上で、ファレサが赤い積み木の群れをひょいひょいと指差す。
積み木の数はかなりの規模で、まるで巨大なバケモノが獲物を飲み込もうとするように東西に広く長く口を開いてセシアーヌの中心部を目指してる。頂点に置かれた一番大きな積み木が本隊で、そこから山の裾野のように左右に軍勢が広がる形だ。|首都《ここ》からはまだずっと距離があるみたいだけど、カークの言い分ではそれも時間の問題みたいだ。
ていうか、たった今軍師が自慢してたイクシオンとコサトカに赤い積み木が山積みなんですが……?
「はわわ、このままじゃピンチです助けてくださいエルフさま~」みたいな慌てっぷりを予想したけど、ファレサはなぜかえっへんと胸を張って手近な赤い積み木を指先でペチンと弾いてみせた。劣勢を気にしてないみたいだ。訝しげに他の上級騎士の顔を見回すと、みんながみんな「な~にすぐに取り返せるさ」とばかりに肩をそびやかしてる。
史上初の大軍と進化した装備の話はさっき散々聞いたけど、それだけでこんなに自信満々な態度を取れるもんなのか?

「ご覧のとおり、まるで|なっていない《・・・・・・》でしょう?」
「……“なっていない”?」

ドヤ顔パート2いただきました。だけどさっっっぱり意味がわかりません!
もう一度地図を確かめる。布を重ねてポコッと盛り上がってる茶色の膨らみはきっと山だ。山の高さはどれも曖昧だし、他にも不自然な地形や色彩がチラホラ目に付く。あまり探索されてないところは想像で描いてるんじゃないのかコレ。衛星写真とか地球の精確なそれに慣れてるとどうしても時代遅れなものに見えてしまうけど、これがこの世界の最高の地図なんだろう。欲しがりません勝つまでは。

「これが、セシアーヌ」

一歩下がって俯瞰してみる。セシアーヌ皇国ってのは海に浮かんだデカい大陸そのものらしい。緑豊かで大小様々な湖もチラホラあって、険しい山脈が縞々模様のように大陸を横切ってる。それらの山々の間を縫うように主要な街道の線が引かれて、心臓に繋がる動脈みたいに中央の|首都《ここ》に繋がってる。世界史の授業で習ったことのある古代ローマ帝国を彷彿とさせて、けっこう立派な国だ。大陸の大きさは―――尺度が信用出来ないからなんとも言えないけど、北アメリカ大陸くらいだろうか?

「カーク、この国の外側―――海の向こうには何があるのですか?」
「何もない。精霊神がまだお創りになっていないのだとされてる。少なくとも今まで外海から攻められたことはないし、奇特な冒険家が何かを見つけたこともない。君の世界では違うのか?」
「ええ。世界は丸く閉じていて、海の向こうには幾つもの大陸があって、何百もの国々がそこに点在しています。気候も言葉も文化も食べ物も住んでいる種族も違います」
「……やっぱり、エルフの世界って凄いんだな。俺には想像もつかない」

こっちの世界のほうがオレには想像もつかないって。そういえば、妖精が「この世界は陸地が少なくて国家はセシアーヌしかない」って言ってたっけ。
大陸の東西南は海に囲まれて、北はある線まで行くとそこから先は灰色で塗り潰されてる。“魔の領域”と朱書された地域は人類が踏み入ることの出来ない北極みたいなとこかもしれない。
そこから下に南下すると、赤い☓マークがあちらこちらに引かれてる。うっすら名前が透けてるから、もともとはそこを所有してた貴族家の名前が書かれていたんだろう。一番魔の領域に近い貴族家は……あー、る、は…ん…と? むむ、どっかで耳にした気がする。
はて?と首を傾げて記憶を探るオレを見て、ファレサが得意気にニヤける。

「聡明なエルフ様も軍略には浅いようですな。一見するだけで我らの優勢が容易に見て取れるでしょうに!」
「無礼なことを申すな、ファレサよ。我らのような生まれながらの武人ならいざ知らず、か弱き婦女子が軍略に疎いのは当然のことではないか」
「おお、誠に仰る通りです、大隊長閣下。エルフ様の世界といえど、女人が| 軍事 《いくさごと》に浅慮なのは変わらぬようだ。やはり、世界が違えども戦場は益荒男の領域なのでありましょう。いやはや、可憐なるエルフ様に対しての不躾な問いかけ、平にご容赦頂きたい!」

ファレサとクアムが目を見合わせてくつくつと喉を鳴らす。ナメられてる感が半端ない。すっげえムカつくんですけど!
妖精(神)からはアホの子扱いされたけど、こう見えても世界史の成績はそれなりに良かったのだ。悔しさに目をかっ開いて穴が空くほど地図を凝視する。けれども、人類側に余裕があるような要素はまったく見当たらないし、魔王軍に落ち度があるとも思えない。
積み木の数を数えるに、人類軍と魔王軍の比率は1:10くらい。25万の大軍団が包囲網を敷きながら南下してきてる。連なる山脈が天然の城壁になって魔王軍の南下を阻んでくれても、時間稼ぎでしかない。昔の兵隊さんの行軍速度はたしか一日で20キロ前後だったはずだ。つまり、あと何ヶ月かもしない内にこちらの10倍の規模の魔王軍が山脈を乗り越えてこの首都を飲み込むことになる。とてもじゃないけど、まともにぶつかったら勝ち目は無いはずだ。
むぎゃー、わからん! ぎぶあっぷ! コイツラの余裕の源はなんだ!?

