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『ウルヴァリン SAMURAI』の感想とHer name is Charis!!の試作

 ←エルフになって~ 第十三話  試作品 →ちょっとした試作品。続きを書くかは未定
 ワタクシ実家暮らしなもんで、たまに家事も手伝っております。たまに掃除したり、洗濯したり、ゴミ捨てしたり、食器洗ったり。今日は食器を洗っておったんですが、ふと脚にカサカサと何やら変な感じが。見下ろしてみると、茶色いあのイヤ~な虫が……!! それからもう寒気が止まらないままに迎撃ですよ。最終的にマジックリンをぶっかけてやっつけました。思い出すだけで鳥肌が……。ひいい(;´Д`)



 さて、それはともかく、映画『ウルヴァリン SAMURAI』を観て来ますた。うーむ。予想以上に日本っぽかったけど、何というか、大味というか、大雑把というか、「あー外人さんってこう思ってんのかね」と頷く感じの日本が舞台でした。それほど違和感がなくて安心しましたが、それだけに、見慣れてる日常の風景にふつーにウルヴァリンが歩いているという光景が違和感ありまくりで目眩が……! いやいや、ストーリーも二転三転して面白かったし、戦闘シーンはカッコイイんですが、当の日本人からしてみたらやっぱりどこか「コレジャナイ」感が拭えませんでした。外人さんは「オーウ!ニンジャウォリアー!」って喜びそうだけど。今回、マリコ役をした女優のTAOさんは今回が初めての女優のお仕事だったそうですが、ちっとも下手ではなかったです。着物が似合う美人さんでした。全体としてはちゃんと一本の線が通ってて面白かったですし、ピンチに陥るウルヴァリンは新鮮でハラハラドキドキしたし、新幹線の戦闘シーンとか今まで見たこともない戦い方だったし、最後のエンディング・クレジットの合間に出てきた驚きの人物の復活にはあっとビックリさせられました。大ヒット記録更新中も頷ける出来栄えです。
 まあ、それはともかくとして………ユキオ役の女優さん、何というか、ちょっと、その、お顔が……。人の顔の造形をとやかく言えるほど立派な容姿ではないんですが……。外人さんにはウケが良いのかもね。






で、ヒャーリスの試作をば。せっかく二連休もらえたのに完成させられなかった。予想以上に苦労してる。厳つい男たちばっかりのシーンだとむさ苦しくてどうにもモチベーションが上がらないのです。可愛いTS娘とかシリアスをぶっ壊すおバカキャラを早く書きたい。でも自分が楽しんでないと読んでくれている人も楽しめないから、なるべく楽しんで書けるようにしたい。





“眠り姫”―――。
知らぬ者などいない、古い御伽話のヒロイン。呪いで100年の眠りに堕とされた不遇のお姫様。イバラに覆われた城で王子様の救いを待ち続ける、可哀想な乙女。

だが、この施設でそうあだ名された少女は、誰からもその覚醒を望まれていなかった。長い黒髪と包帯だらけの身体を簡素なベッドに横たわらせ、点滴と電極という名のイバラを巻きつけられたその少女は、大人たちの呪いに穢され、恐ろしい化け物に変えられていたからだ。
大人たちは恐れた。その少女が目覚めた時、果たして彼女にどう向き合えばいいのか。「どうして私を化け物にしたの」と真っ白に塗り固められた瞳に問われた時、きっと誰もが自分の良心に殺される。復讐心や出世欲といった独り善がりの理由でこの実験に参加した人間ほど、自らの“罪”を突きつけられれば正気でいられる自信はなかった。だから、皆少女の覚醒を望まなかった。表面上は計画の成功を歌いながら、その薄皮一枚隔てた下では「起きてくれるな」と願っていた。
このまま目を覚ますことなく、上層部が義体の研究を断念して命を繋ぐ点滴と電極が切られるその日まで、自分の境遇を知る由もなくただ眠り続けてくれればいい。せめて幸せな夢を見ながら、汚い大人の世界に産まれ落ちることなく最期を迎えてほしい。誰もがそう想っていた。

