Her name is Charis! !

ブリジット三次創作の続きの続きの……続きくらい?

 ←白銀の討ち手のマンガを描いていただきますた!! →最近ブリジットの更新が待ち遠しくて眠れません
ブリジットへの愛という激流に身を任せ同化する……。



第4話 これからのことを考えてウハウハな日 【でもなんか嫌な感じ!】


♂ リヒャルドサイド ♂

「お止めください、リヒャルド様!」
「ヒャー、リス……?」

僕の腰を抱くヒャーリスの必死の形相に、白熱していた頭がゆっくりと冷却されていく。部屋の外で待機を命じていたはずなのに、なぜこんな悪意が渦巻く部屋に入ってきてしまったのか。
その悪意の中心に座る男、シューマン大佐に目を戻す。余裕を装って笑みを貼りつけているが、緊張で持ち上がった肩と引きつった口端は隠せていなかった。その情けない姿を前にして、再び腸を煮えくり返らせるような憤怒の炎が腹底で燃え上がる。
こんな薄っぺらい奴に、ヒャーリスの命を弄ぶ権利も、蔑む資格もない。彼女を侮辱したこいつだけは許してはならない。
使命感にも似た怒りが頭を芯から加熱し、動きを封じるヒャーリスの腕を振りほどこうと力を込める。
それを遮るのは、よりにもよって彼女の冷たい声。

「ダメです、リヒャルド様。あなたは冷静さを失い、上官に不敬を働こうとしています。あなたを自由にするわけにはいきません」
「ヒャーリス!?」
「もう、お忘れですか、リヒャルド様。私は、軍高官への反逆は、“見逃せない”のです。どうか、冷静に……」
「……あ……」

ヒャーリスの言葉は搾り出されたように苦しげに掠れていた。振りほどくために触れた繊手はじっとりと汗ばみ、額には玉のような汗が浮かんでいる。
彼女が自らに科せられた洗脳のままに本気で僕に襲いかかってくれば、今頃僕は怪力でねじ伏せられていた。そうなっていないのは、彼女が洗脳に逆らっているからだ。また、負担をかけてしまった。

「……申し訳ありません、大佐。取り乱しました」
「………まあ、いい。義体の条件付けが有効に作用していることを目の前で確認できたのだからな」

僕の謝罪に嘲笑を蘇らせた大佐の眼がじろりとヒャーリスを捉える。物を検分するような、およそ同じ人間を見るものではない冷たい眼つき。それに反応して身体が怒りに強張るが、腰に回された腕に優しく封じ込められる。

「ヒャーリス、と言ったな。担当官は錯乱しているようだ。担当官を介さず、お前に直接命じよう。一週間後にイタリアに「承知致しました。大佐のご期待に添えるよう、必ず任務を果たします」

大佐の言を乱暴に遮ったヒャーリスに、将官たちがざわめく。まるで不良品に対するような視線を周囲から受けてもヒャーリスは怯えた様子も見せず、彼らの前に立って無表情を返す。

「私は新しい身体と人格を与えていただいたことに心から感謝しています。私が莫大な国家予算によって製造され、維持されていることも理解しています。私は、私の製造目的に従い、ドイツ連邦共和国に忠誠を捧げ、祖国の忠実な剣となり盾となりましょう。私自身、その役目を十二分に果たせる能力を有していると自負しています」

淀みなく紡がれていく台詞に心が締め付けられていく。抑揚のない声はロボットの人工音声のようだ。その従順な台詞に大佐や将官たちの顔から不安が溶け、期待と満足に塗り替えられていく。僕の表情はきっと正反対に沈んでいるだろう。
大佐たちが―――いや、僕ら大人が、彼女をこんな風にしてしまったのだ……。

「で・す・が!」

唐突に強くなった語調に全員が狐につままれたような表情を浮かべる。不意にヒャーリスがこちらを見上げてくる。心配するな、と言うような不敵な微笑みは、年頃の少女というよりはイタズラ好きの少年のようだ。
僕の手にヒャーリスの手が絡められる。同じヒトの温もりに、ドクンと心臓が震えるのを感じる。

「私が命令を聞くのはリヒャルド・ウェーバー少尉の口から申し伝えられたもののみです。『義体は担当官に対して絶対的に依存し、命令に完全服従し、その生命と安全を守護する』。あなた方が私に施した条件付けの通り、私は、私が担当官だと唯一認めるリヒャルド様から下された命令にのみ従い、リヒャルド様以外の命令にはずぅぇえっっったい!に従いませんので、悪しからず。さ、行きましょう、リヒャルド様」

