Her name is Charis! !
『ブリジットという名の少女』の最新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
ktkr!!!ブリジットという名の少女の最新話がもう投稿されてる!ごめんよ、ララァ。僕にはまだこんなに楽しみにしている小説があるんだ。こんなに嬉しいことはない……。
最新話『第75話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】1』
その嬉しさのあまりまた三次創作書いてしまった。これはもう訴訟起こされても仕方ないね♂
ところで、この最新話……なんか僕の妄想と重なるところがあるんですよね。……き、気付かれてるはずないよねぇ……?
――― 【ブリジットという名の少女】ブリジットマジ天使【三次創作】 ―――
第2話 僕が担当官になってしばらくした日 【パクリ乙】
♂ リヒャルドサイド ♂
「いいぞベイベー!逃げる奴はベトコンだ!!逃げない奴はよく訓練されたベトコンだ!!」
「ヒャーリス、まだ行けるか!?」
「大丈夫ですよリヒャルド様!まだまだ余裕です!」
「……なあ、リヒャルド。あの義体は一体全体、どんなマッドサイエンティストが調整をしたんだ?」
「知らん。僕に聞くな」
射撃場の最後部にある詰所で、僕はブランクの質問を乱暴に弾いて嘆息した。それは僕が聞きたいくらいだ。どこのどいつが、あの天使のような少女にハリウッド映画の台詞を教え込んだのか小1時間問い詰めたい。
呆れる僕らの視線の先では、少女―――ドイツ連邦初の義体ヒャーリスがポニーテールを振り乱しながらM60軽機関銃を乱射していた。彼女の身を包む黒色の戦闘服は身体にぴったりと張り付き、その流麗なプロポーションを強調していてやけに扇情的だ。
一見すると薄手で心許無いように見える戦闘服だが、あれはヒャーリス専用の特別仕様となっている。形状記憶素材で出来たアーマーはヒャーリスの有り余る筋力を補助すると同時に、僕が許可をしないと全力を出せないようにするリミッターの機能も持っている。我が国での義体運用はヒャーリスが初めてである以上、こういった安全策は避けて通れない。義体を製造できたといっても、しょせんは盗んできたデータから再現したに過ぎないのだ。蓄積された技術も知識も経験もないのだから、扱いは慎重にすべきだ。
「ホント戦場は地獄だぜ!フゥハハハーハァー!!」
「お、おい。今、一般人の的板まで撃ち殺したぞ。これで何回目だ?」
「後でちゃんと言って聞かせるよ……」
彼女の場合は、慎重に慎重を重ねてさらに慎重を重ねる必要がありそうだが。
二週間に及ぶ体力測定やその他様々な機能の検査を経て、彼女はここ一週間を戦闘試験に勤しんでいる。それ全てに付き合う僕のサングラスの下には疲れで充血した目があるというのに、彼女は嬉々として試験をこなしていく。特に銃を撃つ時はたまらなく楽しいらしく、今のように終始笑顔で奇声や雄叫びをあげることもしばしばだ。きっと新しい身体の力に驚き、物珍しさを感じているのだろう。
「……まあ、あの娘が楽しんでいるのならそれでいいさ」
どうせそれもあと僅かだ、という言葉は口から漏れる前に噛み殺した。出してしまったら自分を恥じることになる。
いずれ、彼女は実戦に駆り出される時が来るだろう。義体開発を先導する上層部は『結果』を望んでいる。その時、彼女は正真正銘の化物になるのだ。恐るべき力で人間を食い殺す化物に。
出来ることなら、彼女はこのままこの施設の中で一生を終えさせたい。せめて外の世界の汚さや痛みや悲しみに触れることなく、静かに最期を迎えさせてやりたい……。
僕の心中の葛藤を察したのか、ブランクは僕の肩を叩いて忠告してくる。
