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輝けケアキュア☆紫陽花の季節(後編試作)

 ←【8/28改訂】輝けケアキュア☆紫陽花の季節(中編)【書いてて楽しい!頑張るぞ!】 →アルペジオ二次創作試作(Depth 4)
『輝けケアキュア☆紫陽花の季節(中編)』を投稿しました!後編完成まであと少し!キュンキュンするような小説にできるように頑張るぞいっ!!



(前書き部分)
 いつだっただろう。アパートに帰ってきた青年が、「ただいま」と声を投げかけてきた。いつもの底抜けな明るさとは一変して、まるでイタズラを働いた幼子が親の顔色を窺うような、おずおずとして小さな声だった。ルキナは、下目遣いになっていく青年の様子に訝しさを覚えながら、かと言って特に何も考えることもせず、「……おかえり」とぶっきらぼうに返した。
 たったそれだけなのに、青年は、それがこの上ない幸運なことのように背後に虹を咲かせる勢いで微笑んだ。どうしてそんなに大袈裟な反応をするのか、その時のルキナにはわからなかった。でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
 後になって、誰かと「ただいま」「おかえり」の会話を交わしたのがとてもとても久しぶりだったことに気がついた。そして、青年にとってはきっと初めての出来事だったのだろうと、察しがついた。
 そしてその日からずっと、小さな「ただいま」とぶっきらぼうな「おかえり」は繰り返された。
(終わり)


 また数日も経つと、ルキナの容態は安定して、手助けがなくとも一通りのことを一人で出来るようになった。すると青年は、早朝と夕方と深夜に出かけるようになった。中古で買ったというオンボロの自転車に乗って急いでどこかへ行って、しばらくしたらまた帰ってくる。新聞配達や、その他のバイトを掛け持ちしているらしかった。それでも仕事の合間を縫ってはルキナの様子を気にかけて一時的に帰ってくるし、夜に帰宅すれば炊事洗濯をしながらルキナの世話をして、絵のスケッチをいくつか描いたりしていた。一体いつ寝ているのか、ルキナには謎だった。そして、どんな時でも、青年はニコニコと満面の笑みを携えていた。寝る前に、青年は古本屋で買ってきたらしい使い古しの参考書に何ごとか書き込んでいた。何をしているのか尋ねたルキナに、青年は「教師になるための勉強をしてるんだ」と説明した。

「美術教師をしながら、子どもに絵の楽しさを教えて、自分の絵も描いて、コンクールに出展して、賞を獲りたい。そうして、子どもたちにまた絵を描くことの素晴らしさを教えてあげたい。美術教師、いいだろう? 僕にとってはこの上ない天職だと思うんだ」

 今、青年がやっていることは、控えめに言っても並大抵の努力ではない。おそろしく大変に違いないのに、はにかみながら夢を語る青年は、そんなことなど苦にも思っていないかのようだった。実際、青年にとっては本当に苦じゃないのだろう。どんな時も、青年は心から楽しそうだった。誇らしげに、嬉しげに、「絶対に実現するんだ」と意気込む青年の顔を、ルキナは直視できなかった。夢を語る青年を疎ましく思ったからではない。そんな青年を|疎ましいと《・・・・・》|思わなくなった《・・・・・・・》自分自身を認めたくなかったからだった。少し前の自分なら、きっとどんな汚いことをしてでも青年の夢を挫けさせようと性根の曲がった嫌がらせの一つや二つを実行していただろう。しかし今は、とてもそんな気にはなれなかった。青年の悲しそうな顔を想像すると、それだけで胸が罪の意識で締め付けられた。誰に対してだって、罪の意識なんか芽生えなかったはずなのに。何故、自分の心理がそんな反応をするのか、ルキナは理解できなかった。微かに残っていた少年だった頃の|性意識《ほんのう》|が、自分の今の性を自覚することにまだ抵抗を示していた。
 そんな自身の内面の変化から目を背けるように、ある日ついに、ルキナは青年に強い口調で問う。

