Her name is Charis! !

どうやら最終回は目の前のようだ

 ←『ブリジットという名の少女』の最新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!! →白銀の討ち手のマンガを描いていただきますた!!
ヒューッ!!また最新作が来たぜ!!更新が早くて嬉しいやら、終りが近づいて寂しいのやら!!『ブリジットという名の少女 【ついでにブリジットのこと】2
ウィキペディアで最終回らへんの記述を読んだけど、原作でも原発でトリエラやリコは担当官と一緒に死んじゃうみたいなこと書いてたね。でもアルフォドさんは生きてて欲しいよね。ブリジットも、例え死んでも今度は別の女の子に生まれ変わって、またアルフォドさんに会えたらいいなあとか思います。はい。


そwwwしwwwてwww
また三次小説書いたったぞwwwww何やってんの僕wwwww


―――  【ブリジットという名の少女】ブリジットマジ天使【三次創作】  ―――


第3話 しゅくっふくっ!の日 【ついにイタリア行きケテーイ!?】


♀ ヒャーリスサイド ♀


「おっ、ヒャーリスじゃないか。この間はいいものを紹介してくれてありがとな!」
「どうも、リスト兵曹さん。紹介したアニメはどうでした?」
「実に素晴らしいね。ほむらにはうちの部隊の装備を全部プレゼントしてやりたいよ。今日帰ったら同期の連中と最終回を見る予定さ!」
「それなら、きっとワルプルギスの夜も倒せるでしょうね。最終回はとても感動できますから、楽しみにしていてください」
「ああ、もちろんだ。まどかならきっとやってくれるさ。じゃあ、また今度な!」

「あら、ヒャーリスちゃん。今日は旦那様は一緒じゃないの?」
「おはようございます、ベッケンバウアー伍長。前にも言いましたが、リヒャルド様は“旦那様”ではありません」
「あら、私は一言もウェーバー少尉のことなんか言ってないわよ?」
「―――し、失礼します」
「あらら。ムキになっちゃって、初心ねえ」

「よう、ヒャーリス!今日も可愛いな!今夜こそは俺の部屋に来てくれるよな?」
「……おはようございます、ハラルド上等兵さん。そこまで言うのなら、わかりました。今夜こそあなたの部屋で良いことをしましょう」
「えっ、マジで?いいの!?」
「ええ、もちろん。リヒャルド様とブランク少尉にも来ていただいて四人でじっくり良いお話をしましょう」
「……いや……俺が悪かったよ……ははは……」

ガックリと肩を落として廊下の角に消えていく若い兵士を笑顔で見送る。苦手なベッケンバウアー伍長にからかわれたことの八つ当たりをしてしまったが、アイツもしつこかったからこのくらいで丁度いいだろう。
ハラルド上等兵の背中が完全に見えなくなると、俺は人気のなくなった早朝の廊下で腰に手を当てて独りごちる。

「せっかく『ブリジットという名の少女』の世界に入れたのに、イタリアにすら行けてねえなんてどういうことだよ」

『ブリジットモデル試作2号機』―――ヒャーリスとなってから、一ヶ月半ほど経っただろうか。俺はこの義体実験病棟という施設に閉じ込められて、相も変わらず試験の日々を過ごしている。最初の頃はブリジットに会えるかもしれないとテンション上がりまくりだったが、最近は変わらぬ退屈な日々に飽きてきてしまった。仮想の戦いだけじゃなくて、実際に戦って新しい身体を試してみたいと思う。これには『自分の有用性を証明する』という洗脳の効果もあるのかもしれない。自分以外の誰かに首根っこを掴まれて操られているような感覚は正直気持ち悪いが、特に不便ではないので気にしないことにしている。何事も慣れれば苦にはならないのだ。
さて、そんな飽き飽きとした日々の間に、俺はすっかりこの施設に馴染んでいた。誰彼なく従順に振舞っていたら、担当官の付き添いなしで施設内をほっつき歩いても怒られなくなった。逃走防止の条件付けもされてるし発信機も身体に埋め込まれてるから、それで安心されてるってのもあるのだろう。それに、俺が勝手に出歩いてたらすぐにリヒャルドさんが飛んでくるのだ。過保護っぷりがなんか歳の離れた兄貴みたいでくすぐったい。
なにはともあれ、色々自由に見て回れるようになったのは助かる。今後のためにも施設内の人たちと仲良くなっておいて損はないのだ。社会福祉公社の作戦一課が聞いたら卒倒するかもしれないな。アイツらは義体がめちゃくちゃ嫌いらしいし。

