FC2ブログ

未分類

ゴルゴ公爵令嬢最新話試作

 ←【試作】悪役令嬢(ゴルゴ13)が平民を精鋭兵士に育てて王国軍を圧倒する話 →悪役令嬢ゴルゴ最新話試作
「女こそ最強なのだ」

 父親の口癖だった。ユーリは、それが大嫌いだった。

「女は強い。身体は早く成長し、精神は早く成熟する。病気に負けず、痛みに屈せず、長生きもする。観察力に長け、思慮深く、大胆で、肝っ玉が座っている。人間としてもっとも完成されている」

 それに対し、幼いユーリはこう反論した。「しかし女は腕力に劣ります」。父親は微笑んでこう諭した。

「だから我々は女を護ってやれるのだ。彼女たちを護ることを許されているのだ。護ることすら出来なくなったら、我らの存在意義はない。騎士道とは、あけすけに言ってみれば、ただ男が女を護るためにあるのだ」

 「お前にもきっとわかる日がくる」。納得しかねて頬をふくらませるユーリの頭を撫でながら、若き日の父親は優しく言った。その後ろではモスコーが春のように穏やかに笑っていた。ユーリには、結局、わからなかった。
 ユーリは強かった。まだ騎士として叙勲される前だというのに、並の騎士では歯が立たないほど強かった。それはひとえに、「力が強いだけでは駄目だ」としつこく諭してくる父親への反発故だった。自ら家を出奔して魔物の森で武者修行を行ったかと思えば、治安の悪い酒場に殴り込みをかけて腕に覚えのある悪漢を半殺しにすることもあった。どんなに強面の用心棒にも一歩も引かずに勝利を勝ち取ってきた。父親に当てつけるような無茶を何度もしでかした。

「女にこんなことが出来るか?たった一人で魔物や悪漢無頼に立ち向かえるか?出来やしない、絶対に。出来るのは男だけだ。俺だけだ」

 ユーリは増長していた。不幸にも、彼は増長が許されるだけの天賦の才を備えていた。さらには戦いの才能だけでなく、容姿端麗という二物をも持っていた。これが良くなかった。彼の周囲の女性は、彼を表面上でしか評価しなかった。ストイックな美人顔の少年はいつの時代も女心を惹く。家柄と容姿という甘い匂いに惹かれて自身に|集《たか》ってくる年増の香水臭い女たちを、ユーリはいつしか嫌悪の対象として見るようになっていった。

「騎士道とは、こんな奴らのためのものなのですか?顔を突き合わせては部屋の隅で誰かの陰口を叩いて悦に浸るような奴らを護ることに、なんの意味があるのですか?俺にはわかりません」

 父親は悩んだ。自慢の息子になるはずだったのに、どこでどうして掛け間違えたのか、強情なまでに捻くれてしまっていた。優しく嗜めるはずだった母親はユーリが物心つくまえに天上に旅立っていたので、母親の代わりをどうしてやればいいのかわからなかった。彼は近衛騎士団の団長として優秀だったが、父親としては未熟だった。
 あまりに頑なな息子を見かねた彼は、自分で諭すことを諦め、ユーリを貴族学校へ編入させることにした。そこには貴族家出身の女子生徒も大勢が通う。成績優秀かつ身辺がしっかりとした者ならば、平民の子も特例で通うことができる。名君として最盛期時の国王の肝いりで作られた貴族学校で視野を広めれば、ユーリの青臭く生硬い性根も次第に治ってくれると期待し、父親はすでに肩の荷が下りたとばかりに安心してさっさと送り出した。
 それに、貴族学校には|あの令嬢《・・・・》も入学する予定だった。10歳の時、背中に近付いてきた幼女趣味の変態司祭をはり倒して危うく殺しかけたという公爵家の少女がいる。噂によると、背後に立たない限りは彼女の逆鱗に触れることはなく、普段は極めて聡明で壮麗な|淑女《レディ》であるらしい。彼女を見れば、女を下に見ようとするユーリの意識も変わるだろう。上には上がいる、と知ることになるだろう。不幸なことに、この選択はもっと良くなかった。