そう毅然と言い放つと、あんぐりと口を開ける大人たちを背に彼女はさっさと退室していく。その背中は見た目以上の大きさを秘めている。彼女が向かう扉の外では二人の衛兵が乱闘をしていた。きっと彼女が会議室に入るために何かしたに違いない。
まったく、彼女には敵わない。僕は晴れやかに苦笑すると、ヒャーリスに引っ張られながらも立場上は上官の奴らに敬礼をしておくことにした。
いいだろう、アンタらのお望みどおり、その任務を引き受けてやろうじゃないか。ヒャーリスとなら、きっとどんな困難でも乗り越えられる。

「先程、錯乱してご無礼を働いたことをお許し下さい。今作戦に参加できることを光栄に思います。私とヒャーリスに、どうぞご期待ください」
「何を生意気な……!貴様を担当官から外してもいいんだぞ!?」
「作戦直前に担当官を変更するのは良作とは思えません。では、失礼致します。“派兵”の準備がありますので」
「ま、待たんか!」

将官の制止の声を無視して退室する。軍人が上官を意図的に無視するなどご法度もいいところだ。1時間前の僕なら出来なかった。だが、今はこうするべきだと思った。
将官たちもそれ以上は何も言えないようだ。当然だ。ヒャーリスに『担当官に服従する』という条件付けを行うように指示をしたのは彼ら自身で、ヒャーリスが僕以外を担当官とは認めないと言い切ったのだから。
それに、今この国でもっともヒャーリスという義体の扱いを心得ているのは僕だけだ。僕以上の適任者を担当官にしつらえるには時間がかかる。結局のところ、彼らに手出しなど出来ないのだ。


「―――少し甘やかし過ぎたようだな。メンデルス少尉、準備をしたまえ」
「はい、大佐。再調整は―――」


背後で大佐と女性士官の小さな声が聞こえた気がしたが、どうでもいいことだと切り捨てた。


… … …

… …




「―――つまり、カタラーニ博士をドイツ本国まで無事に移送すればこちらの勝ち、途中で奪い返されるか殺されてしまうかすればあちらの勝ちだ。問題なのは、その過程で本家の義体と交戦する可能性が高いということだ」
「おおー!ついにイタリア行き!この時を待っていたぁ!!」
「……君ねえ」

私室に戻った僕は、連れてきたヒャーリスに大まかな作戦内容を説明していた。思えばヒャーリスを私室の中に招き入れたのはこれは初めてだ。普段から整頓はしているが、ちゃんと掃除しておけばよかった。まさか女の子を私室に招くことになるとは思っていなかったのだ。用意できた朝食がわりの軽食もビスケットとコーヒーしかなかった。ヒャーリスがそれで満足してくれたのは幸いだった。
当のヒャーリスは、ついに実戦に出られると聞いて喜び勇んでベッドで飛び跳ねていたが、僕の不安そうな顔に気づくと太陽のように明るく笑いかけてくる。

「だ~いじょうぶですよ、リヒャルド様。何も相手の義体を倒せってわけではないんでしょう?博士を迎えに行って、敵が来たら適当に受け流しつつさっさと逃げればいいんですから、楽勝ですよ。So fucking what?(だからどうした!?)って感じです。ついでにオリジナルのブリジットにも挨拶したいですねぇ」
「……そんなに簡単に行けば僕はこんなに悩んでいないよ。それと、汚い言葉を使うのはやめなさいと言っただろう」
「あれれ~?私を抱きしめて『君はそのままが一番だ』と言って下さった殿方はどこの誰でしたっけ?」

ひ、卑怯者め……!あれは演技だったんじゃないだろうな!?
我ながらくさい台詞を言ってしまったと今になって後悔する。
自然な動きを装いつつ、資料を目の前に掲げて紅潮する顔を隠す。しかし、目の前の資料の向こうからはくすくすと忍び笑いが聞こえてくる。どうやらバレているらしい。ヒャーリスの人格を必要以上に大人びさせたのはどこのどいつだ!
ゴホンと咳を一つして調子を改め、胸ポケットからサングラスを取り出してかける。これがないと、彼女の前では威厳が保てないような気がする。サングラス越しにヒャーリスの眼をじっと見て嗜める。