「こんなに可愛いのに、見る目がない奴らがいたもんだ!」

磨きぬかれたガラスに映り込む自分の容貌をじっくりと観察する。
夜空のようにキラキラと艷めく黒髪、年齢の割に大人びて精悍な美人顔、長い睫毛の下で輝く黒真珠のような瞳。俺が想像していた通りの美少女だ!
ああ、愛しのブリジット!会いたかったぜ!むちゅー。

「……ヒャーリス、なぜガラスにキスを?」
「―――んぇ?あ、リヒャルド様。おはようございます。ガラスに映る私が超絶美少女だったのでついつい衝動に負けて口付けをしてしまいました」
「そ、そうか……」

ドン引きされちゃったよ!正直に言っただけなのに!

「ところで、リヒャルド様。今日は朝からどこかにお出かけになっていたようですが、何かあったのですか?」

リヒャルドさんは几帳面だから、会う時間はいつもピッタリ同じだ。朝5時30分にはリヒャルドさんの部屋の前で合流し、簡単な身体検査を終えた後に6時30分から試験を開始する。だけど今日はなぜかリヒャルドさんが部屋にいなかったので、寂しがり屋ちゃんな俺はこうして愛しの担当官様を探してウロウロしていたわけだ。俺ってば健気!でもそのせいで腹減っちゃったよ。朝飯も食ってないし。さっきの上等兵に喫茶店で何か奢らせればよかったかな。

「ああ、手間をかけさせて済まなかった。急な話だが、今日の試験は中止になったんだ」
「中止……ですか?」

思わず目をまん丸くしてリヒャルドさんの表情を伺う。
ここ数週間はずっと試験の日々だった。色んな武器を振り回してみて俺に合ったスタイルを模索したり、危機的状況に陥った際に対処ができるかテストしたり、パルクールみたくひたすら障害物の中を走りまわったり、リベンジに燃えるブランクさんの部下たちと何度も組み手をしたり……。試験というより、実質訓練のようなものだった。
俺はちゃんとわかってる。この試験が、リヒャルトさんが俺をできるだけ施設の外に出さないための時間稼ぎで、中身がほとんど訓練なのは、実戦に出た時に少しでも俺が危険な目に遭わないようにするためだということに。リヒャルドさんは優しすぎる。担当官として割り切れてないみたいだ。アルフォドさんといい勝負かもわからんね。義体の姿形が似ると、担当官も似てくるのかもしれない。
そんなお優しいリヒャルドさんが、今日はその時間稼ぎである試験を中止にすると言っている。心変わりでもしたんだろうか?
不思議がる俺に、リヒャルドさんは申し訳なさそうに笑う。その笑みが貼りつけたようなぎこちないものだったから、俺は直感で何かあったと気付いた。俺を安心させるために無理やり作った笑顔であることを察するに、多分俺に関係することだ。

「今日は午前中は自由に過ごしていいぞ、ヒャーリス。初めてのお休みだ。テレビのような外界の情報の入手はまだ制限されるが、その他の読書とか音楽鑑賞とか、好きなことをすればいい。僕はちょっと出てくるよ」

ほほう、気になるねえ。その用事のこと、是非とも聞かせてもらおうじゃないの。

「あの、リヒャルド様はどちらへ?せっかくお休みを頂いたのに、私とご一緒に過ごしてはくださらないのですか?」
「うっ!?」

離れないで!傍にいて!と縋りつくような表情で見あげれば、俺の甘えに弱いリヒャルドさんは顔を真っ赤にしてたじろぐ。だが、いつもならこの辺でゲロってたはずなのに今日は妙に口が堅い。これはますます本当に何かあったのかもしれないな。しょうがない、レベルアップだ!
ハッと何かに気付いた表情を見せると顔を俯かせ、ぎゅっと体を強張らせて肩と声を震えさせる。俺の突然の涙声にギョッとしたリヒャルドさんが声を裏返させた。効いているゾ!

