Her name is Charis! !

Her name is Charis!! 第二部 第二話 前編

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仕事前に更新。arcadiaに投稿するときに全て見直しをする予定だから荒削りなところが多々ありますが、それはスルーしてくだしあ><



イタリアでの初飯の日【メシウマ状態!】


♂リヒャルドサイド♂


ローマのドイツ大使館に到着した時はすでに21時を回っていた。大使館への到着時刻が少し遅れることは先方に伝えていたが、少し遅れすぎたかもしれない。駐在武官のアウフシュナイター大佐との挨拶やブリーフィングが最初から明日の予定だったのは幸運だった。
検問を通過して車を車両管理係の人間に任せ、大使館に隣接する駐在武官用の邸宅に足を運ぶ。さすがに他国の武官を呼ぶこともある施設らしく、なかなかに立派な作りだ。我が祖国らしい質実剛健な作りは、ベルリンのケンピンスキーホテルに勝るとも劣らない厳かな美しさと機能美に華やいでいる。美に溢れるイタリアにあって決して見劣りしない設計とデザインには祖国ドイツの誇らしさを感じずにはいられない。

「うっひゃー!どれもこれもピカピカ!うわっ、見て下さいよリヒャルド様!この門の飾りはきっと年代物ですよ!!オークションに出したら5千ユーロくらいするんじゃないですか!?血税使って贅沢してくれやがってますね!」
「見る目がねえな。きっと1万、いや1万5千ユーロは堅いぜ!これ一つで俺の給料の何ヶ月分になるんだ!?」
「えーっと、バナナで換算すると……」
「いい加減ゴリラ扱いはやめろクソガキ!」
「……恥ずかしいからやめてくれないか、君たち」

ヒャーリスのテンションはいつも通りだし、海外派兵の時しかドイツを出たことがないブランクも気分が高揚しているようだ。こうして二人ではしゃいでいる様子はまるで仲の良い兄弟か父娘のようでもある。

(……なんだ、このモヤモヤした気持ちは)

しかし、仲良くじゃれ合っている二人を見ていると微笑ましく思うと同時に苛立ちも感じてしまう。ヒャーリスが僕以外の男に笑顔を向けているせいだ。ブランクは決してヒャーリスを女性として見ていないし、ヒャーリスも同じだと理解しているはずなのに。
我ながら浅ましいというか、自分が思っている以上に嫉妬深い性格をしているらしい。

「しっかし、ハラ減ったなあ。どこかのクソガキ様のワガママのせいで夕食がだいぶ遅れてるせいだ。どう落とし前つけるつもりだ、おい?」
「私もとてもお腹が空いています。ですが幸運なことに目の前にゴリラ味のケーキが―――」
「ヒャーリス、いい加減に落ち着きなさい。どこで誰が見ているかわからないんだ。この意味がわかるね?」
「……ッ」

僕の叱責を受けたヒャーリスがビクリと身体を硬直させて一切の動きを止める。ビデオの一時停止のように固まるという大げさな反応は、彼女に植え付けられた条件付けによるものだ。担当官による戒めは義体の思考と行動を強く制限する。その口調が厳しければ厳しいほど、義体への締め付けも強くなる。

(しまった、言いすぎた。何をしているんだ僕は!)

大使館内にシューマン大佐と繋がった人間がいるかもしれないと危惧しての注意だったが、つい内心の苛立ちを込めてしまった。我知らず強い口調で言ってしまったことに後悔して二の句を継ごうとする僕に、再起動したヒャーリスが振り返る。

「申し訳ありません、ウェーバー担当官。分を弁えない態度をとってしまったことを強く反省し、謝罪致します。どうかお許し下さい」
「あ……いや、わかればいいんだ。君のためでもあるんだから、気をつけなさい。それだけだ」
「承知いたしました」

