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【すごい作品】『ジャッカルの日』を読んだ感想をどうしても伝えたかった。【永遠の名著】

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 この作品を読み終わったのはかれこれ二ヶ月前なのだけど、誰かにこの面白さを伝えたかったのです。でもツイッターで書くと長々となりそうだったのでブログに書くことにしました。誰かにこの面白さを伝えられるといいな~。あ、多少のネタバレがあります。しかしながら、どうなるのか結末を知っていたとしても、この作品の面白さは微塵も揺らがないことを保証します。

 まず、この作品はけっこう古い。1971年に出版されました。出版されてからもうすぐ半世紀が経つわけです。でも、まったく古臭さ、時代遅れな感じを受けません。むしろ読み進めるごとに新しい時代を生きる上での教訓めいたものを与えてくれる。作者はフレデリック・フォーサイス。イギリス人の名作家で、この作品は彼の最初の作品です。彼は元空軍人で、後にジャーナリストとなって世界中を取材して回りました。この作品には、彼の軍人としての知識とジャーナリストとしての経験が詰まっています。作品は非常にリアルで、実際に起った史実や、存在した組織、人物が登場します。どこまでが真実で、どこからがフィクションか、わからなくなるほどです。実際、フレデリック・フォーサイス自身も「どこまでが作り話かは内緒」とボヤかしています。作品の出来も相まって、本当に起きた事件の暴露本のようにも思えてしまいます。

 ストーリーは、言ってみれば簡単で、『フランスのシャルル・ド・ゴール大統領を暗殺者“ジャッカル”から守れ』です。これを時系列を追うようにして物語が進んでいきます。僕が感心させられたのは、この“時系列を追っていく”過程の演出です。もう、神がかっています。誠に失礼ながら、大変失礼ながら、多くの方のお怒りを買うことを承知で言いますが、『ラノベとは格が違う』ことをまざまざと思い知らされました。小説を書くことにも技術力がいる、ということを痛感させられました。とてもじゃないですが、僕のようなド素人などフレデリック・フォーサイスの足元にも及ばぬどころか、細胞一片にすら遠く及ばないでしょう。遥かに高みを見せつけられた思いです。さて、皆さんの頭の中には「じゃあ、何がそんなにすごいの?」という当然の疑問が浮かんだと思います。僕のたどたどしい説明でわかっていただけると嬉しいです。

