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二次創作

「第四次聖杯戦争にセイバーが召喚されました。」の試作

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 かつて、僕には「どうや、おもろいやろ!これおもろいやろ!」という強気があった。技術はなくても気持ちだけで書けていた。だけど今は、「これは面白いのだろうか?正しいのだろうか?」とビクビクしながら書き進めてる。歳をとったのだろうか。今では、かつての自分が強気で打ち立てた小説を、後ろから追いかけるようにして書いている。かつての自分の背中を追いかけているのだ。






ぱっか~~~~ん。



まるで人の口から発したような間の抜けた金属音が港湾区画に甲高く響き渡った。次いで、ガッチャン!と大柄の鎧武者が尻餅をついたような重い音が低く響く。
事実そうであった。

「―――――……!? ……!?」

尻餅をついたまま、鎧武者―――漆黒の騎士が、自身に何が起こったのかわからず左右に首を回す。酩酊したように視野がクラクラとして定まらないのは、直前に喰らった脳天への一撃のせいだろう。気づけば|目庇《まびさし》に遮られていた視界が広まっており、兜の喪失をぼんやりと悟らせたが、狂化した彼にはそれ以上思考を巡らせることは不可能だった。
不意に、目の前に何者かが颯爽と歩み出る。忘我のまま見上げれば、晴天のような戦装束と磨きぬかれた鎧の少女騎士。右手に伝説の聖剣エクスカリバーを携えた彼女こそ、金髪麗しい騎士王に―――彼の主君に他ならない。その泰然とした姿にこそ、彼の|狂気《いかり》は無性に掻き立てられる。

「……Arrrthurr……!!」

 自分でも的はずれな憤怒だとわかっていた。しかし、それを振り返り自制する理性は失われている。制御不能の感情が胸の内で猛り狂い、顔面に夜叉の如く滲み出るその刹那、


「待たせたな|《・・・・・》。|迎えに来たぞ《・・・・・・・》、|我が盟友《サー・ランスロット》」


まるで、道に迷っていた友人を苦笑しながら迎えに来たような―――
そんな、理屈抜きの親愛を湛えた微笑みを前に、狂気は跡形もなく霧散した。






数秒前。
冬木市海浜公園、港湾区画にて。

今宵の星は、夜空ではなく地上で輝いていた。その|御剣《みつるぎ》から赫奕と放たれる無尽蔵の星の輝きに比すれば、遠い星雲などことごとく掠れてしまう。
 騎士の栄光。騎士の誉れ。騎士の象徴。あまねく騎士たちの頂点に立つ|王《・》が、今まさに天を差して力強く掲げる美しき宝剣こそ、世に名高き|世界最強の聖剣《エクスカリバー》に他ならない。

「Arrr――――thurr――――……!!」

だからこそに、漆黒の騎士は憎む。聖剣を掲げる王ではなく、聖剣により始まった運命そのものを憎む。失ってしまった栄光を悔やみ、傷つけてしまった人々を悔やみ、そして絶対の忠節を誓った主君への裏切りを悔やむ。
せめて主君が怒りに身を燃やして彼を手に掛けてくれれば、まだ救いがあった。敬愛する主君の正当な怒りによって己の行為を断罪されて逝けるのなら、臣下としての救いがあった。しかし、理想の王たる主君は彼以上に悩み苦しんでしまった。儚い矮躯を震わせながら、どうにかして己の妻と忠臣を護ろうと呻吟に悶え苦しんだ。挙句の果てに、彼の裏切りによって崩壊を始めた王国のために身命を賭し、|最後の戦場《カムラン》で短すぎる生涯を閉じた。事切れるその時まで不忠の騎士を責めることなく、理想の体現者は志半ばにして永久の眠りについた。殺めたばかりの息子の遺骸を前に、血に染まる丘で無念を噛みしめて非業の最期を遂げた。まだ寿命の半分も使い尽くしてはいなかったろうに。王国はまだ聖王を必要としていたのに。全てを台無しにしてしまった。今までの努力も犠牲も、何もかも全てが水泡に帰した。彼の裏切りのせいで。

