白銀の討ち手 旧ver.

白銀の討ち手IF~白と赤のコムニオ プロローグ~ (作:黒妖犬様)

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白銀の羽を広げ、眼下に広がる町並みを眺める。
「…なんでこんな事に…」
 その町の一角を見て、思わずため息とともにそんな言葉が出た。
 確かに色々あった…それに比べれば些細な事かもしれないけど…けどこれは追い討ちというやつなのか?
 『仮装舞踏会』との戦いに敗れ、消えかけた所を、偶然通りかかった紅世の王、『贋作師』テイレシアスのおかげで存在する事ができた。諸事情によりその姿は最愛の人、シャナになってしまったが…
 そして何の因果か過去に戻ってしまった…その事に気づいて絶望した様は、まさに抜け殻だっただろう…しかしそんな抜け殻でも想いを残す事が出来た、想いを受け止めてくれる人がいた…それは幸せな事だったのだろう…だから”サユ”として歩む事が出来た…それなのにこれはあんまりなのではないか?
「日頃の行いがと言うやつではないのか?」
「”私”の日頃の行いでこんな事になると言うなら、さぞかしこの世は不公平で理不尽なんだね…」
 ”私”の胸元から聞こえてきたテイレシアスの言葉に、頭を抱えて答える。
「ふむ…なかなか様になってきたではないか、これも”教育”のおかげか?」
「くっ!…」
 テイレシアスの言葉に私は顔を赤めて黙るしかなかった。
 そう、姿がシャナになった後、某鬼メイドさんに、シャナと同じ姿で男のように振舞うのは気に入らないとか言うような理由で少女教育なるものを施されたのだ! …そのときは孤独だった…誰一人として見方は居なかった…一人はその光景を大いに楽しみ、一人はもとより戦力外! 頼みの綱とも言える少女はあっさり鬼メイドに付いた…私の相棒でさえも何も援護してくれない…そう、孤独だった…そしてその結果意識内にさえ男だった私は居ない…さすがに無意識で自分のことを『私』と言ったときには首を吊ろうと思ったけど…
「なかなか可愛らしいぞ」
「う、うるさい! そんな事言われてもうれしい訳ないだろう!」
「言葉が乱暴だぞ、もう少し少女らしい言葉遣いをしないか」
「くぅ…」
 最近になってテイレシアスと契約したのは失敗だったのではと思い始めた…あの少女教育の時やその後、こんな調子で私をからかっているんだ…でも、それでも幸せだった、だからこれは逃げじゃない、霞掛かった記憶の零時迷子を贋作しようとしたのは…そう、あの時シュドナイが高々に掲げた零時迷子、その時消えかけだった私の記憶は物凄く曖昧な物で、『贋作』するのは無理だった…それを承知で作ろうとしたのは逃げではない…ただ目的が欲しかっただけ…少女教育で女の子となるのが目的とならないために…
 思わず熱くなった目頭を擦る、別に泣いてるわけじゃないよ…
 そもそも私はフレイムヘイズとして紅世の徒を討伐する問う言う大義名分はない。私の契約した紅世の王、テイレシアスも同じだ。そのままフレイムヘイズとして紅世の徒を討伐するのもいいけど、しかしそれは私の目的とはならない、ただ状況に流されているだけだ! それを言うなら少女教育もそうだけどあれはもはや避けられない事、すでにそれが確定された事象でしかない! だから私としての目的が欲しかった、それはやはり最愛のシャナの下へと戻ることだろう、やはりサユとなった私でもそれは譲れない事だった。私が消えたと思って泣いているシャナの所に行って抱きしめたい、たとえ同姓となった今でもその想いだけは譲れない!
 だから零時迷子の贋作へと踏み切った、たとえ零時迷子でも戻れる可能性はゼロに等しいと分っていても…そう、すでに分かれた過去で零時迷子で未来に行けたとしても、それはその世界の未来で、私のシャナは居ない…でも万が一にでも、そう思ってしまう…そして結果、あやふやな記憶で作った零時迷子は暴走した…
「…いい加減思考に浸っていないで現実を見ろ、我がフレイムヘイズサユよ」
「…分っているよ…」
 ちょっと意地悪だよ…
 現実、そう、空の上から眼下を見下ろす。そこにはトーチになる前の坂井悠二が居た…