「なあ、おい、担当官さんよ。お前はあの義体に入れ込みすぎてんだよ。もっと冷酷になれ。“アレ”は軍の備品だぜ。お前はその管理者。割り切れよ。じゃないと、アレより先にお前がダメになっちまうぜ」
「………」
ぎり、と握りしめた爪が手のひらに食い込む。
ブランクの言っていることは正しいし、親友への心遣いに満ちている。あの少女はもはや戸籍も抹消され、人間としては存在しないことになっている。彼女の名が記された唯一の公文書は、軍の機密備品管理帳のみだ。当の僕も、彼女には非情に接しようと決めていたはずだった。
「だけど……あの娘はどうしようもなく、人間なんだ」
例え肉体と精神が作られたものだとしても、ああして幸せそうにトリガーを引いている彼女の笑顔は本物だ。あの邪気のない笑顔を向けられてしまえば、僕の付け焼刃の仮面は意味を成さない。
「なあ、ブランク。お前こそ、どうしてそんなに冷静になれるんだ?なぜあの娘を人間扱いしない?」
「………」
情の厚さで言うのなら、僕よりブランクの方が上だ。だから彼は大勢の部下から慕われている。
ヒャーリスのことを『アレ』と呼ぶ戦友は、僕から目を逸らすと苦々しい表情をして、「エイドリアーン!」と叫びながら機関銃を振り回すヒャーリスの背中を睨む。この巨漢にだってM60をあれだけ長時間撃ち続けることはできない。
「アレの格闘訓練の相手をしたのは俺の部下だ。みんな腕利きだ。そいつらが言ってたぜ。『あれは悪魔だ』ってな。俺も同感だ。身長が170に満たないメスガキが体重80キロのマーシャルアーツマスターを片手でジャイアントスイングしてぶん投げたんだぞ。部下はもう再起不能だ。身体じゃなくて心をやられちまった」
僕も一部始終を見ていた。様々な格闘技を会得した屈強な熟練兵たちを前に、ヒャーリスは単純なパワーで全員をなぎ倒してみせた。空手の蹴りやボクシングのパンチを食らってもまるで効果が見られない己より遥かに矮躯の少女に、兵士たちは皆動揺し、そこを突かれて倒れていった。
彼女の強化ボディと戦闘服はカタログ・データの上では9x19mmパラベラム弾の衝撃すら吸収できるという説明は僕も前もって教えられていたが、まさかこれほどタフだとは思ってもいなかっただけに驚きを隠せなかった。
「実際に見て、ようやくわかった。義体ってのは奇跡の治療なんかじゃねえ。恐ろしい技術だ。真っ黄色のパスタばっか食い過ぎてついにおかしくなったイタ公どもの狂気の産物だ。あのランボー様を見てみろよ。俺たちが血反吐吐いて糞泥に塗れて手に入れた色んなモノを一瞬で踏みにじる力が、一夜にしてあんなガキの身体ん中に収まっちまうんだ。ならよ、俺たちが歯食いしばってやってきたことは何だったんだ?教えてくれよ、戦友」
義体の性能を目の当たりにして、ブランクは低く呻いた。決して頭が良いとは言えない彼は、ひたすら訓練の成果をその身に刻み付けることでここまでのし上がってきた。だが、ヒャーリスという存在は、彼のような叩き上げの兵士を過去の遺物に追いやる。自分を“石器時代の戦士”にしてしまえる存在を前にして、積み上げてきたモノやそれと引き換えに失ったモノの価値を壊されるのではないかと不安になっているのだ。
僕も似たような思いを抱いた。子どもを改造して戦場に立たせることが是とされるのなら、いったい自分たちは何を守るために必死に訓練して、命をかけて戦っているのかと。
「僕だって、やるせない気持ちで死にたくなったこともある。だが、彼女は今を“生きて”いるんだ。心もちゃんとある。笑ったり、怒ったり、泣いたりできる。備品はそんなことしない。僕は、許される限り、彼女を人間として生かしてやりたいんだ」