その願いを込めて、いつしか少女は“眠り姫”と名付けられた。誰にも目覚めを望まれない眠り姫。起きない方がずっと幸せな眠り姫。黒目黒髪の見目麗しい、眠り姫。




「ぅうおっしゃああああ!!! やったるでええええええええ!!! 待ってろよブリジットぉおおおおおおおお!!!」




誰が予想できたのか。可哀想な眠り姫が、いつの間にか“長靴をはいた猫”と入れ替わっていたことに。ケラケラと好き勝手に振る舞っているように見えて、抜け目なく周囲の人々に幸せを与える、小生意気だけどなぜか憎めない賢し猫。
猫を目覚めさせた王子様は、その正体に大いに面食らいながらも彼女に相応しい名前を与えることにした。
『Heuristik(ヒャリスティクス)』―――試行錯誤を繰り返してやがて答えにたどり着く―――という心理学用語から着想を得た名前。


その名を、『ヒャーリス』という。 Ihr Name ist Charis.





MEMORY OF GORILLA




「待ちかねたぞ、ゲルマンの犬ども」


コメカミに銃口を突きつけられているにも関わらず、その男は大らかに歓迎の言葉を“ドイツ語”で謳ってみせた。
フル装備の男たちが突然窓を割って突入してきたら、普通の人間は驚愕で動けなくなる。しかも今回は、二つに分かれても時間差攻撃だ。この作戦は、2隊が挟撃することであたかも規模の大きな部隊であるかのように見せかけ、さらに相手の判断力を麻痺させる効果もある。襲撃された人間は、戦闘訓練を受けた人間ほど迎撃よりも逃走を真っ先に考える。退路に走ることで頭をいっぱいにさせておいて、一瞬遅れてその退路を完全に絶てば、どんなに冷静な兵士でも一時的なパニック状態に陥る。室内空間の制圧に適したオーソドックスな手法だ。テロリスト・キャンプで軍人気取りになったネオ・ナチの雑魚どもも、宗教狂いのイラクの過激派どもも、極限まで訓練された精鋭の時間差強襲に動転し、ろくな抵抗もできずに拘束・射殺されていった。

だというのに、この男は―――ジャコモ・ダンテは、今、完璧な余裕を纏って俺たちを睥睨していやがる。

「ふ、副隊長、コイツ今ドイツ語を……!」
「落ち着け」

部下が漏らした掠れ声を細めた声で制する。俺自身が驚愕に顔を引きつらせているのに、その制止に効果があるのかは怪しかったが。
俺たちはリヒャルドの命令に従って、突入してから一切のドイツ語を発していない。顔だってバラクラバで覆い隠していて見えない。機密レベルが高い作戦故に、所属を示す腕章の類は最初から一切身につけていないし、携行している武器の類だって世界中の軍隊で採用されているものだ。ジャコモの側頭部に押し付けているグロックに至っては、メーカーはこの国(オーストリア)だ。どれを見たって、俺たちがドイツ人だと見抜ける理由にはならない。
ハッタリだ、と鋼鉄の意思で動揺を抑えつける。俺たちの混乱を誘うために必死こいたジャコモ・ダンテが絞り出した苦し紛れの誤魔化しに過ぎない。そんなくだらない嘘に天下のBNDが振り回されてどうする。ジャコモ・ダンテの正体ここに見たり、だ。危機的状況に陥る度に口から出任せで生き延びて、いつの間にか噂の影だけが本人の何倍にも膨れ上がっただけの小物に過ぎない。
ガツっと、こめかみにグロックを一際強く良く押し当て、引き金を軽く絞る。こうやって「無駄口をやめろ」と行動で示せば、それまで息巻いていたテロリストも小さく息を飲んで押し黙る。殺そうとしてるのは俺たちで、今にも殺されようとしてるのはジャコモの方だ。単純に考えれば、どちらが捕食者の側から一目瞭然だ。俺たちがビビる理由はどこにもない。
腹に力を込めて一歩踏み込み、迷いを殺す。こんな上っ面だけのテロリスト、銃把(グリップ)でガツンと一発ぶん殴ってやれば途端に泣き喚いてひれ伏すに違いない。本当にやってやろうかと凄みを効かせて厳しい眼差しを向ける俺に、ジャコモが海中の鮫のようなゆっくりと不気味な動きで正眼を傾ける。ドロドロとマグマのように煮え滾る眼光と間近で視線が交差する。

