二次創作

少しずつ改善に向けて進んでいく作品と日常

 ←会社への愚痴と、アルペジオ二次創作中編試作その3【1/26改】 →せっかくバーサーカー最新話試作【改】とアルペジオ最新作試作
ようやっとこさQC活動終わったべさ……。長かったのぉ。面倒臭かったのぉ。でもまた今年の第三期にやらなきゃならん羽目になっちまったわい。それまでに、少しでも労働環境が改善していることを願います。せめて人を増やして……。




さてさて、そんなどうでもいいことは遠くに置いておきまして。頂いたコメントへの返信も滞っている状態ですが、おめでたいお話があるのでそのご報告をしようと思い、こんな真夜中にブログ記事を更新している次第です。我がブログにたくさんのコメントや参考意見を頂いているイザナギさんが、この度ご自身のブログを立ち上げられました!↓

『いざ、もそっとゆこう』

ミリタリー知識に造形の深いイザナギさんには、作品を作っていく上でいつも助けられています。ありがとうございます! ハーメルンでアルペジオの二次創作を手掛けている同士として、お互い良い作品に仕上げられるように頑張りましょう!!






他のお知らせとしては、昨日息抜きに映画『エンダーのゲーム』と『永遠の0』を見てきました。どちらもなかなか面白かったです。特に『永遠の0』は、僕の祖父が大分県宇佐市の宇佐航空隊で実際にゼロ戦のパイロットをしていたこともあり、とても考えさせられました。「特攻」というものに、否定的という認識以下の、狂信的な自爆テロと混同して蔑むような感情を抱いていた幼い時期が僕にもありましたが、今では正反対の認識を持っています。正しいことだったとは決して言いませんし、むしろ間違った行為であったと言えます。けれども、そこには尊い決意と覚悟と悲哀がありました。悲しい時代と世界情勢の中で必死に「大切な誰か」を生かそうとする行為でした。簡単に否定していいものではないのです。すでに祖父は亡くなって久しいですが、「もっと話をしたかった」と思わせられる映画でした。主人公を演じる岡田さんもカッコイイです。最後の最後の不敵な笑みには思わず息を呑むこと請け合いです。お勧めですよ。





そして『せっかくバーサーカー』最新話の試作を貼り貼り。2月に更新できたらいいなあ。





‡綺麗な綺礼サイド‡


|ヴィルガメシュー《Bilgameš》王


アレキサンダー大王が覇道の旗を立ち上げるよりも遥かに昔、地中海とカスピ海に挟まれた広大な領土を支配する巨大国家が存在した。紀元前9000年前にはすでに芽を見せていたとされるその古代国家こそ、未だ謎多き『古代メソポタミア』である。現代の水準に匹敵し、またある分野においては凌駕しているとすら言われる膨大かつ高度な知識・技術・歴史・文化・政治体系を擁していたかの超文明は、常に一人の“王”の手中にこそ存在を許されていた。かつて、そのシュメール王朝の頂点に着座し、もっとも輝かしいウルク第一王朝時代に満を持して君臨していた伝説の王の名こそ、ヴィルガメシューである。武に長けた前ウルク王ルガンバンダと女神リマトの間に生まれた彼は、その肉体と魂の3分の2に“神”を宿していた。伝承によれば、時には片腕で獅子の首を締め上げ、時には彼を疎んじる神が刺客として放った天の雄牛をも容易く跳ね除けるほどの超人的な男だったという。彼は、その強大なる戦闘力と全身の細胞から溢れ出る|神性《カリスマ》によって最強の王の名を欲しいままにした。赫々たる王の名は、万を超える年月を経ても色褪せることなく歴史に刻みつけられ、未だ多くの人々に恐れ崇められている。

シュメール語で、ヴィルガメシュー。
アッカド語では、|ギルガメッシュ《・・・・・・・》という。








「もうイヤだ。聖杯なんていらない。故郷のメソポタミアに帰りたい」


クッションに顔を埋めてフゴフゴと声をこもらせるその若者が果たして古代メソポタミア王その人だなどと、いったい誰が認めるのだろうか。事情を知る綺礼すらキョトンと目を丸くするほどなのだ。一般人が見ればただのナヨナヨした金髪の外人である。

「どうした、アーチャー。いつものお前らしくないじゃないか」
「どうしたこうしたもあるか。有象無象共が揃いも揃って|我《オレ》を侮辱するのだぞ。あんなに自慢気に見せ付けやがって、見せ付けやがってぇ……ぅ゛ぅ゛……」

それ以上は声にならなかった。しくしくとクッションを濡らしながら、うつ伏せの格好のままズルズルとソファからずり落ちていく。煌めく金髪が光の尾を引いて、次の瞬間にはセンターテーブルの影に落ちて見えなくなった。いつも何様貴様俺様という態度を崩さず、主成分99.9パーセントが“傲岸不遜”で構成されているような男をここまで追い詰めた原因に、綺礼は心当たりがあった。

