白銀の討ち手 旧ver.

白銀の討ち手IF~白と赤のコムニオ 第三話~ (作:黒妖犬様)

 ←白銀の討ち手IF~白と赤のコムニオ 第二話~ (作:黒妖犬様) →仕事前の更新!
私が少女化しているのは認めよう、と言うよりも既に諦めている…イロイロと…
 女の子の衣服を身に付ける事にも慣れた、散々マージョリーさんに着せ変え人形にされたおかげで…
 言葉使いも自然に女の子らしくなった…言葉使いを誤ると鬼メイドのリボンが迫ってくるし…
 周りからの視線を気にする様になると、仕草も自然と女の子っぽくなる。体、主に味覚に引っ張られ、思考が幼くなってきた。何度も着替えやお風呂で自分の体を見ている為、シャナを元とした体なのに最初の頃の戸惑いはほぼ無くなった…
 けど、だからと言って女の子と、しかもシャナと一緒にお風呂に入る事に抵抗が無くなるかと言うと、そんな事があるはずも無い。
 どうしたらいいものかと、途方に暮れて脱衣所でため息を一つ…
「ねぇ、サユ」
「なに?」
 シャナに声を掛けられ、私は無防備にも振り返ってしまった。今はお風呂に入る為に脱衣所に居るというのに。
 しまったと心の中で後悔をするが、予想に反してシャナはまだ制服姿のままだった。
 私は少しほっとしながら、ドキドキと高鳴る胸を押え、なるべく動揺を表に出さないように話す。
「どうしたの、シャナ」
「お風呂ってなに?」
 シャナの返事に私の思考は一瞬フリーズした。
 そうか、シャナはずっとアラストールの浄化の炎で身を清めていたから、お風呂に入った事がなかったっけ?
「うぅん、お風呂っていうのは、人が体を洗って身を清める所、特に湯船の中に入ると、一日の疲れが吹き飛んで凄く気持ち良いよ」
「気持ち良いの?」
「うん、凄くね」
 私がそう言うと、シャナは何やら深く考え込む。
 どうしたんだろう? と疑問に思っていると、急に真剣な表情で私を見る。
「サユ、お風呂の入り方教えて」
 唐突にそんな事をいうシャナ、これでシャナと一緒にお風呂に入るの決定か…
「で、まずは何をすればいいの?」
「え、何をって…お風呂だから服を脱がないと」
「全部?」
「うん」
 ってなに迂闊な事を…しかし既に時遅く、シャナはアラストールを、畳んだバスタオルの間に押し込み、服を脱ぎ始めていた。
 どうしたらいいのかと、おろおろする私を不思議そうに見るシャナ。
 やっぱり一応女の子同士なのに、うろたえるのがおかしかったのかと思っていると、
「サユは服脱がないの?」
 不思議そうにそう尋ねてくるシャナ。
「イエ、ヌギマスヨ、ハイ…」
 もう腹を括ろう、人生諦めが肝心だよ…
「なんで棒読みなの? あ、あとサユもテイレシアスのペンダント隠してよ」
「え、ああ…解った」
 そう答えて、私もテイレシアスのペンダントをシャナと同じ様にバスタオルの間に押し込むと、服を脱ぎ始めた。



「へぇ…これがお風呂なんだ…この中に入るの?」
 そう言って湯船を覗き込むシャナ。まったくもぉ…
「シャナ、湯船に入るのは体を洗った後、洗ってあげるからここに座って」
「解った」
 私の言葉に頷いて、私の前に置いてあった腰掛けに座るシャナ。
 シャナも私も裸同士だと言うのに以外と自然だった。そう、最初こそ戸惑っていたけど、いざ裸同士になったらそれほど意識しなかったのだ。
 なぜかと考えて見ると、直に答えが出た。それは、私が思っていた以上に精神が少女化していたのだ…
 リアルでおーあーるぜっとしていいですか?
 これは私が意識内でも一人称が『私』になっている事に気付いた以上のダメージを受けた。
「サユどうしたの?」
「なんでもないよ、それよりも洗うからじっとしててね」
「うん、お願い」
 そう言っておとなしく座っているシャナを見ると、私はシャワーを手に取り、蛇口をひねる。
 しかし私は失念していた、お湯を出そうとしても、最初は水しか出ない事を…その結果
「ひゃわぁぁぁあぁぁ!」
 シャワーから勢いよく出た水を被り、シャナが悲鳴を上げる。私は慌てて水を止めるけど、もう遅い。
 冷水を頭から浴びたシャナは、ガクガクと震えていた、それは寒さからなのか、それとも怒りからか…
「さぁゆぅぅ…」
 ゆっくりと振り向くシャナ…怒ってますね…振り向いた顔がものすごく怖いですよ…
「あ、あのねシャナ…」
 弁解しようとする私の手から、シャナはシャワーを引ったくり、反対の手を蛇口へと伸ばす。しかしその蛇口に付いているマークの色は青なんですが…
「ちょ、ちょっとまった、やられたからと言って、やり返すというのは短慮じゃない?」
「ならやられた者の怒りはどこへ行く!」
「み、水に流して…」
「ふぅん、そう? じゃぁ水に流しましょうか?」
 そう言って浮かべるシャナの笑顔は凄く邪悪だった…
「って、ちょっとまっ…」
 制止の言葉も虚しく、蛇口を握ったシャナの手に力が込められる。そして次の瞬間、私の悲鳴がお風呂の中に響き渡った。



「っくち…ふえ…むぅ酷いよシャナ、風邪引いたらどうするのさ」
「フレイムヘイズが風邪引く訳ないでしょ」
 でも寒いんですけど…ってかそう言うものでしたっけ?