気ままな猫から打って変わって軍用犬のように従順になったヒャーリスに、ブランクと一緒に目を白黒させる。
これはヒャーリスの演技だ。ヒャーリスは見事に再調整の影響を回避してみせたではないか。そう自分に言い聞かせても、内心の動揺が抑えられない。自分の言葉のせいで彼女の人格をねじ曲げてしまったのではないかと不安になる。何より、他人行儀に『ウェーバー担当官』と呼ばれるとヒャーリスが最調整された直後の苦い記憶が蘇って気分が悪くなるのだ。

「すまない、強く言うつもりはなかったんだ。
そうだ、夕飯は外で食べよう。近くに上手いプリモ(イタリアンパスタ)の店を知ってるんだ。きっと君も気に入る」
「わかりました、ウェーバー担当官」
「ヒャーリス……」

人間味が欠如した人工音声のような物言いに、思わず喉元で息が詰まる。ヒャーリスを自然体に戻そうと食事の話をしてみたのだが、彼女の無表情が晴れることはない。指示を求めるようにこちらの目をじっと伺う瞳はガラス玉のようだ。
義体は担当官の言葉に深く依存するように作られている。僕の言葉ひとつで、彼女はまた人形になれてしまうのだ。今さらながら条件付けの罪深さを思い知らされてゾッとする。

「おい、リヒャルド。大丈夫か?」
「あ、ああ。すまない」

ブランクに心配されるくらいなのだから、よほど顔を青褪めてしまっていたのだろう。手を振って心配ないと伝える。彼に嫉妬などしてしまった自分が情けない。

「ったく。お前は何でも思いつめすぎんだよ。担当官って任務は、そりゃあ、厳しいもんがあるだろうが。だけど、見てみろ」

腰に手を当てたブランクが一度嘆息し、指でヒャーリスを示す。促されるままに彼女を見やれば、変わらず呆けたような瞳でこちらを窺っている。その瞳は僕を見ているようで、見ていない。心ここにあらずといった様子の生気を欠いた双眸は活発な彼女には似合わず、自分がそのように差し向けたのだと思うと胸が締め付けられる。

「違う違う。口元見てみろ。早く拭いてやらねーと服が台無しになるぞ」
「……あ、」

きゅっと閉じられた朱唇の端からタラリと伝ったヨダレに、新しいハンカチを取り出して駆け寄る。慌てて口元をゴシゴシと拭きとってやると、依然として虚ろに空を見つめるヒャーリスが何やらブツブツと呟く声が聞こえた。

「うへへ……本場イタ飯……めし……うま……」
「―――ヒャーリス、君って奴は……!」

安心感と脱力感に、その場にガクリと膝をつく。彼女が虚ろな様子をしていたのは条件付けによるものではなく、単純に今夜のご馳走に思いを馳せて上の空になっていただけだったのだ。今、夜空のような黒い瞳に映り込んでいるのは僕ではなく、彼女の腹を満たす新鮮なサラダやたくさんのプリモや焼きたてのパイ包みなのだろう。
はぁ~、と肺を絞るように大きなため息を吐き出す僕の肩をブランクがぽんと叩く。

「担当官ってのは厳しいもんだろうけどよ、そんなに心配しなくてもいいんじゃねーか?この図々しいクソガキ様が条件付けなんかに操られるようなタマに見えるのかよ?」
「いいや、まったく」

苦笑で応える。こうして僕に手を引っ張られながら「メシウマ~」とニヤケ顔を浮かべる彼女は、きっと何があろうと変わらずこの陽気さを失わないだろう。心強いことだ。

「もちろんその店には俺も着いて行っていいんだよな?」
「だが断る」
「ああ、そうかい。ヒャーリス、プリモなんかやめて俺と肉料理食いに行かねえか?仔牛のステーキとか地鶏のグリルとか腹いっぱい食おうぜ」
「お肉!?」
「冗談だよブランク!食事は三人で仲良くしようじゃないか!ははは!」

ゴリラめ!!