 まず、話は当時の世界情勢から始まります。第二次大戦がようやく終わり、ヨーロッパにも平穏が戻ってきていました。アメリカ、イギリスといった戦勝国は勝利気分を味わいながら、復興に勤しんでいます。そんななか、フランスだけは少し事情が異なりました。フランスは一度ドイツに負け、全領土を奪われ、それを他国の支援を受けて辛うじて取り返しました。海外にあった領地はフランスの敗戦と同時にことごとく独立し、なんとか維持しようとしたアルジェリアも手放さざるを得なくなっていました。フランスだけは、戦勝国のなかでも不安定の極みにありました。特にアルジェリアは、フランス軍人が大勢の死者を出しながら必死に領地として繋いでおこうとしていたために、手放すとなった時の軍人の反発はあまりに大きく、その内部に反政府の反乱組織が出来てしまうほどでした(この組織『OAS』は実際に存在しました)。この反乱組織こそ、暗殺者ジャッカルを雇った側です。一方の暗殺対象は、皆さんご存知、肝っ玉軍人シャルル・ド・ゴール大統領です。フランス人らしい、ひねくれ者で頑固者ですが、これと決めたら誰にも止められない不撓不屈のカリスマ指導者でした。当時、大わらわだったフランスをなんとか一つの国にまとめられるのは彼だけでした。本文中でも言われています。「アメリカは制度が整っている。イギリスは王家が君臨している。指導者を殺されても、国家の分裂を防ぐ機構が備わっている。しかし、フランスにはそれがない。シャルル・ド・ゴールを殺されたら、フランスは致命的なくさびを打たれてしまう」。反乱組織は、シャルル・ド・ゴール大統領さえ殺せばフランス政府がいとも容易く転覆することをよく知っていました。それに乗じてフランスを乗っ取ろうというわけです。そして、作品中でも、史実でも、彼らは何度となく自分たちの手でド・ゴール大統領を暗殺しようとして失敗しています。反乱組織には政府のスパイが多数潜んでいて、行動を起こす前に筒抜けになり、簡単に阻止されてしまうからです。暗殺失敗続きで国外に逃亡せざるを得なくなっていた反乱組織のリーダーは、「もはや後がない」と判断し、海外で活躍する凄腕の暗殺者を雇うことにします。それこそ、ジャッカルでした。ジャッカルは、おそらくイギリス人である、狙撃を得意とする、ということ以外にはまったくの謎の男です。紳士的で抜け目なく、顔面には微笑が刻まれていてもその内には冷酷無比な殺人者が潜んでいます。ジャッカルは、犯罪組織が自分を探していることを容易に察知し、その切羽詰まった状況を熟知した上で、シャルル・ド・ゴール大統領暗殺に50万ドルという破格の報酬を要求します(現在の価値で40億~50億円程度?)。反乱組織のリーダーは驚愕したものの、フランスを手に入れるという目的を果たすために了承します。ジャッカルはイギリスに帰省し、暗殺のための下準備を始めます。反乱組織は資金をかき集めても到底50万ドルに達しないと判断すると、苦肉の策として全国の銀行や宝石店の強盗を始めます。
 ここでようやく、フランス政府は反乱組織が何かを企んでいる、と察知します。この時点で、ジャッカルはすでに計画を立案し終えています。まだインターネットの“イ”の字も存在しておらず、鮮明なカラー写真も珍しく、それどころか電話すら交換手が取り次いでいた時代です。電話を繋ぐにも時間がかかり、国を跨いだ協力関係も薄い時代です。フランス政府は、反乱組織の企みが何なのか、まったくもって掴みあぐねていました。「反乱組織のリーダーたちが国外逃亡するために金を集めているのか?」という楽観視も出てくる始末でした。その間、極めて頭脳に長けたジャッカルはどんどん先行し、フランスへの侵入方法から暗殺用の極めて特殊なライフル、変装用の小道具、逃亡ルートまで着々と整えていきます。この手際の良さは、読んでいて非常に気持ちがよく、まるで自分が一流の暗殺者になったような気にさせられます。一方、フランス政府はここに来て反乱組織のリーダーのボディガードを捉える機会に恵まれました。ボディガードは政府側の非情極まる特殊部隊に、卑劣な罠に誘われて捕らえられてしまい、重症を負っているにもかかわらず目を覆いたくなるような非人道的な拷問を受けた末、死の間際に秘密を漏らします。ここで、フランス政府側も決して清廉潔白な人々の集まりでないことがわかり、ジャッカルの肩を少しだけ持つようになります。さて、この秘密を分析していたフランス政府は、ここに来てようやく、反乱組織が誰かを雇ったことを察知します。全国の銀行や宝石店を襲いに襲ってもまだ足りない額の報酬を払ってまで暗殺してほしい人物は、当時のフランスにはたった一人、シャルル・ド・ゴール大統領しかいませんでした。フランス政府は恐怖のどん底に突き落とされます。暗殺者はとっくの昔に雇われて動き出し、明日にでもド・ゴールを殺すかもしれないのに、彼らはまだ暗殺者の顔も名前も国籍も年齢も知らないからです。