甘い考えだ。軍人として失格かもしれない。だが、僕はヒャーリスの担当官なのだ。担当官が義体を見放していい道理はない。本場イタリアの担当官たちがどのようなスタンスをとっているのかはわからないが、アルフォドなら義体と一心同体となって真摯に接している。
搾り出すような僕の言葉を、ブランクは「そうかよ」と聞き流した。いや、きっと心に留めた上であえて流したのだ。彼の心にはちゃんと響いている。
「だが、お偉方の考えは違うんだろ?聞いたぜ、上層部が実戦投入を計画してるって噂を」
唐突に痛いところを突かれ、僕はしばらく無言にならざるを得なくなった。周囲を警戒し、聞く耳を立てている者がいないことを確認する。幸いにも、ヒャーリスの銃撃音と雄叫びがうるさくて室外に漏れる心配はなさそうだ。
二人とも耳栓を片方だけ外し、声を潜める。
「他言無用だぞ。……シューマン大佐以下、義体開発計画の早期実現を本願とする一派が強硬に実戦投入を主張してる。すぐにでもやりたいらしい。早いとこ成果を見せつけて予算をつけて貰いたいんだろう」
「クソったれな話だな。何時でも何処でも頭のお固いエリートは金しか頭にねえ。それで、心優しい担当官様はどうするんだ?」
「どうにも出来ないさ。大佐が経済技術省の役人と繋がってるって話は聞いたことあるだろ?反対しても、担当官が別の誰かにすげ替えられて、僕は救護業務軍にでも左遷されるのがオチさ。僕にできることは、せいぜい試験を引き伸ばして出来る限り彼女をこの施設内に留めておくことだけだ。ここで訓練をたくさん積めば、それだけ彼女が傷つく危険も減るしな」
「なるほど、ね」
ここに来て、奇しくもヒャーリスが示した優秀性が仇になった。彼女は役立たずとして廃棄される恐れこそ限りなく小さくなったが、次々に叩き出すデータによって彼女自身が実験のみならず実戦にも十二分に耐えられる逸材であることを証明してしまったのだ。
計画を立案・指揮しているシューマン大佐は中央ともコネのある凄腕のエリート将校として有名だ。30後半という軍ではまだ若輩者の年齢にありながら、すでに1億ユーロを超える予算を秘密裏に国から与えられるだけの才腕の持ち主だ。
僕も担当官として任じられた際に一度だけ対面したが、冷酷そのものの切れ長の双眸に寒気を感じたことが強く印象に残っている。彼はヒャーリスのことを人間だとは露とも思ってはいまい。自身のエリート性を証明させるためのカードにしか見えていないのだろう。でなければ、目覚めてまだ一ヶ月の赤子のような少女を殺し合いに投入するなんて言い出せるはずがない。
「で、肝心のアレはどう思ってるんだ?」
「え?」
「お前さんの義体だよ。あの様子じゃ、お前の考えとは正反対に、むしろ戦いたがってるようにしか見えないぜ」
顎をしゃくってヒャーリスを示すブランクに、僕は力なく頷きを返すしかなかった。
皮肉なことに、ヒャーリス自身はさっさとこの施設から出て実戦任務に就きたいと主張して憚らないのだ。自らの有用性を証明してみせたいのか、それとも何かやりたいことでもあるのかは定かではないが、しきりに自分はもう立派に戦えると言うのだ。
しかし、本人は理解しているのだろうか?彼女が投入される『実戦』が、人殺しに違いないということを。血に塗れた己の手を見ても、彼女はあの笑顔を曇らせずにいられるのか。
「僕は―――」
「あっ、弾切れだ。アパム!アパム!弾!弾持ってこい!アパ―――ム!!」
「大量虐殺が終わったみたいだぞ。迎えに行ってやれよ、担当官殿」
「……わかってるよ」
彼女自身がどう思っていようと、彼女を実戦に参加させるのは僕は反対だ。天使のような彼女が化け物になるところを見たくはない。僕の身勝手なワガママかもしれないが、少女を戦闘に参加させる方がどうかしているのだ。