「ずいぶんと遅かったな、義体御一行さん」
「あ、アウフシュナイター大佐!?」

邸宅に足を入れた僕たちを出迎えたのは、グラウン部長ではなく彼を付き従えた駐在武官のアウフシュナイター大佐だった。半世紀を生きた証を皺として顔面に刻んだ恰幅のいい高級将校がこちらを見てニヤリと笑う。
大佐はたしか、今日はイタリアの高級軍人とのパーティーに参加していたはずだ。叩き上げ将校である大佐はパーティーを好かないという噂は聞いたことがあるが、まさか抜けだしてきたというのか。

「きょ、今日はお出かけになっているとばかり……」
「本国から極秘最新兵器が来るというのだ。腹底を探りあうつまらん酒飲みよりよっぽど大事だろう。そういうわけで、今日の私は高熱を患ってパーティーには行けんのさ」

ツカツカと姿勢よく歩み寄ってくる様は病気を患っているようには見えない。仮病で大事なパーティーをサボるとは、聞きしに勝る豪胆さだ。これで陸軍で語り草となっている大佐のエピソードがまた一つ増えた。
眼前まで近づいた大佐の上背は決して高いとは言えないが、野球選手のように盛り上がった筋肉はかつて彼が歴戦の猛者であったことを物語っている。胸板を埋め尽くす勲章の略綬から放たれる威圧感に気圧された僕とブランクが姿勢を正して敬礼する。

「リヒャルド・ウェーバー少尉であります!本日付で駐在武官補佐として在イタリアドイツ大使館に赴任し、特殊任務の遂行に当たります!」
「同じく、ブランク・ヘンデル少尉であります!」

軽く答礼を返した大佐の「休んでよし」という言葉に二人同時に肩幅に足を開いて後ろ手を組む。優秀な上官は敬礼の動作だけで兵士の質を見抜くという。果たして眼鏡にかなうことが出来ただろうか。
大佐の品定めをするような視線が僕を貫き、思わず身体が強張る。

「貴様がウェーバー提督の息子か。似てないな」
「自分は母似なので。大佐は父をご存知なのですか?」
「少将閣下には私が現役だった頃に上陸作戦で世話になった。今もご健在か?」
「微塵も衰えておりません。しかし、最近毛髪の量が徐々に減っていることに密かに悩んでおります。父は潮風のせいだと」
「ふはははは!心配せんでも、私が世話になっとった頃から薄かったわ!」

僕の父のことを知っていても媚びることはない。気持ちのいい男だ。
自分の実力を試したいという気持ちで父のことはほとんど他言しないが、父、ヴァルター・ウェーバーはドイツ海軍少将の地位にある。古くは北ドイツ連邦の時代から軍人を輩出していた軍人家系の我が家で、史上もっとも出世している人間だ。僕が陸軍に入ったのは父への反発もあってのことなのだが、今では逆にどうやって仲直りをしようか互いに悩んでいる奇妙な関係でもある。

(……ん?)

ふと視線を感じてそちらを見返すと、ヒャーリスがキョトンと大きな瞳をさらに大きくして僕を見上げていた。そういえば彼女には僕の家が軍人一家であることを教えていなかった。将来子どもが出来ればその子も軍人になるかもしれないのだし今のうちに伝えていたほうが―――何を考えているんだ僕は。

「それで……そっちの小娘が我が軍初の義体か。おい、名はなんという?」
「あ、ああ!も、申し遅れました。ヒャーリス、ご挨拶しなさい」

僕の指示に従い、ヒャーリスが一歩前に出て恭しく礼をする。

「お初にお目にかかります、ヘルマン・フォン・アウフシュナイター大佐。ドイツ連邦軍に所属する義体のヒャーリス・ウェーバーと申します」

うむ、と頷いた大佐がヒャーリスをつぶさに観察する。その目に苦々しい色が混じるのを僕は見逃さなかった。叩き上げの将校が、演技をして人形のように動かないヒャーリスに小さく嘆息する。