「いいや、違うな、“BND(ドイツ陸軍特殊戦団)”ども。俺が殺す側で、お前たちが殺される側だ」
「なッ!?」
「なに……!?」

流暢な―――生まれも育ちもドイツの俺ですら驚くほどに自然なドイツ語で、こいつは昏く嘲笑った。俺たちがドイツ人だと知っているどころか所属まで見抜きやがった。コイツは本当に、俺たち(BND)が来ることを最初から予見していたというのか。こいつは他人の心を読み取れるとでも言うのか。
今度こそ動揺を隠し通せず、我知らず摺り足で後退する。緊張に張り詰めた筋肉が勝手に俺の身体を仰け反らせたのだ。見れば、リヒャルドも驚愕を殺しきれずに両肩を跳ね上げていた。隊長の心の乱れが波紋のように伝播して背後の部下たちまでもがギクリと身体を硬直させる。
目を見開いて言葉を失った俺の目をジャコモのギラつく目が覗きこむ。

「下手に動くなよ、BNDの精鋭諸君。動けば君等の命も、彼らの命もない。もちろん、この子どもの命も」
「て、てめえ、いったい、」

 俺が絞り出した疑問に答えず、ジャコモは子どもの頭を撫でながらくつくつと喉を鳴らす。拳銃を突きつけているのは此方側なのに、追い詰めているという確信が得られない。むしろ、逆に追い詰められている恐怖感を感じる。武器も手にしていないジャコモこそが俺たちの額に見えない銃口を突きつけているような感覚に襲われる。ありえない異常事態に、鍛え上げた第六感がざわざわと危機を訴える。「周りをよく見ろ」と金切り声で訴えている。

「どうなってやがる……」

第六感に従って部屋を見渡してみる。ありえないのは、ジャコモの態度だけじゃない。―――ジャコモとついさっきまで談笑をしている“ように見えていた”家族が、身動ぎ一つしていない。
一般人なら、黒尽くめの武装集団に襲撃を受ければ恐怖で動転する。立ち上がるなり、地面に伏せるなり、腰を抜かすなり、何かしらの行動に出るはずだ。だが、この若い夫婦は顔面を恐怖に凍りつかせたまま椅子から立ち上がろうとすらしない。滴り落ちる多量の汗が床に塩の水たまりを作っている。唯一、ジャコモの腕の中に抱かれる4~5歳の男の子だけが襲撃に驚いてポカンと口を開けて放心している。額に玉のような汗を浮かべながら身体を椅子に貼り付けた両親の目線だけが、心配そうに我が子の動きを追っている。

「た、隊長っ! つ、机の下をっ!!」
「こ、これは!? 副隊長、気をつけろ!!」
「お、おい、こいつは、まさか……!!」

 銃口を油断なく突きつけながら慌てて視線を下げる。ジャコモと夫婦が腰掛ける長机の底一面に、おびただしい数の何かがくっついていた。木製の洒落た机には到底似合わない無骨な四角い箱が隙間なく備え付けられている。無色無地の味気ない拳大の箱は軍人だからこそ見覚えがありすぎて、血管を流れる血が全て冷水と入れ替わったような怖気が全身を走り狂う。
それらから伸びたコードは、机の脚を沿うようにして巧妙に隠されたまま夫婦が座る椅子の下部まで繋がっていた。歩兵科時代に爆発物の専門課程をクリアしたテオドール二等軍曹がその構造を確かめて「うっ!?」と低く呻き、バラクラバを介してもわかるほどの怒りの形相でジャコモをギッと睨みつける。