「まったく、|兵を分けるなど《・・・・・・・》|愚の骨頂《・・・・》ですな。まったくもってなってない。魔王軍は有象無象の集まりよ」
「左様! 魔族など理性を失った獣人どもの成れの果て。しょせんは|正々堂々と《・・・・・》|名乗りも出来ぬ《・・・・・・・》野蛮な獣の寄せ集めに過ぎんということだ! |敵陣に挑んでこそ《・・・・・・・・》の兵を無闇に散らばらせ遊ばせるなど考えられん!」
「さすがはファルコ伯爵だ。討伐軍の一番槍を担っただけはある」
「がはは、お褒めに預かり光栄です、大隊長閣下。しかしこれしきのこと、平民どもでもわかる理屈にございまする。密集させてこそ兵たちは誰よりも先に武勲を挙げんと競い合い、常以上の力を発揮するというもの。分けてしまっては士気も上がらぬし、命令も届かぬことは自明の理!」
「如何にも如何にも。貴君の勇猛さと慧眼は我が騎士団になくてはならぬものだ。他の者たちも、|他の家に負けぬ《・・・・・・・》奮戦を期待しているぞ」
「ははっ! 我がセシアーヌ騎士団|創設以来初の戦争《・・・・・・・・》、腕が鳴るというものです!」

なんだろう、この違和感。戦意はめっちゃ高いんだけど、危うさがパない。追い詰められてるのに危機感がないなんてもんじゃない。10倍の敵を前にして、ここにいる連中はみんな楽観的すぎる。芝居のように見えないのが逆に不気味だ。どいつもこいつも、その気になればすぐに戦況を覆せると思ってる。まるで知識のない子どもが妄想する“ぼくがかんがえたサイキョーのぐんたい”みたいだ。
……あれ? 他に国がなくて、外敵といえば魔族くらいで、城壁が必要なくなるくらいずっと平和が続いて、騎士団は今まで首都を護ることしかしてこなかったって、もしかして―――。

「ファレサ軍師殿。つかぬことをお伺いしますが、騎士団は自ら進軍して戦争を行った経験はあるのですか? そもそも、魔族と戦ったことは?」
「ありませぬ」

きっぱりのたまって下さいましたよこの人。

「我が騎士団は、神聖なるセシアーヌ首都を守護する虎の子の戦力にございます。例えるなら、国の命運を掛けた時にのみ眠りから覚める雄々しき獅子のようなもの。普段はその威光を持って世に平穏を齎しめることが役割であり、名誉ある戦でしかその力を示すことはありませぬ。まさに“セシアーヌの切り札”といったところでしょう。よもや魔王も、セシアーヌにこれほどの強力な軍が待ち受けているとは露とも思っておりますまい。
ああ、魔族やオークどもや野党の討伐にはその地域の貴族家の兵力で十分事足りておりましたし、首都に魔族が出現することはありませんので、実際に魔族と戦った騎士はほとんどおりませぬ。薄汚い血で剣が汚れては困りますからな。ウサギ狩りの方が有意義です」

ちょ、ちょっと? まさか、冗談だよな……?
最悪の予想が首をもたげてきて、ブワッと冷や汗が浮き上がる。

「で、では、ええと、騎士団は演習などを定期的に行なっていますか? 仮想的な机上演習とかは?」
「机上での演習など、何度やっても騎士団の勝利に終わるので誰もやらなくなりました。実際の演習に関しては、過去に数度ほど歴代の大隊長の気まぐれで行われたそうです。とは言えそれぞれの家の事情もあり、ほとんどの騎士が集まらなかったと聞き及んでおります。
……どうされました、お顔色が優れぬようですが……?」

―――くらっ。

「と、トゥ、大丈夫か?」
「ええ、ちょっと目眩を感じたもので。もう大丈夫です。ありがとう」

肩を抱いて支えてくれたカークに礼を言って気を取り直す。たしかに、この連中がマジメに演習してそうには見えない。首を仰向けて背中を支えるカークの顔を覗きこんでみれば、オレが何を気にしてるのかわからずに「おまえは何を言っているんだ」と顔に書かれてある。騎士の中では常識人で頭のよさそうなカークもこの異常に察しがつかないってことは、オレの予感は当たってるらしい。
あ、さっき聞こうと思ってたことがあったんだ。一応、それも確かめておかないと。イヤな予感しかしないけども。

