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【試行錯誤中】すれ違いの物語【オリジナル】

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母が癌を患っていることがわかったり、嫁が第二子を妊娠したりとでプライベートがてんやわんやですが、書きたいものを書いてます。




 かつて、魔王を倒した勇者たちがいた。
 これは、彼らの子どもたちの、悲しい|すれ違い《・・・・》の物語である。



 15年前、魔王率いる魔族を打倒し、人間の栄華の時代を切り開いた英雄たちがいた。勇者たちは、年若い4人の少年と4人の少女だった。数え切れないほどの苦難を乗り越え、心身に激しい傷を負いながら、8人はついに魔王の息の根を止めた。歓喜に湧く民衆が待つキュリオス王国の首都に帰還した彼らは、雨のように舞う色とりどりの花びらのなかを誇り高く凱旋した。

 そして今、その血を色濃く引く若者が4人いた。彼彼女らは、周囲から大きな期待を受けていた。より強く、より高く。父や母を超えることを求められ、その期待に十ニ分応えてきた。才色兼備にして知勇溢れる勇敢な戦士の卵たち。|3人《・・》とも、幼い頃から親譲りの才能を華々しく示し、極めて優秀だった。



たった一人を除いて。



 一人の少年が虚ろな目に暗い決心の炎を燃やしていた。
 その少年、フェニックス・クライメイトは|なんの才能《・・・・・》|もなかった《・・・・》。大地を抉る魔王の攻撃を防ぎきった母親譲りの高い魔力もなければ、岩のような魔王の肉を袈裟斬りにした父親譲りの天与の筋力もなかった。全てにおいて、平凡だった。
 魔王をもっとも追い詰めた男と女の間に生まれた一人息子。誰よりも強くなるはずだと期待されていた人類の希望の星。───何の才能も、なかった。物心ついた頃、ともに親の武功を超えることを誓った幼馴染みたちは、彼を置き去りにしてどんどん先に進んでいった。刻一刻と、どう足掻こうと追いつけないほどの差が開いていく。しかし、フェニックスにはなにも芽生えなかった。もうすぐ15歳になるというのに、彼の目の前にはなんの煌めきも生じることはなかった。

「お前なら大丈夫さ」
「そうよ。大丈夫よ」

 それでも、父と母は期待した。重圧に苦しむフェニックスに対して、無根拠のまま、ただ期待だけを押し付けた。両親ともまだ若かった。少年少女の年齢で魔王を討ち果たした彼らは、まだ30になるかならないかという若さだった。そして多忙だった。人類を救った英雄は、残った人々の安寧と世界の秩序を守るために引っ張りだこで、息子としっかり向き合う時間などなかった。彼らは、ただ無闇に、“自分たちの息子だから”と信じていただけだった。

「フェニックスなら強くなるさ。なぜなら俺たちの息子なんだから」
「あなたなら強くなるわ。だって私たちの子どもなんだもの」

 フェニックスはずっとそれを聞かされて育ってきた。今は何も芽吹く様子がなくとも、いつか眠れる才能が開花することを一方的に期待されて歩んできた。自分に才能のないことなど、自分自身がとっくに気付いているのに。なのに、周囲は気付いてくれなかった。周囲が見ているのはフェニックスではなく、フェニックスの血筋だった。
 物心がついて少しすると、彼は自分の実力が周囲の望むそれに決して届かないことを理解した。周りの者たちは勝手に彼に期待をして近づき、いつまでも芽が出ない彼に勝手に失望して去っていった。彼にとって“期待“とは“呪詛“以外の何物でもなかった。彼の心は日に日に“期待”という残酷な呪いで蝕まれていった。
 それでも、フェニックスは努力を続けた。彼にはそれ以外に選択肢がなかった。同じ勇者の二代目たちから引き離されていくのを自覚しながら、彼はひたむきに|本心を隠して《・・・・・・》努力した。彼には|目的《・・》があった。
 この年、フェニックスは15歳になった。この世界では男女の婚姻が可能になる年齢だ。そしてまた、ある|挑戦権《・・・》を手にする年齢でもあった。




 一人の美しい少女が希望に目を輝かせていた。
 パーサヴィア・キュリオス。フェニックスと同じ、勇者の娘の一人にして、このキュリオス王国の姫でもあった。15歳になれば、|国王《ちちおや》が見守る御前試合への参加資格が得られる。栄光ある|闘技場《コロッセオ》で見事に優勝すれば、王に一つだけ願いを叶えてもらえるのだ。彼女はそこで優勝し、フェニックスに求婚することを許してもらうつもりだった。
 パーサヴィアは美しく、才能に輝き、心根もまっすぐだった。貴族でありながら勇者の一員でもあった両親に厳しくも優しく育てられ、周囲からも大切に愛情を注がれ、希望に満ちた人生を送ってきた。そして、幼い頃からの幼馴染だったフェニックスのことを好いていた。しかし、彼女の生まれは高貴であり、慣例として他の身分の者と結婚するには王の許しが必要だった。御前試合で勝利する。方法はそれしかなかった。