「どうした、テオドール! こいつはなんだ!?」
「隊長さん方、こいつはブービートラップです! この夫婦の椅子には圧力センサーが仕掛けてある! 繋がってんのは……この芳香剤に似た臭い……間違いなくジニトロトルエンですよ!」
「それでは、これが全部―――C4(プラスチック爆弾)ということか!?」

 全員の精神が大きく揺さぶられ、平静の箍が外れた。抑えきれなかった呻き声が幾つも漏れ出て、それに合わせて銃口が激しくブレる。俺たちはまるで襲撃を受けた雑魚のように、完全に動揺してしまっていた。
 ジャコモに抱かれた子ども、動きたくとも動けない夫婦、彼らの動きを見張る圧力センサー、隠されたC4―――。この時点になってようやく、俺たちは悪魔(ジャコモ)が仕掛けた邪悪な罠に気付いてしまった。

「良いところまで当てているが、残念ながらC4ではない。各組織の余り物のC2とC3の寄せ集めだ。C4を買う金を出せるほど今回の雇い主は懐に余裕がなくてな。それでも、お前たちを皆殺しにするには十分だ」

 この状況全てが―――俺たち(BND)を誘い込み、全滅させるための罠だったのだ。

「お前たちはイラクで殺し過ぎた。ネオ・ナチを追い込み過ぎた。なけなしの金を振り絞って俺を雇わないといけないくらいに、な」
「くっ……!?」

 キョロキョロと不思議そうに首を回す子どもを抱いたまま、ジャコモがすっくと立ち上がる。夫婦が短く悲鳴をあげたが、それ以上動けなかった。おそらくは椅子から立ち上がれば爆弾のスイッチが入ると教えられているのだろう。
トラップが一般人に仕掛けられ、その威力が家を吹っ飛ばせるほどのものだと知ってしまった今、俺が突きつける銃はただの飾りにすぎない。ジャコモは俺が撃てないことを知っている。こうなってしまっては誰もこいつに手出しできない。もしもこいつを撃った瞬間に爆弾のスイッチを押されたら、俺たちも、一般人の親子も、全員が跡形もなく吹き飛ぶからだ。

最初から罠だった。ジャコモがここに潜んでいるという情報も、最初の家が無人だったのも、わざわざ外から発見されやすい窓辺に座っていたのも、子どもを抱くことで狙撃を躊躇わせて突入という選択肢を与えたのも、全てコイツが用意したお膳立てだったのだ。こいつはわざと自分が狙われるような情報を流し、どこかから俺たちBNDが襲撃するという情報を盗み出し、手ぐすね引いてここで待ち構えていたのだ。

「全員、武器を床に置け。腕を頭の上で交差させろ。そのまま壁に背中をつけろ」

コイツの手の平の上でいいように踊らされていたことに、怒りで身体を引き裂かれそうな激痛を覚える。少なくとも俺がリヒャルドに突入を勧めなければ、この汚い手の平から脱することは出来たのだ。こうなった大きな原因は間違いなくこの無様な俺にある。

「……全員、言う通りにするんだ」

リヒャルドが力なく命じる。隊長の命令で、隊員たちが次々と己の牙や爪を捨てていく。眼前でジャコモにフンと嘲笑われ、神経がブチブチと千切れる音を立てる。

「この、卑怯者め……! てめえこそ、テロリストの雇われ犬じゃねえか! 稀代のテロリスト様も成り下がったもんだな!?」
「俺は“雇われてやった”だけだ。闘争の引き金を引くには金がかかる。人間はどうしても一歩を踏み出すのに躊躇する生き物だからな。背を押すのも大変だ。高い買い物をするために汗を流して働くのは当然のことだ」
「一端の口効いてんじゃねえぞ、クソッタレの気狂い野郎! どう言い繕ったって、しょせんテメェはテロリストの使いっ走りか捨て駒に過ぎねえんだよ!!」
「よせ、副隊長! 刺激するな!」