 そう内心で呟くけど口には出さない。無駄だと解ってるし…そして我侭お姫様は、私の前で気持ちよさそうに目を閉じている。私が髪を洗っているからなのだろうけど、気持ちいいのかな?
「シャナどう?」
「んー、ちょっとくすぐったいけど、気持ちいいよ」
 上機嫌で答えてくれる。どうやらお気に召してくれた様子だ。
「でもずいぶん面倒なんだね、確かに気持ちいいけど、浄化の炎でぱぱっとやった方がよくない?」
「そうは言っても、テイレシアスは浄化の炎使えないからね」
「え、そうなの?」
「うんそぉ、それにただ汚れを落とすだけじゃだめだよ、いくらフレイムヘイズが年を取らないと言っても、戦闘とかで髪は痛むんだから。体だって石鹸で洗うと結構違うんだよ」
「そうなんだ…」
「そう、現にシャナの髪少し痛んでるよ、せっかく長い髪なんだから大切にしなきゃ…ね?」
「う、うん…」
「それと洗い方を気を付ける事ももちろんだけど、シャンプーやリンス、ボディーソープにも気を配る。
 千草さんが使ってるの結構いい物だよ、私も使った事あるし…でもいつも使ってるのは違うやつだけどね。今度一緒に買いに行く?」
「うん、そうね」
「それにボディタオルも…目が細かくて柔らかい物で撫でる様に洗うの。あまり力を入れたら肌傷つけるだけだからね」
「へぇ…そうなんだ…」
「っそ、あ、髪はこれくらいでいいかな? じゃぁ流すよ」
「うん、お願い」
 返事を聞くと、私はシャワーでシャナの髪を洗い流す。やっぱり髪が長いと洗うのも時間が掛かるなぁ…そう言えばマージョリーさんによく洗わされてたっけ? 最初はからかい半分でお風呂に入って来たんだろうけど…って今思えばシャナと一緒に入っても意識しないのって、それが原因なのかな?ってかそうであって欲しい…そうだよ、いくらなんでもそこまで精神が女の子になってない!
 でもちょっと待って、今の会話違和感無くやってたけど、よくよく会話内容思い出してみると、私がシャナに女の子らしさを教えているように聞こえないかな?
「…何してるのサユ?」
 リアルでおーあーるぜっとしている私を、不思議そうに見つめるシャナ…ああ、もう私は戻る事が出来ないのか…体も……こころも……


 それから暫らくしてなんとか復活した私は、シャナの背中を流した。当然の事ながら前は自分で洗ってもらった。私のせめてもの抵抗と言うか、さすがに躊躇無くそれをやってしまったら終わりだと思うのですよ…ホントに…
 そして今度は交代して、シャナが私を洗ってくれている。最初に私がやってあげたのがよかったのか、思った以上にシャナの洗い方が上手で、心地よさに思わず目を細める。
「サユどう?」
「ん、気持ちいいよ」
「そう、よかった」
 そう言ってシャナは、シャワーを手にとって私の髪を洗い流す。どうやら一通り終わったようだ。そして今度はスポンジとボディーソープに手を伸ばす。
「それじゃぁ今度は体ね」
「ん、お願い」
 私はそう返事をすると、髪を上げてタオルで包む。最初のうちは四苦八苦していたこの動作も、いまではかなり手馴れてきた…そう思うとちょっと悲しいよ…
 そう心の中で涙している私に気付くはずもなく、シャナはスポンジにボディーソープを付けて私の背中を洗い始めた。私が言ったように、決して力を入れず、撫でるように優しく洗うシャナ。ちょっとこそばゆい。
 しかし私は気付かなかった、シャナが『背中を洗う』では無く、『体を洗う』と言った意味合いを。
 そして悲劇は起こった、一通り背中を洗い終えたシャナの手が、私の脇の下を通り前へと伸ばされた。
「ちょ、ちょっとシャナ!?」
 慌ててシャナを止めようとするけど、シャナが私の脇の下を洗い始めたため、言葉が出なくなる。泡の付いたスポンジで、脇の下を撫でるように洗われたらまともに声なんて出るはずもない。
 くすぐったさと、むず痒さに、出そうになる声を必死で堪える。しかしそれでも閉じた私の口からは「ん、んん…」と小さく声が漏れていた。
 自分で洗うのとは違う感覚に戸惑い、どうすればいいのか解らなくなる。こんな感覚初めてだ…いや、マージョリーさんがお風呂に乱入してきた時も洗うと言う名目で、いたずらと言うか私で遊ぼうとしてきたっけ? でもあの時は問答無用で抵抗したから大事には至らなかったけど、シャナは純粋に洗おうとしてくれているのだ、そんな事できるはずも無い。
 結局どうすればいいのか解らず、なすがままにされていると、シャナの洗う手が段々と前に伸びてきた。
 私がそれに気付いた時には遅く、シャナの手に収まったスポンジは、胸の一番敏感な部分へと触れた。
「っひゃぁん!」
 突然走った電気のような感覚に、思わず声が出る。その始めての感覚に、私はただ戸惑うだけだった。
「ど、どうしたのサユ、もしかして痛かった?」
「そ、そぉじゃないけど…」
「よかった、じゃぁ続けるね」
 人の話は最後まで聞いて! 痛くは無いけど、それ以上に別の意味で危ないんだからぁ!!