なにはともあれ、彼女を施設内に引き止めておくための試験の名目はまだまだたくさん用意している。試験をしばらく続けて、少しでもシューマン大佐に反抗してやろう。
「なあ、リヒャルド」
「ん?」
振り返れば、ブランクは自室へ戻ろうとこちらに背を向けていた。彼はその節くれだった手を照れくさそうにひらひらと振るう。
「“あの娘”を―――“ヒャーリス”を、大切にしてやれ」
そう言って、彼は顔を見られないようにそそくさと詰所を後にした。他人に冷酷になれと言いつつもブランクも人の子であることには変わりない。まったく、素直じゃない奴だ。
親友の下手くそな照れ隠しに苦笑すると、僕は耳栓を外して愛しい我が義体の元へ歩み寄る。
「もう標的は全部ぶっ壊したよ、ヒャーリス。オールキルだ。人質も一般人もまとめて全部粉微塵さ」
「ふえ?―――てへっ♪」
「ぐっ!?か、可愛い顔をしても、む、無駄だぞ、ヒャーリス!僕には効かない!」
ペロリと舌を出す悪戯っ子のような誤魔化しに、思わず声が上擦ってしまった。自分でも無理がある言い訳だと思う。効かないどころか、胸を掻きむしられるような愛おしさを感じる。
歳が10歳以上離れているというのに、ヒャーリスを前にするとなぜか激しくドギマギしてしまうのだ。男心の弱点を執拗かつ的確に突いてくる仕草は狙ってやっているのだとしたらかなりの策士に違いない。
「でも、リヒャルド様。格闘訓練では犯人グループ役の兵士は全員無力化してみせたでしょう。それに、このような機関銃を用いた場合ではどのみち敵も味方も女子供もありません。全員地獄の果てまでファッキンアウトしていただくしかないでしょう」
「女の子がそういう汚い言葉遣いをしてはいけません。まあ、僕らも君が機関銃でどこまで狙いをつけられるか知りたかっただけだし。それと、君が格闘訓練でやったのは無力化じゃなくてタコ殴りというんだ。力技に頼りすぎだ」
ヒャーリスは恭しく丁寧な言葉遣いをするように見えて、実は言葉の端々に茨のような毒を含んでいる。そのチクチクと刺さる毒が心地良いアクセントとなって、会話をしていても飽きることがない。とは言っても、やはり美少女が平然とファックなどと下品な言葉を口にしていると担当官のモラルまで怪しまれかねないので、その辺は戒めておくことにする。格闘訓練も、もう少し技術を身につけさせて力押し一方の戦い方を改めさせるつもりだ。いずれ彼女が苦労をしないためにも、今のうちに教えておくことはまだまだたくさんある。
「いいじゃないですか。それで、今回の射撃訓練の結果はどうなんです!?」
「『君に機関銃は持たせてはならない。実戦はまだまだ先延ばし』」
「ええーっ!?楽しいのに!凄く楽しいのに!!リヒャルド様のケチ!ドケチ!スケベ!マザーファッカー!!」
「そこまで言うか!?だいたい、君は銃をもたせると性格が変わりすぎるんだよ!どうしてそうなるんだ!?」
「そういう年頃なんです!」
そう言うと、ヒャーリスはぷいっとそっぽを向いていじけてしまった。それはここ数日で何度も繰り返された、とても人間らしい仕草だった。この反応は洗脳や手術によるものなんかではなく、れっきとした彼女自身の感情から来るものだ。
見てみるがいい、ブランク。そしてシューマン大佐。この娘は悪魔でも、備品でもない。だって、この娘はこんなにも人間らしいじゃないか。
(安心しろ、ヒャーリス。お前がどんなにつらい目にあっても、僕はずっと君を護り続けるからな)
最新話『第75話 ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】1』
その嬉しさのあまりまた三次創作書いてしまった。これはもう訴訟起こされても仕方ないね♂
ところで、この最新話……なんか僕の妄想と重なるところがあるんですよね。……き、気付かれてるはずないよねぇ……?