(……よっぽど羨ましかったのだな、ライダーの|『 王 の 軍 勢 』《アイオニオン・ヘタイロイ》が)

綺礼もまた、ハサンの目を介して視た。死して尚、幾千年の時を経て尚、英霊の座に召し上げられても尚、集結の号あれば必ず王の下へ駆けつける多勢の臣下。一様に童児のような笑顔を浮かべ、再び王と共に戦場を駆ける幸せを噛み締めて鬨の声をあげる古強者の大軍団―――宝具|『 王 の 軍 勢 』《アイオニオン・ヘタイロイ》。ランクEXという全英雄最大規模の対軍宝具を有し、無数の|朋友《とも》に自身と同じ|心象風景《ゆめ》を抱かせて遂には固有結界までも形成させてしまった史上空前の“漢”こそ、ライダー―――真命|アレキサンダー《・・・・・・・》である。同じ男を惚れさせるその偉大さは、思わず綺礼の心にもこみ上げる熱を感じさせるほどだった。

(まだ続く)









そしてもう一つ、『エルフになって~』の最新話の試作。こちらも2月中の更新を目指したい。






「黙りなさい。この、救いようのない、愚か者どもめ」

背筋を凍らせる低い声がこの少女から発せられたものだと、果たしてこの内の何人が理解できただろうか。皇国中を駆けずり回ってもあと一つ手に入るかわからない上等な長机がミシリと痛々しい音を立て、ようやく俺たちは、少女が―――ただの少女ではない伝説のエルフが、これ以上ないほどに怒りを露わにしていることを悟った。
拳を握りしめたトゥがギロリと一同を圧する。華奢な双肩からは立ち昇る気配は触れれば首を断ち切られそうな威圧感を放ち、ファレサ伯爵を数歩後ずらせた。戦慄の眼光は、ぐるりと回って意外にも俺にまで向けられた。まさか自分にまで怒りが下ると思っていなかった俺はギョッと目を見張って鋭いそれを受け止める。肩越しに俺を睨み上げる視線はクアムに対してよりも強く、先ほどまで胸中に滞留していた失意を吹き散らすほどだった。俺はまた彼女の怒りを誘う失敗を犯してしまったらしい。その原因に心当たりがなくただ狼狽えるしかない俺にフンと小さく鼻を鳴らし、彼女は再び正面に顔を向ける。きっと呆れられたのだ。彼女の期待を裏切り、あまつさえその原因にも察しがつかない自分に腹立たしさを覚える。

「……僭越ながら、愚か者とはどういう意味ですかな、エルフ様?」

ゴクリと唾を飲み込んだ軍師のフィリアス子爵がさも不快げに問う。見れば、クアムや騎士団の幹部たちも似たような表情でこくこくと頷いている。物心ついた時から自分勝手な“正しさ”を権力で押し通し、それがまかり通ってきた連中だ。面と向かって「お前は間違っている」と突きつけられることに馴れずに面食らっているのだ。しかも、突きつけてきた相手が伝説上の存在と言えども|献上品《美少女》の形をしていれば、連中が気分を害するのは当然といえば当然だった。もちろん、トゥは献上品ではないし、献上品のように従順でもない。

「愚か者は愚か者です。貴方方は、自分たちが未熟な|野伏せり《・・・・》の寄せ集めに過ぎないことを、魔王軍がとても洗練された軍隊であることをまったく理解できていません。このセシアーヌ皇国が置かれている状況は果てしなく劣勢で、絶望的です」

 幹部たちが困惑にざわりと色めき立つ。かく言う俺も、トゥが確信を持って告げた台詞に驚いていた。魔王軍をひと目も見たことのない彼女がどうしてその練度と戦況の行く末を把握できたのか。おそらくは、目の前の勢力図を見澄ましただけで俺たちにはわからない何かを察したのだろう。
 ずいと身を乗り出し、白い指が騎士団を示す黒い積み木を弾く。積み木は乾いた音を立てて魔王軍のど真ん中まで転がり、パタリと倒れる。その様子に|本番《・・》の戦況を透かし見て、我知らず背筋がゾッと冷めた。

「はっきり言いましょう。今の貴方方には逆立ちしようとも勝利の可能性など万に一つもありません。待っているのは騎士団の|自滅《・・》と人類の全滅です」

まるで教本に載った常識を諳んじるように、トゥはきっぱりと告げた。その双眸は確固たる論拠を見据えて強い銀光を放っている。

「さ、さに―――然にあらずッ!!」

怯えを振り払うようにファルコ伯爵が癇癪を起こした。堀深な額の下で目玉が剥き出しになる。収入源の多くを頼っていた飛び地の農耕領を魔王軍に滅ぼされたことで、伯爵家は来年度の税の支払い―――その税の大部分はガーガルランド家に流れる―――すら捻出できるか怪しいとの噂だ。己が一番槍を担うことで来年の税負担を少しでも容赦してもらわねばならない身としては、トゥの言葉はあまりに厳しく、受け入れ難い。