 しかし私のその悲痛な叫びは、声に出すことは出来なかった。再開されたシャナの手の動きに、別の声が出そうになるのを必死で堪える。
 しかし、シャナに他意はないと必死で自分に言い聞かせても、襲ってくる感覚に抑えきれずに小さく声が漏れる。
 そしてシャナの手が反対側の胸にへと動く。そのためシャナが私を抱く様な形になり、私の背中とシャナの胸が密着する。
 胸から伝わる刺激と、背中に感じる感覚に私の思考はほぼ停止していた。この体がこんなにも感じ易いなんて知らなかった。そもそもこの体が幼いためか、性欲なんてまるで無い。そのため今まで自慰行為すらした事がない、と言うよりもシャナと同じ体でそんな事しようなんて思えない。
 初めて味わう性的刺激に、私は戸惑う事しか出来ず。ただシャナの無邪気な行為を受け入れるだけしか出来なかった。
 しかしシャナはただ洗っているだけだ、そのため胸を撫でるように洗っていた手は直ぐに別の場所へと移る。
 胸からの刺激が無くなった所で、漸く安堵のため息をつく事ができた。息を大きく吐き、呼吸を整える。今現在シャナは私のお腹を洗っている。やっぱりくすぐったいが、胸に比べれば随分とましだ。そしてそのまま下へと移動する手。
 ふぅ、なんとか乗り切った…あとはもう大丈夫……って下?
「シャ、シャナストップ! ソコはダメ!!」
「ふえ!?」
 私が急に声を上げたためか、シャナは驚いてその拍子に洗っている手に力が入った。そして運が悪い事に、丁度その手は私の恥丘を洗っている最中だった。結果――
「ふあぁぁっ!」
 シャナの手は勢い余って私の割れ目を掻き分け、その下に隠れて居た敏感な部分をなぞった。
 途端襲ってきた今までに無い刺激に、頭の中は一瞬で真っ白になった。



 何とか意識を失う事は避け、今は落ち着きシャナと一緒に湯船の中に入っている。しかし…
「あうぅ…酷い目にあった…」
「ご、ごめんサユ…知らなかったんだって…」
 湯船の中でひざを抱え、気落ちしている私に必死で誤るシャナ。
 そりゃシャナが性的知識ゼロって事は知ってるよ、それに自分で洗った時は当然割れ目の中まで洗っているはずも無いし、そもそも自分で触るのと、他人に触られるのでは感じ方が違う…だから気付かなかったのは仕方ないよ…
 でも…私が恥ずかしい声を出してしまったのは変える事が出来ない事実な訳で…不幸中の幸いだったのが、お風呂の前にトイレに行ってた事か…
 もし事前にトイレに行ってなかったらと思うと…正直立ち直る事なんて出来ないと思う…
「……サユ、もしかして怒ってる?」
「怒ってはいないけど…でも気をつけてね、体には凄く敏感な部分ってのがあるんだから…」
「解った、今度から気をつける…」
「うん、お願いね…」
 って今度からって…また一緒にお風呂入る事決定ですか? まぁ今日みたいなアクシデントが無ければいいけど…
「で、シャナどう? 初めてお風呂入った感想は?」
「うん、凄く気持ちいい、浄化の炎で清めるのと違って、石鹸っていい匂いするし、洗ったあと凄くすっきりとするんだね…」
「そうでしょ? 浄化の炎は便利だと思うけど、たまにはこう言うのもいいでしょ?」
「うん…」
 そう言って頷くシャナをふと見ると、長い髪がそのままで湯船に浸かっていた。
「シャナちょっとまっててね」
 私はそう言うと、一度脱衣所に出てタオルを一枚取ってくる。
「シャナ、髪タオルで包むからこっち来て」
「え、うん」
 返事をして近付くシャナの髪を、私は手早く纏め上げ、持ってきたタオルで包む。
「はい、いいよ、こうすると温度と湿気で髪の毛が膨潤して、キューティクルが開いた状態になって、トリートメント効果が髪の内部に収着し、髪がしっとりしてツヤツヤになるの」
「へぇ…そうなんだ…」
「うん」
 ……って無意識になにをしている、なにを言っているんだ私は……
「…どうしたの、サユ……」
「なんでもないよ…うん…」
 ただ自分の人生を悲観して、リアルでおーあーるぜっとしてるだけだから…
「そう…取り敢えず中に入らない?」
「うん、そだね…」
 寒いし…