「どういうことだと思う?」
「戻ったのだろう…またな」
 身も蓋もないね…たしかにそうだけど…
「それで、どうする?」
 テイレシアスの言葉に私は暫く思考を巡らせる。
「このままだと確実に坂井悠二は殺される…」
「…ならばどうする? 助けるか?」
「まさか、確かに全ての始まりといっていい、これから起こる苦難も、幸せも…」
「ほう…」
「これが無かったら人として幸せな人生があったのかもしれない…けど私はそれよりもシャナと居るほうが幸せだと思ってる」
「この坂井悠二もそう思うか?」
「少なくても私はね…何回、何十回繰り返そうとも、絶対にそう思う…」
「私はか…ならどうする? ほおって置くか? それとも静観か?」
 テイレシアスの言葉に少し考える。
「…静観しよう、ただしシャナと接触する」
「ほう、この時間軸、この世界に干渉するのか?」
「うん、『白銀の討ち手、サユ』としてね…」
「それで何を望む? この世界の二人を助けるのか?」
「もちろん助けはする、けどそれはサユとして、私はこの世界の坂井悠二でもこの世界のシャナを好きなわけでもない…それは前ではっきりしている、だから二人に対してなんら感慨も沸かない…
 あくまで零時迷子を宿したミステスと炎髪灼眼の討ち手だ…」
「ずいぶんと割り切ったものだな、ならなぜ干渉する?」
「宝具だよ、前でもあったけど、この世界も私と同じになるとは思えない、なら零時迷子を狙って色々な紅世の徒が表れる可能性がある…それこそフリアグネのような…ね…」
「なるほど…確かに零時迷子ほどの宝具だ、狙ってくる徒や王は後を絶たないだろう…そして集まる宝具も計り知れない、そしてその中に”戻ることが出来る”宝具があるかもしれない…」
「そう言う事、さて、シャナが来るまでに準備をしておかないとね…」
「準備だと?」
「そ、舞台作り…って言うほど大層なものじゃないけどね…」
「ふむ、なんだか解らないが楽しそうだな…」
「もちろん♪ さぁ行こうか我が紅世の王よ…」
「そうだな、魅せてもらうぞ、我がフレイムヘイズ…」
「あぁ、存分に魅せてあげよう…」


「しかし今の言葉は随分と荒っぽかったな…もう少し少女らしく…」
「うるさい…」
「ほぉ…む、あそこに見えるのは『万条の仕手』か?」
ッビクゥ!!
「む、いや見間違いだったか…おや? どうしたのだ?」
「ナ、ナンデモナイデスヨ…」
 空の上で、何をどう見間違えたらヴィルヘルミナさんに見えると言うのだ…それにしても、解っていながら無意識に反応してしまう…あぁもう私は手遅れなのかな…




 この日、僕の日常は終わった…例えばそれは線香花火のように、僕と言う小さな炎が燃え落ちた…いや、もしかしたら燃え上がったのかもしれない。
 夕焼けに彩られた赤い世界、それを塗りつぶすような紅い世界で、僕は白銀と灼熱の少女に出会った。


