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二次創作

ガルパン二次創作

 ←【ガルパンはいいぞ】そのエリカ、猟犬につき 後編【試作】 →色々なことがあった。
書きかけ小説データが自分のミスで吹っ飛んでからというもの、どうにもやる気がでない。ちょっと書き進める度に、「あーあー、せっかくけっこう書いてたのになあ」とボヤいてしまって、怒りを叩きつける場所もなく、筆が止まってしまう。もったいない。もったいない。





『―――貴女は、|私の夢《・・・》だからよ』


 “どうして、いつも私を助けてくれるの?”。何気ない、でもずっと気になっていた私の問い掛けに、その人はいつになく真剣な表情でそう応えた。
 その人は、本気になればどこまでも登り詰められる力量を持っていた。綺麗な銀髪によく似合う美人さんで、そして私なんかよりずっと強い。お姉ちゃんもここぞという時に頼りにするくらいの、まるで戦車乗りになるために生まれてきたような人だった。でも、|ここが私の定位置《・・・・・・・・》と言うように、勝利の花道は必ずお姉ちゃんや私に譲ってしまっていた。その気になれば、今すぐにだって相応の地位を掴める実力者なのは間違いないのに。その人に頼りっきりの私たちに愛想を尽かして他校に赴けば、高待遇とともにあっと言う間に頂点に登り詰められるのに。一歩踏み出せば、その人には無限の可能性があるのに。だというのに、その人はどうしてか、その一歩を決して踏み出そうとしなかった。真っ先に勝利の栄光を浴びられる可能性を秘めていながら、常に一歩下がって私たちを優先させてきた。そのおかげで、お姉ちゃんは黒森峰の隊長となって国際強化選手にも指定されたし、私も副隊長に昇格して、二人してお母さんにも褒めてもらうことができた。ほんの少し前はお母さんに褒めてもらえるなんて想像もできなかったのに。とっても嬉しかったけど、私はモヤモヤとした複雑な気持ちを抱いた。だって、まるでその人を踏み台にしてしまっている気がしたから。自分の戦車道を見つめなおすキッカケを与えてくれた大切な友だちを、都合よく利用してしまっているような気がしたから。そんなこと、絶対にしちゃいけないのに。むしろ、私に前に進む勇気を与えてくれた恩を何としてでも返したいのに、その人は頑なに首を横に振って、逆に私の背を凱旋門に向かって押した。自分が受けるはずだった賛辞を私に譲って、その人はそっと影から私を見守ってくれていた。そこまでしてくれる義理なんて無いはずなのに。


『―――みほ、貴女は私の夢そのものなのよ』


 そんな私の感情をまたも容易に見抜いて、その人はいつもの斜に構えた態度を忘れてじっと私の目を見つめる。切なげに細められた双眸に思わずドキリと胸が高鳴る。


『―――貴女をこうして見守ることが出来るのは、私にとってこれ以上ない喜びなの。貴女が|より良い物語《・・・・・》を歩む姿を見ることは、その物語を他ならぬ自分自身が手助けできることは、私にとって夢のようなことなの』

(まだ途中)





「―――副隊長車、川に転落。完全に水没しました。目撃したM3スチュアートは撃破。後部の通信設備を完全に破壊しましたので、敵|隊長《フラッグ》車への報告はできません。すべて西住隊長の作戦通りですね」
「…………」
「……西住隊長?」





(まだ途中)







 半年前―――。

 打倒黒森峰を掲げた聖グロリアーナ学園が満を持して挑んだエキシビジョンマッチにおいて、当時副隊長としてすでに頭角を現していたダージリンは|隊長《フラッグ》車の直衛兼補佐としてチームの中核を担っていた。その活躍は凄まじく、進撃を阻む黒森峰の戦車を一両また一両と次々に仕留めていった。しかも、ただ目の前の敵を屠るだけではなく、そこには明確な戦術があった。
『機動力に優れた戦車で獲物を追い立て、重装甲の戦車で包囲し、殲滅する。』
 現在のグロリアーナの代名詞とも称される『強襲浸透戦術』はダージリンの手腕によって確立されたと言っても過言ではない。事実、その日、ついに黒森峰の|隊長《フラッグ》車を市街地の袋小路に孤立させ、母校の勝利をあとわずかで手の届くものにした功績は間違いなくダージリンにあった。全員が勝利をすぐ指先に感じていたし、ダージリンでさえ気を逸らせてハッチから身を乗り出し、勝利の高揚に総身を昂ぶらせていた。
 それは、動物的な観点で言えば“油断”に他ならず、|その獣《・・・》にとってはまさに獲物が無防備な喉を晒した絶好の瞬間だった。