 ユーリは出会ってしまった。決して女に媚びない男───フリードリッヒ王子に。

 彼は女を見下していた。見下したくて仕方がなかった。騎士道など彼の辞書には載っていなかった。「力こそ全てだ」と平然と豪語し、男は女を蹂躙するものだと躊躇いもなく口にしていた。王子もまた、“女”に対してなにかしら敵愾心のような、複雑に捻くれた|悪感情《トラウマ》を抱いていた。
 ユーリとフリードリッヒはまたたく間に友人となった。ユーリは、身分の違いを越えて心根を通わせられる初めての友を見つけられた。フリードリッヒは、腕っぷしの強い脳筋な配下を得られた。認識のズレはあっても、お互いがお互いを必要としていたのは間違いなかった。権威を傘にした傲慢な態度で周囲から辟易される王子の姿も、ユーリから見れば「女に媚びない一人前な姿勢だ」と好感を抱かせるものだった。
 だから、「俺は許嫁と離縁する」と意を決して椅子から立ち上がったフリードリッヒを見ても、「女をやすやすと切り捨てられる立派な男だ」と無責任に褒めて何も知らないままに背中を押した。「も、もう少し様子を見たほうがいいのでは」と青い顔で自重を促す眼鏡の側近を「弱腰な奴だ」と鼻で笑いもした。婚約破棄を突きつけるフリードリッヒの膝がなぜか震えていることにも気が付かなかった。その許嫁という女が誰なのか、どんな人物なのか、世間知らずのユーリには知る由もなかった。エリザベートのことを知ったのは、顔面の約半分を破壊され、併発した感染症による高熱によって生死の境を3度も彷徨った末に、父親が手配した最高級の医者の熱心な治療によってようやく峠を越えたあとのことだった。
 鏡を見たとき、かつての美人顔の少年の面影はなかった。死にかけたことで髪からは健康なメラニンがごっそりと抜け落ち、完璧だった顔面のパーツバランスは子どもの落書きのように歪んで、見るも無残な|醜男《ぶおとこ》を晒していた。|そんなこと《・・・・・》は問題ではなかった。問題なのは、女に敗北したという事実だった。自分が手も足も出なかったという事実だった。
 その日から、ユーリは修羅となった。全身を襲う激痛を物ともせず、騎士団の精鋭である近衛騎士を相手に毎日のように訓練に身を捧げた。あまりに苛烈な修行の様子を心配した父親が縛り付けてでも休息をとらせようとしたが、それを引きちぎってまで彼は己を研ぎ澄ますことを選んだ。復讐の鬼と化した息子が“騎兵合戦”に最前列で参加させてくれと願い出てきたとき、父親は、ただ頷いて願いを叶えてやることしか出来なかった。どこで息子は間違えてしまったのか。その原因は自分ではないのか。父親は手で目を覆って苦しんだ。
 そんな父親の苦悩など、ユーリは知る由もなかった。彼はフリードリッヒとの約束で頭がいっぱいだった。“騎兵合戦で俺が勝利した暁には、エリザベートをお前の好きにしていい”。この約束が果たされた時、ユーリの屈辱は晴らされるのだ。傷の痛みの何百倍も心を蝕む屈辱を帳消しにできるのだ。そのために、ユーリは密かに魔術まで習得した。もともと素質はあったが、剣のほうが性に合っているからと見向きもしなかった魔術を必死に修練し、ファイアボールで敵を火だるまにできるほどまで高めた。ユーリほど優れた剣技の持ち主が魔術まで行使できるというのは前代未聞だった。

「見ていろ、エリザベート!男を舐め腐った売女め!この力でお前の陳腐な公爵軍をなで斬りにして、その顔を恐怖と絶望に歪ませてやる……!!」

 悪鬼のような顔の映る鏡を素手で殴り割る。騎兵合戦前夜、ユーリは気が狂ったような高笑いを響かせていた。騎兵合戦が始まる直前までユーリの気分は絶好調だった。今はもう、違う。

(どういうことだ───こんなはずでは───)

 酸素不足に陥った頭の中では、その二文節のみが繰り返されるばかりだった。視界の両端にいたはずの護衛の近衛騎士はいつの間にかいなくなり、振り乱される自分の両腕だけが映っている。荒い呼吸で木々の間をすり抜けながら、王子軍団長であったユーリは今、|なにか《・・・》から必死で逃げ惑っていた。
 どこから、どうやったのかはわからない。その|なにか《・・・》は、最初に騎士団から20人を排除した。無作為ではなく、明らかに意図して、指揮官や次席指揮官、そして経験豊富な猛者を狙っていた。お節介な|副団長《モスコー》のジイさんが殺され、すぐ隣りにいた団長であるはずの自分が狙われなかったのは腑に落ちないと思いかけたものの、殺されるよりずっとマシだと思い直した。|なにか《・・・》はお飾りの自分ではなく、実質的な指揮をとれる者を真っ先に排除した。強力な先頭集団を、ただの一瞬で烏合の衆にしてしまったのだ。
 激情してはいても、ユーリは自身に将の才がまだ伴っていないことを承知していた。だから、鬱蒼しいほどに心配性の父親から「モスコーをつけてやる。忠言に耳を傾けろ」と言われ、渋々それを了承したのだ。
 その父親は今、王子の背後の観戦席で身を乗り出して驚愕しているに違いない。息子の醜態に目を覆っているに違いない。その様子を想像してしまい、思わず顔がうつむき、足が太ももから重くなる。