リヒャルドの厳しい声も鼓膜より奥に入ってはこなかった。額をぶつける勢いで息巻く俺を真正面から見据えたジャコモが再び嗤う。俺の罵倒を意にも介していないようだ。自分はニンゲンを達観したと心底思い込んでいるような、ナニカ違うものが見えているかのような、高みから下々を見下ろす“先導者”の顔だ。

「何をするにも飼い主に許可を求め、結局その飼い主に裏切られて死ぬことになるお前たちが、どうして臆面もなくそんな台詞を言えたものか。闘争の本質に近い素質を持ちながら盲信という首輪で自分を縛り付け、己の首を締め殺す哀れな犬だよ、お前たちは」
「……!?」

 「実に惜しい」と呟くジャコモの台詞は、何か確信に迫るような内容だった。だが、極度の緊張状態に陥った俺たちでは到底理解に及ばない。理解できるのは、この隊でもっとも冷静沈着で優れた士官だけだ。

「―――そうか、情報はNATOから漏れたのか」

 静かに放たれたリヒャルドの核心を突く台詞に、ジャコモが「ほう」と頷く。リヒャルドなら、この絶体絶命の状況においても冷静な思考を行えるに違いない。何か打開策を見出すのも、きっとこの男にしか出来ない。その場の全員の期待を背中に受けながら、リヒャルドがジャコモと対峙する。

「少しは賢しい犬が紛れているな。お前が隊長か」
「貴様に褒められてもちっとも嬉しくない。お前の協力者はNATOに―――米軍に、しかも在欧米軍ではなくペンタゴン(米軍本部)にいるな、クソッタレのジャコモ・ダンテ?」
「……賢しいな。ターリバーンの奴らが焦るのも頷ける」
「簡単なことだ。ドイツが軍隊を動かすには、お前が言うところの“飼い主”、つまりNATO(北大西洋条約機構)の許可がいる。突っ込んで言ってしまえば、NATO主導国のアメリカの許可だ。今回の極秘作戦はNATOを経由せずに直接ペンタゴンに話を通した。ドイツとペンタゴンは極秘の直通回線で繋がれ、如何なる傍受も通用しないよう隔離されている。だが、話を通した先のペンタゴンにスパイがいれば意味が無い。お前のように“闘争を求める”バカ野郎がいてしまえば情報は筒抜けにされてしまう。例えば、“引退後に軍需企業の支援で選挙に打って出る予定の米軍高官”とか、な」

 頭の回転が鈍い俺にもようやくわかってきた。ジャコモに情報を売り渡した裏切り者の正体が見えてきた。
ジャコモの切れ味の鋭い視線がさらに鋭く細められる。

「馬鹿者であることは俺も同意しよう。奴らが望む闘争とは、兵器を売り込むための適度な緊張状態に過ぎない。つまらん紛い物だ。真の闘争―――ヒトとヒトが抜身の刃となってぶつかり合い、殺し合う世界でしか、ヒトがその本質を剥き出しにして生来の輝きを放つことは無い。今回は互いに利用できると踏んだから利用してやった。それだけだ」

 さもくだらなそうに言い捨てる様子に薄ら寒さを感じてゾッとする。こいつは本気で戦争を望んでいる。国と国と、軍人と軍人とではなく、世界中の個人同士が血を流しあって殺し合うことを望んでいる。それこそが正しい世界だと信じこんで、それを実行するだけの頭脳を、力を、コネクションを、狂気を備えてしまっている。

 “コイツは、ここで殺さなくてはならない! こんな危険な奴を野に放ってはならない!例え自らの命と刺し違えてでも殺さなくてはならない!”

