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【8/28改訂】輝けケアキュア☆紫陽花の季節(中編)【書いてて楽しい!頑張るぞ!】

 ←【TS小説 8/14改訂】輝けケアキュア☆紫陽花の季節【詩雨さん、オファニムさん、アライズさん、ありがとう】 →輝けケアキュア☆紫陽花の季節(後編試作)(12/13更新。もう少しで投稿予定)
タイトルままです。少し長くなってきたので、前編後編に分けてハーメルンさんに投稿しました。書いてて楽しい。プリキュア、ちゃんと見たことないけど、参考資料として見てみるとけっこう面白い。




 気がついたら、ルキナは青年の小さなアパートのベッドで眠っていた。きちんと整理されて清潔感はあるが、それを差し引いても狭くて古い部屋だった。薄い壁板の向こうからは、まだ激しく降りしきる雨音が聞こえてくる。半身を起こそうとしたが、肉体は鉛のように無反応だった。にぶい感覚を頼って自身の様子を調べてみると、ぼろぼろの服は脱がされ、代わりに青年のシャツを着せられているようだった。洗濯したばかりの洗剤の匂いが清々しい。気を失っている間に、温かいお湯に浸したタオルで身体を隅々まで拭かれたのだろう。全身が火照っていて、なのに風呂に入った後のようなさっぱりした清々しさも感じる。肘や膝の擦り傷は包帯や絆創膏で丁寧に処置されていた。血が巡り始めた頭でボンヤリと部屋を見回すと、青年はこちらを直視せず、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。直視できない理由があるようだった。なにか、見てはいけないものを仕方なく見てしまったかのような。その理由に、中身が少年であるルキナはすぐに思い至った。

「……ロリコン」
「ち、ちがっ!? だ、だって、濡れた服を脱がさなきゃ風邪ひいただろうし、だ、だいぶ汚れてたし、怪我もしてたしっ!? どうしても目で見なきゃ出来ないことだし、自分でやってもらおうにも君は目を覚ましてくれないし! ていうか、そもそも年の差がありすぎるかし───ていうか、君、気がついたのかい!?」

 飛び上がってバタバタと否定し始めた青年の様子に、ルキナは口角に力を込めて意地の悪い笑みを形作ってみせた。それでも、青年のこちらを窺う目が気の毒そうに沈むのを見て、自分がどんな無様な様をしているのかは想像できた。きっと、同情と哀れみを誘うような悲壮な相貌をしているに違いなかった。そう考えると、自嘲の笑みだけはちゃんと浮かべることが出来た。青年の目はますます沈んだ。なぜ、そんなに悲しそうな顔をするのか。まるで自分のことのように。ルキナには到底理解が及ばなかったが、やがて訪れた疲労による冷たい眠気に疑問は押し流された。
 
 次に目が覚めても、ルキナは放り出されてはいなかった。彼女は相変わらず青年のベッドを占領して寝かされていた。てっきり愛想を尽かされて元の公園に捨てられると思っていたのに。半目を開けて青年の姿を探すと、彼はちょうどルキナの膝の包帯を取り替えようとしていた。彼女の白く肉付きのいい太ももの付け根、何も穿いていないむき出しの|そこ《・・》を見ないように目線を天井で泳がせながら、わたわたと不器用な手付きで。

「……ロリコン」
「だあっ!? だ、だから違うって! 子どものくせに、な、なんてことを言うんだ! ていうか、起きたなら起きたって言ってくれよ!」

 青年の慌てふためく様子が滑稽だった。ルキナはくつくつと低く笑った。またやってやろうと思いながら、ルキナは再び眠気の波に身を晒した。今度の眠気は、不思議とそれほど冷たいとは思わなかった。
 青年は、なぜかルキナの面倒を見始めた。立ち上がることすら補助を必要とするルキナに付きっきりとなり、甲斐甲斐しく世話をし、介抱をした。ルキナは抵抗しなかった。「ノライヌを拾ったのなら、拾い主の好きにすればいい」。そんな捨て鉢の心境で、ルキナは無気力に青年の親切を受け入れた。それに、青年が作るお粥は、味は薄いが、また食ってもいいと思えるほどには美味かった。誰かの手料理は久しぶりだった。