「我らが|自滅《・・》ですと? 神聖不可侵にして精強なる我が討伐軍が、言うに事欠いて自滅ですと!? いったいどんな根拠があってそのような荒唐無稽なことを仰るのか!?」
「ファルコ伯爵の言に賛同致しまする! 1000年の歳月をかけて精錬された我ら皇国騎士団が……よりにもよって野伏せりに等しいですと? 我らが汚らしい魔王軍に劣り、あまつさえ自滅するですと? 荒誕極まるお話だ! その所以があるのなら今すぐにご教示願いたい!」

矜持を傷つけられた幹部たちが瞠目し、目の前にいるのが伝説の存在であることも忘れて憎々しげに喚き立てる。大の男たちが大声を上げて少女を問い詰めているというのに、俺の目には、追い詰められているのは男たちであるように見えた。事実として、やはりそれが正しかった。部屋に渦巻く逆鱗の気配を物ともせず、トゥが幹部たちを静かに睥睨する。そして、なぜだかどこか寂しそうに答えを紡ぐ。


「私の国が、そうなったからです」


「……君の、国が?」

 唐突に静まり返った部屋に俺の問いだけがポツリと落ちた。思いもよらない解答に呆然と問い返した俺を振り仰ぎ、トゥが小さく頷く。争いとは無縁そうな少女の表情に、暗い影が差すのを見た。

「先ほど私の世界について話しましたね、カーク」
「あ、ああ。エルフの世界には大小たくさんの国々があって、様々な人々がいる、と」
「ええ、そうです。約60年前、私が属する国は、その国々を―――|世界を敵に回して《・・・・・・・・》戦いました。後に“世界戦争”と呼ばれるその| 大 戦 《おおいくさ》は6年間続き、私の国は完膚なきまでに焼かれ、振り続ける敵の炎によって大地は隅々まで焦土と化しました」

この可憐な少女を生み育んだ国が、焼かれた―――?
俺は勝手に、彼女の国はセシアーヌが遠く及ばぬ理想の国だと思い込んでいた。完璧な為政者と優れた領民によって成り立つ、究極の魔術と光り輝く財宝に溢れた世にも美しいエルフの王国なのだと。しかし、「仕方がなかったのです」と呟いた彼女の口からぽつぽつと語られるのは痛ましい真実だった。

「世界が広く、国が多くとも、それが豊かと同義であるとは限りません。人が多ければ、着るものが要ります、水が要ります、食べ物が要ります、建材が要ります、鉱石が要ります、燃料が要ります、贅沢品が要ります。限られた資源を多くの国々が奪い合いました。強い国が弱い国を食い物にし、強い国でさえももっと強い国に食い物にされます。国が奪われるのです。互いに睨み合い、隙を探り合い、常に力を追い求め続けなければ簡単に付け入られます。弱肉強食のうらぶれた世界で、我が国もまた生き残るために必死でした」

エルフの世界は決して黄金郷などではなかった。セシアーヌがぬるま湯に思えるほどに、酷烈で無慈悲な世界だったのだ。この世界の| 戦 《いくさ》とは次元が異なる『戦争』を突き付けられ、激昂していたはずのファレサ伯爵は胸を塞がれた様子で口を噤んでトゥの話に聞き入っている。否、伯爵だけではない。その場にいる全員が、伝説や言い伝えではない|生《なま》の戦争を前にして動揺に息を呑んでいる。
磨き抜かれた宝玉のような少女の口から告げられる悲話は、戦乱のすえた臭いまで漂わせる現実味を帯びていて、平和という名の怠惰の沼に浸りきっていた俺たちの心を激しく揺さぶり続ける。

「|御国《みくに》の……御国の兵は、どうなったのですか」

 息を詰まらせたような声音で、もっとも若い上級騎士が問うた。セシアーヌに存在する全ての種族を相手取って戦いを挑むなど、いくら自信過剰な騎士団にも言い出す者はいない。だが、トゥの国の戦士たちは、そうしなければならなかった。生まれ故郷を、妻子や親兄弟や友を護るために、世界を相手取って立ち向かわなければならなかった。そんな彼らと今の自身の立場に共通するものを見出したらしい幹部に、トゥは抑揚のない目と声で応える。