 再び湯船に浸かり温まる。けど自分の少女化が思った以上に深刻だ…今まで肌や髪の毛のケアは、シャナを基とした体と言う事と、テイレシアスに言われてやってきた。私自身シャナと同じ姿を綺麗にしたいと思っていた為、異論もなく抵抗も最初の内だけだった…それが、まさかそれが当たり前となってしかも無意識内でも当然の事だと認識してしまっているなんて…
「ねぇサユ…」
「ふえ? なに?」
 シャナの呼ぶ声につられ、顔を上げる。すると自然とシャナと目が合った。そのシャナの表情は今までとは違って何か考え込んでいる様子だった。
「どうしたの?」
「…うん、サユってさ、フレイムヘイズになってどれくらいなの?」
「え、えっと…二年くらいかな?」
「……うそ…」
 私の答えに、シャナは余程驚いたのか、目を大きくして私を見ていた。
「え、でもその割にはあんな凄い自在法をつかってるし…」
「うん、まぁ確かにフレイムヘイズになって二年しか経ってないけど、その前から紅世の王とのいざこざには巻き込まれてたし、フレイムヘイズになって最初の一年は猛勉強…
 その時私の周りにいたフレイムヘイズは凄い人たちばかりでね、戦い方や主に自在法を徹底的に叩き込まれた…まぁ私から頼んだ事だしね…」
「そうなんだ、じゃぁその後の一年は?」
「その人たちから離れて、一人でフレイムヘイズとしての活動…今日言ったようにやりたい事があったからね…」
「そう…なんだ…それで聞きたいことがあるんだけど…」
「なに?」
「サユは、フレイムヘイズになってから、人と関わりを持った事ってある?」
 シャナのその言葉の真意が理解できず、一瞬思考が止まるが、直ぐに思い当たる。
 シャナは今までフレイムヘイズとしての使命を第一に考え行動してきた、シャナが人と関わったのも坂井悠二が最初だったはずだ。
 戸惑っているのだろう…多分…
「うん、あるよ…私はフレイムヘイズになったからと言って、人と関わりを持つ事に抵抗は無かったから…」
「そう…なんだ…」
「うん、シャナが言いたい事は解るよ、参考になるか解らないけど、私の話だったら聞く?」
「うん、お願い」
「解った、でもそれはアラストールを交えて話しましょう。それにそろそろ出ないと、千草さんのご飯がまってるしね」
「うん、解った」
 シャナの返事を聞くと、私達は一緒にお風呂から上がる。そして脱衣所に出るが、そこで問題が発生。
「あっちゃぁしまった…パジャマ用意するの忘れてた…」
 バスタオルで体を拭きながらあたりを見渡すと、着替えが用意されていない事に気付いた。
「仕方ないわよ、取り敢えず制服着ればいいんじゃない?」
「そうだね、それしか無いか…」
 シャナの言葉に同意するけど、せめて下着だけでも新しいのに変えたい…
 しかしそんな事言っても事態が改善されるはずも無く、私たちは脱いだ服をまた着る。しかし服を着る私の隣で、シャナはちゃっかりと浄化の炎を使って服を清めていた。
 なんかずるい…
 恨めしそうにその様子を見ていると、シャナが下着だけでも浄化の炎で綺麗にしようか? と提案してきた。だけどその為にはシャナに私の下着を渡さないといけない訳で、物凄く恥ずかしいのですが…
 しかし背に腹はかえられず、やむなく下着をシャナに差し出す…真っ赤になる私に苦笑いを浮かべるシャナ。まぁ浄化の炎で清められた下着は新品みたいで良かったけどね…
 そんな遣り取りを終えてリビングに戻ると、テーブルには既に晩御飯が並んでいた。
 ちょっと長くお風呂に入りすぎていたため、申し訳なく思う。
「すみません千草さん、長湯し過ぎました…」
「いいのよ、女の子なんだから仕方ないわ。それよりも座って食べましょう」
 千草さんに促されて、私は昨日と同じように坂井悠二の隣に座る。それにしても『女の子なんだから』ですか…うん、そうだね…男だった時だと考えられない位長く入ってたよ…
 ちょと気落ちするが、ふと隣を見ると、坂井悠二の様子がおかしい。顔を真っ赤にして俯いている。どうしたんだろう?
「あ、そうそうサユちゃん、姉妹ではしゃぐのもいいけど、家には年頃の男の子が居るのを忘れないでね」
 千草さんのその言葉に、坂井悠二の様子がおかしい原因に気付き、頭の中が真っ白になった。
 つまりそれって、お風呂の声がこっちまで聞こえてきたって事?
