Her name is Charis! !

【無許可とか】『ブリジットという名の少女』の三次創作【やばくね?】

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次で第一部完です!なんか書きたいように書いてたらギャグなんだかシリアスなんだかよくわからない感じに迷走しちゃってるよ!とんでもねーギャグSSにする予定だったのに、どうしてこうなった!!


第5話 さよならドイツこんにちはイタリアの日・中編 【第一部完ッ!!】


♂ リヒャルドサイド ♂


「お初にお目にかかります、ツェンダー夫人。リヒャルドの妻、ヒャーリス・ウェーバーと申します」

そう言って恭しく礼をしたヒャーリスは、僕から見ても令嬢のような気品を纏っていた。目覚めて一ヶ月半、しかも一度人格をリセットされているにも関わらず、分厚い人生経験を感じさせる堂に入った挨拶だ。
それは同じく気品に満ちた夫人にも通じたのか、ほうと見蕩れたような吐息を漏らす。

「近くで見ると本当に美人ね。女の私でも惚れてしまいそうだわ。リヒャルド、いったいどこで、どうやって、この美しい妖精さんを捕まえて来たのかしら?」
「そ、それは、僕たちだけの秘密ということで勘弁していただけませんか?」
「ふふ、いいわ。許してあげる。夫婦だけの秘密というのも素敵だものね」

何とか誤魔化せた。まさか「この娘はサイボーグみたいなもので僕はその担当官です」などと言えるはずもないし、適当な嘘も思い浮かばない。元より僕は嘘があまり得意ではないのだ。
隣のヒャーリスを一瞥して応答を促せば、表情をにっこりと破顔させてそれらしい応対をする。

「ありがとうございます。夫人もとてもお美しいですわ。まるでヴィルデ・フラウ(美女の妖精)のようです。お逢いできて光栄です」
「まあ、お上手だこと。それにとても知的だわ。何時まで経っても帰ってこないうちの放蕩息子のお嫁さんにしてあげたいくらい」
「申し訳ありません、私にはすでにリヒャルドという心に決めた者がおりますので。それに、きっとご子息には私より相応しい者がすでに傍にいると思いますわ」
「ふふ。だといいのだけれど」

二人の会話を聞きながら、不安の汗が乾いていくのを自覚する。今のところ問題はなさそうだ。ヒャーリスは上品そうな笑顔を浮かべて当たり障りのない受け答えをしている。対人接触訓練の成果は上出来、というか予想以上に高度なレベルに仕上がっている。昨日の市街地研修ではロボットのような受け答えしか出来なかったはずだが。

(もしかして、今までの淡白な受け答えはわざとか?……いや、そんなはずはない)

一瞬、抜け目のないヒャーリスがシューマン大佐やメンデルスゾーン少尉を出し抜いて再調整を回避したのではないかと淡い期待を抱いた。だが、何者かが外部から細工でもしない限り、義体が自らの意思で洗脳処置を拒絶することなど出来ない。
この器用な会話は、僕の「妻として振舞え」という命令に忠実に従っているからこそ出来るものなのだ。それはつまり、ヒャーリスがどれだけ操り人形として優秀になってしまったかということの証明にしかならない。
期待が砕かれたことに嘆息する。最近、ヒャーリスのことでため息を吐いてばかりだ。

「―――ねえ、あなた。私の話を聞いてるかしら?」
「え?」

“あなた”?
聞きなれない呼び方にギョっとして声の主に目を向ければ、ヒャーリスがじとりと据わった瞳で僕を見上げていた。「あなたが妻の役をしろと言ったのでしょう」という非難の目だ。なぜだかその所作がブランクと一緒にいた時とは打って変わって人間じみていたので、思わずたじろいでしまう。
面食らって目を白黒させる僕に、夫人がクスクスと苦笑する。

「ダメよ、リヒャルド。ぼーっとしていると、せっかく捕まえた妖精を逃してしまうわよ?」
「あ、ああ!すまない、ヒャーリス。ちょっと考え事をしてしまっていた。何の話だい?」
「夫人が、私に服をプレゼントして下さるそうです。ご好意に甘えてもよろしいかしら?」
「服を?」

てんで訳がわからずに夫人に目をやる。どうしてそんな話になっているんだ?
不思議そうな僕に対して、夫人が苦笑してヒャーリスの着ている服を指さす。僕が適当に選んだブラウンのロングスカートと同系色のロングコートだ。丈夫そうな生地だからという理由で選んだだけで、デザインなどは一切考慮していない。

「あなたが選んで与えたそうね、この服。言いにくいんだけど……妻へのプレゼントとしては、ちょっと頂けないわね。生地は丈夫そうだけど、この美しい妖精さんにはあんまり似合っていないわ。イタリアでは浮いてしまうかもしれないわよ?
だから、よかったら私が昔着ていた服とか、娘のお古とかを幾つか見繕ってあげようかと思うの。結婚祝い……といえるほどのものでもないけど、どうかしら?」
「な、なるほど」