「勇敢なる我が兵らは果敢に戦いました。国力の差を技術と練度で補い、当初は互角にまで持ち込みました。しかし、物量差から考えて最初から勝利を収められないことは目に見えていました。“如何に引き分けるか”……そのような状況だったのです。しかし、日に日に戦局は泥沼化し、領土は削られ続け、いつの間にか趨勢は“如何に負けるか”に変わっていきました。敵に奪われた後の国が滅ぼされないために、より良い条件での敗北を模索するために、敵の譲歩を引き出すために、敵の進軍を一秒でも遅らせるために……兵たちは命を賭して抵抗を続けました。故郷に帰ることの出来た者はほんの一握りです。家族に別れを告げて|負けるための戦い《・・・・・・・・》に赴く彼らの苦悩と無念は計り知れません」
「なんと……なんと、残酷な……」

 フィリアス子爵が震える声で呻いた。誇りも名誉もなく、赴けば二度と帰って来られない虚しい戦いに身を投じる恐怖を思い描いたのだろう。彼ら貴族騎士にとって、戦とは自身の名誉を嵩上げし、家の格を引き上げるための手段でしかない。たった一秒のためだけに命を捨てに行くなど、派手な矜持を誇示したがる貴族には到底受け入れられないのだ。
その隣で、顔面を蒼白にした若い騎士が再び問う。

「その凄惨な大戦で、いったいどれほどの者がこの世を去ったのですか……?」
「戦死者は230万人、亡くなった無辜の民は80万人。世界全体では5000万を超える人々が命半ばにして戦火に巻かれながら亡くなりました」
「「「……ご、5000万人……!?」」」

 幾人かの掠れた声が重なった。その中には俺も含まれていた。ここに並ぶのは、セシアーヌ皇国において押しも押されぬ大領主たちだ。彼らが支配する領民をかき集めたとしても5000万には遥かに届かない。果てしない数の命がたった6年で消えていくほどの戦争とはどれほどに熾烈なのか。想像もできない規模を必死に思い描こうとした刹那、かつて嗅いだことのある強烈な臭気が鼻腔に蘇った。

「……ッ!」

10年前、魔王軍によって領土を奪われたあの時の臭気だった。|燃えてはいけないモノ《・・・・・・・・・・》が燃えていく壮絶な記憶が脳裏に蘇り、鬼胎に身を凍らせる。森林が、川が、田畑が、家々が、動物たちが容赦無い炎に巻かれ、生きながら食い殺される人々の阿鼻叫喚が耳を劈く。地獄の様相を背に羽織り、金色の目をした魔王が大切な人たちを惨殺しながら近づいてくる。あの地獄の何倍もの恐懼と絶望がトゥの国を襲ったのか。

「―――トゥ、君はまさか―――」

 エルフの寿命は長いとされる。ヒトを老いさせるには容易い10年の歳月も、エルフにとっては些細なものかもしれない。ならば、この純真無垢な少女はその目で見てしまったのだろうか。自らが生まれ育った故郷が無残に焼き尽くされ、人々が炎に炙られる悍ましい状景を、その宝石のような瞳に映してしまったのだろうか―――。
俺の呟きに一瞥を返したトゥが、なぜか不機嫌そうに片眉を上げて唇を尖らせる。

「……もしかして、今、私の年齢が60歳以上だと考えましたか?」
「え?」
「私がそんなお年寄りに見えますか? 戦争は私が生まれる前に終結しました。今では復興もとっくに終えています」
「そ、そうなのか。よかった」
「やっぱり考えていたんですね。失礼な」

 彼女は直接、戦争を経験したわけではないらしい。トゥが俺と同じ苦しみを背負っていないのだとわかって心の底から安堵する。そして、トゥが少なくとも60歳には達していないことがわかって少しだけ安心する。本当は幾つなのか尋ねてみたいが、女性は年齢を知られるのを好まないと友人から忠告を受けたので気が引ける。トゥならば躊躇いもなく教えてくれそうな気もするが、これ以上機嫌を害してしまうと会話をしてくれなくなるかもしれないのでやめておこう。
 二重の理由でホッと胸を撫で下ろす俺に怪訝そうに鼻を鳴らし、トゥが地図上の黒い積み木―――騎士団を表わしている―――を摘んだ。現在、騎士団が集結している首都にそれを置くと、「御覧なさい」とゆっくりと前線に移動させていく。赤子が這うような緩慢な移動速度は、彼女が知る戦争の| 理 《ことわり》に基づいてのものなのだろう。

「私の国もこのセシアーヌと同じ島国でした。進軍の経験は少なく、手探りの状態で戦争に踏み切ってしまった失敗は否めません。遠く馴れない地で戦うことがどれほど険しいことであるのか、想定が甘かったのです」

直接、戦火を生き抜いたわけではないにしても、その言葉の説得力が薄れることはない。彼女の世界の戦争とは、俺たちが今まで経験してきた数十人規模の小競り合いとは比べ物にならない規模であるし、何よりも、言い伝えや古い文献でしか知識を知り得ない俺たちと違い、彼女が知る戦争はたった60年前のものだ。この皇国の誰よりも、彼女は戦争について詳しい。