 よくよく考えてみるとそれは当然だ…防音設備なんて無いのに、あそこまで大きな声を出してしまえば…つまり私のあの恥ずかしい声を、坂井悠二が聞いていた訳で……
 ……本日三度目のリアルおーあーるぜと……
 この短い時間で、回復不可能なダメージを負ってしまった…これ零時迷子で直せないかなぁ? もし直せるなら今夜一晩だけでいいので貸して下さい……
 結局この夜の食事は、始終にこやかな千草さんと、事の成り行きを理解していないシャナとは対照的に、私と坂井悠二は気まずい雰囲気の中、無言で食べる事になった。



 食事が終わり、私とシャナは部屋へと向かう。片付けを手伝おうと思ったが、シャナとの事があるので今日は止めておく。いずれ片付けだけじゃなく、料理も一緒にやりたいと思ってしまう私は、もう既に女の子として定着してしまっているのかと、少し落ち込んでしまう。
 でも今更なのだろうか…うぅん、まだ間に合うよね? あの鬼メイドの魔の手から逃れたのだし…
 しかしそれこそ今更だと気付き、大きなため息を一つついて部屋へと向かう。
「サユ、屋根の上で話さない?」
「え、うんいいよ…」
 部屋に入って直ぐに、シャナが振り返って尋ねてきた。
 何でわざわざ屋根の上にと疑問に思ったけど、気分的にだろうと自己完結させてシャナと一緒に屋根の上に登った。
 屋根の上に登り、二人並んで腰掛けると、最初に口を開いたのはシャナだった。
「私の契約した王、アラストールの真名は『天壌の劫火』…でも私は激情に燃えているわけではないの」
 静かに話し始めたシャナの言葉に、アラストールが続く。
「この子は自身を燃え滾らせる時間や仮定を、全て抜かして我と契約した。ただ徒を討滅させる、ただそれだけのために…」
 アラストールの言葉からすると、やっぱり戸惑っているのだろう。
「ただ契約通り、一人で紅世の徒を討滅するために戦ってきた、誰とも交わらずに…」
「それってフレイムヘイズとも?」
 シャナの言葉に聞き返す。前はこの時、シャナが戸惑っている事なんて気付けなかった、だから前出来なかった事、今の坂井悠二が出来ない事を出来る限りやりたい。
 そんな私の言葉に、シャナは小さく頷いた。
「うん、別に困る事はなかった」
「そうだな…逆に困る事の方が増えただろう……だが、悪くはなかろう?」
「……うん…」
 そんなシャナとアラストールの遣り取りに、私は小さく笑みを浮かべる。そして、フレイムヘイズになってから出会った人の事を思い浮かべていた。
「ねぇ、サユの話を聞かせて…サユはフレイムヘイズになってからも、人と関わりを持ったんだよね?」
「うん、そうだね…さっきも言ったけど、私はフレイムヘイズになって最初の一年は、主に自在法を学んだり、自分なりに研究してたの。
 そして一年過ぎて一人で動き始めて、そして直ぐかな? 男の人なんだけど、その人と出会ったのは…」
「へぇ…どんな出会いだったの?」
「え…どんなって……」
 シャナの言葉に言葉が詰まる。いや、だってね…
「行き倒れている所を拾われたのだ…」
「テ、テイレシアス!?」
 私がどう誤魔化そうと必死で考えている所を、テイレシアスがぶっちゃけた。
 しかもなんだかシャナの視線が痛いよ…
「……サユ……」
「う…仕方ないじゃない! お腹すいてたの! お金無かったの! ってかフレイムヘイズでもお金なければ何にも出来ないじゃない!!」
「…なさけない……」
「うぐぅ…」
 アラストールの容赦無い言葉に声が出なくなる。
「お金なんて脅して盗ればいいじゃない」
「私はシャナとは違って、そんな非人道的な事はしなかったの!」
「む、じゃぁどうしてたの? もしかしてその出会った人に餌付けされてたとか?」
「餌付け言わないでよ!」
「いや、あれはまさしく餌付けだったな…」
 お願いテイレシアス、黙って……うぅ、シャナの視線が痛い……
「さ、最初はそうだったかもしれないけど、でもその後は自分で稼いだんだよ!」
「どうやって?」
「あう…それはそのぉ…自在法を駆使して中小企業の裏金を…」
「…私としている事があまり変わりないじゃない…」
「ど、どこが!? 私はシャナとは違って合法的にだよ!?」
「それの何処が合法的よ!」
「えぇい、フレイムヘイズともあろう者が、情けない話をするな!」
『ご、ごめんなさい…』
 アラストールの一喝で、私とシャナが一緒に謝る。なんか前から思ってたけど、やっぱりアラストールって父親って感じだなぁ…
「まったく、話が脱線しすぎだ、それよりもサユよ、フレイムヘイズになって二年とは本当か?」
「え、うん、そうだけど…まぁフレイムヘイズとして活動したのは、一年くらいだけどね」
「その話が本当だとすると、自在師としての才能は底が知れないな…」
 またアラストールから称賛の言葉をもらうけど、正直その言葉はむず痒い…ってか本当にアラストールなのかと思ってしまう。
「あのねぇ、昨日も言ったけど、私はそんなたいしたフレイムヘイズじゃないよ」
「そこよ、不思議に思ってた所は!」
「な、なに?」
 私の言葉に、シャナが突然声を上げる。一体どうしたと言うのだろう?