「もしかして―――」
「ひゃ、ヒャーリス?」
「もしかして、リヒャルド様は私の試験結果に失望されたのですか?それとも私の人格に何か問題があるとお考えですか?そうなのでしたら、どうか私にもう一度チャンスをお与えください。頑張ってもっと良い結果を出します。言葉遣いが悪いのなら改めます。ですから、ですから……」

そこまで言って、リヒャルドさんの胸元に顔面から飛び込んでしがみ付く。この身体は馬鹿力だから、力加減を調整しないと難しい。強すぎるとリヒャルドさんを折り畳み人間にしてしまうからね。少しだけ力強めにして、と。

「お願いします、私を見捨てないで……!私にはリヒャルド様しかいません。あなたに見捨てられたら、私は……」
「だっ、誰が君を見捨てるもんか!そんなことはしない!君はそのままでいいんだ!」

作戦成功!女の涙は武器ってね!

「ほ、本当ですか?直さなければいけないことはないのですか?」
「ああ、ないとも。安心しろ。君はそのままが一番だ」
「では、どうして今日はご一緒してくださらないのです?」
「ああ、いや。……君の今後の予定を、上層部の面々と話をすることになったんだ」

ほお。要するに、俺の運用方針についてお上からお呼び出しがかかったわけね。この不安そうな顔から察するに、試験の前倒しとかそういう話を予想しているのかもしれない。俺からしてみれば嬉しい話だ。外に出られる日が近くなる。
よし、その上層部とのお話とやらに俺もついていってやろう。実物の優秀さを見せつければさらに予定が早まるに違いない!

「あの、ご一緒してもよろしいですか?」
「なぜだ?君が行く必要はない。だって、あの連中は君を―――人間扱い、していない。君を利用して自分が昇進しようとしてる最低の奴らだ……!」

リヒャルドさん、一応俺には『ドイツ連邦共和国に属する政府高官及び士官以上の軍人には服従せよ。反逆者を見つけたら拘束もしくは殺害せよ』って条件付けがされてるから、俺の前で上層部を悪く言うのはよくないですぜ。まあ、このくらいの条件付けなら気合で抑えられるんだけど。
条件付けに逆らったせいでじわりと滲んできた汗を隠しつつ、にっこりと微笑みを返す。

「私を人間扱いしてくださるのはリヒャルド様だけで十分です。あなたさえ傍にいてくだされば他には何もいりません。だから、私を一人にしないで頂けますか?」
「ヒャーリス……」

感に堪えないといった感じで眼を潤わせたリヒャルドさんがサングラスの位置を直す振りをして涙を拭く。もう猿芝居もしてないんだし、サングラスとっちゃえよ。全然似合わないんだから。

「……わかった、一緒に行こう。高官滞在用の本館に入れるように許可を取ってくる。大丈夫、君は大人しくてここのみんなに好かれているから、きっと許可をもらえるさ」
「―――ありがとうございます!リヒャルド様っ!」
「うわわっ!?」

よく言ったリヒャルドさん!それでこそ俺の担当官様だ!ご褒美として俺に抱きつかれる権利をやろう!うりうりうりうり!!

「ひゃ、ヒャーリス!苦し、折れ―――!(ボキッ)―――ぐえ」

―――あ。

「……てへっ、やっちまったぜ☆」


♂ リヒャルドサイド ♂


「お願いします、私を見捨てないで……!私にはリヒャルド様しかいません。あなたに見捨てられたら、私は……」
「だっ、誰が君を見捨てるもんか!そんなことはしない!君はそのままでいいんだ!」

縋りついてくる彼女の肩を抱きしめ、僕は叩きつけるように思いをぶつけた。そうしないと、きっとこの少女は堪えられなくなってしまうと思ったからだ。
ようやく、僕はヒャーリスの気持ちに気づくことが出来た。普段は刺のある口調や破天荒な仕草で隠しているが、本当はいつも不安で溜まらなかったのだろう。試験ばかりの日々は、彼女の心に刻みつけられた『自らの有用性を証明する』という条件付けのせいで苦痛になっていたのかもしれない。早く実戦に出たいと口うるさく要求していたのも、その焦る感情の裏返しだったと考えれば辻褄が合う。自分が役立つということを証明してみせなければ自分に存在価値はない、と。彼女はそう思い込んでいるに違いない。
抱きしめてくる力はとても10代の少女のものとは思えないほどに強い。だけど、この娘の心は紛れも無く少女なのだ。
担当官として失格だ。僕は彼女の不安を察してやることが出来なかった。