嬉しい申し出かもしれない。ヒャーリスが文句を言わないのでこれで十分かと思っていたが、思えばイタリアは芸術性に富んだ国だ。そこで活動する以上は同じレベルの衣服で周囲に溶けこむ必要があるが、僕は芸術の本場で通用するファッションセンスは持ち合わせていない。イタリアで現地調達するより、事前に適当なものを見繕ってもらったほうが助かる。
だが、今ここで着替えさせるのはまずい。ヒャーリスの服の下は下着ではなく、機能を追求した戦闘服なのだ。これを夫人に見られるわけにはいかない。

「ぜひお願いします。センスのない僕の代わりにヒャーリスを着飾ってやってください。でも、飛行機の出発予定時刻まであまり時間がありません」
「あら、そうだったわね。わかったわ、ちょっとそこで待ってなさい。すぐに幾つか包むわ」
「「わかりました」」

一旦家の奥に引っ込んだ夫人は、瞬く間に大きなキャリーバッグを引きずって現れた。いったいどれだけの服を詰め込んだのか、バッグは今にもはち切れそうだ。
「お、おばさん!こんなにたくさん頂いていいんですか!?」
「いいのよ。どうせもう着ないのだし、役立ててもらったほうが服も喜ぶわ。なんたって、こんなに可愛い女の子に着て貰えるんだから。さ、どうぞ受け取って」

受け取るとズシリとした重さが下半身を沈ませる。そういえば、夫人は他人に贈り物をしたりご馳走をたらふく食べさせるのが好きだった。遊びに行くたびに食事をご馳走になって苦しい腹を引きずりながら帰路に着いていた思い出が記憶の底から蘇ってきて、思わず「うぷっ」とえずきそうになる。

「あなた、大丈夫?私が持ちましょうか?」
「ああ、頼―――い、いや、大丈夫だ」

危なかった。つい渡しそうになった。ヒャーリスならこんな重さは取るに足らないものだが、この状況で妻に重い荷物を持たせる夫など非常識極まりない。渡していればすぐに嘘が露見してしまっただろう。それを狙ってわざと言ったのかと疑ってしまった。
ヒャーリスのタイミングの悪い配慮を断り、夫人に向き直る。そろそろお暇しないと、また腹一杯に食事をつめ込まれて帰る羽目になりそうだ。

「おばさん、今日は短い時間でしたが、久しぶりに会えてとても楽しかったです。これで心置きなくイタリアに赴けます。たくさんの結婚祝いも頂けて、妻も大変喜んでいます」
「ありがとうございます、ツェンダー夫人。素晴らしい贈り物をありがとうございます。これで、夫のセンスの悪さに悩まされずにすみそうです」
「うぐっ!?ひゃ、ヒャーリス!?」
「あらまあ。やっぱり綺麗なバラには刺があるものね。ふふふ……」

以前の彼女のような減らず口にドキリとして声が裏返ってしまった。再調整を受けてからこんなことを言ったことはなかったはずだ。これも「妻として振舞え」という命令の効果なのか。
僕らの掛け合いに夫人は面白そうに笑みを浮かべる。でも、その双眸はどこか寂しそうだ。きっと夫人は僕を見ながらアルフォドを幻視しているのだろう。本当は実の息子の結婚を祝いたいはずだ。
アルフォドはイタリアの軍警察官だった父親の名誉を取り戻すために家族が母国に帰った後もイタリアに残り、同じ軍警察官の道を辿った。まだ夫人がジョルダーノ夫人と呼ばれていた頃、彼女の夫はイタリアの軍警察官として誠実に職務に励んでいた。アルフォドは彼の勇敢な背中に憧れていた。その誠実さ故に、彼は当時の右翼政権政党の重要人物を暗殺から護り、代わりに殉職した。まさに英雄の死に様だ。
しかし、そのすぐ後に左翼政党へと政権が移ると英雄の名誉は瞬く間に剥ぎ取られ、貶められた。それはアルフォドの心と誇りに取り返しのつかない傷を負わせたに違いない。堪えられなくなった家族から距離を起き、変わってしまったアルフォドは今も一人イタリアに残って不遇と戦い続けている。昔から意地っ張りのキライはあったが、ここまでとは思っていなかった。今では家族に嘘をついて社会福祉公社で担当官をしている。とんだ親不孝者もいたものだ。

「ねえ、リヒャルド。アルフォドに会ったら伝えてくれるかしら?『もうイタリアに残ったことは怒ってないから、もしあなたがまだ母さんを愛してくれているのなら、あなたのことが心配で心配でたまらない母さんに一度でいいから顔を見せておくれ』って」
「……必ず、伝えます。ゲンコツをくれてやって、それでも頷かなければ今度はティベリス川に蹴落としてやります」
「ふふ、ありがとう。あなたは昔から変わらないわ。私たちとは、まるで違う。あの子はもう私の知っている誰よりも優しかったアルフォドとは変わってしまったのかしら……」