――― 【ブリジットという名の少女】ブリジットマジ天使【三次創作】 ―――
第2話 僕が担当官になってしばらくした日 【パクリ乙】
♂ リヒャルドサイド ♂
「いいぞベイベー!逃げる奴はベトコンだ!!逃げない奴はよく訓練されたベトコンだ!!」
「ヒャーリス、まだ行けるか!?」
「大丈夫ですよリヒャルド様!まだまだ余裕です!」
「……なあ、リヒャルド。あの義体は一体全体、どんなマッドサイエンティストが調整をしたんだ?」
「知らん。僕に聞くな」
射撃場の最後部にある詰所で、僕はブランクの質問を乱暴に弾いて嘆息した。それは僕が聞きたいくらいだ。どこのどいつが、あの天使のような少女にハリウッド映画の台詞を教え込んだのか小1時間問い詰めたい。
呆れる僕らの視線の先では、少女―――ドイツ連邦初の義体ヒャーリスがポニーテールを振り乱しながらM60軽機関銃を乱射していた。彼女の身を包む黒色の戦闘服は身体にぴったりと張り付き、その流麗なプロポーションを強調していてやけに扇情的だ。
一見すると薄手で心許無いように見える戦闘服だが、あれはヒャーリス専用の特別仕様となっている。形状記憶素材で出来たアーマーはヒャーリスの有り余る筋力を補助すると同時に、僕が許可をしないと全力を出せないようにするリミッターの機能も持っている。我が国での義体運用はヒャーリスが初めてである以上、こういった安全策は避けて通れない。義体を製造できたといっても、しょせんは盗んできたデータから再現したに過ぎないのだ。蓄積された技術も知識も経験もないのだから、扱いは慎重にすべきだ。
「ホント戦場は地獄だぜ!フゥハハハーハァー!!」
「お、おい。今、一般人の的板まで撃ち殺したぞ。これで何回目だ?」
「後でちゃんと言って聞かせるよ……」
彼女の場合は、慎重に慎重を重ねてさらに慎重を重ねる必要がありそうだが。
二週間に及ぶ体力測定やその他様々な機能の検査を経て、彼女はここ一週間を戦闘試験に勤しんでいる。それ全てに付き合う僕のサングラスの下には疲れで充血した目があるというのに、彼女は嬉々として試験をこなしていく。特に銃を撃つ時はたまらなく楽しいらしく、今のように終始笑顔で奇声や雄叫びをあげることもしばしばだ。きっと新しい身体の力に驚き、物珍しさを感じているのだろう。
「……まあ、あの娘が楽しんでいるのならそれでいいさ」
どうせそれもあと僅かだ、という言葉は口から漏れる前に噛み殺した。出してしまったら自分を恥じることになる。
いずれ、彼女は実戦に駆り出される時が来るだろう。義体開発を先導する上層部は『結果』を望んでいる。その時、彼女は正真正銘の化物になるのだ。恐るべき力で人間を食い殺す化物に。
出来ることなら、彼女はこのままこの施設の中で一生を終えさせたい。せめて外の世界の汚さや痛みや悲しみに触れることなく、静かに最期を迎えさせてやりたい……。
僕の心中の葛藤を察したのか、ブランクは僕の肩を叩いて忠告してくる。
「なあ、おい、担当官さんよ。お前はあの義体に入れ込みすぎてんだよ。もっと冷酷になれ。“アレ”は軍の備品だぜ。お前はその管理者。割り切れよ。じゃないと、アレより先にお前がダメになっちまうぜ」
「………」
ぎり、と握りしめた爪が手のひらに食い込む。
ブランクの言っていることは正しいし、親友への心遣いに満ちている。あの少女はもはや戸籍も抹消され、人間としては存在しないことになっている。彼女の名が記された唯一の公文書は、軍の機密備品管理帳のみだ。当の僕も、彼女には非情に接しようと決めていたはずだった。
「だけど……あの娘はどうしようもなく、人間なんだ」
例え肉体と精神が作られたものだとしても、ああして幸せそうにトリガーを引いている彼女の笑顔は本物だ。あの邪気のない笑顔を向けられてしまえば、僕の付け焼刃の仮面は意味を成さない。
「なあ、ブランク。お前こそ、どうしてそんなに冷静になれるんだ?なぜあの娘を人間扱いしない?」