「私の国の敗因の一つこそ、長距離の進軍に不慣れだったことによる|戦線の断裂《・・・・・》。すなわち、“補給”という軍隊において実はもっとも重要である行為を二の次にしたが故の失策です」
「|もっとも《・・・・》重要? 最前列に居並ぶ騎士たちの剣槍ではなく、補給がですか?」
「その通りです。守勢のみに傾注できるなら補給のことはさほど考えなくても済んだでしょうが、此度のように進軍するとなればそうはいきません。戦線が伸びれば伸びるほどに補給の重要性は増していきます。私たちがそのことを思い知ったのは戦況が悪化の方向に転がり落ち始めた時でした。今の貴方方はまさにその二の舞を踏もうとしています。いえ、補給を各貴族家の自己責任としてしまっているのでは、私たちよりも悪い結末を迎えるでしょう」

 騎士団の幹部たちは、いつの間にか黙してトゥの言葉に耳を傾けていた。トゥの言葉にはそれだけの力と裏付けが備わっていたからだ。皆が皆、初めて耳にする“戦争の常識”に真剣に耳を傾けている。その様子をおもしろく思っていないのは、自身の計画を頭から否定されているクアムだけだ。トゥに吸い寄せられていく幹部たちの背中を見渡し、これ見よがしに舌打ちしている。やはり、奴は己の過ちを認めることはできない。
熱弁を振るうトゥの傍らに控えつつ、じっとクアムを睨みつけて下手な動きに出ないように牽制しておく。あの男が俺と視線をぶつけ合うことに熱中してくれている間は、奴がトゥを黙らせようと暴挙に出る心配はない。

「仰る通り、我が騎士団にとって此度の進軍は初陣となります。ですが、それが原因で自滅するとは些か腑に落ちませぬ。セシアーヌから進軍してヘルダオの牧草地の辺りで接敵するまで、伝令用の早馬なら不眠不休で走れば一ヶ月と掛かりませぬ。各々の貴族家が我先にと戦場に行き競えば、到着に要する月日はその程度であるはず。ならば、たった一ヶ月分の補給に固執する必要など……」
「それは進軍とは言いません。そも、討伐軍は貴方方のような馬に乗った者ばかりではないでしょう。馬匹を持たない者たちの方が多いはず。歩兵、家臣団、傭兵、民兵、魔術師団、さらには身の回りの世話をする家来。これら全員が馬のように早足であるはずがありません。貴方方は疲労困憊となった騎兵のみで敵と相対するつもりなのですか?」
「た、確かに」

 質問をした者が納得して飲み込んだのを見届け、トゥが次の動きに出る。緩やかに進む黒い積み木の後ろに、別の小さな積み木が次々に置かれていく。まるで荷を満載した馬のように、進軍速度は急激に落ちた。

「これが本来の貴方方の速度です。想定の5倍以上は遅いと考えなさい」
「5倍以上……!?」
「ええ。問題はまだあります」

黒い馬は這いずるような速度で魔王軍に向かって歩を進めるが、小さな積み木はその度に振り落とされて散らばる。これがいったい何を意味しているのかわからず、皆が一様に訝しげな表情を浮かべた。

「進軍当初は一つに固まっていた軍も、慣れぬ進軍を続けるに連れて足並みに乱れが生じていきます。馬に乗る者、乗らぬ者。体力に優れる者、優れない者。軽装備の者、重装備の者。その上、それぞれの貴族家が思いのままに休息を取り、好き勝手に陣を作り、独自の補給に頼って行動していれば―――」
「なんと、討伐軍が……!?」

 誰かの驚愕の声の通り、輿地図には首都から戦場まで伸びる縞模様が描かれていた。進路上に点々と置かれた積み木が縞模様となって大蛇の表皮の様相を呈している。最初は整然とひと塊に固まっていた軍が、気づけば幾つもの小集団となって進路上に点在していた。

「個々の貴族家が勝手気ままに補給を得ていれば、足並みがまちまちになるのは自明の理です。2万5千の軍は、敵陣に到達する頃にはわずか数千の兵ごとに分裂した小集団の群れとなっているでしょう。そうなれば―――」

 トゥによって進められた最先端の集団が、ついに赤い積み木の大軍―――魔王軍に接敵する。翼のように拡がった敵軍との差は10倍どころではない。そこから貴族によって支配された騎士団が抱える弱点に感付き、「あっ」と思わず声を漏らした。

「10分の1の差でも心許無いのに、数十分の一となればもはや勝利など不可能です。戦争では数が物を言います。討伐軍が分散すればするほど、魔王軍にとっては小群を倒せば良いだけとなり、各個撃破の格好の標的となります。また、この魔王軍の配置―――“陣形”も忘れてはなりません」
「|ジンケイ《・・・・》?」