「ほ、本当ですか?直さなければいけないことはないのですか?」
「ああ、ないとも。安心しろ。君はそのままが一番だ」
「では、どうして今日はご一緒してくださらないのです?」
「ああ、いや。……君の今後の予定を、上層部の面々と話をすることになったんだ」

まだ不安は晴れないのだろう。今にも泣き出しそうに眉根を寄せる彼女の質問に、僕は苦々しい表情を隠さずに告げる。
今日は早朝になって突然、上層部から呼び出しを食らったのだ。重要な内容らしい。さらに、お目にかかるのはあのシューマン大佐以下『義体開発計画』の推進者たちだという。『早急に義体のデータをまとめて持って来い』という命令から考えて、間違いなくヒャーリスの試験予定の前倒しのことだ。
彼らは早々にヒャーリスを実戦に送り込もうとしている。そして僕はそれに逆らうように試験漬けの毎日でヒャーリスを匿っている。今後の試験スケジュールも半年分を提出してやった。中央からこんな地方にある極秘施設に直接赴いてきたということは、僕の態度についに痺れを切らしたということだろう。いつか来るとは思っていたが、まさかこんなにも早く文句を言いに来るとは思ってもいなかっただけに、僕は朝からばたばたとデータ集めに奔走していた。もちろん、『まだしなければいけない試験はたくさんある』という趣旨のデータばかりを。

「あの、ご一緒してもよろしいですか?」

おずおずと呟かれた要求に、僕は目を剥いた。彼女もわかっているはずだ。シューマン大佐たちが彼女に何を望んでいるのかを。

「なぜだ?君が行く必要はない。だって、あの連中は君を―――人間扱い、していない。君を利用して自分が昇進しようとしてる最低の奴らだ……!」

大佐の息のかかった者に聞かれれば即刻左遷されかねない発言が漏れてしまう。だけど事実だ。生まれて一ヶ月の赤ん坊を戦地に送り出すバカがどこにいるんだ?
そこまで考えて、僕の熱くなった思考に冷水が浴びせられる。ヒャーリスの額や首筋にじわりと汗が滲んだからだ。なぜ忘れていたのか。彼女もまた、幾重もの洗脳によって上層部への反逆と反逆行為を見逃すことが出来ないように厳重な枷を付けられている。今の僕の発言は、上層部への反逆行為にも映りかねない。だけど、目の前のヒャーリスは何も感じていないかのように朗らかに微笑を浮かべている。堪えているのだ。僕のために。

「私を人間扱いしてくださるのはリヒャルド様だけで十分です。あなたさえ傍にいてくだされば他には何もいりません。だから、私を一人にしないで頂けますか?」
「ヒャーリス……」

そのいじらしさに、鼻奥がつまり、視界がゆらゆらと水面のように揺れる。大の男が泣き顔を見せるわけにはいかまいとサングラスの位置を直す振りをして目尻をぐいと揉んだ。もはや当初目論んでいた“軽薄で非情な男”の皮は被れまい。僕は、ヒャーリスのことを人間としてしか見れなくなっている。

「……わかった、一緒に行こう。高官滞在用の本館に入れるように許可を取ってくる。大丈夫、君は大人しくてここのみんなに好かれているから、きっと許可をもらえるさ」
「―――ありがとうございます!リヒャルド様っ!」
「うわわっ!?」

再び抱きついてきたヒャーリスを受け止める。アメフト選手のタックルかと思うほどの衝撃が腹を貫いたが、苦には思わなかった。
彼女は“猫”だ。主人を置いて気まぐれに出歩くが、大好きな主人の元には必ず帰ってくる可愛い黒猫だ。

(例え世界中の誰もが君を人間扱いしなくても、僕だけは君をヒャーリスという女の子として接し続ける。安心しろよ。だ、だから……!!!)