「いいかい、ヒャーリス。君は義体となってまだ一ヶ月半しか経っていない。試験も訓練もとても十分とは言えない。それに比べて相手は百戦錬磨の強敵たちだ。特に君のオリジナルであるブリジットの戦績はトップクラス。君の苦手な狙撃をもっとも得意とし、射程範囲は1600メートルというオリンピックのゴールドメダル級の化け物だ。おまけに銃撃戦でも敵なしだそうだ。万が一接敵した場合はすぐに逃げるんだ。今の君では勝ち目がない」
「わあ、ゴルゴ13みたい」
「真面目に聞いてくれ、ヒャーリス!君の命がかかっているんだ!」

本気を込めた僕の言葉に、ヒャーリスはやはり朗らかな笑顔を返してくる。なぜこんなに悠長に構えていられるのか。旅行じゃないんだぞ。
知らずに厳しい視線を向けてしまった僕に少し驚いたヒャーリスは、困ったような恥ずかしいような表情を見せて目を窓の外に逸らした。こちらを向いた頬が桜色に染まっている。
彼女には珍しい殊勝な仕草に思わず心臓が跳ねる。

「ねえ、リヒャルド様。正直に言うと、私、オリジナルに―――ブリジットに会ってみたいのです。
ブリジットは自身のことをどう思っているのでしょう?担当官にどう接しているのでしょう?周りの義体とどんな関係を築き、どのように振舞っているのでしょう?今何を考えているのでしょう?何に悩んでいるのでしょう?私と何が違って、何が一緒で、会った時はどんな反応をしてくれるのでしょう?
知りたいのです。資料ではなく、この目で直に見て、触れ合ってみたいのです。……敵なのに、おかしいですよね」

語尾に至るに連れて小さくなっていくその言葉は、まるで愛の告白のように甘く、熱っぽかった。この瞬間、僕は彼女が一か月前に目覚めたばかりの義体だということを忘れ、目の前の“恋する乙女”に見蕩れてしまっていた。
彼女はこの国で初めて作られた、たった一人の義体だ。36万平方キロメートルに渡る巨大な国の中には、彼女の肉親どころか、先達も仲間もいない。彼女の悩みや気持ちを共有できる者はこの国にはいない。きっと意中を打ち明けられる相手を欲しているに違いない。だから、彼女は同じ義体の少女―――オリジナルに恋焦がれているのだろう。それが許されないことだとわかっていても。

「……すまない、ヒャーリス。それは許可してやれない。イタリアにとって、君は公社の技術を我が国が盗んだという明確な証拠となる。捕らえるか殺して回収しようとする。君が口を割らなくても、洗脳なり分解なりして精査すれば君が我が国で作られたことがわかる。僕は君にそうなって欲しくない」
「あ、いえ、そうですよね。ごめんなさい……」

ヒャーリスが悄然と肩を落とす。太陽のようだった顔が見る見る曇っていく。僕が影を差したのだ。そう考えると、汚してはいけないものを汚してしまったような罪悪感に襲われる。
償わなければならないという義務感に背を叩かれ、そうしないと彼女をオリジナルに取られてしまうのではないかという焦燥感に引っ張られ、気づけば彼女の両肩を強く掴んでいた。

「り、リヒャルド様?」
「僕では―――僕ではダメか?僕には悩みを打ち明けられないか?思いの丈をぶつけるに足らないか?君の支えには、なれないか?」

きょとんと驚いて固まる少女は、やはり年齢より大人びていて美しかった。
彼女に必要とされたい。担当官としてではなく―――男として。
心の何処かから切羽詰まった声がする。「今のお前は担当官としての線を超え始めている」と警鐘を鳴らしている。それを無視して、僕はじっとヒャーリスの瞳を見つめる。なんて深く、神秘的で、美しいのだろう。まるで幼い頃にアルフォドと駆けまわったシュバルツバルトの森のようだ。例え容姿が作られたものだったとしても、この瞳は間違いなく彼女自身の魂の輝きを湛えている。
今思えば、担当官としての線なんて最初に彼女の満面の笑顔を見た時から踏み越えていたに違いない。例え僕が線引きをしたとしても、彼女はきっとその垣根をひょいと踏み越えて僕の手を握っただろう。彼女は、そういう快活な魅力に満ちた女性なのだ。
僕の真剣そのものの視線に射られてしばらく呆然としていたヒャーリスが、クスリと柔らかく微笑む。また心臓が肋骨を叩く。