違う。違う、違う、違う。
こんなはずではなかった。こんなことを望んでなどいなかった。皆、最善だと思ったことを必死にやっただけだ。誰も彼も、恋した女を、在るべき秩序を、|騎士《おとこ》の矜持を、主君への忠誠を、ただただ命がけで果たそうと全てを投げ打っただけだ。その結末が最悪のモノと至ったのなら、それは―――それは、|運命そのものが《・・・・・・・》|間違っていたから《・・・・・・・・》|に違いない《・・・・・》。
そうして、彼は運命を呪う|狂戦士《バーサーカー》となった。運命の起点となった聖剣を憎み、それを抜き放った主君の運命を憎んだ。
嗚呼、我が王よ。儚くて偉大なブリテンの勇者よ。どうしてそんな|剣《モノ》を手に取ってしまったのですか。どんなに陰惨な時代でもいい。どんなに乱れた国でもいい。あんな皮肉で悲惨な終焉を迎えることに比べれば、我らの邂逅に何の意味があったのか。騎士になどならなければよかった。王になどなってくださらねばよかった。貴方とも、彼らとも、彼女とも、最初から出会わなければよかった。我らが伝説の始まりを|無かったこと《・・・・・・》に出来れば、どれほど救われることだろう。
―――そうだ、ソレを、そのキラビヤカな剣を叩き折ればどうだ。そうして忌々しい伝説を微塵に砕いてやれば、運命の出発点もまた消えてくれるのではないか。
そうだ。そうすれば、きっと、俺の裏切りも、彼女の涙も、主君も忠臣も王国も、全てが最初から無かったことに出来るのだ。きっと皆が救われるに違いない。望むに違いない。喜んでくれるに違いない。ああ、ならば―――|為さぬわけには《・・・・・・・》|いかない《・・・・》。
もはや有るか無しかもわからぬ思考の中、彼が狙い定めたのは他ならぬ|彼の主君《セイバー》だった。否、主君の姿をした“運命”だった。今の彼にとって、運命を覆す試みだけがたったひとつの贖罪の術であり救済の道だった。

呪われた運命よ、いざ刮目せよ。呪われた騎士の|狂気《いかり》を目に焼き付けて砕け散れ―――!!

 兜の目庇の下、血走った眼光がギロリとセイバーを凝視する。次の瞬間、|鉄靴《ソルレット》がアスファルトを激しく踏み砕き、乱舞する狂槍が目にも留まらぬ速さとなって大気を切り刻む。剣閃は視認可能領域を超えてストロボのような瞬きへ加速する。彼は狂戦士と成り果てても尚衰えぬ精確な体捌きで地を踏みしめ、凄まじい勢いで間合いを詰めていく。最強騎士の神業に狂化ステータスの膂力増強が相乗された結果であった。如何なる達人ですら防御も回避も叶わない圧倒的な剣撃の嵐がセイバーに迫る。

「逃げてッ、セイバ―!! いくら貴女でも、これは……!!」

 カマイタチすら発生させる恐るべき攻撃に、気を動転させたアイリスフィールが身を乗り出して訴える。だが、セイバーは動かない。煌々と輝く剣を片腕のみで振り上げたまま、襲い来る風圧など意にも介さずピクリとも動じない。

「セイバー、何を……!?」
「あ奴、死ぬ気か―――!?」
「む―――?」

 ランサー、ライダー、そしてアーチャーまでもがセイバーの真意を図りあぐねて瞠目する。誰がどう見ても絶体絶命の状況だ。漆黒の凶刃はすでに彼女の眼前だ。直ちに宝具を開放するなりしなければ切り抜けられない窮地に違いない。

 だというのに、彼女は何故、|微笑み《・・・》を浮かべているのか―――?

 困惑するそれぞれの反応を置き去りに、宝具化した鉄塊が大きく弧を描いて振りかぶられる。狙い澄ましたるはヒト型全ての急所、すなわち脳を擁する頭蓋だ。王冠に飾られた金髪の頭頂部目掛け、今、限界まで引き絞られた筋肉が音を立てて解き放たれる。

「Arrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrr!!!」

 咆哮を迸らせ、電光石火の一撃が振り下ろされる。音速の壁を真っ二つに叩き割り、ねじ切られた大気が断末魔の悲鳴を上げる。膨張する衝撃波すら置き去りにした音速の槍の切っ先が金髪に触れる。
 もはや何をしても間に合うまい。ある者は見るに堪えかねて両手で視界を覆い、ある者は息を呑んで目をかっ開き、ある者は興ざめに踵を返しかける。
 そして、




ぱっか~~~ん。




 その音が響いたのだった。




「どうした、|湖の騎士《ランスロット・デュラック》。円卓最強と名を馳せた貴方ともあろう者が、ずいぶんと鈍いではないか。ははあ、さては大方、坊主になって隠居してから修練を怠っていたのであろう? そんな体たらくでは、キャメロットで貴方との手合わせを今か今かと待っているガラハッドやガウェインを失望させてしまうぞ」

 そのセイバーの口ぶりは、一切の誹謗を含まない爽やかなものだった。互いに勝手知ったる真の友と心得ているが故に深い部分にまで踏み込めているに違いなかった。しかも、相手は“湖の騎士”――――|ランスロット《・・・・・・・・》だというではないか。周囲の者たちはセイバーが口にした二つ名でバーサーカーの真名を理解して驚いたが、それが|アーサー王《セイバー》の死のキッカケを作った裏切りの騎士の名だと知るに至ってさらに驚愕した。マスターにすら見透せない幻影を纏ったバーサーカーの正体をひと目で看破した挙句、不忠者にこうも親しげに話してみせるセイバーの洞察力と度量の大きさに、驚愕を通り越して呆れもした。


(途中)
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