「先ほど、貴方は兵士を総動員させて魔王軍に挑むと言っていました。それでは、首都の防衛や、軍の補給の確保は誰が引き受けるのですか?」

もしも突破された時に首都を防衛できるだけの人数を置いておくのは当たり前だとして、首都でしか活動してこなかった奴らが初めて遠征するっていうんだから、兵站の管理がかなり重要になってくると思う。素人でもそれくらいわかる。何万人もの人間が動くんだから、食料・装備・衣料医薬品から野営地用のテントや薪まで、大量の補給品が必要になってくるはずだ。旧日本軍とかその確保に失敗して負けた部分も大きいし、補給が途絶えた軍隊ってのはいつの時代どこの国でも悲惨な目に遭うと相場は決まってる。
だというのに、コイツラはみんな揃いも揃って前線に出たがる奴ばかりだ。上級騎士のオッサンたちも一番槍だの二番槍だの首級をあげるだの他の家に負けないだの、敵に突っ込むことしか考えてない。ここにいるのが騎士団の幹部全員なら、防衛担当や補給担当がいたっていいだろうに。
オレの質問に、ファレサは鳩が豆鉄砲を食ったように当惑して首をひねった。

「防衛と補給、ですか? 城壁があれば防衛など必要ありませんし、それぞれ食料や衣類が足りなくなれば各貴族家が勝手に民兵に命じて自領から持ってこさせますが……それがどうかされましたか?」

え゛?

「ほ、補給品は一括して管理はしていないと? 騎士団に補給専用の組織はないのですか? 補給品を運ぶ者たちの護衛は誰がするのです?」
「敵を前にしておきながら、騎士に平民を護れと仰るのか? ははは、ご冗談を! 我らはパンやワインを守るための兵ではありませぬ。そのような不名誉な役割、名誉を重んじる騎士なら決して受けはしないでしょう。防衛についても同じです。騎士にとっては敵と戦うことこそ最大の誉れ。補給品を運ぶ民兵が襲われて力尽きたなら、それはその家の責任にございます。手柄を競い合う他の家と物資を共有するような情けのない真似など、我ら騎士の誇りに掛けて絶対にしませぬ」

―――くらくらっ。

「え、エルフ様!?」
「と、トゥ!?」

激しい目眩で意識がサーッと遠のきかける。ようやくわかった。コイツラが余裕だと|錯覚《・・》してる理由をようやく理解できた。ちょっと考えればわかることだった。日本だって、戦後からたった50年で平和ボケしたとか何とか言われてた。自衛隊は実戦経験がないから本当の戦争になったら経験不足が仇になるとかテレビ番組で取り沙汰されてた。
もしも、そのまま|1000年間平和が《・・・・・・・・・》|続いたら日本はどうなるだろう《・・・・・・・・・・・》? 大地震だか何かで日本以外には国がなくなって、地球には日本という国だけになって、自衛隊が形骸化してしまったら? きっと、その頃には誰も彼も戦い方を忘れてしまって、取り返しがつかないことになってる。使わなくなった用兵も戦術も燃えるゴミの日に捨ててしまって、自分たちが世界で一番強いという自惚れに浸って井戸の中でゲコゲコと高笑いすることになってる。

つまり何が言いたいかというと―――この国の兵士たちは、|戦争の仕方を知らない《・・・・・・・・・・》ってことだ!!!



(ここがもうちょっと)


「魔王は力ばかりで頭が空っぽのトカゲのバケモノだ。|火蜥蜴種族《リザード》の連中がそうであるように、魔王は戦い方すら知らん虚け者に違いない。なにせ、斥候が間近まで接近しても気付かぬほどの阿呆の軍隊の王だからな!」
「うむ、1000年前とは違うということを思い知らせてやりましょうぞ!」
「応とも。虎の子の我が騎士団を相手にする不幸をしかと味あわせてやるわ!」



「あなた方は、この期に及んでまだそのようなことを……!」

沸々と湧いてくるイヤな予感に頬を引き攣らせていると、ついに我慢ならなくなったらしいカークが声を荒げた。ムッとした視線を浴びても怯まずに一歩身を乗り出す。

「魔王が1000年前と同じような姿形だと決め付けるのは尚早です! 私は何度も、魔王はヒトの―――|女の姿《・・・》をしていたと具申したではありませんか! それに、魔王軍は今までの魔族とは明らかに違います! これほどまでに統率された動きが出来る奴らではなかった! 武装をしていたという話も―――」
「ええい、黙らんかっ! エルフ様の御前で見苦しいとは思わんのか、貴族崩れのひよっ子め!」

さっきまでガハハと笑っていたオッサン騎士がカークの話を遮った。チラッとこっちに向けられた目が女の子にいいカッコ見せようとするガキンチョみたいで、見ていて居た堪れなくなる。

「魔王が女だと? 糞尿を垂れ流し涎を撒き散らすあの魔族が、剣を帯びて鎧を纏って隊列を組むだと? 馬鹿馬鹿しい、領地を失った動揺で幻でも見たに決まっている!
そもそも10年前、アールハント子爵家が最初に魔王軍を撥ね退けていれば、穢らわしい魔族どもが調子づくこともなかったのだぞ! 恥を知れ、貴族の面汚しめ!」
「くっ……!」

そうか。さっき塗り潰されてた名前は“アールハント”だった。魔王軍は北からやってきて、最初にカークの領地を襲ったんだ。カークが魔王や魔族に詳しいのも頷ける。アールハント領は魔王軍に屈して滅ぼされ、カークは貴族の地位を剥奪されることになったんだ。
でも、だからって、カークがここまで責められていい理由にはならない。こんな大軍を一つの貴族の力で抑えろだなんて無茶もいいところだし、当時のカークはまだ10歳くらいだ。オレが言われてるわけじゃないのに、あまりに理不尽な物言いにオレも気分が悪くなる。
グッと息を詰まらせて悔しげに黙るカークに顔を近づけ、さっきのガキンチョみたいなオッサン騎士がニヤニヤと意地の悪い笑みを刻む。