今この瞬間、BNDの隊員全員がそう決意した。ギリリとグリップを握る手が強くなる。何時でも奴の命を絶つ準備は出来ている。そして、全員の視線がジャコモの腕の中に―――幼い少年に集まった。少年は、自分に集中する視線の意味を理解できずに無垢な顔を傾げている。

「―――子どもを離せ、ジャコモ・ダンテ。彼らは無関係だ。解放しろ。目的は僕たちだけのはずだ」

 敵と刺し違える覚悟は出来ている。大事な時に己の命を惜しむような腰抜けなら最初からBNDに志願しない。だが、一般人を―――何も知らない子どもを巻き込む覚悟は誰も持ってはいない。BNDには冷徹な奴はいても非情な奴はいない。
リヒャルドが一歩踏み込んで「子どもを渡せ」と手を伸ばす。返ってきた答えは、壁に走った罅のような人間性を欠いた嗜虐的な笑みだった。

「ダメだ。この親子をここで殺すことも俺の目的だからな」
「なんだと!?」
「考えてもみろ。オーストリアで戦闘による多数の死傷者が出た。それを行ったのはドイツ軍の特殊部隊で、被害者は何の非もない幸せな親子だ。公になろうとなかろうと、オーストリアとドイツの間に決定的な亀裂が生じるのは火を見るより明らかだ。アメリカはドイツの勝手な派兵行為だと切り捨てるだろう。ヨーロッパ諸国はドイツの暴走だと断じて怒り狂い、フランスはNATOを糾弾して距離を置く。ドイツはテロリストを討伐するためだったと反発するが、他国に軍隊を送り込んだ事実が消えることはない。ヨーロッパの強国たちは強硬な姿勢を取り続け、やがて大きな闘争の渦となる」

 底の見えない瞳の中で、“悪の情熱”がドロドロと煮えたぎっていた。自分を抱く大人が狂気の産物であることを遂に察した子どもが恐怖にガクガクと震え出す。

「ここで貴様ら全員を吹き飛ばすことで、依頼主の仕事もこなし、同時に俺の目的も達成できる。ヨーロッパは、イタリアに続いてもう一つ大きな火種を抱えることになるだろう。俺は世界中にそうした紛争の火種を作ってきた。“導火線”を買う金も手に入った。後は火を付けるだけだ」
「―――本当に、狂ってるのか」
「いいや、俺こそがヒトの本当の姿だ。調味料がなければモノを食えない今の人間の味覚が狂っているように、お前たちこそが狂ってしまっているのだ」

リヒャルドが絶句して押し黙る。同じ言葉を使っているだけで、意思が通じることは絶対にない。言語ではないもっと根幹の部分で、コイツ(ジャコモ)は俺たちと大きく異なっている。
ジャコモが耳障りな声で嗤う。鼓膜に焼き付きそうな、およそ化け物じみた嘲笑だ。狂人の声とは、こんなにも他人の神経を刺激するものなのか。こんな奴に手も足も出ない自分が情けなくて悔しくて、頭がどうにかなってしまいそうだ。―――いや、この間合いなら、ギリギリでジャコモの首をへし折れるかもしれない。子どもに怪我をさせるかもしれない。爆弾のスイッチを持っていれば、押されるかもしれない。だが、BNDでもっとも体術に優れた俺なら……!!

「やめておけ、デカブツ。俺は爆弾のスイッチは持っていない。持っているのは“別の者”だ。―――おい、アシク」

「―――はい」

「「……!?」」

 その声は、俺の背後―――割られた窓の外から聞こえた。俺たちがついさっき通ってきた暗闇から、姿のない何者かが声を発したのだ。気配はあるのに姿のない、若く理知的な男の声だ。まさか、本当に幽霊だとでも言うのか。
声の主がゆっくりと歩んでくる。やがて窓辺まで近づいてライトの下に顔を見せた時、俺はどうしてその男が見えなかったのかを理解した。

「“黒人(ブラック)”、だったのか……!!」

 その男は、アフリカ出身であろうことを容易に想像させる、星のない夜のような黒い肌をしていた。上半身は裸になり、アーミーパンツも濃暗色で統一されている。これでは、夜闇に完全に紛れることが出来る。
 ギョッとする俺たちに、“アシク”と呼ばれた若い男が腕を伸ばす。そこには、ラジコンのコントローラーのような機械が握られている。それが何であるかは状況を考えれば明らかだ。

