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【灼眼のシャナ二次小説】アラモ砦の天使【白銀の討ち手】(途中)

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「ディオス・ミオ(ありゃ、なんだ)?」

 ホセ・ザバーラは、アメリカにも神殿は存在すると考えていた。それがこの『アラモ砦』だ。18世紀にメキシコ共和国からテキサスが独立する戦争の主戦場の一つとなった元教会は、その堅牢さから軍事用の砦となり、壮絶な戦闘による数多の男たちの命の最後の輝きを見てきた。特に『アラモ砦』は、テキサス人にとってテキサス人にとって象徴的な聖域だ。ここに立て籠もっていたテキサス独立軍182名はその全員が死闘の末戦死し、メキシコ共和国は一時的な勝利に酔いしれた。そして、テキサスを失った。メキシコ系アメリカ人であり生粋のテキサスっ子であるホセは、この神殿の深夜警備員となってからずっと複雑な思いを抱いて冷えた夜気の中を巡回していた。最低限の照明のみに照らされた眠る砦に、風の唸り声が厳かに木霊する。毎晩、この場所は単なる記念施設ではないと思い知らされる。ギリシアのパルテノン遺跡や、日本のイセ・テンプルのような、心身を引き締める厳格な雰囲気が腰を据えている。
 だから───天使が砦の城壁塔に腰掛けていたとしても、不思議はないのかもしれない。

「マドレ・ミア(なんてこった)……」

 あやうく手から滑り落ちそうになったLEDライトを掴み直すと即座にスイッチを切る。そして50手前の老体に似合わない身のこなしで物陰に肩を押し付けた。5年前に上官に惜しまれながらも退官するまで、彼はアメリカ海兵隊一等軍曹(ガーニー)としての地に足のついた立派な軍歴を歩んでいた。その際に培ったスキルを必死に肉体の底から掻き出しながら、この5年間の不摂生でこびりついた腹回りを引きずって天使に近づいていく。コツは、自分が猫になったとイメージすることだ。俺は猫だ。俺は猫。
 こちらに背を向ける天使は、月のない夜に、月の代わりでも肩代わりするように白銀に輝いていた。腰まで伸びる長髪は純白、背中から左右に広がる翼は銀色。炎のように揺らめく大きな翼に比べ、その肢体は小さく、華奢だ。「ムチャーチョ(子供)だ」とホセは目を見張った。天使の子供。人間界に興味本位で降りたものの、迷子になってしまったのだろうか。急に娘のことが思い出された。一人目の妻(ワイフ)との間に生まれた三女、ニーナ。ニーナが迷子になった時、一度だけ連れて行ったことのある遠くの公園で一人ぼっちで泣いていたのをホセが見つけ出したのだ。ホセの胸は切なさに締め付けられた。
 声をかけてみることにした。だが、天使は人間の言葉が理解できるだろうか。スペイン語、英語。どちらも母国語として流暢に話せる。日本語も、まあ挨拶程度なら行ける。アリガトー。スシー。スミマセンー。どれが気が利いているだろう?しばし顎に手を当てて悩んで、ホセは持ち前の性格を発揮することにした。当たって砕けろ、だ。ウーラー!
 口が動くままに任せ、ホセは物陰からふてぶてしい猫のようにノシノシと歩み出ると、努めて気さくな調子で頭上の天使に話しかける。

「オラ(やあ)、天使様。迷子ですか?」

 英語は万国共通だ。神世が万国に含まれるからは定かではないが。
 ホセは天使の意表をついたと思っていた。だが、さりげない仕草で振り返った天使の眼差しを見て、イタズラを見透かされていたジュニアハイスクールの男子生徒のような気持ちを味わった。

「ずいぶん大きな猫さんですね」

 ふっと口元を綻ばせ、天使は優しく言った。見てもいないはずなのに、ホセの動きを知覚していたらしい。ホセは気まずそうに後頭を掻いた。これは一杯食わされた。セキュリティ会社のロゴが刺繍された帽子を脱ぎ、経験な信者のように胸に当てる。ホセの家系は少なくとも200年前からカトリックだった。
 あらためて天使の願望をそれとなく観察する。美しい少女だった。アジア系に属するような造形だが、輪郭はハッキリしていて、どこの世界でも十分に美少女で通じる。それに、完璧すぎて、やけに造り物めいてもいる。人間の域を超えた美を体現していて、ホセは思わず見惚れそうになった。年頃は、12、13歳頃だろう。もっと下かもしれないが、自信はない。二人目のワイフの間に生まれた次女のガメーが同じくらいの年頃なので、きっとそのくらいだろうと検討をつけた。

「失礼。このご時世、手の混んだドッキリかもしれないと疑ったんです。ほら、ユーチューブとか。ところで、私の名前はホセ・ザバーラ。警備員です」
「無理もないですね。変なところに座ってしまってすみません、ザバーラさん。ボクはサユと言います。ちょっと迷子になってしまって、ここで休憩していました」

 サユ、という名前がどこの国の伝統に由来するものなのか、ホセには判断しかねた。だが、語尾に子供っぽい可愛げのある訛りからして、英語圏の人間ではないと推測した。ホセは在豪基地、在独基地、在日基地に赴任したことがある。訛りの特徴から、天使の少女は日本に近いと思った。日本担当の天使なのかもしれない。
 サユという天使が手元のペーパーブックを掲げて見せてくる。テキサス州観光協会発行のパンフレットマップだった。

「あの、ラックランド空軍基地というのは、どうやっていけばいいんでしょうか?」

 その基地には何度か世話になったことがあったので、ホセはすぐに場所の検討がついた。「ダウンタウンの向こうです」、と指し示そうとした指が、曇った表情とともにピタリと動きを止める。天使が空軍基地に何の用があるのだろう?

「……サタンがまた兵を起こしたんですか?」

 サユはしばし返答に悩み、「今はまだ」とだけ答えた。ホセは見るからに訝しげな顔を浮かべ、不安を隠さなかった。彼の愛する合衆国は、まだ神との軍事同盟は締結していなかったはずだ。少なくとも、今は。

(途中)
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