 3日ほどして、ルキナがしばらく目を覚ましていられるほどに体力が回復すると、青年はルキナの素性を問い質すことはせず、逆にルキナの気を紛らわせるかのように自身の身の上を話し始めた。ルキナは、青年もまた、親の愛情を受けて不自由なく育てられた者だろうと勝手に思い込んでいた。だから、こうして他人に親切に出来るのだろうと。だが、青年は孤児だった。捨て子で両親を知らず、孤児院で育ち、里親を転々とし、自立してからは画家になる夢を追いかけて独学で絵を学びながら大成を目指しているという。
 青年は自分の生い立ちを、さも悔いなどないというように、楽しそうに言い聞かせた。意外な事実に、ルキナは目を見張ってあらためて部屋を見回した。整頓されているのは、質素にしなければ生きていけないからだった。青年が必死に働いてなんとか現在の生計を立てているに違いないことは、まだ子どものルキナにも察することが出来た。そこに、満足に動くことも出来ないノライヌを背負い込む余裕なんて、ないはずだ。
 だというのに、青年はそんな負担はおくびにも出さず、ルキナを楽しませようと自分の絵画を見せた。自信作から失敗作まで、包み隠さず、作品ごとのエピソードも添えて。特に花をモチーフにして描くことを青年は得意としているようだ。ルキナは芸術の醜美について目が肥えていないのでそれがどんなレベルなのか判断がつかなかったが、思わず「本物みたい」と声を漏らすほどに、青年の腕は巧かった。青年は、その一言だけでとても喜んだ。まるで、好きな女の子から容姿を褒めてもらえた少年のように、ウキウキして舞い上がっていた。ルキナはそんな青年の反応に首を傾げながら、油絵の具で丹念に描かれた紫陽花の絵をじっと見ていた。ろくに手入れされていない花壇の物陰で今にも消え入りそうなのに、ぐっと踏ん張って色鮮やかな花を咲かせる、健気な紫陽花。絵画全体がひどく濡れてしまっていて台無しになっているが、それでも描いた人間の優しさまで透かし見えるような、不思議と目が離せない魅力があった。青年は、そんなルキナの横顔を眺めて、満足そうに頷いた。

「それは、君を拾った日に完成したんだ」

 記憶を辿り、初めて会った時に青年がなにか四角い荷物を持っていたことを思い出す。ルキナを傘で覆う際に、水たまりに放り出していた。だから、こんなふうに台無しになったのだ。とてもキレイな絵なのに、自分のせいで。嫌味の一つでも言われるのかと予想し、なぜか「青年から嫌われるのはイヤだ」と我知らずぎゅっと唇を結んで身構えたルキナに対し、青年は正反対のことを告げた。

「きっと、運命だな。もっと素敵で美人な紫陽花に出会うための布石だったんだ。うん、そうに違いない。うん」

 青年は、やはり満足そうに頷いていたが、自分が口にしたことが存外こそばゆく、片手では足りないほど年齢の離れた少女に対して使うセリフではなかったことにハッと気がついて、とても照れくさそうにはにかんだ。ルキナといえば、学が足りず、そもそも中身が少年なので、青年の歯が浮くような遠回しの台詞についてはちっとも心に響かなかった。むしろ、青年に怒られなかったことへの安堵感で胸中はいっぱいになっていた。ルキナが青年の言葉の真意に察しがついていない様子に、青年は残念そうな、ホッとしたような、形容しがたい表情を滲ませた。

 さらに数日後、ふとルキナは夜中に覚醒し、重いまぶたを持ち上げてみた。ぼんやりと曖昧な視界に、硬い床で何度も寝返りを打ちながらも苦労して眠る青年が映り込んだ。自分のベッドを他人に明け渡したせいで、青年は腰の後ろをトントンと叩かなければいけなくなっていた。どうして、そこまで他人に尽くせるのか? 青年と自分は境遇的には似通っているはずなのに、生き様にこうも違いが生じてしまっているのは何故なのか? ルキナには理解できなかった。
 
 拾われて一週間もした頃、青年はルキナを自室の風呂に入れた。安アパートらしく極めて狭いが、よく掃除されてカビ臭さも無い。その代わり、そこらじゅうにアクリル絵の具と油絵の具のカケラが飛び散ってこびりついた、奇妙な色彩の風呂場だった。「ビー玉を敷いた金魚鉢みたい」。心に浮かんだままにそう比喩したルキナに、青年はポンと感心の手を叩いて「君はセンスがいいね」と褒めた。称賛に慣れていないルキナは、己の頬が思わず熱を帯びたことに驚き、それを青年に見られないようにそっぽを向いた。

「……ねえ、身体、洗ってよ」
「へ?……へぇえっ!?」

 幼い少年が照れ隠しをするような尖った口調で、ルキナはシャツを気怠げに脱いで一糸まとわぬ背中を青年に見せつける。色素の薄い肌は消えてしまいそうなほどに純白で、艷やかな髪が背中をはらりと撫でる様子は年齢を超えた人外の色気を匂い立たせていた。我知らず、青年はグビリと喉を上下させる。

「腕にまだ力が入らないの。洗ってよ。ロリコンじゃないんだから、平気でしょ」
「も、も、もちろん、違う。でで、でも、だからって年頃の女の子がそんな、だ、大体、今ちゃんと腕を動かせてたし、」