「ええ、ダメです。全然ダメ。悩みを打ち明けようにも今日の朝は私を放って黙っていなくなっちゃうし、思いの丈をぶつけようにも似合わないサングラスで目を隠しちゃってるし、支えになってくださるどころか私が抑えていなかったら今頃上官への暴行及び侮辱罪で拘束されてFuck up(やっちまった!)なオチになるのは目に見えてました」
「うぐっ!す、すまない……」

全て図星だった。だが一番心にグサリと来たのは、なぜかサングラスが似合っていないと言われたことだった。自分ではけっこう様になっていると思って幾つか数を揃えたし、毎朝鏡の前でセットしたりしていたんだが。

「だから、」

俯いた僕の頬を、白魚のような繊手がそっと挟む。そのままゆっくりとサングラスが外され、視界が鮮明になってゆく。サングラスが取り外された目と鼻の先には、世にも美しい美少女の微笑みがあった。
遮光レンズがないと眩しくて目も開けられないような、人の心を暖かく優しく包む、太陽の輝きを放つ笑み。こんなに綺麗な笑顔を浮かべられる少女が戦闘マシンだなんて、いったい誰が信じるというのか。

「だから、黙っていなくならないでください。サングラスも私と向かい合う時は外してください。期待はしていませんが―――たまには、私を支えてください」
「……君は、相変わらず、口が減らないな」
「でも、このままが一番いいのでしょう?」
「ああ……ああ、その通りだ。君は、今のままが、一番だ」

我ながら情けないと思うくらい、放心してしまっていた。仄かな石鹸の匂いとふわりとした陽光の匂い、それらに混じる微かなビスケットの甘い匂いに、頭が熱に侵されたようにボーっとする。
頬を滑るしなやかな手のひらの感覚に脳が蕩かされる。ずっと触っていたいほどに心地よい肌は、およそ人工のものとは思えない、芸術的な何かだ。
ふかふかとして張りのある小ぶりの朱唇はすぐ眼の前だというのに、脱力しきった身体は言うことを聞かない。
マヌケな様子で呆ける僕を、10歳は歳の離れたヒャーリスが慈しむように見守り続ける。それを恥だと感じる感覚すらボンヤリと鈍ってきて、思考が鈍化していくのを感じる。

(ああ、ブランク。もう手遅れだ。僕は完全にヒャーリスに骨抜きにされてしまった……)

結局、僕は「もういいですか?」とヒャーリスに言われるまで、二時間以上も彼女を見つめ続けていた。
僕は彼女に―――恋をしてしまったのだ。


♀ヒャーリスサイド♀


俺はブリジットに会いたいんだよ!それだけなんだよ!シリアスに巻き込まれるのはゴメンなの!勝手にやっててくれ―――!!
……などと思いつつも、どうにもリヒャルドさんのことを放っておけない。『担当官を大切に!』という条件付けもあるのだろうが、それ以上にこの人は俺が気にかけてやらないと自滅しそうで怖いのだ。生真面目が人間の皮かぶったような人だからさっきみたいにいけ好かない上官がいたらヘラヘラ笑って受け流すなんて賢いことも出来ない。苦労する性格だと思うよ。ほんっと、アルフォドさんによく似てるね!実は血が繋がってるとかそういう設定だったりしてね!なーんちゃって!

「いいかい、ヒャーリス。君は義体となってまだ一ヶ月半しか経っていない。試験も訓練もとても十分とは言えない。それに比べて相手は百戦錬磨の強敵たちだ。特に君のオリジナルであるブリジットの戦績はトップクラス。君の苦手な狙撃をもっとも得意とし、射程範囲は1600メートルというオリンピックのゴールドメダル級の化け物だ。おまけに銃撃戦でも敵なしだそうだ。万が一接敵した場合はすぐに逃げるんだ。今の君では勝ち目がない」

ああ、知ってる知ってる。『1マイル向こうの少女』で読んだよ。あれは名作だよね。「言われなくてもリヒャルドさん以上に知ってますよwww」って言ってみたい!でも言うと面倒くさいことになりそうだから言わない!