「お前たちの肌はバラクラバで隠していても暗闇にハッキリと浮いていたよ。ジャーマン・ホワイト(ドイツの白人)」

 あの時、サーモを使っていれば、コイツに気付いていたのに……!!
またしても俺の失敗だ。
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~ Comment ~

ジャコモ 

>G
奴は強敵ですね。
私は以前、頼んだピザに乗られ半狂乱になったことが(-"-;)
>ヴルヴァリン
まだ観てませんがとりあえず、今度見に行きます。返信は気にしないでください。のんびり待ってますから(笑)

>ヒャーリス
ジャコモすげー(((゜д゜;)))
自分も巻き込まれる爆弾といい、突っ走った思考回路といい。実に素晴らしい。
悪役が凄いと話が引き立ちますね。次回の展開も期待してます。

NoTitle 

この悪の美学はヴィランには必要な要素ですよねえ。絶対間違ってるけど、惹かれずには中二心。
しかし、このジャコモも我らがヒャーリスの餌食になるのか……。ご愁傷様です。

ジャ「フーハハハー! 戦場は本当に地獄だぜー!」
「ハッピーDEATH★ ですよね~」
ジャ「ファッ!?」

 御仕事頑張ってくださいねー。

NoTitle 

>茶色いアイツとマジックリン
 はて、茶色だとどれだろう。脚にカサカサって、まさか触れられてしまったのか! ヒィイイ((´Д`))gkbr
 マジックリンて食器洗い用もあったんだっけ? ばーすっ、まじっくりんっ

>ジャコとリヒャ
 の会話が理解不能でした。私の(身体は大人?)頭脳はゴリラ以下だった…。
 特に”引退軍需選挙高官の利益計画”や、ジャコさんの予測する”火種と戦争の推移過程”、”戦争誘発によって達成が近付くジャコさんの理想の世界の在り方”あたりがわかりませんでした。おーあーるぜーっ

NoTitle 

ヒャーリスは出てきませんでいたけど・・・・リヒャルド王子さまかっこいい///
いやージャコモの思考回路もなかなかですしヒャーリスとの対決が楽しみです!!
でもヒャーリスにかかれば対決する前から目論見がくずれそうな気がしないでもないですねw

 

バーサーカの頃から楽しく読ませて頂いております。

断言できる
もう、長編は完結しないと

個人ですから完結させるもくそもないんですけどね

NoTitle 

>名無しさん
ピザに乗られたら僕も狂う自信があります。お気の毒に……。アースノーマットをつけててもゴッキーはちっとも嫌がらないし。奴らを寄せ付けないためにはやはり部屋を清潔にしておくこと以外にないんですかねえ。
僕が原作のガンスリンガー・ガールを読んで捉えた「ジャコモ」というキャラクターは、ずばり「闘争馬鹿」です。建前も遠慮も仮面も上っ面も、ジャコモにとっては余計なものでしかなくて、単純なパワーや、他者を欺く知能といった牙をむき出しにして戦う姿こそ純粋な人間だと思ってます。牙を持たない弱者のことは余計なものの一つに入っちゃってる、人間社会を維持する上で完璧な障害たる「テロリストの鏡」です。そういうキャラクターとして、僕はジャコモを書いていきたいです。そしてボッコボコにしてやんよ!


>enkidさん
ジャコモをラスボスっぽく、まさに「怪人」っぽく見せるには、カリスマめいたとこをバシッ!と描写したいです。原作では、クローチェ夫妻の移動ルートを見抜いたところが只者じゃない感が出てましたが、カリスマ性はあまり描写されず、ひたすら闘争を求める獣みたいな男として書かれてました。僕は、この獣みたいな男に、もっとクールなラスボスっぽさを付け加えたいなと思ったりしてます。でもヒャーリスと掛け合わせるとお笑いキャラになっちゃいそうで不安!!
お仕事頑張りまっせ!!