「それとも何か? 一夜にしてまんまと領地領民を滅ぼされた責任を誤魔化そうとでも? 跡取り息子がそのザマでは、パイク子爵の死に様もたかが知れておるな」
「ファレサ伯爵、どうか、今のお言葉を撤回して頂きたい! 我が両親は―――パイク・ユイツ・アールハントとウィノナ・ユイツ・アールハントは、押し寄せる魔王軍相手に最後の最後まで踏み止まり、私たちを逃してくれた。魔王相手に単身で挑み、誇らしい戦死を遂げました!」
「ふん。おめおめと逃げてきた者の話、果たしてどこまで信用に足るものか」

元は同じ|貴族《なかま》だったのに、どうしてここまで冷たく当たるんだ。助け合うどころかライバルを蹴落とすことしか考えてないみたいだ。コイツら、仲間意識を持ち合わせてないのか。こんなんじゃ、戦いの統制だって―――。

「大方、領民を放ったまま家財を背負って逃げおおせるところを夫婦ともに後ろからバッサリ、といったところかではないか? せっかくの剣の腕も家財で塞がっていては役に立たんだろうな。がはは―――」

ビキッと、亀裂が走るような音がカークの内側から聞こえた。
振り上げる寸前の気配を察して急いでカークの腕を掴む。今にも殴りかかるところだった拳が、オレの手の中で爆発寸前の石油タンクみたいにミシミシと軋みを上げてる。今のは、カークにとって踏み越えてはならない一線だったみたいだ。一瞬で激変したカークの迫力に気圧されてオッサン騎士が慌てて後ずさる。

「カーク!」
「……!」

鬼みたいに血走った目がオレを振り返る。肩をいきり立たせるカークに睨まれて涙目になりそうなのを我慢して説得する。

「永遠に堪えろとは言いません。ですが、今はまだその時ではありません。あなたが今為すべきことは、その拳を同族に振るうことですか? 私が言っていることがわかりますね?」

ここでカークが乱闘騒ぎを起こしたら、オレの作戦が台無しになる。

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~ Comment ~

NoTitle 

うーむ、魔王側の戦力がどの程度か、って以前に、傭兵の数に対して騎士団が少なすぎるな。指揮系統が纏まってない以上、結局各個撃破の流れを辿ると。

後、設定的に傭兵一千万は無理があるのでは? と思ったり。日本の自衛隊が十万ちょっと、国民総兵士な戦国時代でも人口三千万に対し百万より少なめですので。
皇国が、初期ローマ帝国並みの国力と人口のものがあれば別ですが。
平和な間に人口が増えたにしても、基本兵力の必要がない時代だと軍縮が進みますからなあ。
魔物が居るなら民間軍事会社的な商売が成り立つとして、それでも装備と経験が十分な人材は限られてるし、派閥もそれなりの数に上るかと。
魔王と言う脅威で団結したとしても、それだけの人数を動員するにはかなりの組織的なマニュアルが必要でしょうなあ。
勝手に動かれると、端から一気に“軍”として瓦解しますし。
要は、現段階での情報だと、一千万の戦力に説得力が足りないかな、と。

まあ、戦いは数だよ兄貴! っつっても、多勢に無勢な状態を引っ繰り返した例は幾らでもありますからなあ。日清日露戦争とか。
電撃戦は日本の御家芸。ゲリラ戦術は奥儀。元日本人な魔王様御好きそうです。
「何ぃ? 従来兵器じゃ実行不可能? んなもん新規開発すりゃいいんだよ!」と、本当に作っちゃう旧日本軍マジ素敵。
無ければ作る、正に作家の世界設定と同じ。

長々と書きましたけど、軍事にゃ素人ですので御気になさらずにw

 

むぅ。トゥにニヤニヤが止まりません。そして囲まれている事に気がつかない貴族って(汗)
言ってみれば鶴翼の陣で包囲纖滅されかかっている人類軍ってとこですか。騎士団1000人ってことは騎士一人で一万人を指揮するということ?
むう、詳しく知りたいですがどうやってトゥが論破するのか楽しみです。>映画「銀魂」みてきました。
うん、初っ端から笑いました。すげぇ、映画業界に喧嘩うってる(((゜д゜;)))

NoTitle 

>enkidさん
>名無しさん
 1000万じゃなくて10000人ですた……。桁が違いすぎて吹いた。恥ずかしい間違いですorz
 騎士団の兵力は1万と考えていました。だけど、それで妥当なのか不安です。僕も軍事や歴史にはまるでド素人なのですが、果たして大昔の西洋では国の防衛にどれほどの兵力が必要だったんでしょう? ネットでググるのですが、良いキーワードが思いつかないので参考にできるサイトが引っかかりません。勉強不足知識不足が露呈しております……(;´∀`)
 enkidさんのコメントを参考にして現代日本で考えてみると、陸上自衛隊が現在約15万人で、防衛大臣直轄の中央即応集団は4200人なのだそうです。この集団を騎士団と重ねると、さすがに数が少ないです。名ばかり騎士をかき集めてようやく一万人、ということで違和感がなくなればと悩んでいたり。