『ぐるるるる……』

 その時、獣が喉を鳴らすような唸り声をダージリンは確かに聞いたという。
 次の刹那、視界の端に並ぶコンクリート壁が突如轟音とともに爆裂したかと思いきや、粉塵を突き破って“銀髪の獣”が本隊の横合いから猛然と襲いかかってきたのだ。何が起こったのかもわからぬままダージリンは真っ先にその牙に晒されることになり、気づけば目の前には討ち取られた|隊長《フラッグ》車が無残に横倒しになって、その白旗を呆然と見上げていたのだった。
 後から聞いた話で、それは「孤立した|隊長《フラッグ》車を全力で救援せよ」という隊長命令を無視した当時副隊長の西住まほが独断でけしかけた、たった一両のティーガーⅡによる強襲だったことがわかった。
 密集し、閉ざし合った複雑な市街地の中で、どうしてまっすぐにグロリアーナの本隊の場所を察知できたのかは定かではない。最初に隊長ではなくダージリンを狙ったのは、獣の勘なのか、それともダージリンがいなくてはチームが成り立たないことを|知っていたから《・・・・・・・》なのかも定かではない。ただ一つ確実なことは、ダージリンの勝利を食い破った要因が、練りに練られた作戦でも、考えぬかれた用意周到な伏兵でもなく―――ただ“|狂犬の手綱を《・・・・・・》|解き放っただけ《・・・・・》”という救いようのない事実だった。その時にダージリンが味わっただろう苦渋を、胸が抉られるほどの自責を、頭が腫れ上がるほどの屈辱を、オレンジペコは想像するだけで痛いほどに奥歯を噛み締める。

 ダージリンの栄光に土をつけたその銀髪の獣こそ、グロリアーナが忌み名で呼ぶ『|バスカヴィル家の魔犬《バスカヴィル・ヘルハウンド》』。
 “完璧な戦術で敵を圧倒する”という西住流の影響根強い黒森峰にあって、唯一戦術を果たさないことを認められた者。
 飼い主が|首綱《リード》を握る手を離したら最後、作戦も何もかもを台無しにして、獲物を食い尽くすまで暴れまわる狂気の怪物。
 優秀な人材と装備を揃える黒森峰にあって、火砲、装甲、そして乗り手の全てにおいて現有戦力中最強を誇る戦車。
 西住まほすら完全に使いこなせなかった、“黒森峰の狂犬”。勇名悪名両方名高きその狂犬の名を、|逸見エリカ《・・・・・》という。

 そんな、解き放たれれば戦況を覆される切り札への対処法は一つしか無い。言ってしまえば単純で簡単な話だ。|飼い主が狂犬を《・・・・・・・》|解き放てないように《・・・・・・・・・》|すればいい《・・・・・》。

「新しい飼い主さんは、頼れる犬を自分の傍から離す勇気はないようですわね」

 微かな冷笑を混ぜて呟いたアッサムの目は絶えず最大望遠のスコープに傾注したまま離れない。彼女の鋭い両眼には、闇夜を見通す暗視装置によって暴き出されたティーガーⅡのズングリと角ばった特徴的なシルエットが|然《しか》と映り込んでいた。隊長車《ティーガーⅠ》の隣にじっと|傅《かしず》いたまま雨に打たれる姿は、新しい飼い主の不甲斐なさに辟易してやる気を無くしているようだった。

「当然ね。どんなに強い狂犬でも、飼い主に扱いきれるだけの度量がなければ駄犬に成り下がる。私たちがまともに狂犬の相手をする必要なんてない。ただ、飼い主の方を攻めて攻めて攻め続けて、考えあぐねる余裕すらも奪ってしまえばいいのよ」

 切り札を有する黒森峰への対抗策としてダージリンが導き出した作戦は極めて明快だった。ここぞというタイミングで切り札を使われるのなら、そのタイミングを奪ってしまえばいい。基本的戦法である『浸透強襲戦術』をさらに激化させた『超・浸透強襲戦術』とも呼ぶべきそれは、出し惜しみなど一切せず、敵に対応を練る猶予すら与えず、優雅も気品もなく全戦力を持ってただひたすら追い立て続けるという、単純なれど容赦のない戦法だった。事実、黒森峰の新しい隊長は切り札の首綱を手放す好機を完全に逸してしまい、行き止まりの窪地に身を寄せあって己と道連れにしようとしている。