「サユが昨日使った自在法はかなり高い技術だった、その上扱い辛いと言われている『贋作師』、テイレシアスの能力を使いこなしている。
 それでたいした事が無いって、そんなのある訳無いじゃない!」
 眉をつり上げて言うシャナ。たしかにそう見えるかも知れないけど、それは間違い…
「シャナの言いたい事は解るけど、私の場合技術を上げるしか強くなる方法が無かったの…
 フレイムヘイズは自身の過去、現在、未来を王に捧げ、その空いた場所に王を入れる事で生まれる。
 そして過去、現在、未来、その三つの存在の大きさでフレイムヘイズが扱う王の力が決まる…
 けど、私はその三つの内未来は、捧げるだけの存在が無かったの…」
「それってどう言う事なの?」
「……私がテイレシアスと契約する時、私の存在は消え掛けだった…だからその時の私に未来はなかったの」
 私の言葉にシャナは言葉が出せずにいた、そんなシャナの代わりに、アラストールが話出す。
「なるほど、それでお主は自分の力が大した事が無いと思い込んでいるのだな…」
「うん、まぁそう言う事かな?」
 アラストールの言葉を肯定する私…って、ちょっとまって?
「思い込むってどう言う事?」
「ふむ、それほどの力を持っていながら気付かぬとは、優秀なのか間抜けなのか…いや、天然だな」
「天然って、ひどっ!」
 アラストールの言葉に大いに傷つく私、しかもシャナはなぜか納得した様子でコクコクとうなづいてるし…私だって傷つくんだぞ…
「そ、それはそうと、どう言う事なの?」
「解らぬか? たしかにフレイムヘイズの力は、契約者の過去、現在、未来、その存在の大きさで決まる。
 そして、詳しい経緯は知らぬが、お主が契約した時には既にお主の存在は消え掛けていた、だから未来が無い…確かにそう思える…
 だが、お主はまだそこに存在していたのだろう? ならたとえ消えかけの存在であったとしても、未来が無いなんて事はありえないのだ」
「それってどういう事?」
「そもそも未来と言うのは可能性の事だ、その物の才気による可能性、それがフレイムヘイズが王に捧げる未来。
 確かに消え掛けと言う存在の為、未来への繋がりは薄れるが、お主の可能性としての才気が無くなると言う事ではない。
 事実、お主の存在の力は並みのフレイムヘイズよりも大きいであろう?」
「…………へ?」
 アラストールの言葉に思わず間の抜けた声を出してしまう。いや、だってねぇ……
「なんだ、気付いていなかったのか?」
 テイレシアスの言葉がなんかムカツク……
「サユ、すっごくマヌケ……」
 お願いシャナ、止めを刺さないで…
「ふむ、まぁマヌケではあるが…」
 お願いアラストール、許して……
「だが未来への繋がりが薄れても、なおその力…その才気はシャナにも劣らないだろう…」
「へ?……って、そんな訳無いじゃない、いくらなんでもそれは……」
「事実であろう? 現に僅か二年であそこまでの自在法を作り上げたのだ、もしかしたらそのまま人としての生を送っていたなら、人の上に立つ存在になっていたかもしれぬな…」
 な、それこそ悪い冗談だ、私なんかがあのまま生きていたって、そんな大それた存在になるわけがない。
「あのね、アラストール、私なんかを担ぎ上げたってなんの得もないでしょ?」
「なにを言う、そんな事して利益などあるものか…ただ事実をありのまま受け入れ、ありのまま評価しているだけにすぎん」
 う…でも明らかに過剰評価の様な気がするんだけど……
 アラストールの賞賛に、慣れなくて戸惑う私、そんな私の傍らで、シャナが笑いを堪えていた。
 その仕草は可愛いのだけど、笑われているようで不貞腐れる。そんな私を見て、シャナが苦笑いを浮かべながら謝ってきた。
 うぅ、誠意が見えない…
「ごめんって誤ってるでしょ? そんなに不貞腐れないでよ。
 それにしても、サユってしっかりしてるのか、ぬけてるのか解らないわね」
「むぅ…すごく貶されている…」 
「褒めてるのよ」
 どぉだか…
 内心そう思ってシャナを睨んでいると、なぜかそんな私をみてクスクス笑うシャナ。ほんとに失礼な…
「ってそれよりも、本題から凄く脱線しているような気がするけど」
 シャナのその言葉に、私は首を傾げる。本題って?
「あぁ、私がフレイムヘイズになってから出会った人の事か…たしかに話途中だった…けど…
 脱線したのはシャナが原因だったような…いえ、ごめんなさい…」
 余計な事は言いませんから睨むのはやめてください…
「そうだね、その人と出会ってから暫くは一緒にいたの」
「正確には、拾われてから暫く食料の面倒を見てもらっていたのだがな…」
 テイレシアスの呆れた様な声に、私は精一杯胸元のペンダントを睨みつける。
「なるほど、餌付けって言うのは的確な表現だったのね…」
 ……シャナ、私に恨みでもあるの?
「そ、それは兎も角ね、暫くは一緒に暮らしていたの、でも私にはそこに留まる理由はなかった…目的もあったからね…
 だから暫くと言っても一週間くらいだったかな? それでそこを離れる事にしたの。ほら、あまり長く居ると別れ辛くなるでしょ?