ギリギリミシミシという鈍い音が身体の中から聞こえてくる。まずい、ヒャーリスは完全に力の制御を失っている。格闘訓練で巨漢を放り投げた膂力が脳裏に去来し、ゾッとする。

「ひゃ、ヒャーリス!苦し、折れ―――!(ボキッ)―――ぐえ」
「……てへっ、やっちまったぜ☆」

……前言撤回だ。彼女は可愛い猫ではなく、虎かライオンみたいな馬鹿力の肉食生物だ―――。


… … …

… …




「ヒャーリスをイタリアに派兵する、ですって……!?正気ですか、シューマン大佐!?」

信じられない指令を聞かされて、僕は思わず身を乗り出した。元KSKの鋭い視線に威圧されて他の将官たちはギクリと身を引くが、シューマン大佐だけはその視線を真っ向から難なく受け止めた。

「正気だとも、ウェーバー少尉。今作戦は義体を投入する必然性と迅速さが求められているのだ。それと、あの義体は兵士でも個人でもない。我が軍が大枚をはたいて製造した備品だ。よってこの場合は“派兵”ではなく“使用”が正しい。言葉は正確に用いたまえ」

この悪魔め、と叫びそうになった侮蔑をギリギリのところで噛み殺す。
わけが分らなかった。僕はてっきり試験の前倒しを要求されるのかと思っていたが、実際はなんと一週間後にイタリアに出発して作戦に加われという命令を与えられたのだ。
オリジナルのブリジットも、覚醒後の約半年ほどを試験と訓練に使っていたはずだ。それを考えても実戦投入はあまりに速すぎるではないか。

「実戦参加は速すぎます!それに、そもそも防衛目的以外の海外への戦力投入はれっきとした憲法違反だ!いくら極秘計画とはいえ……!」
「だが、君はKSK現役時代にアフガニスタンでも作戦行動をとったし、その他表沙汰にされない地域でも武力を行使したろう。連邦憲法裁判所も、連邦国防相も、世界中のどこであれ広い意味でのドイツの安全を守るために必要な行動は憲法解釈によって認められると結論づけている。義体の性能も、資料を見る限りでは戦闘にまったく支障はなさそうに見受けられるが?」
「それは我が国の人命や財産や権利を保護するための限定的なものです!そういう場合は、まだ試験段階の義体ではなくれっきとした正式戦力を使用するべきではありませんか!」
「……ふむ」

言うじゃないか、と褒めるように目を細める大佐に激しい苛立ちが募る。今すぐ義体を投入しなければならないという理由を示し、それに納得できない限り、例え左遷されようとも僕は担当官としてヒャーリスの“派兵”を認めるわけにはいかない!!
僕が睨む先で、大佐はフンと鼻を鳴らして目配せする。僕の背後にいた冷たい美貌の女性士官が、僕の手元にファイルを置いた。大佐たちが見ているものと同じものらしい。渡す間際に冷たい眼で見てきたことからして、彼女は完全に大佐に心酔しているのだろう。なぜこんな非人間的な男に……。

「……これは?」
「今時作戦の資料だ。極秘文書だ。他言した場合は軍事裁判を通さずに実刑となるから頭に叩き込みたまえ」

促されるままに書類に目を通す。『極秘』という文字はヒャーリスの担当官となってすでに見飽きていたが、内容は驚くべきものだった。

「『社会福祉公社の義体技術者に対する亡命の説得と補助』……?」
「そうだ」

今度は大佐が身を乗り出す。

「名はヴィタントニオ・カタラーニ。元はペンシルバニア大学で薬学の研究をして幾つかの成功を収めた、極めて優秀な男だ。現在は社会福祉公社の技術部でベリサリオ博士の助手をしている。だが、彼は助手の立場に収まっているべき小さな人間ではない。諜報部の調査では、彼は肉体精神共に若く、野心的で、独創性に満ち溢れている。ぜひ、我が国でもっと重要なポストについてもらうべきだ。そうは思わんかね?」
「つまり……義体の技術を手に入れるために、彼を亡命させると?」

呻くような僕の声に、大佐は「平たく言えばそうだ」と軽く返す。その双眸は高みから愚者を見下ろす愉悦を含んで不気味に艷めいている。

「それに、だ。我が国は“わずか一ヶ月足らずで実戦使用が可能な義体”を製造できる高度な技術を持っているとはいえ、その耐久性を維持させるための薬理方面の知識においては手探り状態だ。あの義体、通称名はなんと言ったか―――ヒャーリスも、いつまで元気でいられるかは未知数なのだろう?」
「……っ!」

上官でなければ今頃こいつの首を捻り切っていた。歯を食いしばり、身を震わせる怒りを全身全霊の気力で制御する。
だが、図星でもあった。ヒャーリスは今のところは好調そのものだが、いざ機能が低下すれば回復させるのは難しい。パーツの交換はできても、それ以外のノウハウは虫食いにあったように穴だらけのものしか手に入れられていない。早々に技術を確立させるか、本場の技術者を亡命でもさせない限り、彼女の命は常に綱渡りの状態だ。
震える拳を机の下に隠し、質問を搾り出す。