「………」
情の厚さで言うのなら、僕よりブランクの方が上だ。だから彼は大勢の部下から慕われている。
ヒャーリスのことを『アレ』と呼ぶ戦友は、僕から目を逸らすと苦々しい表情をして、「エイドリアーン!」と叫びながら機関銃を振り回すヒャーリスの背中を睨む。この巨漢にだってM60をあれだけ長時間撃ち続けることはできない。
「アレの格闘訓練の相手をしたのは俺の部下だ。みんな腕利きだ。そいつらが言ってたぜ。『あれは悪魔だ』ってな。俺も同感だ。身長が170に満たないメスガキが体重80キロのマーシャルアーツマスターを片手でジャイアントスイングしてぶん投げたんだぞ。部下はもう再起不能だ。身体じゃなくて心をやられちまった」
僕も一部始終を見ていた。様々な格闘技を会得した屈強な熟練兵たちを前に、ヒャーリスは単純なパワーで全員をなぎ倒してみせた。空手の蹴りやボクシングのパンチを食らってもまるで効果が見られない己より遥かに矮躯の少女に、兵士たちは皆動揺し、そこを突かれて倒れていった。
彼女の強化ボディと戦闘服はカタログ・データの上では9x19mmパラベラム弾の衝撃すら吸収できるという説明は僕も前もって教えられていたが、まさかこれほどタフだとは思ってもいなかっただけに驚きを隠せなかった。
「実際に見て、ようやくわかった。義体ってのは奇跡の治療なんかじゃねえ。恐ろしい技術だ。真っ黄色のパスタばっか食い過ぎてついにおかしくなったイタ公どもの狂気の産物だ。あのランボー様を見てみろよ。俺たちが血反吐吐いて糞泥に塗れて手に入れた色んなモノを一瞬で踏みにじる力が、一夜にしてあんなガキの身体ん中に収まっちまうんだ。ならよ、俺たちが歯食いしばってやってきたことは何だったんだ?教えてくれよ、戦友」
義体の性能を目の当たりにして、ブランクは低く呻いた。決して頭が良いとは言えない彼は、ひたすら訓練の成果をその身に刻み付けることでここまでのし上がってきた。だが、ヒャーリスという存在は、彼のような叩き上げの兵士を過去の遺物に追いやる。自分を“石器時代の戦士”にしてしまえる存在を前にして、積み上げてきたモノやそれと引き換えに失ったモノの価値を壊されるのではないかと不安になっているのだ。
僕も似たような思いを抱いた。子どもを改造して戦場に立たせることが是とされるのなら、いったい自分たちは何を守るために必死に訓練して、命をかけて戦っているのかと。
「僕だって、やるせない気持ちで死にたくなったこともある。だが、彼女は今を“生きて”いるんだ。心もちゃんとある。笑ったり、怒ったり、泣いたりできる。備品はそんなことしない。僕は、許される限り、彼女を人間として生かしてやりたいんだ」
甘い考えだ。軍人として失格かもしれない。だが、僕はヒャーリスの担当官なのだ。担当官が義体を見放していい道理はない。本場イタリアの担当官たちがどのようなスタンスをとっているのかはわからないが、アルフォドなら義体と一心同体となって真摯に接している。
搾り出すような僕の言葉を、ブランクは「そうかよ」と聞き流した。いや、きっと心に留めた上であえて流したのだ。彼の心にはちゃんと響いている。
「だが、お偉方の考えは違うんだろ?聞いたぜ、上層部が実戦投入を計画してるって噂を」
唐突に痛いところを突かれ、僕はしばらく無言にならざるを得なくなった。周囲を警戒し、聞く耳を立てている者がいないことを確認する。幸いにも、ヒャーリスの銃撃音と雄叫びがうるさくて室外に漏れる心配はなさそうだ。
二人とも耳栓を片方だけ外し、声を潜める。
「他言無用だぞ。……シューマン大佐以下、義体開発計画の早期実現を本願とする一派が強硬に実戦投入を主張してる。すぐにでもやりたいらしい。早いとこ成果を見せつけて予算をつけて貰いたいんだろう」
「クソったれな話だな。何時でも何処でも頭のお固いエリートは金しか頭にねえ。それで、心優しい担当官様はどうするんだ?」