 でも…でもね…殆ど入れ違いで徒が襲ってきた…」
「え、それじゃぁ…」
「気付いて戻ったんだけど、その時には遅くてね、徒を討滅できたけど、その人はもうトーチになっていたの…
 でも、トーチになって、私を見て最初に言った言葉が『戻ってきたんだ、お帰り…』だよ…また直ぐに行くなんて言えなくて、結局消えるまで一緒に居たの…」
 そう、存在が希薄になって、私が話しかけても軽い返事しか出来なくなっても、私はいつも通り変わらず話しかけた…
「だからなのか、それとも私がまだ若いフレイムヘイズなのか解らないけど、トーチをモノとして見る事が出来ないの」
 まぁもっとも自分が元トーチだったからかもしれない…
「だから封絶内の修復も、トーチを使わずに自分の力でやってるんだけどね」
「え、トーチを使わないで修復って、本当?」
 私の言葉に驚くシャナ、効率第一を考えるシャナらしいけどね。
「シャナの言いたい事は解るよ、私達フレイムヘイズが扱う存在の力は、炎の顕現や自在法の行使に向いているけど、その反面それ以外では燃費が悪い。
 そして封絶内の修復は自在法ではないから、自分の力を使うよりもトーチを使ったほうが効率がいい…
 事実私も、封絶内の修復で予想以上に力を使って危なくなった事だってある」
「だったらなんで?」
 シャナの疑問に、私は小さく笑う。
「人との交わりって言うのは、望む望まないにしても影響を与えるものなの…良くも悪くも…
 そして私はそれを嫌とは思わない…確かに嫌な事も困る事もあるけど、それ以上に良いことがあるから…」
「……それって?」
 不思議そうに私を見て言うシャナ。そんなシャナに笑顔を返して、私は…
「ひみつ」
 そう言った。その後のシャナの顔に、笑いそうになるのを必死で堪えるのに苦労した。
「サユって意地悪だね…」
「そうかな?」
「そうよ」
「うぅん…でもまぁこれは私の答えだからね、シャナはシャナなりに答えを見つけないと…」
「サユの答えを聞いちゃいけないの?」
「ダメ、でも…こうしているのも、答えの一つだよ」
 私のその言葉に、シャナは首を傾げるだけだった。
 同じフレイムヘイズとは言え、シャナが私の時よりも早い段階で、こうして人と関わりを持つのが少し嬉しい。
「良く解らないけど、でもこうしているのは悪くないわね…」
 シャナのその言葉に、自然と笑みが零れる。しかしその後急に静かになった。不思議に思い、シャナに視線を向けると微睡み始めているシャナの姿があった。
 その姿は愛らしいけど、こんな所で寝られたら困る。しかしそう思っている私も徐々に眠気が襲ってきた。
 ってこれはまずい、このままだと本当に寝てしまう…
「シャナ、寝るなら部屋に行かないと」
 そう言って完全に目を閉じているシャナの肩を軽く突っつく。
「ふえ、へあ?」
 何とか目を半分開けてくれたけど、多分思考が正常に働いていない。けど私も限界だ、シャナと同じ状況になる前に戻らないと。
 しかしそう思って屋根から下りようとすると、忘れていた事を思い出す。今回、私が介入した事でどうしても確かめておかなければならなかった事。
 それを確かめる為、私は落ちそうになる瞼を必死で堪え、坂井悠二の部屋に隣接するベランダへと降りた。



 朝、僕は不思議な感覚で目が覚めた。
 凄くいい匂いが鼻腔を刺激する。一瞬朝食の匂いかと思ったけど、それとは違う甘い匂い…そもそも二階まで朝食の匂いが届くとは思えない。
 そして柔らかい何かが体に密着している。それは体だけではなく、腕にもその感触がある。
 何だろう? 昨日寝る前は無かったはずだ。
 不思議に思い、まだ寝ぼける頭で瞼を開いて確認する。そして…一瞬で覚醒した。
 体に密着している柔らかい何か、それは僕をまるで抱き枕のように眠る少女、その顔が僕の胸元にあり、なぜか僕の右手は抱き寄せるようにその少女の肩に置かれていた。
 左腕の柔らかい感触も同様で、僕の左腕に絡みつくように寝ている少女。そして膨らみ始めた小さい胸の感触が腕から伝わる。
 そして甘い匂いは、その両方の少女のものだった。
 外見がそっくりな二人の少女、サユちゃんとシャナだ…なぜこんな事になっているのか? いや、それよりも問題なのは二人の格好だ。
 どっちがどっちかは解らないけど、腕に絡み付いている少女は下着姿、上も薄い肌着しか着ていない。そして体に密着している少女はなぜかぶかぶかのワイシャツってこれ僕のじゃないのか? そしてワイシャツから伸びる、すらっとした細くて白い足…嫌でもワイシャツの下を想像してしまう。
「ふむ、やっと起きたか」
 右から聞こえてくるアラストールの声、と言う事は…
「あの、もしかして腕に絡み付いているのはシャナですか?」
「そうだ」
 僕の言葉を肯定するアラストールの声、気のせいじゃなければ若干不機嫌そうだ…
「と言う事は僕に抱きつく様に寝ているのがサユちゃん?」
「そう言うことだな、今の気分はどうだ?」
 今度はテイレシアスの声。いや、どうだと言われても…えぇまぁ気持ちいいですよ、凄くね…けどこれは死亡フラグではないですか?