『オレたち、ずっといっしょだぜ!』
『うん!フェニとパーサはずっといっしょ!』

 少年とは、まだ物心がつくかつかないかという頃に結婚の誓いを結んでいた。少年は忘れてしまったかもしれない。実力に差が出来てしまい、周囲の目線もあって、学園の廊下ですれ違ってもついよそよそしい態度をとることになってしまっている。身分差があるということもあり、周囲の人間が彼と親しくすることを良しとしなかった。そのせいでここ数年は疎遠になってしまったが、少女の恋心は薄れていなかった。他の勇者の二代目たちから恋慕を向けられていることも理解していたが、少女の想いは変わらなかった。周囲の嘲笑に聞く耳も持たず常にストイックに修練を積むフェニックスの背中に熱っぽい目線を注ぎ、じっと見惚れていた。

「フェニックスが───御前試合に出る?」

 だからこそ、人づてに聞いたその知らせに、パーサヴィアは飛び上がって喜んだ。想いは同じだったのだ。フェニックスは忘れていなかった。諦めていなかった。彼もまた、パーサヴィアと結ばれることを望んでいたのだ。そのために血反吐を吐くほどの研鑽を積んでいたのだ。周囲から蔑まれようと、卑下されようと、パーサヴィアのために健気に努力してくれていたのだ。

(負けられない!)

 それを悟った少女は、さらに修行に明け暮れた。公明正大な性格の彼女は、わざと負けるというような器用な真似は出来なかった。彼女の誇りがそんなことを許さなかった。フェニックスの気持ちに応えたいと思った。
 周囲の反応も同じだった。勇者の息子が恋する少女のために凡才という評価を覆して“次の勇者”として覚醒するのなら、それは願ってもないことだった。
 フェニックスとパーサヴィアの両親も舞い上がって喜んだ。歴戦の戦友同士が本当の家族となるのだ。お互いの息子と娘が、幼い頃はとても仲が良かったことを覚えているだけに、最近はフェニックスの低迷によって疎遠となっていることを知っているだけに、両親たちは食事を共にするたびにその話題に興じた。“才能に乏しい少年が恋する幼馴染みのために懸命に努力して、己の内に眠っていた真の力に目覚める”というのはとてもわかりやすく、心を躍らせる物語に違いなかった。
 両親に連れられて同席したパーサヴィアは耳まで真っ赤に赤面しつつも、否定したり嫌がったりはしなかった。その青々しい恥じらいを見て、両親たちはフェニックスとパーサヴィアのことを祝福しようと心に決めた。|そこに《・・・》|フェ《・》|ニックスは《・・・・・》|同席していないのに《・・・・・・・・・》。

 フェニックスは一切の時間をすべて己を鍛えることに費やしていた。彼の両親はそんな彼にあえて心を鬼にして厳しく接することにした。努力を認めず、慰めず、今まで以上に「まだ未熟だ」とけしかけることにした。他ならない自分たちの子どもなのだから、逆境に直面するほど輝きを増すに違いないと|盲信し《しんじ》ていた。「もう十分だ」と優しい言葉をかけたくなる気持ちを抑え、厳しく、冷たく接し続けた。土壇場で才能の花が開く
 フェニックスは雨も日も風の日もただ黙々と剣を振るい続けた。それは周囲の期待に応えるためだと、誰も彼もが思い込んでいた。
 それはある意味では正しく、ある意味では絶望的なまでに間違っていた。

 「天才だ」「優勝候補だ」と褒めそやされるパーサヴィアの煌めく横顔を、フェニックスがじっと見つめていた。その視線が、年頃の少年が異性に向ける憧憬のそれとはまったく異なることなど、誰も気が付かなかった。誰も彼を見ていなかった。誰も彼自身を見ていなかった。誰もフェニックスと面と向かって話をせず、その真意を問いただそうとはしなかった。彼と真摯に向き合うことなく、見たい面だけを見たいように見ていた。誰も彼もが、自分たちが破滅に向かって歩んでいることなど想像もしていなかった。



 そして、御前試合の日はあっという間に訪れた。
 その日。その時間。数万人の歓声に彩られるはずだった決勝戦は、戦慄の沈黙にとって変わられていた。



「勝者はお前だ、フェニックス!お前だ!だからもういい、やめろ!やめてくれ!これ以上は、娘が、パーサヴィアが……!!」

 闘技場に響き渡る懇願の叫びは悲痛を極めた。闘技場の観覧席を埋める人々は、凄惨たるその光景を前にして呆然と言葉を失っていた。
 倒れ伏し、全身を裂傷に刻まれて恐怖に震える少女を、閲覧席から飛び出した国王が必死の形相で背に庇っている。彼自身の腕からも夥しい血が迸っているが、それを顔面に浴びたフェニックスは、眼球に染みる血液すらいとわずに極限まで見開いた双眼でパーサヴィアだけを射抜いていた。その鬼気迫る眼光は、とても想い人に向けた恋慕のそれではなかった。心から憎くてたまらない相手に向ける、殺意のこもった視線だった。

(途中)
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