 中年を過ぎた騎士がぽかんとして聞き返した。トゥのこめかみがピクリとひくつき、彼女の苛立ちを示す。あの男は、大層立派な鎧を纏っているくせに肝心の戦法についての造詣は少しも持ち合わせていないらしい。陣形についての研究はほとんど為されていないとはいえ、この体たらくではそこらの野伏せりの方がよほど役立ちそうだ。その間抜け顔を早く仕舞え、と内心で拳を振るう。

「隊列のことです。横一列、縦一列よりもより効果的に兵を配置して敵に当たるための戦術、といえばわかりやすいでしょう」
「は、はあ。そうですな。確かに、わかりやすい」
「わかっていただければ結構です。では、貴方と、そこの貴方。私が騎士団を進めるので、魔王軍の両翼を閉じて下さい。翼を折りたたむように、内側に閉じるのです」
「し、承知致しました」

 少女に顎で使われる上級騎士の姿に滑稽さを覚えたのも束の間、「おお」と膨れ上がったどよめきに誘われて俺も輿地図に目を向ける。そこには、四方を赤い輪に囲まれて身動きの取れなくなった黒い積み木の集団があった。突撃しか知らぬ騎士団は、鳥の羽根に抱かれるように、完全に包囲されてしまっていた。

「“|鶴翼の陣《・・・・》”」

 初めて耳にする用語だが、使い込まれて洗練された言葉であることはすぐにわかった。

「敵を誘き出し、懐に入ってきたところを包囲して殲滅する容赦の無い陣形です」


(まだ続くんじゃよ)
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~ Comment ~

お疲れさまでした 

QC活動お疲れさまでした。

私も昔経験がありますよ、本社から工場へ飛ばされてきた部長さんが持ち込んできて休日出勤でさんざんやらされた覚えが……

「エンダーのゲーム」、戦う為に作られた子供や内省的な主人公など「エヴァンゲリオン」のモチーフになった作品だそうですね、見に行きたいです。

「永遠の0」は漫画版から入った口です。
なにやら評価が二分されているそうで、戦争に興味がなかった人達からは絶賛され戦争史や軍事に詳しい人からは物足りないとのこと。

自分も「南方に出征していた」祖父から色々生々しい話を聞いていた口なので、あくまでも物語として楽しんだ方ですね。

ノンフィクションに近い捉え方をするよりも、あくまでもエンターテイメントとして捉えた方が良いようです。

都知事選の真っ最中なので田母神さんや石原さんがとんちんかんなコメントを言い出しそうで怖い……

「永遠の0」みたいな情緒的な作品を作るのはうまいのに、エンターテイメントに徹した作品を作るのは苦手な日本映画界、「ガッチャマン」や「ハーロック」で失敗したのも情緒的な人間ドラマを入れようとして消化不良を起こしたからでしょうね。

エンターテイメントに徹した宮藤官九郎監督の「ヤッターマン」や「ゼブラーマン」といった作品が当たっているのも当然の事なのですね。

ティム・バートン監督は「バットマン」を作るとき

「いい歳したオッサンがコスプレして夜中にうろつき回る事を陳腐化させないためにそれ以外の世界観を徹底的に作り込んだ。」

と言っていました(バカなことを真剣にやることがエンターテイメントの秘訣と言うことかと)。

と言うわけでゴールデンウィーク放映予定の「相棒劇場版Ⅲ」、ケレン味たっぷりの南の島を舞台にしたミステリーを楽しみにしています。

ガオガイガーにぶん殴られたり、友達いないだろうと哀れまれたり主さんのとこではさんざんな目に遭っているギル様。

今後もさらに弄られていくのか、復活の目はあるのか、楽しみにさせていただきます。

トゥはこの後軍事顧問や軍師の肩書きをもらう事になるのでしょうか?

その知識はコーエーのシミュレーションゲームからかな?

こちらも続きを楽しみにしています。

長文失礼しました。

 