「どうにも出来ないさ。大佐が経済技術省の役人と繋がってるって話は聞いたことあるだろ?反対しても、担当官が別の誰かにすげ替えられて、僕は救護業務軍にでも左遷されるのがオチさ。僕にできることは、せいぜい試験を引き伸ばして出来る限り彼女をこの施設内に留めておくことだけだ。ここで訓練をたくさん積めば、それだけ彼女が傷つく危険も減るしな」
「なるほど、ね」
ここに来て、奇しくもヒャーリスが示した優秀性が仇になった。彼女は役立たずとして廃棄される恐れこそ限りなく小さくなったが、次々に叩き出すデータによって彼女自身が実験のみならず実戦にも十二分に耐えられる逸材であることを証明してしまったのだ。
計画を立案・指揮しているシューマン大佐は中央ともコネのある凄腕のエリート将校として有名だ。30後半という軍ではまだ若輩者の年齢にありながら、すでに1億ユーロを超える予算を秘密裏に国から与えられるだけの才腕の持ち主だ。
僕も担当官として任じられた際に一度だけ対面したが、冷酷そのものの切れ長の双眸に寒気を感じたことが強く印象に残っている。彼はヒャーリスのことを人間だとは露とも思ってはいまい。自身のエリート性を証明させるためのカードにしか見えていないのだろう。でなければ、目覚めてまだ一ヶ月の赤子のような少女を殺し合いに投入するなんて言い出せるはずがない。
「で、肝心のアレはどう思ってるんだ?」
「え?」
「お前さんの義体だよ。あの様子じゃ、お前の考えとは正反対に、むしろ戦いたがってるようにしか見えないぜ」
顎をしゃくってヒャーリスを示すブランクに、僕は力なく頷きを返すしかなかった。
皮肉なことに、ヒャーリス自身はさっさとこの施設から出て実戦任務に就きたいと主張して憚らないのだ。自らの有用性を証明してみせたいのか、それとも何かやりたいことでもあるのかは定かではないが、しきりに自分はもう立派に戦えると言うのだ。
しかし、本人は理解しているのだろうか?彼女が投入される『実戦』が、人殺しに違いないということを。血に塗れた己の手を見ても、彼女はあの笑顔を曇らせずにいられるのか。
「僕は―――」
「あっ、弾切れだ。アパム!アパム!弾!弾持ってこい!アパ―――ム!!」
「大量虐殺が終わったみたいだぞ。迎えに行ってやれよ、担当官殿」
「……わかってるよ」
彼女自身がどう思っていようと、彼女を実戦に参加させるのは僕は反対だ。天使のような彼女が化け物になるところを見たくはない。僕の身勝手なワガママかもしれないが、少女を戦闘に参加させる方がどうかしているのだ。
なにはともあれ、彼女を施設内に引き止めておくための試験の名目はまだまだたくさん用意している。試験をしばらく続けて、少しでもシューマン大佐に反抗してやろう。
「なあ、リヒャルド」
「ん?」
振り返れば、ブランクは自室へ戻ろうとこちらに背を向けていた。彼はその節くれだった手を照れくさそうにひらひらと振るう。
「“あの娘”を―――“ヒャーリス”を、大切にしてやれ」
そう言って、彼は顔を見られないようにそそくさと詰所を後にした。他人に冷酷になれと言いつつもブランクも人の子であることには変わりない。まったく、素直じゃない奴だ。
親友の下手くそな照れ隠しに苦笑すると、僕は耳栓を外して愛しい我が義体の元へ歩み寄る。
「もう標的は全部ぶっ壊したよ、ヒャーリス。オールキルだ。人質も一般人もまとめて全部粉微塵さ」
「ふえ?―――てへっ♪」
「ぐっ!?か、可愛い顔をしても、む、無駄だぞ、ヒャーリス!僕には効かない!」
ペロリと舌を出す悪戯っ子のような誤魔化しに、思わず声が上擦ってしまった。自分でも無理がある言い訳だと思う。効かないどころか、胸を掻きむしられるような愛おしさを感じる。
歳が10歳以上離れているというのに、ヒャーリスを前にするとなぜか激しくドギマギしてしまうのだ。男心の弱点を執拗かつ的確に突いてくる仕草は狙ってやっているのだとしたらかなりの策士に違いない。