「どうして、私を|匿う《・・》の?」

 青年の顔面が見る間に凍りついた。青年はあまりテレビを見ない。だけど、このご時世だ。ルキナは、自分の映像が街頭テレビで流されるのを何度も観た。ほとんど、ケアキュアたちを足蹴にして甲高く高笑いする映像だった。それを見上げる大衆の反応は、すべてルキナへの悪態だった。人々を護る正義のケアキュアたちに対して、散々な嫌がらせや妨害をしてきたルキナの悪名は知れ渡っている。青年だって、彼女の容姿は知っているはずだ。だからこそ、青年は倒れたルキナを病院に連れて行かなかった。常識的にはそうすべきはずなのに、警察などに突き出したりもせず、それどころか常に薄手のカーテンを閉めて外からルキナの姿を見咎められないようにしていたのだ。当然尋ねるはずの名前を今まで問い質さなかったのは、彼女がルキナであることを知っていたからに違いない。そもそも、テレビを見ようとしなかったのも、ルキナが映ることをわかっていたからかもしれない。明らかに、青年はルキナの正体に見当がついていて、世間から匿おうとしていた。ルキナも、当初からその疑問を脳裏に過ぎらせていた。「本当にロリコン野郎で、欲望を満たす目的のために誘拐されたのかもしれない」とも考えたが、自暴自棄になっていた彼女は「どうにでもなれ」とやさぐれていた。だが、青年の人柄に触れ、予想していた青年の目的が不明瞭になっていくに連れて、ルキナの混乱は増すばかりだった。汚れた欲望のままにメチャクチャにされていた方が、まだ納得ができていた。

「なんで、そんなに優しくするの? 私が誰なのか、何をしてきたのか、アンタだってわかってるくせに」

 言ってしまって、知らず、汗ばんだ両の手がシーツをぎりと握り締めていた。鉄面皮で冷静を装っても、ルキナの心中は今まで経験したことのない感情の渦でムチャクチャに波立っていた。親からの否定の言葉なんて聞き飽きた。殴られる痛みも平気になった。社会からの否定も慣れっこだ。否定したければすればいい。嫌いたければ嫌うがいい、と。───だが、目の前の青年からは否定されたくなかった。その矛盾がルキナの胸の内を竜巻となって荒らしていた。
 青年は、なんと言えばいいかと言葉を選ぶように逡巡していた。その間にも、ルキナの脳内では青年が何度も口汚く彼女を罵り、部屋から追い出す最悪の想像が再生されていた。意識せず、下唇を強く噛み締める。青年から否定される想像を浮かべる度に、腹底は冷え、今まで感じたこともない恐怖感が足先から這い上がってくる。そんなことになれば、もうきっと立ち直れない。正体のわからない恐怖感に、ルキナは初めて“怯え”を感じた。
 青年は「自分でも笑っちゃうような理由なんだけど」と前置きして、頬を指先で掻く。やがてその口がゆっくりとスローモーションのように開かれる。優しい彼は決して自分を追い出すことはしないと青年を信じる一方で、今までの自分の悪行が脳裏に蘇り、『都合のいいことを言うな』ともう一方の摩れた自分がせせら笑う。次に発せられる台詞を座して待つことに堪えきれず、ルキナは思わず腰を上げてこの部屋から逃げ出しそうになり、

「君の絵を、描いてみたかったんだ」
「……は、あ?」

 予想外すぎる回答に、脱力してペタンとその場に座り込んだ。安心してポカンとしたルキナの表情を呆れだと早とちりした青年は「取り繕っても仕方ない」と苦笑しつつ後ろ頭を掻く。

「僕は画家志望だ。芸術家の端くれさ。こういう人種には世間のことはよくわからないし、あんまり興味もない。君の正体や、君の行いも、君がどう思われているかも、僕は気にならない。ただ僕は、初めて君を目にした時、こう思ったんだ」

 言って、青年はルキナの紫色の前髪を指先でそっと搔き上げる。そこに顕わになった少女を、本当に美しいものを見つめる陶酔の表情で見つめる。

「“ああ、紫陽花のようなこの娘を描いてみたい”って」

 まっすぐな言葉と、瞳が放つ熱っぽい輝きに、ルキナは急にそわそわとした気恥ずかしさを感じてさっと目を逸らす。どうして、たった今、目を逸らしたのだろう。どうして、「出て行け」と言われなかったことにこんなにも安心を覚えているんだろう。どうして、青年から求められることをこんなにも嬉しく思うのだろう。自分が青年にとって必要だとわかったことで、どうしてこんなに満ち足りたような気持ちが膨らむのだろう。わけもわからず勝手に高鳴り始めた心臓の動悸を抑え込むように胸の前で腕を組み、尖らせた唇でなんとか答えを紡ぐ。

