Her name is Charis! !

【ブリジットという】三次創作のちょっとした小ネタ【名の少女】

 ←H&Kさんからメールを頂いた…だと…!? →ブリジット最終回&白銀の討ち手更新
第7話 祝福さる日 【ついでにクリスマスのこと】 を読んでいて、電波を受信したんだ。すまない。





 ロレンツォはもともと政治活動には何の興味も無かった。
 彼にとって大切だったのはカモッラとしての誇りと二人の家族――妻と娘だけだった。
 それがいつの間にか、左翼思想に染まったボスの使い走りとしての運び屋が始まり、
 いつの間にか公安にまでマークされるような身分になっていて、
 
 いつの間にか、大切にしていた家族のもとに帰れなくなっていた。



「ロレンツォ、これが今回のブツだ」

 そう言って手渡されるのは二枚の記憶媒体。

「気をつけろよ。最近は捕り物が急に増えているからな。ジョルジョの奴もみんな殺された」

 二人の男はカンピドリオ広場の噴水に腰掛けている。往来を見渡せばクリスマスの為かいつもより人気が多い。

「ブツは二日後の正午までにクリスティアーノに届けてくれ。それまでは何をしていても構わん」

 そこまで言われて、ロレンツォは初めて口を開く。

「はは、それは助かったよ。今日は折角ローマに帰ってきたからな。娘にドイツからのプレゼントを持ってきたんだ」

 ロレンツォは足元にある紙袋を指差した。中には包装紙で包まれているのか何か黒い、手の平大の小箱が入っていた。

「はん、子煩悩な奴だ。俺はとっくの昔に女房にも娘にも逃げられたよ」
「俺も似たようなものさ。このプレゼントもまだ有効かどうか」

 ロレンツォは痩せて窪んだ頬を掻きながら苦笑する。

「そうだ、ロレンツォ。娘で思い出したんだがお前はこんな噂を知っているか」

 媒体を紙袋の中に仕舞ったロレンツォに男がこう切り出した。

「何でも政府の秘密機関に女の子を使って暗殺を行っているところがあるらしい」
「それはハニートラップか?」
「そんな生易しいものじゃねえよ。この前の捕り物でも出張ってきたって話だ。まあ噂は噂だから本当かどうかは知らんがな」 

話すだけ話して男は懐から煙草を取り出した。ロレンツォにも勧めるが、それは断られる。

「目印は異常に白い手だ。シミ一つない赤ん坊のような手をしているんだとよ」
「白い手、ね。……それは例えば、あんな手か?」
「あ?」

ロレンツォの指差す方向―――表通りから外れた裏路地の影で、こちらに背を向けた黒髪の少女が漆黒のBMWのタイヤを弄っていた。見れば、その車は縁石に乗りあげて見事にパンクしている。黒い塗装も剥げ落ちていて、高級車が台無しだ。
手馴れた様子でホイールのボルトを外していく少女の手は、たしかに驚くほど白かった。ロレンツォはその雪のような肌に生まれたばかりの娘の柔肌を重ね、懐かしさに胸が萎むような感覚を覚える。

「……まあ、あんな感じかもしれんな」
「はは。じゃあ何か?あれが“秘密機関の女の子”とでも?」

ロレンツォの茶化しに男はううむと唸った。その秘密機関とやらがどういうものかは知らないが、少なくとも路地裏で車のパンク修理をさせるほどお気楽な組織ではないだろう。
ロレンツォは一度苦笑すると、未だ隣で首を傾げる男の肩をポンと叩いて立ち上がる。少女の足元には予備のスペアタイヤが置かれていた。おそらくそちらに交換するつもりなのだろう。スペアタイヤに交換するのはかなりの力がいる。あんな矮躯の少女では無理だ。

「おい、ロレンツォ!?」
「お前も手伝えよ。ちょっとくらい善行を働いたっていいだろう。俺も娘に胸を張って会えるようになりたい」
「……俺は手伝わん。……だが、後ろから見張っといてやるよ」

そう言うと、男はさも億劫そうに立ち上がり、ロレンツォの後に着いてくる。
こいつも根っからの悪人ではないのだ。ロレンツォは再び苦笑して、腕の裾を捲り上げる。これでも修理工の見習いをやっていた時期もあった。タイヤ交換くらいは朝飯前だ。
広場から少ししか離れていないのに、裏路地は人気が少ない。だがそれでも縁石に乗り上げるほど狭い道路でもない。まさかこの幼い少女が運転していたわけでもないだろう。縁石に乗り上げたり、タイヤ交換を少女に任せたり、この車の運転手はどうしようもない奴に違いない。
近づいてみれば、少女の背中は何だか苛立たしげな雰囲気を放っているように見えた。抑えきれぬ苛立ちに、「ったくリヒャルドさんはなんでこんな運転が下手くそなんだ」というドイツ語の呟きが漏れている。ロレンツォの予想通り、この娘は運転手の大失敗に巻き込まれてしまった不幸な少女らしい。
ロレンツォは助けを差し伸べようとその背中に声をかけようとして、