初コメです。
もうそろそろエタに近いぐらい更新止まってるので、せっかくバーサーカーの更新期待。
あと雁おじ勇者王も。

NoTitle 

イ「わざわざ宣伝して下さったぞ」
モ「土下座しに行きなさい」
はい……!(失禁

ということで、宣伝まことにありがとうございます……!(平身低頭
しかもわざわざこちらのブログまでご足労頂いて、感謝の言葉も足りませぬ……!(土下座

映画は最近行けてませぬなぁ。経済的な理由で
最近はもっぱらアニメです。好物のラブコメにいくつか良作があって嬉しい限り

AUO涙ふけよwww(煽
大丈夫だってwwwwほら、綺礼いるじゃんwwwww(嘲笑
人間生きてりゃいいこt(エヌマ・エリシュ


エルフ~はトゥがどこでそんな知識を得たのかを明確にすると良いかもですねー。戦国時代とか三国志とか好きだった―とか、そこから入って若干のミリオタだった、って設定が無難でしょうか
補給の話は石田三成あたりが気になった、とかから補給の重要性を知ったって流れに引っ張っていけるかな? そこから旧日本軍の補給船の話に
石田三成って関ヶ原での大敗のせいでダメな奴だったとか思われてますけど、確かに戦は得意ではなかったにせよ、在りし日の豊臣軍の補給の要の一人として尽力したんですよね。だからあっという間に天下統一を果たせた
というか自分も『のぼうの城』見て興味を持つまでは無能の代名詞だと思ってましたし

で、現状ではどうもならんということを把握させたうえで、解決法を提示すると
魔王って陣頭指揮とは言わなくても、全体の指揮を執ってることは間違いないんですかね?
正面からぶつかり合うのは絶望的ですし、手っ取り早い方法として『魔王暗殺』が手段の一つに数えられますね
個人に高く依存する組織形態であるのなら、頭を取り払えば途端に思考能力が低下します。ましてやRTS(リアルタイムストラテジー)のように一つ一つの部隊に指示を出すようなら、『プレイヤー』がいなくなるも同然ですから、烏合の衆に成り果てる。戦国時代のドラマとかで「大将の首を獲った奴は褒美をくれてやる!」とか言って発破をかけるのは、戦場での『考える頭』を減らすためだったりするんですね
だから、『魔王暗殺』もこの状況では有効な手段なわけです。まぁ、魔王の魔物たちへの影響力がどれほどのものかは分かりませんが、強力な魔力によって従わせている場合なら影響下から外れることで同士討ちさえ始める可能性もあったり。また人間程度の知能があれば「オレ何やってんだろ」って戦をやめる可能性もあったり
まぁ、けっきょくは魔王がどうやって軍を起こしたのかってところが分からないと『魔王暗殺』も有効手段とは言えないのですが

つまり『魔王暗殺』というのはドラクエとかRPGでよくある『魔王を倒して戦いを終わらせる』って奴ですね。考えれば結構エグかった
ただし、この『暗殺』の案はトゥも考え付いてない方向にした方が良いかも。トゥも元は平和な時代から来たんですし、そこまで生々しい事はすぐには考えられず、図面に展開されてる戦をどう勝利に導くかに頭をひねってると。どうやっても遅滞戦闘ぐらいしか出来んのに

んで、こういうのはやっぱカークに思いつかせた方が良いんじゃないかなぁ、と。それか後々登場する予定の『カークの悪友』がぽろっとこぼした「魔王がいなきゃこんなことには……」的な言葉にハッっと気づくとか(もしくは後々“気付いた”か)
この会議の場は……まぁどうにか乗り切ってもらって(ぇ
会議では発言はしない方が良いかもしれませんねぇ。騎士道やら見栄やら外聞やらを気にする諸侯からは反発間違いなしですし、“勇者様”からの妨害の可能性も。ほとんど誰にも知らせずに旅に出た方が、いろんな理由からベストかと思います
ただ。悪友はあの“勇者様”の片腕でしたっけ。どこかでコンタクトとるか置手紙で「時間を稼いでくれ」と頼んどく必要もあるかもしれません

おふぅ……長くなった……言いたいことは言った、かな?
イ「他人の小説に口出すとか、だいぶ偉くなったんだな、え?」
モ「にわか仕込みの知識の癖に」
(´;ω;`)

自分も乱世とかそこら辺ベースにした話作ってみたいですねぇ。三国志とか好きでしたから
ファンタジー世界でも良いですね。ナルニア国物語は映画版しか見た事無いですが、合戦シーンが良かったですし

まぁまずはゾイド――
イモ「「その前に掃除終わらせろ」」
は、はい……

NoTitle 

お久しぶりです。いやあ、最近色々準備の期間でして、学校卒業だったり春には就職だったりで、今からワクワクが止まりません。
ミリタリー系の知識については、就職先である自衛隊で学びますけれど、こうして小説として収集しておくのも勉強になりますなあ。
技術や文化などは、異世界にも反映できるものが多くありますからな。しかし歴史は一から考えないとなあ……。
悠久で緩み捲ってたと言えど、千年の長い期間は馬鹿にできません。日本史とか大分端折っていますし、いや、日本の場合は半分くらい自国での戦争の歴史だったりしますけど、それでも平和な時期があるんです! 戦争ばっかしてたわけじゃないんです!ええ!
そう考えると、セシアーヌも統一されてた期間の歴史書って、結構薄いのだろうか? 何て考えましたです。