「でも、リヒャルド様。格闘訓練では犯人グループ役の兵士は全員無力化してみせたでしょう。それに、このような機関銃を用いた場合ではどのみち敵も味方も女子供もありません。全員地獄の果てまでファッキンアウトしていただくしかないでしょう」
「女の子がそういう汚い言葉遣いをしてはいけません。まあ、僕らも君が機関銃でどこまで狙いをつけられるか知りたかっただけだし。それと、君が格闘訓練でやったのは無力化じゃなくてタコ殴りというんだ。力技に頼りすぎだ」
ヒャーリスは恭しく丁寧な言葉遣いをするように見えて、実は言葉の端々に茨のような毒を含んでいる。そのチクチクと刺さる毒が心地良いアクセントとなって、会話をしていても飽きることがない。とは言っても、やはり美少女が平然とファックなどと下品な言葉を口にしていると担当官のモラルまで怪しまれかねないので、その辺は戒めておくことにする。格闘訓練も、もう少し技術を身につけさせて力押し一方の戦い方を改めさせるつもりだ。いずれ彼女が苦労をしないためにも、今のうちに教えておくことはまだまだたくさんある。
「いいじゃないですか。それで、今回の射撃訓練の結果はどうなんです!?」
「『君に機関銃は持たせてはならない。実戦はまだまだ先延ばし』」
「ええーっ!?楽しいのに!凄く楽しいのに!!リヒャルド様のケチ!ドケチ!スケベ!マザーファッカー!!」
「そこまで言うか!?だいたい、君は銃をもたせると性格が変わりすぎるんだよ!どうしてそうなるんだ!?」
「そういう年頃なんです!」
そう言うと、ヒャーリスはぷいっとそっぽを向いていじけてしまった。それはここ数日で何度も繰り返された、とても人間らしい仕草だった。この反応は洗脳や手術によるものなんかではなく、れっきとした彼女自身の感情から来るものだ。
見てみるがいい、ブランク。そしてシューマン大佐。この娘は悪魔でも、備品でもない。だって、この娘はこんなにも人間らしいじゃないか。
(安心しろ、ヒャーリス。お前がどんなにつらい目にあっても、僕はずっと君を護り続けるからな)
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未分類

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二次創作

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性転換

もくじ
白銀の討ち手

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小劇場

もくじ
白銀の討ち手 旧ver.

もくじ
せっかくバーサーカーry

もくじ
ブリジットマジ天使

もくじ
TS

もくじ
映画

~ Comment ~
待て待て待て待て――――い!!!!www
マジで怒られるから!怒られたら怖いから!!「訴訟も辞さない」とか言われたらチビるから!!穏便に行きましょうや!!
マジで怒られるから!怒られたら怖いから!!「訴訟も辞さない」とか言われたらチビるから!!穏便に行きましょうや!!
>エトムント・ヘックラー さん
ブリジット、ついに最後の戦場に立ちましたねー……。うわあああああぉおおおおおおんんん!!。゚(゚´Д`゚)゚。
終わるのか!終わってしまうのか!!ちくしょう!
せめて妄想のヒャーリスをバカ笑いさせて、笑顔のブリジットを幻視します。
ブリジット、ついに最後の戦場に立ちましたねー……。うわあああああぉおおおおおおんんん!!。゚(゚´Д`゚)゚。
終わるのか!終わってしまうのか!!ちくしょう!
せめて妄想のヒャーリスをバカ笑いさせて、笑顔のブリジットを幻視します。
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