 背後でワタワタと慌てふためく青年を無視してプラスチックの風呂椅子に座ると、ルキナは無言のまま、正面の鏡越しに青年の真っ赤な顔をじろりと睨め上げた。教師を目指す青年はそれでも誘惑に負けず鉄の意志を示し、モゴモゴと口元をうごめかせて果敢に抵抗した。が、「ねえ、寒いんだけど」という小さくも鋭い抗議に諦観し、肉体が萎むような大きな溜め息を吐き出すと上下の裾を捲った。青年に肌を晒すことを、ルキナは恥ずかしいとは思わなかった。もともと、ケアキュアと戦う時以外、少女の姿で生活をしていたことがなかった彼女は、女としての性を自覚してはいなかったし、青年のことを年上の同性としか意識していなかった。

「誰かを洗うのなんか初めてなんだ。痛くしても怒らないでくれよ」

 肌を密着させるほど狭い風呂場に、大人びた低めの男の声が反響する。青年の声は角がなく優しい響きで、耳心地がよかった。青年は、成長途中の少女の繊細な肌を傷つけないように、とてもとても丁寧にルキナの身体を洗った。誰かに身体を洗ってもらうなんて、赤ん坊の頃以来に違いない。物心がついてからはきっと初めてだった。それに、さすが芸術家志望というべきか、青年の手付きは非常に器用だった。頭皮から髪先までシャンプーを馴染ませた指で丹念に梳かされ、背中や首筋、細い腕、手の指一本一本から指の股まで、ボディソープのたっぷりと染み込んだタオルでゆっくり優しく擦られる。ゾクゾクするくらいくすぐったいが、安心感を得られるほど温かくて、なにより想像していたより何倍も何十倍も気持ちがよかった。包み込まれるような快適さに、ルキナはやがてうつらうつらと頭を揺らし、ついに青年の胸に後ろ頭を預けて眠りに落ちた。青年はぎょっと驚いたが、ルキナの恍惚とした幸せそうな寝顔を見て、起こすことをやめた。「警戒心のなくなった拾われ犬みたいだな」。そう胸中に呟くと、自身の服がぐっしょりと濡れることも厭わず、洗うことを再開した。

「……なあ、起きてくれ。前は自分で洗ってくれないか」

 だが、背中を洗い終えていざ身体の前面を洗う時になると、頭を抱えて悩んだ。肩を揺らしても、未だ体力が回復していないルキナが目を覚ます気配は一向に見えなかったからだ。しばし常識と倫理感と戦った末、タオルで目隠しをして、|特に気をつけ《・・・・・・》|ねばならない《・・・・・・》|箇所《・・》は極めて極めて慎重に洗うという苦渋の結論に落ち着き、震える手で洗い続けた。

「僕はロリコンじゃない。僕はロリコンじゃない……」
「───ん、ぁ、ぁっ……」
「……! 僕はロリコンじゃない。僕はロリコンじゃない。僕はロリコンじゃない……!!」

 寝息に交じる、敏感な部分を刺激されて滲む喘ぎ声。子どもから大人の女になろうとしている未成熟な少女特有の危うい魅力が、青年の理性をサンドバッグのように殴り倒そうとしていた。激しい誘惑の殴打に理性をダウンされないように、青年はお経を唱えるようにブツブツと己に暗示をかけ続けなければならなかった。紅色に上気した頬が青年の肩に擦り付けられ、青年の手の動きに合わせて薄く開いた唇から甘い吐息が漏れる。青年の指先がひときわ敏感な先端部を掠るにつれて、長いまつ毛がピクピクと震え、湯雫を弾く。時折、青年の指先が固くなった敏感な突起部を誤って掠ってしまうと、細木のように華奢な腰がくねくねとよじれ、形の良い細顎がくんっと跳ねて扇情的な首筋と鎖骨が濡れ光る。目隠しの隙間から覗くそれらから意識を切り離すため、青年は数十回もの悟りの境地を垣間見ることになった。
 目を覚ましたルキナは、自らが眠らされたベッドにもたれ掛かってゲッソリと疲弊している青年を見つけた。座禅など組んでみれば、そのまま即身仏にでもなってしまいそうだ。昇天寸前の様子に不思議そうに小首をかしげ、胸の片隅にほんのちょっぴり、罪悪感を覚えた。そして、他人に対して罪悪感を覚えた自分自身に驚いた。

「……ねえ、気持ちよかったから、明日もやって」
「ええっ!?」

 飛び上がって頭を抱える青年の様子に、ルキナは「キヒヒ」と白い歯を晒してほくそ笑んだ。罪の意識はほんのちょっぴり覚えたが、風呂の心地よさの方が勝った。それに、青年をからかうのは純粋に楽しかった。誰かをおちょくって笑うのは、本当に本当に久しぶりだった。親しい誰かと触れ合うことがほとんどなかったルキナにとって、青年とのやり取りは、冷えていた心を温めてくれるものだった。
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