「お前…何者だ?」
 灼熱の少女が手に持った大太刀、”贄殿遮那”を油断無く構え言う。
「ふぅ、そう言う態度取らなくてもいいでしょ? 必要無かったようだけど、一応手助けしたんだよ?」
 対する白銀の少女は、手に持った白銀の大太刀を構えず、ため息交じりで答える。
「ふざけないで、手助けの必要が無いと解ってて手を出さないで、それと、そのふざけた姿はなに?」
 灼熱の少女が怒りを込めて言う、目の前の少女が、髪と目の色が違うだけで他が酷似しているのが気に入らないのだろう。
「ふざけた姿とは酷いね、私だって驚いているんだよ、まさかこんなにも似ている人が居るなんてね…
 それはともかく、始めまして”炎髪灼眼の討ち手”、私は”白銀の討ち手”サユ」
 白銀の少女、サユが笑みを浮かべて言った、しかし灼熱の少女がそれに答える前に、別の声がそれを遮った。
「”白銀の討ち手”だと!? それにその炎…まさか!?」
「そうだ、久しぶりだな、『天壌の劫火』」
 灼熱の少女の胸元にあるペンダントから発せられた声に、サユの胸元にあるペンダントから声が返ってきた。
「やはり貴様か『贋作師』!!」
 灼熱の少女の胸元にあるペンダントから、少女が契約している紅世の王、アラストールの憎々し気な声が聞こえてくる。
「アラストール、こいつを知ってるの?」
「ああ、だがこいつがフレイムヘイスと契約しているとは思わなかった」
「どう言う事よ?」
 アラストールの言葉に、灼熱の少女が疑問を投げかける。
「ちょっとストップ、そのあたりの話は長くなるから後にしない?」
 しかしその答えはサユの言葉によって遮られた。邪魔をされた灼熱の少女はムっとサユを睨み付ける。しかしそれとは裏腹に、アラストールは冷静に答えた。
「そうだな、まずは貴様らの目的を話してもらおうか?」
「目的は…まぁそのうち話すよ、あせる事は無いでしょ?」
 そう言ってサユは、路上で呆けている坂井悠二に視線を向ける。
「貴様…まさか!?」
 その視線から何を悟ったのか、アラストールが声を上げる。
「まぁそう焦らない、またね、『天壌の劫火』アラストール、そしてそのフレイムヘイズ”炎髪灼眼”の討ち手」
 サユはそう言うと、白銀の翼を広げ飛び立っていった。



「出足は上々かな?」
「ふむ、上出来だったぞ我がフレイムヘイズよ」
 白銀の羽を羽ばたかせ、夕焼けの空を飛びながらサユは楽しそうに言う、その言葉に答えるテイレシアス。
「さて、次の仕掛けしに行くよ」
「あぁ、『天壌の劫火』がどのような反応をするのか今から楽しみだ」
 レイレシアスのその言葉に、サユは苦笑いを浮かべつつ、速度を上げた。


 今日は最悪だ、こんな気分じゃせっかくのメロンパンも美味しくない。あのバカな”ミステス”もそうだけど一番気に食わないのはあのサユって言うフレイムヘイズ!
「アラストール、説明してくれる?」
 メロンパンをかじりながら胸元にあるペンダントに向かって言う。
「うむ、まずはあのフレイムヘイズが契約している王の事から話そう。
 あやつの真名は『贋作師』と言ってな…」
 アラストールの説明に私は頭を抱える。まったく何を考えているのか、そのテイレシアスとか言う王は…まぁそれはいい。
「それで、アラストールはそいつがフレイムヘイズと契約している事に驚いてたけど、なんで?」
「うむ、あやつは今まで何人かと契約しているのだが、どれもすぐに破棄してしまっているのだ」
「破棄?」
「そうだ、あやつの固有能力は話したとおり、それが問題でな」
「なるほど…」
 アラストールの説明に納得する、ならあのサユって言うフレイムヘイズは…
「あのフレイムヘイズも契約したばかりなの?」
「…いや、おそらくは違うだろう…」
「なんで解るの?」
「あやつの態度、あれは良く出来た自分の作品を見せている時と同じだ…つまりはあやつの誇れるフレイムヘイズと言う事だ…『贋作師』め、よほど相性のいいフレイムヘイズを見つけたようだ…」
「…なるほど…」
「気を付けろ、あやつの狙いは宝具だ、ミステスを狙っているだろう…戦うとなると恐ろしく手強い敵となる…」
「…ええ、大丈夫、油断も慢心もないから…」
 そう言うと自然と笑みが浮かぶ、そして手に持ったメロンパンを頬張る。うん、やっぱりおいしい♪
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