「わあ、ゴルゴ13みたい」
「真面目に聞いてくれ、ヒャーリス!君の命がかかっているんだ!」

やべ、怒られちゃったよ。さっきのいざこざで沸点下がってんのかな?でもそんなに睨まなくてもいいじゃん。まあ、サングラス似合ってないから全然怖くない、ていうかむしろ吹き出しそうになっちゃうんだけどね!顔背けないとやべえwww
そうだ、この機会に、ちょっと本音言ってみるか。ブリジットに会いたいって言ってみれば許してくれないもんかな?

「ねえ、リヒャルド様。正直に言うと、私、オリジナルに―――ブリジットに会ってみたいのです。
ブリジットは自身のことをどう思っているのでしょう?担当官にどう接しているのでしょう?周りの義体とどんな関係を築き、どのように振舞っているのでしょう?今何を考えているのでしょう?何に悩んでいるのでしょう?私と何が違って、何が一緒で、会った時はどんな反応をしてくれるのでしょう?
知りたいのです。資料ではなく、この目で直に見て、触れ合ってみたいのです。……敵なのに、おかしいですよね」
「……すまない、ヒャーリス。それは許可してやれない。イタリアにとって、君は公社の技術を我が国が盗んだという明確な証拠となる。捕らえるか殺して回収しようとする。君が口を割らなくても、洗脳なり分解なりして精査すれば君が我が国で作られたことがわかる。僕は君にそうなって欲しくない」
「あ、いえ、そうですよね。ごめんなさい……」

ションボリ(´・ω・`)
ま、仕方ないかぁ。俺ってばドイツ連邦軍の極秘技術も使われてるらしいからね。リヒャルドさんもこの通りめちゃ真剣に心配してくれてるわけだし、ワガママは言えないわな。うーん、残念。
まあ、イタリアに行けばまたチャンスは回ってくるさね。駄目だ駄目だあきらめちゃだめだできるできる絶対にできるんだから!!よっし、松岡修造パワーで気合満タン―――うひゃあっ!?なんで肩掴んでくるの!?なんか怒らせることした!?

「り、リヒャルド様?」
「僕では―――僕ではダメか?僕には悩みを打ち明けられないか?思いの丈をぶつけるに足らないか?君の支えには、なれないか?」

……What?なんでそんな苦しそうな顔してんの?言ってる意味もわかりませんが。
うーむ。もしかして、俺が寂しがってると勘違いしたんだろうか?こりゃあ、ほんとに担当官には向いてないなあ。アルフォドさん以上に向いてないよ。割り切らないとストレスがマッハになっちゃうぜ。担当官に依存する義体の俺が言えることじゃないけど。
きっと、俺のことを妹みたく考えてるんだろうなぁ。なんか中身が俺だってことを考えると凄く気の毒になる。こんな妹、嫌すぎるだろうにwww
とりあえず、安心させてやりますか。いつまでも男が泣きそうな顔をするもんじゃないぜ、リヒャルドさん。

「ええ、ダメです。全然ダメ。悩みを打ち明けようにも今日の朝は私を放って黙っていなくなっちゃうし、思いの丈をぶつけようにも似合わないサングラスで目を隠しちゃってるし、支えになってくださるどころか私が抑えていなかったら今頃上官への暴行及び侮辱罪で拘束されてFuck up(やっちまった!)なオチになるのは目に見えてました」
「うぐっ!す、すまない……」
「だから、」

もしかして、リヒャルドさん、そのサングラス似合うと思ってたの?てゆーか、それ昨日のサングラスと違うじゃん!なに、もしかしてたくさん買ってるの!?金の無駄だよ!全然似合ってないんだってば!笑っちゃいそうになるから、これ没収ね!

「だから、黙っていなくならないでください。サングラスも私と向かい合う時は外してください。期待はしていませんが―――たまには、私を支えてください」
「……君は、相変わらず、口が減らないな」
「でも、このままが一番いいのでしょう?」
「ああ……ああ、その通りだ。君は、今のままが、一番だ」

おお、なんか眠そうな感じにボーッとしだしたな。疲れがたまってたんだろうか。この人、今年29歳らしいけど、こうしてうつらうつらしてると見た目より若く見えるな。ブランクさんの方が5歳は年取って見えるぜ。
うおっ!今気づいたけど、リヒャルドさんほっぺたすっごいスベスベしてるじゃん!白人さんの肌はこんな感じなのか?羨ましいなあ。てか、こうやって眺めてるとこの人子どもみたいで可愛いとこあるな。起こすのも気の毒だし、もう少しこのままにしておいてやるか。