「気の毒ね、逸見エリカ。不甲斐ない飼い主を持ったばかりに望まない最後を強いられるなんて。せめてまほさんだったなら、まだまともな戦いをさせてくれたでしょうに……」
「……ダージリン様、相対距離が|900ヤード《820メートル》を切りましたわ。いつでも|討《・》てます」

 声に少しの緊張を織り交ぜたアッサムが背中で指示を仰ぐ。チャーチル歩兵戦車の主砲であるオードナンスQF6ポンド対戦車砲の有効射程は|1,650ヤード《1,510メートル》。普段ならば威力不足は否めない砲だが、この距離まで近づけばいかに堅牢なドイツ戦車の装甲も貫ける。そして、いかに高威力のドイツ戦車砲でも、この程度の距離ではチャーチルの正面装甲は貫けない。敵の残存勢力が全て前方に集中し、装甲の薄い後方から攻撃を受ける心配がない今、チャーチルはすでにこの戦場を制したようなものだ。いや、事実として|そうなる《・・・・》のだ。今から、|そうする《・・・・》のだ。
 すうっと鼻孔から深く息を吸い込み、ダージリンは静かに目を閉じて、そして強く開く。一瞬、瞼の裏に映り込んだのは、かつて彼女が味わった屈辱と挫折の光景だ。あの敗北があればこそ、ダージリンは母校をサンダースやプラウダと一線を画する強豪校にまで押し上げる実力を持つに至った。しかし、忌々しい記憶は常に彼女の傍らにあり続けた。それも今日までだ。あの時に失った誇りを取り戻すために、過去を清算して前に進むために、彼女は慈悲も同情も忘れて復讐の修羅となる。

「―――全車に通達、遠距離砲撃戦の用意。オレンジペコ、砲弾は問題ないわね?」
「はい、ダージリン様。強化薬莢と装弾筒付貫通徹甲弾、すでに装填完了しています。次弾装填もいつでも行けます」

 狂犬が駆るティーガーⅡはチャーチルに劣らない重装甲で知られている。火薬と爆薬を強化し、貫通力を極限まで高めた砲弾でなければ有効打は与えられない。その知識を有し、なおかつダージリンの戦術を理解して適確な砲弾を前もって準備できる。まだ入学して間もないオレンジペコが、次期隊長候補として隊長車への同乗を許されている由縁だ。見事に期待に応えてくれたオレンジペコにダージリンは「さすがね」と誇らしげな笑みで頷く。オレンジペコの背筋にピリリと熱い興奮が走る。

「完璧よ、オレンジペコ。各車両にも同じ弾種を使用することを通達して。アッサム、狙いそのまま。私の合図で、まずはバスカヴィルの|無限軌道履帯《キャタピラ》を穿ちなさい。その後で|隊長《フラッグ》車を確実に撃破するのよ」
「わかりましたわ。一撃で仕留めてみせます」

 澱みのない決然とした指示はダージリンの覚悟に満ち満ちて、それが見えない球となって全車両を包み込んで少女たちの心を一つにする。長らく日本戦車道に君臨してきた王者を討ち取る偉業に、さしものアッサムも武者震いに震えていた。一年生のオレンジペコなら尚さらだ。緊張の面持ちを浮かべたオレンジペコが、手元のラップトップに視線を注いでゴクリと喉を鳴らす。幅|100フィート《30メートル》の鬱蒼とした藪道が続く先に、|黒森峰の集団《えもののむれ》が待っている。直線距離にして|850ヤード《780メートル》。互いに有効射程内だ。いつ決着がついてもおかしくない。

「バスカヴィルと|隊長《フラッグ》車はチャーチルが引き受けるわ。あとは―――任せていいわね、ローズヒップ?」
『ハイですわァッ!!』

 ピンポン球が跳ね返ってきたような即答がスピーカーを震わせ、待ってましたと言わんばかりにエンジン音を高鳴らせたクルセイダーMk.Ⅲ巡航戦車がチャーチルの真横に進み出た。小型軽量のボディに高出力のエンジンを搭載し、最高出力340馬力、規定最高速度|30マイル《50キロ》の俊足を誇るクルセイダーは、先頭になって敵陣をかき乱す露払い役には打って付けだ。