>映画銀魂
僕も見て来ましたwww完全に映画泥棒です本当にありがとうございましたwwwww
銀魂らしい下品でメタなギャグに観客席は笑いが沸き起こってましたwww銀魂の最後を飾るにふさわしい、いろいろな意味で伝説の映画でしたねwwwww

銀魂 

>銀魂
ですよね~wwww。
あそこまで下品で逆に清々しいわww。

>軍隊
まあ、あれですよ。あれ。「細けぇことはいいんだよ!!」でいい気もします(笑)
でもそれじゃああんまりなので。
全人口の何%にするか決めたほうが分かりやすいのではないでしょうか?
現代日本のように飽食で食品が有り余っていて、人口が多いなら~万人。江戸時代のように、平和である程度収まっているなら、農民、商人の割合から武士は何割。
つまり、トゥからすれば。全人口に比べて、騎士団や傭兵団が多すぎなら、それは農民や貧民を強引に徴兵したということであり、貴族の大隊長の無能さが解るみたいな。そんな分かりやすい展開なら、私のような軍隊に対して理解不足な者でも分かりやすい話になるかもと愚考致します。
なんか偉そうに上から目線で申し訳ありません。m(_ _)m
次回も楽しみにしております。

NoTitle 

1000万とか兵士が畑でとれるソ連レベルwww
さすがにあり得ないですよ

しかしトゥはまだまだ色気より食い気って感じですね
これが勇者にメロメロになるのか…胸が熱くなるな!

NoTitle 

一万で大軍か……日本の戦国時代や中世ヨーロッパあたりの小競り合い程度なら十分に大きな兵数ですが、中世西洋風のこの世界で国を守るには少々心もとない気がします。せめて国防するなら一万五千は欲しいかなぁ……
まぁ三国志から入ったので、少々数に対する感覚がマヒしてるのですが……w
あと電撃戦はドイツが最初だった気が。後半は勢いが落ちましたが

『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』という言葉のうち、まだ『己』の部分しか分からないので何とも言えないのですが、敗走を続けている現状、『攻撃三倍の法則』から、『敵』の兵力は二倍から三倍くらいは軽くあるはず。敵の兵士の戦闘力は不明ですが、人間側の二倍の力を持っているとすれば、現状ではざっと一万から二万の兵数で攻撃を行っていることになりますね。兵力を分散させて防衛しているのなら、もっと数は少なくない理想ですが。
しかし、根本的にセシアーヌ国の国土がどれだけ広いのか、どのような地形を有しているのかが分かりません。どこにどんなふうに侵攻をされていて、どういうふうに兵力を布陣させているのか。海に囲まれているのか、険しい山々が連なる山脈を有しているのか。国土についての戦略的な説明が無いと、兵力が適切な量なのか把握しかねます……昔の戦で正確な測量で作られた地図が重要な役割を担っていたのも、そのためです。
地形の話は書いてないだけかもしれませんが、『こちらの世界のことを何も知らない救世主』には、まずいの一番に説明すべき事項だと思います。先に兵力の話をされても、平原で戦をする場合、籠城戦を行う場合、攻勢に出る場合で話が変わってきますので。
まぁそこをついて鼻っ柱をへし折ってやるのもいいかもしれませんが。地図があればなぁ……(チラッチラッ

『大隊長』殿やいけ好かない軍師殿が何を馬鹿にしているのかは分かりませんが、それが兵力を分散させて広く包囲陣を展開し、真綿で首を絞めるようにじわじわと侵略を行っている、という魔物側の戦略なら、それはまだ楽観的すぎる意見でしょう。
現に軍師殿が『現状でわかっている』とおっしゃったように、人間側は敵の正面兵力しか把握していない(と思われる)。包囲の一点に兵力を集中して突破すれば、風船を割るように戦線を崩し、魔物たちを挟撃できると考えているのならば、少々思慮が足りない。
後詰めの兵力がいない、という保証はどこにあるのか。戦線を突破したとしても、その先にさらに強力な軍が待ち構えていたとしたら。
戦線に明けた風穴を埋められてしまえば、今度は人間が挟み撃ちを受ける番です。風穴を維持できたとしても、その戦線が後退したというだけ。他の場所にに風穴を開けようにも、今の戦線は維持しなきゃならないし突破する戦力も揃えなきゃならないしで、兵力が不足することは目に見えてます。
目に見えるだけの兵力を相手の実力とするのは危険な行為。思ったよりもヤバい状況ですね、このセシアーヌ国。

まぁ長々と話をしましたが、言ってしまえば『架空戦記にする気が無ければ、そんな気にするほどの話じゃない』ということです。自分は軍事の観点から兵力の話やらをしましたが、もちろん国の人口とか生産力とかの話も絡んできます。ひじょーにめんどくさい分野の話になってしまいます。
とゆーかニワカの自分の言葉は胡散臭さ満点、誤った知識もボコボコ入ってると思いますので、あんまり信用なさらず。どんな物事も、主様の納得するような流れで書いていけばよろしいかと思います。

長々と訳の分からん話を失礼しました。執筆、頑張ってください!