… … …

… …




「あー、ひどい目にあった」

リヒャルドさんはボーッとしたままなんと二時間もあの体勢だったのだ。それに付き合わされた俺はたまったもんじゃない。肉体的にはともかくとして、精神的にキツかった。何が悲しゅうて男の顔を二時間も凝視せねばならんのだ。
解放された俺は、少しの自由時間をもらったのでちょっと用事を済ませた後に宛てがわれた狭い私室に戻るとベッドにルパンダイブする。私室はリヒャルドさんたちがいる居住棟ではなくて、実験病棟の中の警備課と同じ階にある。毎朝いちいちリヒャルドさんの部屋に行かねばならんのは面倒くさかったがこれももう慣れた。毎朝のお散歩と思えばいいのだ。
私室を見回せば、けっこうゴチャゴチャとしてる。教科書やら脱ぎ散らかした衣服やらお菓子の袋やらで足の踏み場もない。片付けるのは昔っからどうも苦手なのだ。その点、リヒャルドさんの部屋は広いし綺麗だった。几帳面な性格なんだねえ。冷蔵庫にはビスケットと水を常に一定量備蓄してるってのにも驚いた。まあ、おかげで助かったよ。お腹と背中がくっつくかと思ってた。ベッドで久しぶりに懐かしき男のかほりも堪能することが出来たし、行ってよかったね。また訪ねてみようかな?

「それは置いておいて、と」

むくりと半身を持ち上げる。俺はちゃーんと聞いていた。フラグを見逃すなんてことはしない。
会議室を出る際に、シューマン大佐とファッキンビッチちゃんが「再調整する」とか言ってたのを確かに聞いていたのだ!そうはい神崎!ネタが古い!
再調整というのは、義体から都合の悪い記憶なんかを消したり、新しい条件付けをつけたりすることだ。俺の態度が気に入らなかったから、もう一回条件付けをするつもりなのだろう。そうはさせるか!そっちがその気ならこっちにだって考えがあるわい!

「さ~て、それじゃあ対策でも―――んん?」

呟いて、部屋の扉を凝視する。なんだか向こう側から気配がする。こちらの様子をこっそり窺っている。何時からいたのだろう。数は6人で、体格も大きそうだ。
刹那、身体の戦闘機能がONになり、筋肉の張りがギリリと強くなる。人工心臓が自動的に血液の流れをドクドクと速め、動体視力を高め、全身に血が巡って臨戦態勢に突入する。この間わずか0.5秒!
バネのようにベッドから飛び上がって床に着地するのと、6人が扉を破って踏み込んでくるのはほとんど同時だった。全員黒尽くめで防弾戦闘服とフルフェイスヘルメットの完全装備だ。腕には警棒と手錠を持っている。殺す気はないが、痛めつける気はあるみたいだ。

「まあまあ皆さんちょっと落ち着―――けやオラァアアアアアアッッ!!!」
「ぐあっ!」「うぎっ!」

全力パワーで二人の懐に突っ込めば、先陣の巨漢二人が大きく吹っ飛ぶ。自分たちが突入してきた勢いもあって、一度床でバウンドした二人はそのまま気絶してしまった。一瞬で仲間を二人もやられて動揺したのか、残る四人の動きがビクリと途端に慎重になる。
たった四人でマッスルガールな俺と戦おうなど片腹痛い!この狭い部屋に6人も突入したのが間違いだったな!何の用かは知らんが、百年早いわ!ふははは―――

「ヒャーリス、“抵抗を禁ずる”」
「―――ふぇ、ぅぇぇ……?」

な、なんだ?膝から力が抜けるぞ!?ていうか身体中から力が抜けてくぞ!?あわわ、軟体生物になっちゃったみたいだ。ドサリと床にうつ伏せになってしまう。口も動かないなんて幾らなんでもおかしいだろ。どういうことなんだ?なんで突然?
ていうか、さっきの声は……

「ぶ、ブランク、少尉?」
「ああ、そうだ。ヒャーリス。俺がここの警護担当だってことを忘れたのか?俺にも、お前の暴走を止めるための権限が与えられている。お前の行動を制止するに限って、俺はお前に命令を下すことができる」

