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二次創作

遅すぎるあけましておめでとうございますと、未完成小説を少し。

 ←TS小説、読み上げソフト利用してのチェックのために一時貼り。すぐに消します。 →『エルフになって~』の試作兼職場での確認用。(改)
 皆さま、あけましておめでとうございます。旧年中も、色々な方にお世話になりました。楽しいコトばっかり、というわけではありませんでしたが、公私ともにそれなりに充実していたのではないかと思います。仕事の変化やプライベートな変化、友人の変化、そして初めてのTSF合同誌への寄稿などなど、本当に色々なことがありましたが、振り返ればどれも良い思い出や教訓になるのではないかと思います。様々な感情が入り交じることばかりで言葉ではとても語り尽くせないことばかりです。今年は、遅筆ながら今抱えている作品の数々にケジメをつけるための年にして地道に邁進していこうと思っておりますので、遠目にでも見守って頂ければ幸いです。本年も、どうかよろしくお願い致します。ああ、TSF合同誌の小説の評判はどうだったのでしょうか。他の人の足を引っ張らなかったのか、美麗な挿絵の評判を落とすようなことにならなかったのか、それだけが心配でなりません。ハラハラ……ハラハラ……。


 さてさて、以下は『第四次聖杯戦争にセイバーが召喚されました。後編』の未完成版です。これが一番早く更新できそうなので現在黙々と書き進めております。この小説で書こうとしているセイバーVSアーチャーの最終決戦の流れが、当初『せっかくバーサーカー~』で書こうとしていたものでした。眠らせてしまうのは個人的に惜しいと思っていたので書く機会を得られて良かったです。港湾区画でのバーサーカー戦を終えたら、展開をすっ飛ばしてアーチャーとの最終決戦シーンに進む予定です。黙々と頑張ろう。でも、明日は6時出社なんだよなあ……。早く寝ないと。調子に乗って書き進めるとすぐにこんな時間になっちゃうんだから……。今日のところは、おやすみなさい。









ぱっか~~~~ん。



まるで人の口から発したような間の抜けた金属音が港湾区画に甲高く響き渡った。次いで、ガッチャン!と大柄の鎧武者が尻餅をついたような重い音が低く響く。事実そうであった。

「―――――……!? ……!?」

尻餅をついたまま、鎧武者―――漆黒の騎士が自身に何が起こったのかわからず左右に首を回す。酩酊したように意識がクラクラとして定まらないのは、直前に喰らった脳天への一撃のせいだろう。気づけば目庇に遮られていた視界が広まっており兜の喪失を彼に悟らせたが、狂化した彼にはそれ以上思考を巡らせることは不可能だった。
不意に、眼前に何者かが颯爽と歩み出る。忘我のままひょいと見上げれば、晴天のような戦装束と磨きぬかれた銀の鎧を纏った少女騎士が彼を見下ろしている。それは、右手に伝説の聖剣エクスカリバーを携えた、金髪麗しい騎士王だった。その泰然とした姿にこそ彼の|狂気《いかり》は無性に掻き立てられる。的はずれな憤怒だと振り返る理性は失われている。

「……Arrrthurr……!!」

 轟々と胸の内で猛り狂う感情が夜叉と化して顔面に滲み出る、まさにその刹那、


「|迎えに来たぞ《・・・・・・・》、|我が盟友《サー・ランスロット》」


まるで、道に迷っていた友人を苦笑を浮かべて迎えに来たような―――。
そんな、理屈抜きの優しさを湛えた微笑みを前に、狂気は跡形もなく霧散した。






数秒前。
冬木市海浜公園、港湾区画にて。

今宵の星は、夜空ではなく地上で輝いていた。その|御剣《みつるぎ》から赫奕と放たれる無尽蔵の輝きに比すれば、遠い星々の光などことごとく掠れてしまうのだ。
 騎士の栄光。騎士の誉れ。騎士の象徴。あまねく騎士たちの頂点に立つ|王《・》が天を差して力強く掲げた美しき宝剣こそ、世に名高き|世界最強の聖剣《エクスカリバー》に他ならない。