「……べつに、いいけど」

 ルキナのぶっきらぼうな答えに、青年は心の底からの笑みを浮かべて喜びを示した。「ああ、よかった。嫌われたらどうしようかと思ってた」。
 「それはこっちのセリフ」という声が胸の内から喉のすぐ下まで湧き上がってきて、それを抑え込むためにルキナは全身全霊の力を使わなければならなかった。腹の中でたくさんの蝶々が飛び回っているようなそわそわとした落ち着かなさから逃げるように、ルキナはガバリとその場に立ち上がると長髪を閃かせて風呂場へ歩みだした。

「お風呂、入ってくるから。絵は、その後で描いて」
「あ、ああ。わかった」

 変にたどたどしくなってしまった台詞に、さらに気恥ずかしさを覚える。これ以上青年に見つめられていたら、自分が自分でなくなってしまうという焦燥感があった。目には見えないけど確かにそこに横たわっている一線をもう少しで超えてしまいそうな予感がした。その線を踏み越えてしまったら、その線を認識してしまったら、きっと自分はもう元に戻れなくなる。心のどこかでは、その線がなんであるかと、線を超える意味をすでに理解して、自分の性別を自覚し始めている自分がいる。その自分自身を、この奇妙な下っ腹の火照りとともに洗い流さなくてはいけない。早急に、絶対に。
 ふと、青年が背後から付いてくる気配に気づいて、足を止めて背中越しにジロリと睨んだ。

「なに」
「え、なにって、いつも君がせがむように洗ってあげようかと……」

 青年に下心はなかった。あったとしても、欲望の獣は鋼の知性でなんとか封じ込めていた。ルキナの求めに応じて目隠しをして身体を洗っていただけで、悪気もなく、罪もない。むしろ被害者の側だ。だが、今のルキナは、なぜか青年と風呂に入るのを嫌だと思った。当然のように一緒に入ろうとしている青年に対し、今まで訪れなかった正体不明の苛立ちが眉根を機嫌悪そうにギュッと寄せさせた。青年に裸を見られたくないという羞恥心が、少女としての経験が欠如した思考回路を通って不快感へと変換され、そのまま青年へとぶつけられた。

「ロリコン。変態教師」
「ええっ!? そんな、理不尽な───」

 ショックを受けて立ち止まった青年を脱衣所から押し退け、ルキナは扉をピシャリと締めた。まるで思春期の娘が父親と風呂に入ることを拒否するような一幕だった。ルキナの“裸を見られたくない”という意識の変化は、まさしく青年を異性として認識しているが故の|年頃の少女として《・・・・・・・・》当たり前の反応だった。ルキナは、この日を境にして、自分と青年を異性だと無意識の内に認識していた。
 ところで、その日の風呂は、ルキナにとって恍惚の癒やしではなく苦難の場となった。シャンプーの適切な量がわからず、闇雲にベチャベチャと塗りつけて乱暴に擦ったため、風呂場も髪も非常に悲惨なことになった。自分自身で髪を洗うことがこんなに大変だとは思ってもいなかった。ガシガシと雑な扱いを受けた髪は、キューティクルの艷やかな輝きを失い、見るも無残なスチールウールと化してしまった。それを見た青年は、ルキナよりも深く残念がった。「なんてもったいないことを」と嘆くと、いつもより強気になってルキナの肩を掴み、髪は今後も自分に洗わせて欲しいと詰め寄った。不意に近づいてきた青年に赤らんだ頬を悟られないように顔を逸らしながら、ルキナは渋々了承した。

 そして、ルキナを|描《えが》く準備が整った。青年は穏やかな晴れの昼を選んだ。窓辺から余計な物をすべて取り除け、涼し気な風邪になびく白いカーテンのみを背景に、ルキナを小さな椅子に腰掛けさせた。モナリザのように身体の中心線を正面から少し斜めにして、下腹部を守るようにへその下でそっと手を重ねるという女性的な印象のポーズを取らせた。

不本意

孤独


(途中。以下はツイッターでの原案まま。これから改訂)







しかし画家志望の夢を諦めず、ひたすら努力していた。傷が回復すると絵のモデルになってくれとせがまれた。渋々承諾して完成した作品を見て、青年は最高傑作が出来たと飛び上がって喜んだ。その絵は確かに良く出来ていた。TS魔法少女は、忘れていた感情を思い出し、小さく微笑んだ。