NoTitle 

あ、書いてる間に修正されてた。といってもいうことは変わらず敵の兵力が分かんないとどうしようもないってことですねー。
重要なのは『攻撃三倍の法則』というもの。『防御を固めた敵を制圧するには、その三倍の兵力が必要になる』という過去の戦訓から編み出された言葉です。
魔物の戦闘力が人間とどれくらいの差があるか、という点も気になります。上記の法則も、魔物の戦闘力が人間の三倍もあると国の総戦力と同数の戦力で攻勢をかけることが出来てしまう事になってしまうのですから。

反撃する気なのかー……果てしなく不安な陣容でもあるなぁ……

NoTitle 

>名無しさん
農民や貧民を徴兵した、というアイディアはなかったです! なるほど、それなら「ダメだコイツラ早く何とかしないと」って流れに持って行きやすいですね!! ありがとうございます!!
ぱっつぁん! メガネだけ元の時代に戻ったけど最後どうなったのwwwww

> さん
我がソ連では兵士はポケットに入れて叩くと二人になるのだ。
それはおいておいて、1000万は誤字でした。ホントは10000人と書きたかったのです。その人数も昨夜考えなおしました。中世ヨーロッパって、戦争に騎兵が何人参加したとかあんまり資料残ってないんですね。単純に僕が見つけられないだけな気もしますが。
仰る通り、数々のイベントを経てトゥは段々、自分の性を意識し始めたり、カークを意識し始めたりします。夫婦みたいな暮らしをしてたら「こういうのも悪くないかも」とか思い始めたり、宿に泊まったら両隣から激しい喘ぎ声が聞こえて気まずい夜を過ごしたり。やべえ(・∀・)ニヤニヤが止まんねえ。画面に映ってるキモい顔は誰だ!

>イザナギさん
さすがイザナギさんやでぇ……。地形! そう、地形! それが~いちばん大事~!!
まったく考えてなかったです……。その説明を入れないといけませんね!!
戦力差や、戦略戦術のお話、めっちゃ参考になります!! イザナギさんがいてくれてよかった!! おかげさまで、だいぶリアリティが増しそうです!! ありがてえ!!!

まったく浅はかな質問ですが… 

この世界の戦の作法とか武器の材質とか種類とか流派とかなんですかね?特に消耗の激しい武器とか壊れやすい金属とか使ってる鎧とか知っとくと、殺りやすいかなと…ふと思いますた☆医術とか幕末の外科医くらいのレベルなんだろうか?死生観は我々と大差なさそう。

NoTitle 

まぁ自分の話なんて他人の又聞きを自分の知識のようにひけらかしてるだけですしおすし、専門家のように詳しいわけでもありませんので。しかも夜に書いたから眠気で文がおかしいorz
まぁとにかく、戦は相手を侮った方が負けです。希望的観測を『実力』と勘違いしてるような奴ほど負けるのは歴史が証明してきました。つーか負けてる状況なのに余裕なんぞなかろうもんだろうが、と突っ込みたくなりますね、こいつらに
『一番うまくいった時の方法』を考えるだけならだれもが簡単にできます。重要なのは『一番悪い方向』を考えること
希望的観測だけなら何とでも言えるのです。『うまくいかなかったとき』を考えて、それに対する策も練る
ただ、マイナス方向だけを考える事の方が良いというわけでもありません。人間は人の意見について、発展させた意見を述べるのは苦手ですが、否定することは得意なのです。誰かが楽観的な意見を元に作り上げた作戦の穴を一つ一つ紡いでその穴を埋めていき、盤石な方策を練るのが『軍議』というもの。誰かの意見に顔色を見ながら右に倣えするのは、言ってしまえばただの作戦の発表会です
たぶん『軍師』とか『参謀』とかいう人たちは、誰よりもポジティブで誰よりもネガティブな人たちなのかもしれません。もしくはその役割を複数人で分け合っているのかも

あ、そーだ。先日日曜日、映画見てきましたー。一人で(´・ω・`)
日本の航空分野の第一人者でもある堀越二郎さんの映画、『風たちぬ』です
感想としては、『ヒコーキそんなに出てこなかったなぁ(´・ω・`) その割には数少ない場面で専門用語使うから、見てる人のほとんどを置いてきぼりにするなぁ。ドイツ語とかも訳わからんし。字幕つけてよぉ……』と思いつつ『美人の奥さんとイチャコラしやがって爆発しろ』と呪い怒りに一人プルプル震え、『うーんシリアスな場面で素人演技が浮いてるなぁ』と残念に思いながらも、総評すればやっぱり『いい映画だったなぁ』となりました
情熱を持つことの素晴らしさ、生きることの尊さ、愛する人への心からの愛。なんかどこか、『君に欠けてるものはこれなんだよ』と優しく叱られた感じがします
『生きねば』。まさに生きねば。今という時間はあっという間に過ぎ去って未来がやってきます。今できることはすぐに出来なくなってしまう。だから、生きて今できることをやってしまわねば
才能の賞味期限は10年なんだそうです。その十年の間に、どれだけ何を為せるのか
ユーミンの「ひこうき雲」も良い歌です。作品と良くマッチしてました
自分は空に憧れました。その憧れでこの世界へと飛び込んだのです。だったらその憧れを大切にしなければ。それが自分を高く舞い上げてくれる翼となってくれるはずなのですから