「一応状況説明を求めるのですが」
「うむ、昨日の夜屋根の上でサユとシャナが話し込んでいたのだが、その話が終わるとサユが調べたい事が有るからと、この部屋に来たのだ。
 そして寝ているお前を、サユが自在式を使って調べたのだ」
 テイレシアスが教えてくれるけど、なぜ屋根の上で話す? 調べたってなにを?
「しかしサユは半分寝ている状態でな、思考が鈍っていたのだろう。調べ終わると寝ようとして着替え始めたのだ。
 当然寝間着などなく、近くにあったお主の服を羽織っただけで布団に入って寝てしまったのだ」
「へ、へぇ……ならシャナは?」
 テイレシアスの説明で、納得は出来ないけど理解はした。けどなんでシャナまで?
「この子がサユについて行ったからだ。サユ同様この子も半分寝ている状態だったため、サユが布団の中に入ると、一緒になって服を脱いで布団に入ったのだ」
 そ、そう言うことですか…
 アラストールの言葉に一応は理解する、けどやっぱり納得は出来ない。僕の残り少ない時間を縮めないでくれと切実に願う。本当に、トーチとして静かに消えて行きたいと思う。
「坂井悠二よ、あられもない姿の美少女二人に添い寝されて目覚めるのだ、思い残す事はないだろう…潔く逝け」
 逝けるわけないだろう! と茶化す様に言うテイレシアスの声に言い返したいが、ここで声を上げればそこで終わりだ、ここはぐっと堪えなければ…
 兎も角この状況から抜け出すのが先決、都合の良いことに、どっちがサユちゃんでどっちがシャナかは判明した、これだけで生存率がかなり上がる。
 まずはシャナを起こさないように、そっとシャナが絡み付いている腕を外す。途中シャナが身じろぎして危なかったけど、無事に外す事が出来た。
 次にサユちゃんの肩をそっと押して体を離させる。
 ろんと転がって仰向けの状態になるサユちゃん。まだ静かな寝息を立てている事を確認して、そっと起き上がる。しかし、起き上がろうとする僕の服を、サユちゃんが掴んだ。
 起こしたのかと思って慌てそうになるが、サユちゃんを見ると未だに寝息を立てている。
「ふみぃ…ショートケーキのいちご…」
 そんな可愛らしい寝言に、僕はほっと胸をなでおろす…この子はまた幸せな夢を見ているらしい…
「……返せ…」
「知らないよ」
 訂正、どうやら幸せな夢ではないようだ。続いた寝言に僕は思わず突っ込んでしまう。しかし幸いにもそれで起きる事は無かった。
 ほっと胸を撫で下ろすが、サユちゃんの手がしっかりと僕の服を掴んでいる為、この状況から抜け出す事が出来ない。
 起こさないようにその手を外そうとするが、一つの手を外そうとしても、もう一つの手がしっかりと捕まえてくる。
 そんな事を暫く繰り返し、終に僕はサユちゃんの両手首を捕まえる事に成功し、その勢いのまま両手首をベッドへ押し付ける。
 しかしその瞬間僕の思考は停止した。サユちゃんが羽織っているだけのぶかぶかのワイシャツ、その前が完全に肌蹴てしまっていた。襟元は肩まで肌蹴、もはやワイシャツが隠しているのは腕だけだった。
 詰まる所、今僕の目の前には下着一枚しか付けていない少女の肢体があり、僅かに膨らんだ二つの小さな丘とその頭頂までもが露になっていた。そしてその間にあるペンダント、テイレシアスは静かに…
「ふむ、同意くらいは求めた方がよくはないか?」
 などと言いやがった。そりゃ確かにそうだけどって違う! あ、でもこの前のお風呂場でも思ったけど、サユちゃんの肌ってキレイ…ってそれも違うだろ!! 早くこの状況から脱しないと……
「ん~サユうるさいよ…」
 その言葉と共にもぞっと何かが動く気配…恐る恐るそちらに振り向くと、伸びをしたまま此方を見て固まっているシャナと目が合う…
 半裸で寝ている少女の両手を押さえつけてその上に覆いかぶさる男…これって寝ている少女に夜這いを掛けている様に見えないかな?
「あ、あの…シャナ? こ、これには深い訳がありましてね」
 何とかその場を取り繕うとするが、シャナは僕の弁解を聞いているのか、ただ身を震わせて俯くだけだった。
「そりゃたしかに『気持ちいいなぁ』とか『眼福だなぁ』とかって思った事は否定しないけど、これは所謂事故であって疚しい気持ちは全くと言うか、殆ど無かったと言うべきか…」
 必死で説得を試みようとするが、なぜかごごごごご…と言う効果音が聞こえてきそうなほど怒りメーターを上げているシャナ…そしてその手に持つのは大太刀…
「あ、あんたわ、サユになにしてるのよぉ!」
 振り上げられる大太刀に、終わったと悟る、そして振り下ろされる一瞬前に、アラストールの「峰だぞ…」と言う言葉を最後に、僕は意識を手放した……
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僕も続きが読みたいですが、黒妖犬さんは鬱病を患われたこともありますし、催促しにくいものがあります。脳内補完しかないのかなぁ。しばらくは、本家だけで我慢してくだしあ><

NoTitle 

いまさらですが、やっぱりエタってるんでしょうか?
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