反乱組織のリーダーをひっ捕まえて暗殺方法を探ろうという案も出ましたが、そもそも反乱組織すら、ジャッカルから暗殺方法も暗殺の日時も聞かされていませんでした。「いつ、どこで、どうやって大統領を殺すのか」は、ジャッカルしか知らないのです。しかし、自分の暗殺計画を知らされたシャルル・ド・ゴール大統領は、過度な警備を拒絶します。「今の私はフランスの象徴である。フランスの象徴が、外国人暗殺者に怯えて家に引きこもるようなことがあってはならない。秘密裏に処理したまえ」。フランス政府は困りに困り果てます。ですが、事態は動き続けます。ジャッカルはすでに完璧な準備を終えてフランスに入国していたからです。当時、どこから誰が入国したかは、入国者が提出したカードを全国から一箇所に郵送して、その数万枚にも上るカードを人海戦術で一枚ずつチェックしていくというアナログの極み方式でした。しかも、ジャッカルは当然偽名を使っているでしょう。藁の中から針を探すようなもの、それ以上の難度の高い捜査を要求されることになります。事態をこれ以上なく重く見たフランス政府は、フランス警察のなかでもっとも優秀と称される叩き上げの警視を連れてきます。これがルベル警視、遅れて登場した今作のもう一人の主役です。彼の、地に足のついた地道な捜査と、汗臭いほどの執念が、驚異的な追い上げでもってジャッカルに追いすがります。颯爽と優雅に計画を進めていたジャッカルは、物語が進むごとにルベルに追いつかれていき、次第に余裕を失っていきます。まるで読者は、ウサギとカメの競争を俯瞰しているような気分にさせられます。作品の当初ではウサギがはるか先を先行していたのに、いつの間にかカメがその尻尾に食らいつこうとしているのです。ルベル警視は、頭脳と言うよりはむしろ蓄積された経験と人脈でジャッカルの正体を暴いていきます。イギリス人、狙撃手、金髪……限られた情報から、ジャッカルの特徴や行動パターンを割り出し、ついにその本名と正体まで暴いたルベルは、大急ぎで全国の警察官に周知します。
 それでも、ジャッカルはそのずば抜けた要領の良さと一見すると大変人のいい紳士的な振る舞い、あらゆる事態を想定した完璧な準備策、そして時には信じられないような奇策を用いて、読者をも欺きながら、警察の包囲網を次々とかいくぐり、シャルル・ド・ゴール大統領に接近していきます。ルベル警視がその影を踏もうとするたびに、用意周到なジャッカルはするりと逃げて、偽名を使い、変装をし、すんでのところで姿をくらませます。そして、ついに、暗殺の日がやってきます。舞台は、フランスの首都パリ。幾重にも敷いた重厚な警察の検問を飛び越えて、ついにジャッカルは首都に侵入したのです。その日は、シャルル・ド・ゴール大統領が戦争の功労者を称える、大事なイベントの日でした。ド・ゴール大統領は、フランス領土はフランス人が奪い返した、という意思を内外に示さんとして、暗殺者の危険を無視してでも衆目の前に立つことを選んだのです。そして、ジャッカルはその頑なな性格を見抜いていました。それはルベル警視も同じでした。「ジャッカルが大統領を暗殺するのは今日この場所において他ない」。ルベルはそう確信します。そのため、警察と軍隊を総動員して大統領に近づく者には老若男女関係なく厳しい持ち物チェックを行いますが、狙撃用ライフルを持った男など捕まえられません。イベントは粛々と進行し、ついに衆人の歓声があがるなか、シャルル・ド・ゴール大統領が壇上に登場します。ルベル警視は焦ります。暗殺の時が迫っていました。ここで小説の残りページもあとわずか数ページを残すのみです。指先に感じる、残りページの少なさに、読者も思わず焦らされます。「どうなっちゃうの!?どうなっちゃうの!?」、と。
 ここで、一人の青年兵士が、年老いた傷病軍人がパリの自宅に帰る場面に遭遇します。老人は、ボロボロになった軍服を着ており、片足がなく、金属フレームでできた松葉杖でびっこを引きながら、苦労してイベント会場の近くにあるアパートメントの階段を登っていきました。「あんな風にはなりたくないな」と青年兵士はため息をついて警備に戻ります。彼が見送った老軍人の部屋から、シャルル・ド・ゴール大統領がよく見えること、いえ、よく狙えることなど、知りもしないで。
 そして、最後の最後。ルベル警視は、ジャッカルは、相手の顔を初めて見ることになり───。

……という作品でした。自分が、この作品を、本編に登場する当事者としてではなく、物語として楽しめる読者であることに感謝します。読了後、緊張がほぐれて深々とため息を漏らしてしまいました。しかし、最後の最後の、そのまた最後に明かされた衝撃の事実には、ヒヤッとしたものも感じました。なぜなら、ジャッカルの正体は………。そこは、読んでからのお楽しみです。以上!!
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