「ローズヒップ、直衛の任を解くわ。クルセイダー4両を率いて先行なさい。相手をポップコーンみたいに盛大に慌てさせて指揮系統を崩すのよ。我がグロリアーナにも獲物を追い立てる優秀な狩猟犬がいるのだということを、黒森峰の方々に思い知らせてあげなさい」
『了解ですわ、ダージリン様! ―――ところで、優秀な狩猟犬って|何方《どなた》が飼ってらっしゃるんですの? 私、まだそのワンちゃんを見せて頂いたことがありませんわ』
「……後でアッサムが説明してくれるわ」
「ちょッ、ダージリン様!?」
『わかりましたですわ! アッサム様、あとでそのワンちゃんを見せて下さいませー!』

 思わず振り返ったアッサムの狼狽など露知らず、“聖グロの飛び道具”と呼ばれるイノシシ少女が持ち前の甲高い声を跳ね返してくる。顔は見えないが、彼女が目を輝かせていることは鼓膜を震わせるほど楽しげな声で一|耳《・》瞭然だ。鈍足のチャーチルと並走していた鬱憤をようやく晴らせるという気持ちがありありと滲み出ていた。まるで久しぶりに散歩に連れて行ってもらってテンションがおかしくなった犬のようだ。面倒事を押し付けられたアッサムが不快気ではない苦笑を浮かべて「まったくあの娘は」とボヤく。

(勝てる。私たちは間違いなく勝てるわ。ダージリン様はやっぱり凄い……!)

 決戦を前にして士気は漲り、油断は一切なく、張り詰め過ぎない精神的余裕もある。オレンジペコは“完璧な勝利”の確信を肌で感じていた。これこそが優雅を旨とするグロリアーナの在るべき姿だ。これで勝てない方がおかしい。グロリアーナの、ダージリンの勝利は、もはや月の満ち欠けのように決まりきったことだ。完全無欠の勝者にしか作ることの出来ない空気を肺いっぱいに吸い込み、染み込ませ、いつか自分が再現するためにその味と成分を心の奥底に刻もうと必死になった。

『全クルセイダー、私に続きなさいませですのよ!』

 戦車の中では飛び抜けて加速性能の高いクルセイダーと高速戦闘を得意とするローズヒップの組み合わせは、敵の混乱を誘うには最適だ。飛び出してきたクルセイダーの素早さに驚き、翻弄された敵戦車は統率に楔を打たれ、連携を失い、各個撃破の的と成り果てる。そうして丸裸となったキングに、こちらのキングがとどめを刺す。

「チェックメイト、ですわね」

 静かに、しかし自信を込めて呟き、ダージリンはカップに唇をつける。その言葉に全員が力強く頷き、各々の機器を握る手に力を込める。オレンジペコのラップトップがついに接近警報を発する。敵集団との相対距離はもう|710ヤード《650メートル》もない。ローズヒップにとってはものの数歩分の距離だ。
 主君のために雑兵を露払う|クルセイダー《十字の騎士》が、軍旗を掲げた中世の騎兵よろしく雄叫びを上げながら次々とチャーチルの横をすり抜けて驀進していく。速度調整機の|足枷《リミッター》を外されたクルセイダーが持てる全ての機関出力で乗り手の覇気に応える。エンジンブロック内で爆炎を哮らせたナッフィールド社製『|束縛無き自由《リバティー》・エンジン』が嘶きを上げて、カタログデータを越えた時速|38マイル《61キロ》を叩き出す。風の色をしたクルセイダーが目の前の暗闇に向かって突進していく。いざ、決着の時だ。凱歌を歌うように高らかに、ローズヒップがお決まりの台詞を喉奥から迸らせる。

『さァあ、リミッター外しちゃいますわよォ――――――|あら《・・》?』

 不意に、グロリアーナの優秀な狩猟犬が|何か《・・》に気づいて声を上げた。


(進んでない)
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~ Comment ~

NoTitle 

どうせならしばらく投稿していない作品の続きとかどうでしょう?
白銀の討ち手とか・・・とか・・とか!!!
(白銀の討ち手を読みたいだけ

 

ぎゃあ 面白かったです‼
完成版楽しみに待ってます‼

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