>ナナシ(21)号さん
ええ。脚に這い登られました。まるでジョジョキャラのように「ゥおぉおおおお~~~ッッ!!??」と叫んじゃいましたよ。マジックリンってやっぱり強力なんですな。
ジャコモとリヒャルドさんの会話は、試作段階というのもあって、ハショッてる部分があります。もっと補完しないといけないのは間違いないです。僕自身、ジャコモがこの時点で抱いてる野望についてまだフワッとしたものでしか把握していないので、もっとガッチリ考えて書き直すつもりです。わかりづらくてスンマソン!

NoTitle 

ヒャーリスは出てきませんでいたけど・・・・リヒャルド王子さまかっこいい///
いやージャコモの思考回路もなかなかですしヒャーリスとの対決が楽しみです!!
でもヒャーリスにかかれば対決する前から目論見がくずれそうな気がしないでもないですねw
>神代 雪華さん
リヒャルドさん、最近ずっと「妹に弱いお兄さん」みたいな情けないキャラで固定化されちゃってたので、この辺でちゃんと優秀な人なんだよアピールをしておかないとと思いまして。結局ヒャーリスに甘いのは変わらないのですが。
ヒャーリスはご都合主義がブリジットの皮を被ったようなキャラなので、ジャコモを一度は打倒します。一度は。今の構想では、ジャコモには第二形態が準備されております。突拍子もないアイディアですが、お楽しみに!!


> さん
そう言われるのも仕方がないくらい放置しちゃってるんですよね……。今月は観たい映画もないし、スクーバダイビングも一回しかしないし、飲みに行く予定も、そもそもお金もない! 誘惑は少ないから後は仕事さえ少なければ問題ない、はず。後は自分次第です。ヒャーリス外伝が後もう少しで終わるからそれを更新して、バーサーカーにとりかかります。でも白銀の討ち手も進めないと。とりあえずバーサーカーかなあ。

 

ふむふむ、仕掛人は軍産複合体で鉄砲玉がネオ・ジオ……もといナチか。普墺普仏戦争再びか。そして軍需は沸き安心の老後とな、対岸の火事は一番の見物やな。
世界の警察は欧州に最後の止めを刺そうとでも言うのかな?
どちらにしろ、中々さね。

NoTitle 

たまには17時きっかりに帰ろうと決意しつつも、結局次の日の準備やその日の復習で時間が消えてしまう……。なぜだ。坊やだからか。


>ルクレールさん
さすがでございます。アメリカの軍需複合体の手先である米軍高官が、リヒャルドたちドイツ軍特殊部隊の動きをわざとリークし、ジャコモを使って再び紛争の火種をばら撒こうと画策している、という筋書きを考えています。ジャコモを雇って操っているつもりでも、ジャコモは誰かの操り人形になるような小物ではなく……。というストーリーにしていくつもりです。

 

後は読んで気になったのがリヒャルドはサーモの70秒も惜しいと言ってましたが、人質の居る状況下で、冷静沈着な彼ならサーモ等を使い万全を期するのでは?
それを覆すタイムリミットみたいなのが無いと(例えばオーストリアの警察やら郵便やらの第3者の作戦地域への接近)ちょっち説明が付かないと言うか微妙に不自然な感じがしました。

後は殿下は従者の愛を……の方も期待しつつ待ちまする。

Re: タイトルなし 

>ルクレールさん
>殿下は従者~
おお、この作品を待ってくれている人がいるとは……。ありがたや!
自分が書きたかったものを詰め込んだ作品でしたが、詰め込み過ぎたというか漢字ばっかりで読みにくいというか、自分で行き詰まりを覚えてしまって止まってしまってます。こういう「後一話で完結」の作品を地道に完成させていくことが大事だと思うので、少しずつ書き進めていきたいです。
サーモのご指摘、感謝です! もっと矛盾がないように考えて書かなければ……。
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