そんなぁ。聞いてないぜ。卑怯者めぇ。

「よくやったわ、ブランク少尉。シューマン大佐もきっとお喜びになります。大尉への昇進はまず確実と見ていいのではない?」
「ありがとう、メンデルスゾーン少尉。だが、昇進試験は自分の実力だけで通るつもりだ。これは大佐への肩入れではなく、与えられた任務に従ったまでだ」
「……ふん」

あー!てめえ、大佐と一緒にいたファッキンビッチじゃねーか!くそっ!てめーの差金か!
精一杯の抵抗で睨み上げてやってると、ファッキンビッチが近づいてきた。ニヤニヤとした目付きは大佐とそっくりだ。あの上官にしてこの部下ありってことか。
わっ!?髪の毛触んな!きめえ!

「ふふ、生意気ね、その目付き。大好きなご主人さま以外の命令で屈服させられるのはどんな気持ちかしら?もう、ご主人さまを好きでいられなくなるとしたら……どんな気持ちになるのかしら?」
「……!!」

うっわ、すげームカつく!このクソアマ!ファックユー!サノバビッチ!asshole(クソ野郎)!wuss(意気地なし)!fat ass(ブタ野郎)!それから、えーと、え-と、イテッ!?何注射しやがったんだ!?

「あなたの機能を一時的に停止させる薬よ。人間で言えば催眠薬ってところかしら。……ふふ、とっても悔しそうね。でも悪いのは貴方たちの方よ。大佐に逆らうから……」
「少尉、そろそろウェーバーが気付く。急いだほうがいい」
「ふん、言われなくてもわかってるわ。さ、この義体を早く調整室に運んで。頭の中の大掃除よ。今度の人格は、お部屋の掃除くらいきちんと出来るようにしてあげるわ」

むがーっ!てめえ、人が気にしてることを!俺だって片付けくらいしようと思えば出来るんだよ!やらないだけで!
あっ、こら離せゴリラ!この裏切り者め!肩に担ぐな!ていうか胸豪快に触ってんじゃねえよ!ちくしょー!助けてくれ、リヒャルドさーん!!
―――って、声が出せないんじゃ助けの呼びようもないわなぁ。リヒャルドさんには黙って再調整ってことか。あー、まさかこんなに早く行動に移すとは予想外だった。これはもう観念するしかないかな……。

「ブランク、少尉」
「なんだ、ヒャーリス。言っておくが、命令違反をするつもりはない。俺は忠告したんだ。お前に入れ込み過ぎたらろくなことにならないって。でもアイツは聞かなかった。だから……」
「違います、少尉。伝えて、頂きたいことが、あるのです」

ゴリラの動きが止まった。揺れてると喋りにくいのだ。ったく、大事なことなんだから気を効かせろよ。

「……なんだ」
「リヒャルド様に、お伝えください。『ごめんなさい』『安心して』、そして『ブランク少尉を恨まないで』と」
「………」
「あの人は優しいですから、きっととても悲しんで、怒って下さいます。どうか、友人として支えてあげてください。私も調整が済み次第、すぐに戻りますので」
「―――お前、なんで、そんなに、」

……ゴリラでも泣くのか。珍しいものを見た。

「何してるの?早く来なさい」
「……ああ、わかってるさ。わかってる」

ファッキンビッチが呼んでる。い、いかん。視界が明滅してきたぞ。意識が途切れそうだ。さっきの注射のせいか。うおー、やめろショッカー!……俺ってピンチの時も案外冷静なんだなあ。
本家のブリジットも何回か条件付けで記憶失ったりしてたけど、俺もそうなるんかねえ。人格も変えるってことは終盤の「アルフォド様ラブ~」状態のブリジットみたいになるってことなんだろうか。どう転んでも悪い予感しかしないぜ。

「そこに固定して。抵抗できないようにしっかりとね。さあ、リスト兵曹、ベッケンバウアー伍長。早く再調整を始めなさい」
「「……」」
「復唱は?」
「「……了解、しました」」

頭がポヤーってする。電気でも流されてるんだろうか。感覚もなくなってきた。あばばばば………。あ、そういえばサングラスとったまんまだったっけ。さっきの乱闘で壊れてたら謝らないと。まあ、その記憶があればの話だけど。
黙っていなくならないでって言ったのは俺なのに、すげえ申し訳ない。

「―――ごめんな、さい、リヒャルド、様―――」

さ、サラダバー……。






                                    ―――なーんつってな!!
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