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超短いTS小説 『TS娘と親友とバイクと』(7/12 完成)

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思い付いたTS小説を殴り書き。
上手くまとまりませんでしたが、こんなのになりました。いつか、清書する機会があればもう少し整えて、投稿サイトさんに投稿しようと思います。



 今、オレは自室の布団に頭を突っ込んでいる。バイクスーツも脱がずにシーツを頭からかぶり、燃えるように熱い頬を意識しまいと枕に顔をハンコみたいに押し付けている。けれども、頬の赤い火照りは映るどころかカッカと増してくる一方だ。よく使われる「恥ずかしさで死にそう」というのは比喩ではなく本当のことだとよくわかった。よくわかったから、どうか収まってくれ。でないと、オレの頭はショウのことしか考えられなくて、今にも勝手にバースト(破裂)してしまいそうだ。

 ショウは、小学校の頃からの幼馴染だ。子どもの頃から二人ともバイクが好きで、同じ工業高校に通い、同じ教習所で免許を取って、同じ店でバイクを買った。喧嘩といえば、それぞれの好みのバイクメーカーの優劣や、各部品の強度や耐久度の解釈の違いだった。そんなバイク馬鹿二人の夢も、当然バイクに関連するものだった。ショウは専門学校で一級整備士となり、バイクメーカーで究極のバイクを造る。そしてオレはレーサーとなって、そのバイクを完璧に乗りこなして世界に挑む。高校を卒業し、オレたちは互いに夢を叶えようと誓いあった。

 ―――2年前、オレがTS病にかかるまでは。

 急性女性化病という奇病は瞬く間にオレの体をむしばみ、自宅で昏倒してから病室で目が覚めるまでの3ヶ月でオレの肉体は完全に女のそれに変えられてしまった。体は縮み、視点は低くなり、握力も貧弱になり、筋力はあまりに頼りなく、皮膚はサランラップみたいに薄い。元々、二十歳にしては童顔よりだった顔立ちは、童顔どころではなく未熟そのものになってしまった。実年齢より三つは幼く見えると言われた。
 女子高生、下手したら女子中学生と言っても通用してしまう容姿の激変。順応が得意とされる人間の脳でも、この奇病にさすがに適応しきれない。TSした人間は皆一様に脳が混乱をきたし、しばらく、あるいは一生、身体機能が満足に振るえなくなるといわれた。法整備も進んでおらず、バイクには乗れないといわれ、免許―――夢を取り上げられた。
 オレは絶望した。あんなに好きだったバイクに乗れなくなった。ショウとの約束を叶えられなくなった。見舞いに来るたびにショウは励ましてくれたが、オレは沈む一方だった。

 だけど。TSして半年後の退院当日、ショウはオレの手を取り、駐車場まで無理やり連れて行った。そこには、二人乗り用のタンデムシートとヘルメット二つを装備した大型バイクがあった。ショウは目を丸くしたままの俺を抱き上げて後部座席に乗せると、その足で海岸線までバイクを走らせた。西の水平線に隠れて行く夕日が目にしみて、オレはずっと泣いていた。今まで見たどんな光景より強く、目と、そして心にじんと染みる夕日だった。
 涙で濡れる背中に文句も言わず、ショウは黙ってバイクを走らせ続けてくれた。オレは心底嬉しかった。
 
 それから、ショウは暇があるたびにオレをドライブに連れていってくれた。乗る度に、バイクの性能が向上していくのが、ショウの技術が進歩していくのがわかった。同じ時期に、法整備が進んで、基準を満たせばTS病の人間でもまたバイク免許が復活するようになることがわかって、オレはリハビリに精を出すようになった。いつか二人でバイクを並べて走ることを夢見て。そして、再びレーサーへの夢を目指すことを誓って。
 
 でも、三か月ほどすると、オレの気持ちに変化が生じてきた。一人でバイクに乗ることより、ショウの腹に抱きついてバイクに乗ることの方が楽しいと思い始めた。今まで気にもしなかった男特有の匂いがわかるようになったけど、ショウのものは不思議と不快ではなかった。目の前の大きな背中を頼もしいと感じ、その感情を違和感なく自然に呑み込むようになっていった。そして、ついに今日、その変化の正体に気付かされた。キッカケは、隣県の平野をツーリングしていた時だった。



 ツーリングをしていると、自然にバイクの愛好家が集まる場所に寄ることになる。休憩のためにそこに立ち寄り、ヘルメットを脱いで蒸れた髪を左右に振る。そんなオレを一目見て、ハーレー乗りの強面たちがヒューッと申し合わせたように意味ありげな口笛を吹いた。そんな反応をされるのは初めてだったから、オレはキョトンとして革ジャンのオッサンたちを見返した。すると、オッサンの一人がサングラスをズラして、オレでなくショウの方に嫌味のない目を向けて、こう言った。

「アンちゃん、バイクもいいが、彼女はもっと良いじゃねえの。羨ましいね」

 オレは一瞬、何を言われたのかわからなかった。『カノジョ』の意味を理解するのにたっぷり3秒は掛かった。3秒後、オレは合点がいったと心の中でポンと手を打った。なるほど、第三者から見たら確かにそう見えるだろう。ショウが買ってくれたバイクスーツもヘルメットも、ショウのものとお揃いだ。勘違いされてもおかしくない。
 オレは、「わはは」と笑って否定しようとショウの顔を覗き込んで、

「………」

 ショウは何も言わなかった。てっきりショウも笑って首を振ると思っていた。真っ赤になった耳たぶと頬を目にして、オレは思わず動きを止めた。こちらを振り返ろうとするショウと目が合いそうになり、オレは顔を引っ込めて俯いた。それからのことはよく覚えていない。帰りに洋食屋に寄って、二人で黙ったまま夕飯を食べて、気まずい沈黙のまま家まで送ってもらって、ぎこちなく手を振って別れて、そして現在の頭隠して尻隠さずな状態に戻る。
 でも、恥ずかしさで死にそうな原因は、ショウの如何にもわかりやすい反応じゃない。本当の理由は―――ショウの反応を嫌だと思わなかった、オレ自身の反応だった。
 どうして、今の今まで気が付かなかったんだろう。
 連れて行ってくれる飯屋が、男だった時によく行っていた安いラーメン屋から、いつのまにか女が好きそうな洒落た洋食屋に変わっていたことに。「いつかバイク好きの彼女が出来たらお揃いのスーツとメットでツーリングしたい」と言っていたことに。
 明日から、どんな顔をして会えばいいんだろう。去り際に、「また明日」と約束を交わしてしまったことを思い出す。
 どうして、今の今まで気が付かなかったんだろう。
 背中に抱きついてショウの鼓動に自分の鼓動を同期させることが得意になったことに。
 ショウと会えることが、いつの間にかバイクに乗ることよりも楽しみになっていたことに。
 また会えると思うと、なぜか下っ腹が疼いて、勝手に顔がニヤニヤすることに。
 「また明日」と交わす約束のおかげで、きついリハビリがちっとも苦じゃなくなっていることに。
 オレもまた、ショウのことを異性として意識していることに。
ああ、明日から、どんな顔をして会えばいいんだろう。何を話せばいいんだろう。悩んでも悩んでも答えは出ない。このまま頭がバーストしてくれた方がどれほど楽だろう。

 でも―――不思議と、TS病のことを悔いる気持ちは、もうなくなっていた。これでよかったのかもしれない、と思えた。
 そうだ、明日は、この気持ちを話してみよう。ツーリングしながらなら、きっと素直に話せるから。


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