TS魔法少女と、それを拾った画家志望の青年の奇妙な共同生活が一ヶ月ほど続いたある日、青年が自分の絵を売り込みに出掛けた。TS魔法少女は青年の部屋にいて、「自分は何をしているのだろう。何をしてきたのだろう」と自問しながら膝を丸めていた。すると、窓の外、街の方から悲鳴と爆発が聞こえた。


魔法の気配に心身が反応し、慌ててテレビを付ける。テロップが流れ、『青年画家が魔人に人質にとられた』という速報を目にした瞬間、TS魔法少女は自分でもわからない衝動に駆られて玄関を飛び出した。石を踏んだ裸足に血が滲み、息が苦しくなり、喉が掠れて肺が痛んでも、TS魔法少女は走り続けた。


現場には魔法少女達がすでに駆けつけていたが、人質のために派手に戦えず、苦戦していた。しかも魔人は画家から夢のエネルギーを吸い取って力を増していた。青年の手から一枚の絵が滑り落ち、広がる。そこに描かれた少女の見知った顔に魔法少女達は驚く。その背後から、「待て!」と大きな声が響いた。

振り返ると、ブカブカのTシャツを羽織った悪の魔法少女が荒い息を吐きながら魔人を睨みつけていた。握った両手は怒りに震えている。魔人は嘲笑う。「俺に歯向かうのか。それもいいが、そうするともう元には戻れないぞ」。TS魔法少女は、一瞬足りとも迷わず、「キャハハハ」と心からの嘲笑を迸らせる。



「その人の夢に──私の大切な人の夢に比べれば、そんなこと、くっだらな~い!」。嘲笑うような口調に涙を浮かべ、覚悟を決めた少女が腕を高く掲げる。目も眩む紫色の輝きが柱となって彼女を包み、次の瞬間、かつて他者の努力と理想を全否定していた魔法少女が、他者を救うために立ちはだかっていた。

それでも苦戦するTS魔法少女。魔人と契約したため、同じ属性の攻撃では効果的な打撃は与えられない。歯噛みする背中に、複数の手が添えられる。振り返れば、正義の魔法少女達の頼もしい笑顔。「誰かの夢を護りたいと願うのなら、貴方はもう正義の魔法少女よ!」。

「私が──?」。次の瞬間、TS魔法少女の装束が眩い輝きを放ち、ウェディングドレスのような豊かな装飾が花開く。それは、正義の魔法少女にしか与えられないパワーアップフォーム。「これで五人揃った!」。正義の魔法少女達に混じり、横並びになる。
(途中)




失うものなんて自分には無い。だから、怖いものも無い。でも、今は、何かを失うことに恐れ、心から怯えている。その理由には、きっと手を伸ばせば簡単に届く。でも、伸ばす勇気がない。正体を知ってしまえばもう戻れなくなるという本能的な直感が、“何か”を───誰かを直視することを拒んでいた。




夢を持たない私でも、誰かの夢は守れる。守ってみせる。

導火線に火がついたような笑み

誰かの夢を護りたいという願い

アンタだってテレビくらい見てるはず。だったら、私が誰なのか、知ってるんでしょう?


私に夢なんかない

捨てばち

あなたのために生きていきたい

握ったままの手じゃ、なにも掴めないよ

耳鳴り

連撃

奇跡

君と出会えた




気がかり
姿を見せない
心配
敵の心配
でも……

名乗り
口上



すがりつく

「私の絵を、完成させて」
「……何を、言って、るんだい? もう、この絵は、完成、してるじゃないか……そう、もう終わって……」
「いいえ、してないわ。ねえ、お願い、私を見て。今の実物(わたし)を見て」

無気力に弛緩していた表情筋が見る見る引き締まる。その瞳いっぱいに映り込むのは、花嫁姿のルキナだ。

「───まだまだ、完成にはほど遠いな」
「ええ、ほど遠いわ」



 ふと覚醒し、重いまぶたをゆっくり持ち上げてみる。ぼんやりと曖昧な視界に、硬い床で何度も寝返りを打ちながらも苦労して眠る青年が映り込んだ。
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~ Comment ~

 

デジャビュかもしれないけど
最後のシーンからTSF支援所の画像と本文を連想して懐かしかった
イーゼルに置かれたキャンバスに手を伸ばす男性、その後ろから覗き込む座った男性と同じぐらいの身長の少女、はにかむ笑顔、服装はワンピース
王道で青春、完成した展開・骨組みだけでかなりグッときます。
あとはどれだけ台詞、肉付けでキュンキュンせられるかですね。
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