「Arrr――――thurr――――……!!」

故に、漆黒の騎士は憎む。聖剣を掲げる王ではなく、聖剣により始まった運命そのものを憎む。失ってしまった栄光を悔やみ、傷つけてしまった人々を悔やみ、そして誰よりも忠節を寄せた主君への裏切りを悔やむ。
せめて主君が怒りに身を燃やして彼を手に掛けてくれれば、まだ救いがあった。正当な怒りによって己の行為を断罪されて逝けるのなら、臣下としての救いがあった。しかし、主君は彼以上に悩み苦しんだのだ。彼よりもずっと儚いその矮躯を震わせながら、己の妻と忠臣を護らんと呻吟に悶え苦しんだ。挙句の果てに、彼の裏切りによって崩壊を始めた王国のために身命を賭し、|最後の戦場《カムラン》で短すぎる生涯を閉じた。事切れるその時まで不忠の騎士を責めることなく、理想の体現者は志半ばにして永久の眠りについた。殺めたばかりの息子の遺骸を前に、血に染まる丘で無念を噛みしめて非業の最期を遂げた。まだ寿命の半分も使い尽くしてはいなかったろうに。王国はまだ聖王を必要としていたのに。全てを台無しにしてしまった。今までの努力も犠牲も、何もかも全てが水泡に帰した。彼の裏切りのせいで。
違う。違う、違う、違う。こんなはずではなかった。こんなことを望んでなどいなかった。皆、最善だと思ったことを必死にやっただけだ。誰も彼も、恋した女を、在るべき秩序を、騎士の義務を、主君への忠誠を、ただただ命がけで護ろうと全てを投げ打っただけだ。その結果が最悪のモノとなったのなら、それは―――それは、|運命そのものが《・・・・・・・》|間違っていたから《・・・・・・・・》|に違いない《・・・・・》。
そうして、彼は運命を呪う|狂戦士《バーサーカー》となった。運命の起点となった聖剣を憎み、それを抜き放ってしまった主君の運命を憎んだ。
嗚呼、我が王よ。儚くて偉大な勇者よ。どうしてそんな|剣《モノ》を手に取ったのですか。どんなに陰惨な時代でもよかった。どんなに乱れた国でもよかった。あんな、皮肉で悲惨な結末を迎えることに比べれば、最初から出会わなければよかった。騎士になどならなければよかった。貴方とも、彼らとも、彼女とも、最初から出会わなければよかった。我らが伝説の始まりを|無かったこと《・・・・・・》に出来れば、どれほど救われることだろう。
―――そうだ、ソレを、そのキラビヤカな剣を叩き折ればどうだ。そうして忌々しい伝説を微塵に切り刻めば、運命の出発点は消えるのではないか。そうだ。そうすれば、きっと、俺の裏切りも、彼女の涙も、主君も忠勇も王国も、全てが最初から無かったことに出来るのだ。きっと皆が救われるに違いない。ああ、ならば―――為さぬわけにはいかない。
もはや有るか無しかもわからぬ思考の中、彼が狙い定めたのは他ならぬ|彼の主君《セイバー》だった。否、主君の姿をした“運命”だった。今の彼にとって、運命を覆すことがたったひとつの贖罪の術であり救済の道だった。
呪われた運命よ、いざ刮目せよ。呪われた騎士の|狂気《いかり》を目に焼き付けて死んで行け―――。
 兜の目庇の下、血走った眼光がギロリとセイバーを凝視する。刹那、|鉄靴《ソルレット》がアスファルトを踏み砕くと同時に二振りの凶刃が轟と音を立てて乱舞し、目にも留まらぬ速さとなって大気を切り刻む。剣閃は視認可能領域を超えてストロボのような瞬きへ加速する。バーサーカーは狂戦士と成り果てても尚衰えぬ精確な体捌きで地を踏みしめ、凄まじい勢いで間合いを詰めていく。最強騎士の神業に狂戦士の膂力が相乗された結果であった。如何なる達人ですら防御も回避も叶わない圧倒的な剣撃の嵐がセイバーに迫る。

「ダメ、逃げて、セイバーっ!!」

 カマイタチすら発生させる攻撃に、気を動転させたアイリスフィールが身を乗り出して悲鳴を上げる。だが、セイバーは動かない。煌々と輝く剣を片腕のみで振り上げたまま、襲い来る風圧など意にも介さずピクリとも動じない。

「セイバー、何を……!?」
「小娘、死ぬ気か―――?」
「―――?」

 ランサー、ライダー、そしてアーチャーまでもがセイバーの真意を図りあぐねて瞠目する。誰がどう見ても絶体絶命の状況だ。漆黒の凶刃はすでに彼女の眼前に迫っている。直ちに宝具を開放するなりしなければ切り抜けられない窮地に違いない。
 
だというのに、セイバーは何故、|微笑み《・・・》を浮かべているのか―――?

 困惑するそれぞれの反応を置き去りに、宝具化した鉄塊が大きく弧を描いて振りかぶられる。狙い澄ましたるは人型生物全ての急所、すなわち脳を擁する頭蓋だ。王冠に飾られた金髪の頭頂部目掛け、今、限界まで引き絞られた筋肉が音を立てて解き放たれる。

「Arrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrr!!!」

 咆哮を迸らせ、電光石火の一撃が振り下ろされる。もはや一巻の終わりだ。ある者は見るに堪えかねて両手で視界を覆い、ある者は嘆息して踵を返しかける。
 そして、




ぱっか~~~ん。




 その音が響いたのだった。




「どうした、ランスロット卿。円卓最強の騎士ともあろう者が情けない。ははあ、大方、我らの死後に隠居してから修練を怠っていたのであろう? そんな体たらくでは、キャメロットで貴方との仕合を今か今かと待っているガラハッドを失望させてしまいかねないぞ」

 飄々と口にしながらも、口調には一切の誹謗を含まない。互いに勝手知ったる真の友と心得ているが故に、深い部分にまで踏み込めているに違いなかった。しかも、相手は|あのランスロット《・・・・・・・・》だという。周囲の者たちはセイバーが口にした名前でバーサーカーの真名を理解して驚いたが、それが|アーサー王《セイバー》の死のキッカケを作った裏切りの騎士の名だと至ってさらに驚愕した。一目見てその正体を看破した挙句、裏切り者にこうも親しげに話しかけるセイバーの度量の大きさに、驚愕を通り越して呆れもした。


(続く)
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