NoTitle 

疲れ果てて、小説書いてる途中で机で寝落ちすることが多くなってきました。身体は太る一方なのに、頭の中身は痩せてるみたい。いつもヒーヒー言ってます。3月になったら取引先が定期補修作業のためにしばらく止まってしまうらしいので、その間は仕事もさっさと終えて早く帰られるようになる、はず。早く3月にならないかなあ。
さてさて、遅くなりましたがコメント返信です。もう放ったらかしすぎていつの記事から返レスしてないのかわからなくなってしまったので、とりあえずもっとも新しい記事に頂いたコメントに返信をさせて頂きます。まずは地道に行かせてください(懇願)。


>隆之介さん
いつもコメントありがとうございます。隆之介さんのコメントはあらゆることが参考になります。広く深い知見はさすがです。エンターテイメントと人間ドラマを違和感のないように組み合わせられるか……きっと難しいでしょうね。『エルフになって~』は、シリアスとコメディを交互に絡ませながら、胸を締め付けるような切ない展開にも持って行きたいと企んでいるのですが、違和感が生まれないようにキャラクターも成長・変化させていくのは凄く難しそうで、ちょっと不安になってます。でも、挑戦することはやめないでおきたいです。世界観―――設定を矛盾がないようにしっかり作りこんでおけばブレることもないかな、とティム・バートン監督の台詞から想像する次第です。



> 積雪飯店さん
ようこそ、白銀の討ち手ブログへ!! 最近、執筆活動の速度が落ちてしまっていますが、気合を入れなおしてバリバリやっていきますよ!! せっかくバーサーカーはもうすぐ更新できそうです!! もうしばしお待ちを!!m(_ _)m



>イザナギさん
片付けは終わりましたでしょうか?(笑)
イザナギさんからのご意見、非常に参考になります。特に、軍事・戦術においてのご指摘には頷かされることばかりです。「敵の頭を叩く」ことが重要なのだとわからせるために、どう説明すればいいのか、わかりやすい例えは何か、主人公がその知識を得た源泉は何か。僕は漠然としか考えていなかったので、改めて考えさせられました。僕が思いついているのは、騎士団とは結局仲違いをするも、妖精の導きによって登場した皇帝の勇気ある鶴の一声によってエルフと勇者は独自の行動を許され、騎士団の追手を振りきって冒険(魔王暗殺)の旅に出る、という流れです。その際、わざと騎士団長を焚きつけることで人類軍の進軍には踏み切らせますが、補給の重要性や人類の絶望的な状況を説いたことで、逸るばかりだった人類軍の進軍速度は不安のために鈍化し、ゆっくりとひと固まりになって行動するようになります。そうして、一応大軍の形を取ることになった人類軍を囮にして、人類軍と魔王軍が衝突するまでの2、3ヶ月(この期間についてまだ考え中です)の間に、魔王を暗殺しよう、というのがエルフの考えであり、僕の考えでもあります。まだまだ穴だらけだと思うので、この辺りをもっと詰めていかないといけないですね。頑張るぞ!






NoTitle
お久しぶりです。いやあ、最近色々準備の期間でして、学校卒業だったり春には就職だったりで、今からワクワクが止まりません。
ミリタリー系の知識については、就職先である自衛隊で学びますけれど、こうして小説として収集しておくのも勉強になりますなあ。
技術や文化などは、異世界にも反映できるものが多くありますからな。しかし歴史は一から考えないとなあ……。
悠久で緩み捲ってたと言えど、千年の長い期間は馬鹿にできません。日本史とか大分端折っていますし、いや、日本の場合は半分くらい自国での戦争の歴史だったりしますけど、それでも平和な時期があるんです! 戦争ばっかしてたわけじゃないんです!ええ!
そう考えると、セシアーヌも統一されてた期間の歴史書って、結構薄いのだろうか? 何て考えましたです。


>enkidさん
おおっ!! ご採用、おめでとうございます!!
自衛隊へ入隊されたら、あまり絡めなくなってしまうかもしれませんね。そうなってしまったら、便りがないのは元気な証拠、と思って寂しさを紛らわせます。そうなる前まで、思いっきり絡みませう!!
セシアーヌの歴史についても、もっともっと設定を詰めていく必要がありますね。どこでいつ必要になるかわかりませんし、時系列を整えておくことはオリジナルファンタジーを作るうえで絶対にムダにはならないでしょうから。それに、考えるのも楽しそうです。セシアーヌの歴史書が薄いのか厚いのか、内容が薄いのか濃いのか、そもそも歴史はきちんとまとめられているのか、そこも考えないと。ううむ、難しそうだ。

NoTitle 

正直存在を完全に忘れているのでは?と思っていました。マジで。せっかくバーサーカーの更新楽しみです。・・・・・・・更新されますよね?

ところでここのサイト名にもなってる作品のことは覚えておられるでしょうか?
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