小劇場

小劇場その② 白銀の少女は鷹の爪が欲しいみたいです

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ちょっとした小ネタであり、実は伏線でもあります。





 狭山丘陵の北東、埼玉県狭山市と入間市にまたがって位置する広大な敷地に、航空自衛隊入間基地は在る。
その日―――11月3日は、入間基地にとってもっとも忙しい日の一つ、『入間航空祭』が開催されていた。

「ああ、やっと終わったか」

自分が整備を担当する機体にもたれかかり、30前半の男が深々と息を吐いた。彼の肩書きは長い。入間基地第二輸送航空隊整備群修理隊工作小隊所属二等空曹だ。しかし名前は谷繁(たに しげる)と短い。どうせなら名前も長ければよかったと最近よく思うようになった彼は、今日一日の苦労を思い出していた。

今回のイベントは例年よりもお客の動員数が多かったため、手の空いた整備士―――要するに繁―――も対応に投入された。普段は担当の機体を車検のように点検し、ひたすら黙々と修理することが仕事の繁は、慣れない客案内に四苦八苦していた。それも、先ほどの航空祭終了のアナウンスによって終わる。

「ったく、俺は機械いじりが好きでここ(空自)に入ったってのに……ん?」

不意に、視界の隅で銀色の光が煌めいた気がした。機体のアルミの反射光ではなく、そのものから発せられているような眩い光だった。
その光を追って身を動かすと、一人の黒髪の少女が展示された戦闘機『F-15J』を食い入るように見つめていた。いや、正確にはその右翼の付根前縁に内装された多砲身機関砲―――M6120mmガトリング砲を、だ。

(なんだ、あの娘?まだ帰ってなかったのか)

親とはぐれたのか、戦闘機に夢中になってアナウンスが聞こえなかったのか。どちらにせよ、このままいてもらうと困る。やれやれと面倒くさそうに頭を振って背後から少女に近づく。

「おい、君―――」

「ねえ、整備士さん」

振り返らぬままに掛けられた凛として澄んだ声に中断された。

「この大砲の発射速度と反動はわかりますか?」

どうして振り返りもせずに自分が整備士だとわかったのか、そもそもどうしてメイド服なんか着ているのか、色々と聞きたいことはあったが、空自の整備士としての誇りと見栄がそれらに勝った。

「発射速度は毎分4,000発と6,000発の切り替え式。最大で毎分7,200発、試験的に行った最高記録は12,000発。毎分6,000発の発射速度で射撃する場合、2トンちょいの反動が生じる。……君、こういうのに興味があるの?」

「ええ、まあ。どうも、ありがとうございます」

少女はガトリング砲から目を逸らさずに礼を言った。まるで細部に至るまで目に焼き付けようとするかのようだ。

「さすがにフレイムヘイズでも、2トンもの反動がある武装は単独では扱えまい」
「こ、コラッ!」

「!? だ、誰かいるのか!?」
唐突に地鳴りのような低い声が響いた。飛び上がって周囲を見渡すが、それらしい影はない。というか、声の発信源はこの少女だったかのような―――?

「ごめんなさい、腹話術なんです。あはは」
「フクワジュツダヨーテイレシアスウソツカナイー」

苦笑いを浮かべながら首からぶら下がる凝った意匠のペンダントをぺちりと指先で弾く。その可愛らしい仕草は、美しく可憐な顔によく似合っていた。30を越えた俺でさえ思わずドキリとしてしまうくらいの、かなりの美少女だった。

「お、お邪魔しました、整備士さん。お仕事がんばってくださいね!」

「あ、ああ。気をつけて帰るんだよ」

なぜかドギマギしてしまう俺の横を駆け抜けて、少女は逃げるように立ち去る。
何を動揺しているんだ俺は。しっかりしろ。あの娘を正門まで送り届けるくらいのことはすべきだろ。
そこまで自省したところで、少女が向かった方向が出口とまったく逆方向だったことに気付く。

「あ、待て!そっちは逆――――――― は?」

振り返った先のだだっ広い展示場には、人影はなかった。隠れるところなどないはずなのに。

「えっ?」

今度は視界の上で銀色の輝きが瞬く。反射的に上を見上げ、

「―――天使?」

白銀の大きな羽根を左右に広げて、純白の長髪を翻した少女が天高く飛び去って行くのを確かに見た。それはさらに天空で再加速したためすぐに視界から消え失せた。もはや幻覚だったのかどうかすら定かではない。
谷繁は呆然と赤くなっていく空を見上げながら、

「……天国で戦争でもすんのか?」

と呟いた。
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~ Comment ~

 

ガトリングガン投影ですねわかりますん。

まぁ2tの反動だって、ようは本体に圧力がかからないように調整すればいいわけですからね。
ぶっちゃけた話、絶対壊れない鎧(覆う部分は腹だけでもいい)
と2tの推進力を持つ推進器を用意すれば、その場からサユは動かないわけで。
なら、逆説的に動かないリング状のモノの中に居るサユは反動を受けていないことになります。

フレイムヘイズの翼にどれくらいの力があるか解りませんが、それで足りなければ単純な構造の推進剤噴霧式のブースタをつければよし。

←の方向に2t、→の方向に2tの衝撃なら、合力は0。
細かい振動くらいはあるでしょうが、それはフレイムヘイズの身体能力でなんとかなるでしょうしね。
ようはこの場合は壊れない”わっか”と投影可能な推進器を用意すれば、ガトリングガンも運用可能と言うことですな。
まぁ普通は機関銃の反動は、歩兵運用だと設置圧に逃がすんですがねwww

 

>お揚げ中毒者さん
たくさんのコメント感謝です!めっちゃくちゃ嬉しかったです!!仕事の休憩中に見て、ビックリして、一気にやる気が出ました!!ありがとうございます!!
ほうほう、リング状のものとな。なるほど………わからん(´;ω;`)でも二トンの反動を打ち消す力を逆方向からかければ反動を抑えて射撃が可能だということはわかりました。ぜひぜひ参考にさせていただき、ストーリーに反映させて頂こうと思います。超絶感謝です!
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