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【試作】勇者パーティーをクビにされた村人、女騎士になる【後編】
「クリスを追い出したって……貴方たち、正気なの!?」
激情を抑えられず、私は吠えた。両手がぶるぶると怒りに震える。自分の顔が真っ赤に燃えていることを自覚しながら、私は3人に詰め寄る。武闘家と魔法使いが気まずそうに顔を逸らす様子にも苛立ったが、それよりなにより私の怒りに油を注いだのは彼らを率いるリーダーのはずの勇者の態度だった。
「……クリスは、限界だった。君だってわかってただろ。僕らに着いてくるのも限界だったんだ。このままだとクリスは死んでしまう。だから……」
「それはパーティーを自発的に出ていくように仕向けたことの言い訳になりはしないわ。自分も納得させられない答えなんかその辺の犬にでも食べさせなさい。クリスがどれだけこのパーティーのために頑張っていたか、貢献していたか、知らないなんて言わせないわ」
こんな辛辣な言い草、王立協会の神父が聞いたら卒倒するかもしれない。でも、言わずにはいられなかった。示し合わせていた合流地点に来てみれば、一番会いたかったクリスがいなかった。その理由を尋ねてみると、3人とも言いにくそうに目を泳がせるばかり。嫌な予感がして問い詰めれば、このザマだ。武闘家と魔法使いがクリスをよく思っていないことはわかっていた。この二人は自分の力を過信して増長している節がある。自分が一人でなんでも出来て、不死身であるかのように振る舞っている。自分たちと同じように戦えないクリスを厄介者としか見ていない。でも、ハントはそうではないと信じていた。幼馴染みであり、クリスとは兄弟のような間柄であるハントならクリスのことを理解し、クリスがいてくれるからこそこのパーティーが成り立っていることを自覚していると信頼していた。だけど、それは間違いだった。燃え盛る怒りの感情が失望へと移ろっていく。その変化を感じ取ったのだろうハントの奥歯がギリッと音を立てた。
「じゃ、じゃあ、どう言えばよかったんだよ!“お前はついて行けないから村に帰ってくれ”って、クリスに言えばよかったのか!」
「そうよ」
私の断言にハントが目を見開き、後ずさる。全然、駄目だ。ハントはこういうところがある。内面が成長できていない。勇者だなんだと持て囃されても、どんなに肉体が強くなっても、ハントの心は幼いままだ。それも当然かも知れない。ハントが戦いだけに集中できるように、クリスが面倒なことを一手に引き受けてくれていたからだ。ハントは気づかないままクリスに依存しきっていた。それこそ、ハントにその自覚がないほどに。誰かに対してそこまで献身的になれるクリスの方が、よっぽど勇者らしい。
「そう伝えるべきだったのよ。クリスは、他でもない貴方がそう言ったならきっと理解してくれたわ。でも、貴方にはそれを告げる勇気がなかった。勇気がないことを隠して、遠回しな言い方でクリスを傷つけた。貴方を支え続けてくれた大事な人を、深く深く傷つけた」
この、意気地なし。言外に滲ませた非難を正確に受け止めたハントが後悔に俯く。おおかた、魔法使いと武闘家の口車に乗せられたのだろう。いや、乗っかったというべきか。自分でクリスにパーティーを抜けるよう告げる度胸がなかったから、クリスが自分で出ていくように仕向けた。たとえ無自覚にそれを行ったのだとしても、許されることじゃない。それはとてもとても卑怯なことだ。
「……悪かったと、思ってるよ。だからこうして、彼女に魔法で探してもらってるんじゃないか」
ハントが魔法使いをすがるような目で見る。魔法使いは空中に浮かぶ水晶玉を覗き込んでいた。探したい対象の魔力の流れを追跡する捜索魔法だ。若干16歳にして王国最高学府の王立魔法学院を史上最年少飛び級主席で卒業したという天才は、我関せずという態度で保身を図りながら水晶玉をいじっていた。その不誠実な態度にも苛立ちが募るけど、そこは腐っても主席であって、彼女の捜索魔法は精度も範囲もピカイチだ。すぐにクリスを見つけ出すだろう。そうしたらすぐにクリスを追いかけて、3人に土下座で謝罪させてパーティーに戻ってもらう。このパーティーには、クリスが考えている以上に彼自身が必要不可欠なのだ。我の強いメンバーをまとめながら組織だった行動を可能にできるのはクリスあってこそなのだから。
「───うそ」
魔法使いの横顔からザアッと血の気が引いた。冷淡だった表情が抜け落ちて、衝撃と悲痛が顔面を埋め尽くす。
(途中)
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