今度は主様が見て来たワイルド・スピードを見て来ようかと思いましたが、PS3を買ってお金がががが……
でも映画って良いですね。一人(´・ω・`)でも楽しめました。ええ、寂しくなんかないですよ(´・ω・`)
今度も気が向いたら映画館に行って、気になった映画を見ようかなーと思います。ラストエンペラーとか面白そうだなぁ……

 

はじめまして。何時もヒャーリスを楽しみに待ってるルクレールです。 しかし、エルフになっても楽しい展開になってきてわくわくですわ。
しかし……見事にお花畑な上層部ですな~~。大軍を動員して決戦を挑んでも地力が違えば別動に帝都を潰されたり、潜入型の魔物とかに後方撹乱とかされんだろうし、史上最大ってもそれはそれだけの大軍の運用経験が無いって事だから意志疎通、士気の違い、最大なのは兵站が持つのつてのかのが浮かんで来ますが、次話がどうなるのか楽しみです。

ちと思い付いたことを 

人類サイド余裕の理由を少し考えてみました。

・平原の中央の首都から運河が広がっており(無論先代エルフの知恵)物資や軍隊の移動、情報の伝達が早くできる。
さらに、橋を上げたり運河に関を降ろして敵の通過を妨害できる。
いざとなったら首都全体を運河によって籠城状態にして、夜間に運河を使って移動してのゲリラ戦を仕掛けられる。

・火薬の製法が王家の秘事として伝えられている(これも先代エルフの知恵、人糞や尿で硝石を作る、秘密を守るため硫黄の鉱山は使わない)、秘密兵器として大砲がありこれが過信の元になっている。

思い付きレベルなので御笑読いただければ幸いです。

NoTitle 

>件さん
体調はどうですか? お大事に(´;ω;`)
戦の作法が、「劣化」というか「未熟」というか、地球のそれと比べれかなり稚拙なまま停滞しているということにしようかと思っています。だから、地球流の戦争の前にはなすすべがないし、そもそも理解が出来ない・・・・・ということにすると、面白いのではないかと考えています。
死生観は特に考えていなかったです(;´Д`) 中世の人たちの死生観ってどうだったんでしょうね。「武士道とは死ぬことと見つけたり」とかは聞くけど、騎士道ってどうなんでしょう……?

>イザナギさん
誰からの又聞きでも、僕にとってはとても貴重なご意見です。すごく参考になります。見える敵だけが「すべての敵」だと思い込み、相手も自分たちと同じレベル、もしくは自分たち以下の烏合の衆だと過小評価する。軍議とは名ばかりのただのオベッカ大会。これらのイザナギさんから頂いた参考意見を取り入れさせていただきたいと思います。ありがとうございます!
僕は常に映画は一人で見てますよ!ナカーマ!
風立ちぬ、評価が分かれてるみたいですね。今までとは違った「大人向けジブリ」、僕も今週末に見てみるつもりです。楽しみ半分、不安半分って感じです。紅の豚みたいな映画なのかと勝手に思い込んでましたが、どうやらまったく違う様子ですし。
才能の賞味期限は10年。重い言葉です。小説を書き始めてカレコレ7~8年。ぼ、僕に小説の才能があれば、今頃は……(`;ω;´)チクショウ

NoTitle 

>ルクレールさん
細々と書いている三次創作を読んでくれている方がいて、僕はすこぶる嬉しいです!! 「ブリジットという名の少女」好きの同士よ、共に酒を酌み交わそう!! ブリジットの魅力について語り合おう!!

>大軍の運用経験が無いって事だから意志疎通、士気の違い、最大なのは兵站が持つの

むむむっ!? ビビッとくる言い回しです!! 僕が漠然と考えていた人類側の問題を的確に表してくださっています!! 参考にさせていただきまっせ!!


>隆之介さん
いつもコメントどうもです! あなたのアイディアにいつも助けられています!! 思いつきだからこそ、そこには僕がどんなに悩んでも決してたどり着けないまったく別の発想があります!! これからもよろしくお願いします!!m(_ _)m

 

うーん、もう一度読んでみたが、人類軍が25000に対し魔王軍は少なくとも250000か………。三軍に分けても一軍は80000、しかし正面は厚いはずだから100000位か……それに対して練度装備の違う人類軍25000、しかも帝都防衛の為に多分5000は着くはずだから20000それで100000は………。ランチェスターの第二法則を使えば……20000も倒さないうちに殲滅されるのが目に浮かぶ。やはり、軍は陽動で最精鋭の挺身隊で魔王を潰すしか勝利は無いな……。そうなるといかに決戦思考の軍を抑えつつ、最精鋭の人材を発掘し仲間にして、乾坤一擲の大博打を打てるかが今後の問題な気がしますね。