そう言って浮かべた笑みはどこか力なかった。夫人はこの20年でたくさんの変化を身近に感じてきたはずだ。夫の死、名誉の喪失、政権からの迫害、周囲の不理解、家族の崩壊、帰国、再婚。果たして、その心労は如何なるものなのか。
何か気の利いた台詞をかけなければと義務感にかられて口を開くが、肝心の言葉が出てこない。アルフォドが昔のままかどうかなんて僕にも知りようがない。僕が金魚のように半開きの口を開けていると、それを見兼ねたようにヒャーリスが一歩踏み出して夫人の前に立った。何をする気だ?

「ツェンダー夫人。若輩の私がこんなことを言うのはおかしいかもしれませんが、目で見えるところが変わっても、変わらないものが人間にはちゃんとあるのです」
「変わらない、もの?」

ヒャーリスはこくりと頷き、自分の胸にそっと手を添える。その仕草はロボットのような動きとはかけ離れて、柔らかい。

「“心”です。私も最近、とても大きな変化を経験しました。ですが、心は変わっていません。信じてくれる人がいる限り、心は強く在り続けられます。どうか、異国の地で励んでいるご子息を信じてあげてください。彼は今も、昔と変わらず、他人を想うことの出来る心優しい人間です」
「ヒャーリス、君は……」

まるで直に見聞きしたような確信に満ちた言葉は確かな説得力を持っていた。だがそれ以上に、僕はその言葉の持つ包みこむような暖かさに心を打たれていた。それは、再調整される前の彼女の声そのものだったからだ。
我知らず漏れた呼びかけに、彼女が頭だけでこちらをそっと振り返る。その瞳は、まるでシュバルツバルトのような神秘的で深い輝きを秘めている。
そういえば、彼女の最後の伝言は『ごめんなさい』と―――『安心して』、ではなかったか?

「……ありがとう、妖精さん。そうね、私が信じてあげないと、他に誰があの不器用な息子を信じてやるというのかしら。リヒャルド、アルフォドへの言付けを訂正するわ」
「は、はい」
「では、こう伝えて。『気が済むまでやりなさい。あなたの帰る場所はちゃんととってあるから!』って」

母の強さ。
在り来りな言葉だが、その気丈な笑顔には一番相応しいと思った。

「本当に、良い人をお嫁さんに貰ったわね。ヒャーリスさん、リヒャルドは私のもう一人の息子も同然よ。どうか、ずっと支えてあげて」
「もちろんです。この人が私を信じてくれる限り、私はこの人の傍からは絶対に離れません」

ヒャーリスが僕の目をまっすぐに見つめてくる。それ自体が輝きを放っているかのような宝石のような瞳だ。僕には、その瞳が僕に何かを伝えようとしているように思えた。
彼女が以前の人間らしさを取り戻したのは、監視役のブランクから離れた時からだったはずだ。施設外で、監視役もいない今なら、彼女は“演技をしなくて済む”。
まさか、という期待が再び湧き上がる。

「―――ああ、信じるとも。僕も君を絶対に一人にしない。もう二度と、離さない」

静かな、しかし全身全霊の誓いを込めた決意に、ヒャーリスはそっと穏やかに微笑んだ。葉々の隙間から差し込む陽光のような、優しい微笑み。
僕はその輝きを直に見たくて、サングラスを外す。もうこのサングラスを彼女の前でつけることはない。


彼女は、いなくなってなどいなかったのだ。


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~ Comment ~

ヒャッハー 

あのギャグテイストでヒャッハーな作風は何処にwww
どシリアスも良いんです。ブリジット見てるみたいだから、やはりオリジナルには似るのだと思わせられました。

最近の連日更新に驚いています。凄まじい愛を感じますね。

 

>悦さん
第二部が許されたなら是が非でもヒャッハー!にしたいと思います。でもたま~にシリアスを入れたいです。義体にはシリアスな問題が付きまといますから。ギャグとシリアスの割合としては、そう、オジリナルにおける本編とガンスリ劇場のような感じです!

オリジナルブリジットの歩みを知っているヒャーリスは、その二の舞にならないようにする方法を知っています。そしてブリジットを苦しめていた「新しい世界で何をすべきなのかわからない」という悩みはヒャーリスにはありません。ヒャーリスにとってすべきことは「ブリジットに会ってクンカクンカするんや!」ですからwwwブリジットと出会った時、そこで起こる惨劇はどうなるのか……。想像を超えるナニカが広がっているでしょう!多分!

自分自身、なんでこんなに筆が進むのかよくわかりません。たぶんまた明日も後編を更新するでしょう。これが愛ってやつなんでしょうね!もうこりゃ病気だね!
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