「ま、待て、ロレンツォ。よく見てみろ。ボルトの外し方がおかしくないか?」
「え?ボルト?」

男の鋭く押し殺した声にはたと立ち止まり、そろりと少女の手元を覗き込んでみる。しかし一向に不自然な点を見つけられない。はてな?と訝しるロレンツォの目の前で、少女は指先でボルトを摘むとぐいと捻って最後のボルトを外す。

「なあ、ボルトって指の力だけで外せるものだったか?」
「………あ、」

異常に気づいて硬直する。レンチもなしにボルトを外すなんて、大人でも無理だ。しかし、目の前の少女は平然とそれをやってのけた。
そんな背後の会話に気付いた様子のない少女が、自然な動作で車の底面を掴む。漆黒のBMWはグレードの高い高級仕様で、見た目にも重厚さが伺えた。その車が、ゆっくりと“傾く”。

「ふぬぬぬ……!!うおおおお!!ファ―――ック!!!」

とても女の子らしくない少女の気合の掛け声と同時に、車がぐわんと大きく持ち上げられる。衝撃で揺れたタイヤがホイールごとゴトンと音を立てて落下し、ロレンツォたちの足元に転がっていった。
鈍重な重さが足に当たるが、目の前の異常事態に呆気に取られて立ちすくしているロレンツォと男は一言も発することが出来ない。
タイヤを視線で追った少女が振り返り、ようやくロレンツォたちの存在に気付いた。黒真珠の瞳に白くきめ細やかな肌、やや大人びた美しい顔立ちの、かなりの美少女だ。その美貌が「やばっ!」と驚愕に引き攣る。
そのまま数秒、互いに引きつった顔を浮かべて見つめ合う時間が過ぎて、

「―――た、タイヤ交換手伝って下さるとヒャーリスちゃん嬉しいかなぁ、な~んて」
「「す、すいませんでしたああああああああああ!!!」」
「……ですよねー」



その日の夕方、裏通りでブリジットを視界に入れたロレンツォは「お助けえ!」と叫ぶと預けられた記憶媒体を放り出して一目散に退散したのであった。

「……アルフォドさん、私そんなに怖い顔してました?」
「していないと思うんだが……」

その場に残されたブリジットとアルフォドが目をぱちくりとさせていたのは言うまでもない。



「す、すまんヒャーリス!遅くなった!コンパウンドっていうのはこれかい?」
「ちっがーう!!全然違います!それはただの塗装剤です!!それで傷を消しても逆に目立っちゃうから意味ないんです!!大使館の車で事故ったのバレちゃうでしょうが!!
まったく、運転も下手だし車も全然詳しくないし、リヒャルド様はそれでも男ですか!?」
「ぼ、僕は普段はダイハツのミラにしか乗らないし……」
「ファ―――――――――――ック!!」
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png 二次創作
もくじ  3kaku_s_L.png 性転換
もくじ  3kaku_s_L.png 白銀の討ち手
もくじ  3kaku_s_L.png 小劇場
もくじ  3kaku_s_L.png Her name is Charis! !
もくじ  3kaku_s_L.png TS
もくじ  3kaku_s_L.png 映画
  • 【H&Kさんからメールを頂いた…だと…!?】へ
  • 【ブリジット最終回&白銀の討ち手更新】へ

~ Comment ~

 

ブリジット無駄足www
ニアミスしかけてることに気がつかないヒャーリスが可愛いwww 早くブリジットを助けてあげて。

 

>エトムント・ヘックラー さん
ブリジットにとっての嫌な思い出(?)のイベントをぶっ壊してみたかったんです……。
そして、ヒャーリスは「車の改造と運転が趣味」という設定にしました。逆にリヒャルドはアルフォドさんとの対比のために「車の運転と機械が大の苦手」ということにしましたwww
ブリジットを助けるための構想を今練っています!
でもオリジナルを読んでると、ブリジットが最期に近づくに連れて段々さっぱりした顔になってきてる気がして、幸せとは程遠いけどそれなりに人生に満足してるブリジットをしっかり助けてあげられるのか自信がなくなりつつあります……orz

安定してるw 

ヒャーリスの安定感ハンパない。
うっかりボルトを手で回しちゃうなんて…可愛いじゃないか。

ブリジットに影響をさらりと与えたのもイイですね。

 

>悦さん
ヒャーリスは常にテンションフルスロットルで突っ走ってます。もはやブレるということを知らないキャラなので書いてて面白いですwww
こんな感じでブリジットの負担が段々減っていくような三次創作にできたらいいなあ、と思います。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【H&Kさんからメールを頂いた…だと…!?】へ
  • 【ブリジット最終回&白銀の討ち手更新】へ