「大佐の仰ることは理解します。ですが、説得と亡命は諜報部の役割でしょう。なぜ義体を使用するのです?」

大佐は答えず、手元のファイルをコツコツと叩いてみせた。勿体ぶった仕草に顔が引き攣るのを自覚しながら、僕も自分の手元にある同じファイルのページを捲る。
最後まで読み進めて、ようやく大佐が言わんとしている全体像が見えてきた。

「社会福祉公社が、動く……」
「その通りだ。社会福祉公社の中でも、義体を運用する作戦二課は非常に微妙な立場にいる。同じ公社の中でも一課と足の引っ張り合いを演じているよ。彼らは第二次世界大戦の時から何も変わっていない」

そこで大佐は言葉を一旦区切る。
空気を読んだ将官たちが笑い、大佐は満足そうに周囲に笑みを返す。ここでマシンガンを乱射できたらどんなに清々するだろうか。

「亡命を完全に隠し通すことは不可能だろう。事実、カタラーニ博士との接触は作戦二課に感づかれた節があるそうだ。ドイツ大使館に亡命させたとしても、ドイツ本国への移送中に暗殺されてはお話にならない。そして、作戦二課は身内の恥の解決を頼めるところがない。従って、亡命の阻止には向こうの義体が投入されると考えるのが自然だ。後は、言わずともわかるな、ウェーバー少尉」

身内の恥は身内で処理する。軍隊組織の鉄則だ。間違いなく相手は義体を投入して博士の奪還か暗殺を行う。
そして、強力な義体に対抗するためには特殊部隊でも腕利きを集めなくてはならないが、極秘で、しかもドイツの国防に特に関わらないとなればそれは容認されないだろう。
つまり、義体に対抗するためにはこちらも義体をぶつけなければならないというわけだ。
黙りこむ僕に、大佐は呆れたように笑いかける。

「ウェーバー少尉、君はアレのことをいたく気にかけているようだね。まるで妹か―――それこそ、恋人のように。情が移ったのだろうが、悪いことは言わん。やめたまえ。あれの素体となった少女は非行に走った末に逮捕されて少年院行きが確定した親不孝者だ。その親ももう死んだ。そのまま生きていても、やがて娼婦にでも行き着くのがオチだったろうよ。それに、」

大佐がさも愉快そうににやりと笑う。

「知っているかね?アレは素体の段階でもう処女ではなかったそうだよ。はは、とんだ淫売じゃないか」
「―――ッッッ!!!」

気づけば、机を跳ね飛ばして立ち上がっていた。身体に染み付いた相手を殺すための戦闘技術に身を任せ、僕は驚愕に目を見開く大佐に向かって迅速に近づき、

「お止めください、リヒャルド様!」
「ヒャー、リス……?」

背後からの轟音と同時に腰に抱きついてきた細い腕に、動きを止められていた。


♀ ヒャーリスサイド ♀


(ひ、暇だ)

本館の最上階にある会議室の前で、俺は椅子に座って足をブラブラとさせていた。本館まで入れるように許可はもらったものの、さすがに会議には同席出来なかった。無念だ。シューマン大佐とやらの顔を拝んでみたかったのだが。
扉に耳を当てて盗み聞きでもしてやろうと思ったが、扉の前には小銃を持った衛兵が二人いて近づけない。近づいても「入っちゃダメだよ」と怒られる。でも無線で人呼んで椅子とココアを用意してくれたので、その辺の気遣いは嬉しいね。ココアも上等将官用の本館で作ったからなのか、けっこう美味しい。やっぱり外見が美少女だと得するものがある。
しっかし、さっきから中からリヒャルドさんの荒らげた声が聞こえるんだよなあ。「正気か!」とか「憲法違反だ!」とか。衛兵もびくっとしたくらいだし。なんかけっこう怒ってるみたいだね。何言われているのやら。冷静さを失うとろくなことにならないから、ほどほどにしてもらいたいものです。
ちょっと耳を澄ましてみよう。聴覚も強化されてるし、なんとか聞こえるかもしれん。カントリーロード~この道~ずっと~ゆけば~あの街に~