「ゆ、ユーリ団長!お待ち下さい、ご指示を、ご指示をくださフパっっ」
「ひいいいっ!?」

 遅くなったユーリにようやく追いつくことができた騎士の顔面が血の霧と化してユーリに降り掛かった。彼の後頭部に無遠慮に侵入した小さな何かが、彼の脳みそのなかで散々暴れまわった末に前頭部に皿ほどの穴を開口して飛び去っていったのだ。ぶらんと垂れ下がった下顎がブランコのように前後に振られたあと、騎士は支えを失った棒のように大地に身体を預けた。永遠に。

「ひぎゃっ!」
「ア゛ッ!」

 背後から、ユーリを追い立てるように誰彼かの最期の悲鳴が散発する。貴族家の紋章が施された分厚い鎧に、直前まで存在しなかった鋸歯状の穴がガパッと開き、大輪の赤い華が咲く。空気中には鉄の臭いが満ち、思わず胃液が逆流しそうになる。

(|なにか《・・・》に、いや、|誰か《・・》に狙われている!しかも待ち伏せだ!)

 遅まきながら、ユーリはようやく事実に気がついた。この森こそ|狩り場《・・・》だったのだ。混乱を抑えるために森に隠れて態勢を立て直そうとすることはやすやすと見抜かれていた。いや、そうするように仕向けられた。自分たちと|相対《あいたい》していた80名の平民兵士の本隊こそ実は囮であり、獲物を追い立てるための狩猟犬であった。本物の|本隊《ハンター》は伏兵として自分たちのすぐ近くにずっと潜んでいたのだ。
 手の甲で血に塗れた顔を拭い、文字通り必死の思いで思考を回転させる。眼前には、雨季には小さな池が出来るのであろう開けた場所がある。囲まれている状況で、焦って平静を見失った兵に出来ることはユーリには一つしか思いつかなかった。

「ぜ、全周防御!あの開けた場所で防衛戦だ!盾持ちは外周を固めろ!急げ、早く、早く!」

 特権を振りかざして、年上だろうとかまわず尻を蹴り上げる。爵位の高い者に従順に従うという貴族の習慣が染み付いた近衛騎士たちは狼狽しながらもその指示に従い、自らを壁と化していく。本来、このような防御陣は救援が駆けつけるまでの時間稼ぎでしかないのだが、もはやここにはそれを指摘できる経験者はいなかった。よろよろと、しかし現時点での彼らには可能な限りの早さで、ユーリを取り囲むように人間の城壁が築かれた。中央にはユーリのみならず、盾を持たない者や負傷した者が肩を寄せ合って、いかにも気息奄々としている。

「こ、これだけか。100人もいないじゃないか」

 ほうきで掃き寄せられたかのように集まった近衛騎士たちは、すでに100名までその数を減じられていた。しかも、その内2割は怪我をしたり、武器をなくしたりして役に立ちそうにもない。

「ゆ、ユーリ団長!どうしましょう!?」

(執筆中……)

スポンサーサイト





もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 二次創作
もくじ  3kaku_s_L.png 性転換
もくじ  3kaku_s_L.png 白銀の討ち手
もくじ  3kaku_s_L.png 小劇場
もくじ  3kaku_s_L.png Her name is Charis! !
もくじ  3kaku_s_L.png TS
もくじ  3kaku_s_L.png 映画
  • 【【試作】悪役令嬢(ゴルゴ13)が平民を精鋭兵士に育てて王国軍を圧倒する話】へ
  • 【悪役令嬢ゴルゴ最新話試作】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【【試作】悪役令嬢(ゴルゴ13)が平民を精鋭兵士に育てて王国軍を圧倒する話】へ
  • 【悪役令嬢ゴルゴ最新話試作】へ