NoTitle 

>ルクレールさん
ランチタイムの法則がわからないのでググってきますた。

「戦闘力=武器効率*兵力数2(二乗)
広域戦、遠隔戦、確率戦(集団対集団の戦い)の場合に当てはまる。これを「集中効果の法則」「二乗の法則」とも呼ぶ。集団戦、広域戦の場合、兵力数が多い方が圧倒的に有利であり、弱者はいくら頑張っても勝つことはできないということ」

戦争にもちゃんと法則があるのか……。初めて知りました! いくら頑張っても勝てない、ということをいかに主人公がうまく説明できるか、というか作者である僕がいかにうまく描写できるかにかかってくるわけですね……(;´∀`)
ルクレールさん、助けてくだしあ><;;

 

うぬぬ…………、閃いたのが、クアムが勇者相応しいならカークに勝る所を見せなさいとトゥが言って、一騎討ちならカークに負けるのでクアムは持っている力、軍を動員して何処かの要所、例えば鉄鉱脈の有るコサトカとかの奪還をする事によりカークより勝ってる事を証明しようとする。
勿論、ある意味私戦なので軍の全てで無くクアム配下の一部のみで実行しようとする。

しかし、敵は強大で軍は壊滅寸前になるがトゥとカークの活躍で危機を乗り切り出来ればコサトカを奪還する。 トゥとカークの力は認められ、クアムは鼻をへし折られ、また魔王軍の強さが判るってのはどうですか?

NoTitle 

>ルクレールさん
>勇者に相応しいならカークに勝る所を見せなさい

ビビビッと来ました! これからの展開にとても参考になりました!! ありがとうございます!!!
なんとか今週中には更新して、次の作品に取り掛かりたいものですが……が、がんばろう(;´∀`)

 

仕事のシフトキツ過ぎで今までこのブログみられなかったぜ……

こんな腑抜けた騎士より普段から警察組織と戦ってる盗賊やヤクザ者の方がまだ強いんじゃねぇの?
こんだけ国が腐敗してたら義賊とか居そうだしそいつら仲間にしようぜ!

いっきに 

いっきに面白くなってまいりました(^O^)
旧日本軍や旧中国軍もそうでしたが、トップの頭というのは常に駄目な気がががが(汗)
イタリア軍とかのダメさ加減は逆に清々しくて好きなんですがね。
部隊長が決戦前に「こんな所にはいれない。俺には待っているオンナがいるんだ(^^ゞ」「お供します総隊長(→o←)ゞ」
その部隊長を見習い、部隊全員逃げ出してドイツ軍が孤軍奮闘したとか。味方のドイツ軍の補給鑑を牛の生肉で撃破したとか。お馬鹿エピソードタップリなんですよね。
騎士隊長もそのぐらいぶっ飛んでいればまだ可愛げがあるのだが(汗)
この後どうなるのか楽しみにしてます。

 

ですよね~~。
やはり平和に浸かりっぱなしは毒ですな、争いが無いと技術や戦術は進化しませんし、精強な兵や総動員可能な国家体制、そして本土防衛計画が無いですからね。
有れば、要所要所に要塞や駐屯地、穀物倉庫に武器工廠、予備役に準国軍、アメリカでいう州兵みたいなのとかが整備されませんからね~~。
とりあえず、絶望的ですね。
うーん、やはり馬鹿な上層部を軍の一部を犠牲に現実直視させるしか方法がない気がしてならないです。
………究極はクーデターです。

NoTitle 

>さんさん
お忙しいのに見に来てくれるとは、ありがたやありがたや! 最近はどこもかしこも仕事が忙しいみたいですね。仕事をすることがないよりはいいことなんでしょうが。暇を持て余した時くらいに見に来てくださるだけで僕は嬉しいです!
 
>盗賊
実は盗賊にトゥが攫われるイベントを考えております。まだまだフワッとした曖昧なアイディアですが、そいつらを丸め込んで仲間にするというのも一計ですね!


>名無しさん
>味方のドイツ軍の補給鑑を牛の生肉で撃破したとか
イタリア人のとんでもっぷりは世界一www
「テルマエ・ロマエ」の原作者のヤマザキ・マリさんはイタリア人の旦那さんとイタリア暮らしをしてたらしいのですが、イタリア人はやっぱりイタリア人なんだそうな。ムカツクけど憎めない、そんな面白い人たちらしいです。ドイツ人からの評判は悪いらしいですが。ニュースのインタビューでも「イタリア人は働け」って言ってましたし。ああ、「ガンスリンガー・ガール」のようなシリアスでかっこいいイタリア人はいないものかorz


>ルクレールさん
この作品では、騎士団にはそのままでいてもらうという作戦をとろうかと考えてます。クアムには“憎めないキャラ”という印象は一切付け加えずに、救いようのない、人間の怠惰の象徴というか、主人公たちの邪魔者になってもらおうかと。最後には華々しく、情けな~い最期を遂げてもらい、人間が怠惰を捨て去るシーンに使おうかと。
トゥの作戦としては、このまま騎士団には敵の大部分を引きつけてもらう役割を担ってもらい、それによって空いた隙間を通ってノーダメージのまま魔王に肉薄するという方法を考えてるつもりです。
クアムを失って一度瓦解した騎士団は、マトモな人間によって再編されてマトモな軍隊になる、ということにしようかな?と。それはまだ曖昧ですが。
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