『―――やめたまえ。あれの素体となった少女は非行に走った末に逮捕されて少年院行きが確定した親不孝者だ。その親ももう死んだ。そのまま生きていても、やがて娼婦にでも行き着くのがオチだったろうよ。それに、』

……なんか嫌な台詞が聞こえたな。この高慢ちきそうなムカつく声がシューマン大佐か?素体だった頃の記憶は俺にはないから別にどうとも思わないけど、こんなこと言われたらリヒャルドさんもそら怒るわな。

『知っているかね?アレは素体の段階でもう処女ではなかったそうだよ。はは、とんだ淫売じゃないか』
『―――ッッッ!!!』

へー、俺処女じゃないのかあ、なんて呑気に頷いていると、突然、ガッターン!と何かが吹っ飛ぶ音がした。やべっ!もしかしてリヒャルドさんキレた!?
抑えないと何するかわかんないぞあの人!元特殊部隊だし、普段おとなしい人間ほど怒った時は怖いからね!衛兵さんそこどいて、リヒャルドさん救えない!

「ちょっとどいてください!中に入ります!私の担当官の危機なんです!」
「だ、ダメだ!会議中は入室は厳禁とされている!」「許可はできない!」

ああ、もう!緊急事態だってのに、お固い奴らだ!

「隣の兵士さんがさっきあなたのことを“ユダヤの豚野郎”と言っていましたよ!」
「なんだとこのナチ野郎!!」「ええっ!?俺そんなこと言ってねえよ!」

ったく、モブキャラなんだからこういう時くらい気を効かせろよ!役に立たねーな!
助走も無しに樫の木でできた扉を豪快に蹴破って突入する。馬鹿力はこういう時に役立つのだ。見れば、目の前にはすっかり鬼とかしたリヒャルドさんの背中が!こいつはまずい!完全に殺す気まんまんじゃねーか!!
これは言葉で言っても意味なさそうだな。実力行使で止めるしかねえ!!うおりゃー!!

「お止めください、リヒャルド様!」
「ヒャー、リス……?」
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 二次創作
もくじ  3kaku_s_L.png 性転換
もくじ  3kaku_s_L.png 白銀の討ち手
もくじ  3kaku_s_L.png 小劇場
もくじ  3kaku_s_L.png Her name is Charis! !
もくじ  3kaku_s_L.png TS
もくじ  3kaku_s_L.png 映画
  • 【『ブリジットという名の少女』の最新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!】へ
  • 【白銀の討ち手のマンガを描いていただきますた!!】へ

~ Comment ~

あれぇ? 

あれ?おふざげを見に来たつもりがシリアス?まぁ良いよね面白いから。
派兵か。イタリア行きはあるのかな?行かずに済む方が良い気がするいろんな意味で。ガンスリ劇場化する恐れがありますご注意下さいwww

 

>悦さん
だって……原作(というのも不思議だけど)がだんだん終わりに近づいているのを見ていると、なんだか気が落ちてくるんですよ。それで気がついたらシリアス面に引っ張られていくという……。ガンスリ劇場でも読みなおして、もう一度気分を高揚させるしかねえ。あーでももうすぐブリジット死んじゃうんだよなあ。あぁあああまたシリアス面に引っ張られるうううう。
ヒャーリスとブリジットと愉快な仲間たちをかち合わせてみたいなあ。でもきっとトリエラに殴られてエルザに刺されてアルフォドさんに鼻で笑われてリヒャルドさんにお説教されて強制送還なんだろうなあ。

 

ヒャーリスとブリジットが劇場で絡んだらどうなることやら。やや引きこもりの気があるブリジットを引っ張るヒャーリス希望www
  • #92 エトムント・ヘックラー 
  • URL 
  • 2012.03/21 18:23 
  •  ▲EntryTop 

 

>エトムント・ヘックラーさん
最近、あなたが実はH&Kさんなのではないかとドキドキしております。……違うよね!?
僕は、ブリジットは常に涼しい目をしてる冷静そうな……それこそ美しい夜月みたいなイメージだと思っていますので、ヒャーリスはそれとは対照的に凄く前向きで表情がコロコロ変わる太陽みたいなキャラにしますた。いつかH&Kさんにお許しを頂けたら、本編のキャラとぜひぜひ絡ませて頂きたいです。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【『ブリジットという名の少女』の最新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!】へ
  • 【白銀の討ち手のマンガを描いていただきますた!!】へ