「……私もイタリアの駐在武官をして長い。社会福祉公社の義体に関しては幾つも情報を見聞きしてきた。少女を暗殺に使うとは正気ではないと思ったが、戦果は着々と積み重ねられていく。ついには我が国も真似をする始末だ。
貴様が提督の息子だからと信用して、正直に言おう。私は義体が好かん。戦いに女子供を持ち出すのは蛮族のやることだ。シューマンの野郎も中央の役人どもも祖国の誇りを踏みにじるクソどもだ。私の言うことは何か間違っているか?」
「いいえ、何も間違っておりません」
「では、なぜ担当官をしている。同情か?憐憫か?それとも傷つく子どもを眺めるのが趣味のサディストか?」

強い視線に貫かれ、緊張に喉が鳴る。大佐も僕と同じ悩みにぶつかっている。少女を殺し合いの道具に使う非道に、軍人の矜持が拒否反応を激しく示すのだ。
視線に潰されるように俯けば、視界の隅にヒャーリスが映った。こっそりと首だけ振り返らせてこちらを伺う瞳は僕を心配して気遣わしげに揺れていた。笑顔が似合う彼女にこんな憂いの表情をさせては担当官失格だ。
安心させるために微笑みを返し、顔を上げる。依然として厳しい目を向けてくる大佐には誤魔化しの言葉は通用しないだろう。まっすぐな決意を伝えるべきだ。

彼女を大事に思っています・・・・・・・・・・・・。それでは、いけませんか?」

大佐が、含みを持たせた言葉に一瞬ギョッと目を見開く。そしてすぐにニヤリと彼特有の鋭い笑みを刻む。

「―――若造め、好きにしろ。だが、自分の決意には責任をもて。それが一端の男ってもんだ」
「はっ!肝に銘じておきます!」
「私はもう寝る。高熱だからな。後はグラウンに任せる」

そう言って自室へと踵を返す大佐の背中はとても大きく見えた。どうやら、僕たちはイタリアの地で好ましい上官を得られたらしい。



♀ヒャーリスサイド♀


腹減ったー腹減ったー腹減ったぁぁああ――――!!!
なんかリヒャルドさんに怒られた気がするけどイタ飯食べさせてくれるらしいからどうでもいいや!!ついにメシマズドイツからおさらばし、メシウマイタリアを満喫できる!!イタリアの飯は美味いらしいから、楽しみだなあ。

彼女を大事に思っています・・・・・・・・・・・・。それでは、いけませんか?」
「―――若造め、好きにしろ。だが、自分の決意には責任をもて。それが一端の男ってもんだ」
「はっ!肝に銘じておきます!」
「私はもう寝る。高熱だからな。後はグラウンに任せる」

ありゃ、なんか俺がボケっとしてる間に話が終わってるじゃん。よく聞いてなかった。
このアウフシュナイター大佐っていかにも叩き上げの軍人さんって感じだ。義体への不信感とか特にそうだ。リヒャルドさんと似たもの同士じゃん。心配して損したよ。つーか、リヒャルドさんの父ちゃんってけっこう偉いのね。提督とか言われてるし。すげー。
って、そんなことどうでもいいから早く飯食べに行こうよ!もう演技とかしてる場合じゃないよ!お腹と背中がくっついちゃうよ!!
ん?なんか金髪美女が向こうから来やがった。もう新キャラはいいよ!そんなのでお腹いっぱいになっても意味ないの!

「あら、グラウン部長。そちらの方は?」
「ああ、お嬢様。こちらは補佐官のウェーバー少尉とブランク少尉、そしてウェーバー少尉の妹です。紹介しましょう、こちらはアウフシュナイター大佐のご息女のマルガレーテ様で―――」
「ウェーバー様……素敵……!」
「は?」

なにまた一悶着起こしそうなフラグ立ててんだよリヒャルドさんは!!ふぎゃー!腹減った―――!!


<Her name is Charis!! 第一部一覧>
第一話 前編
第一話 後編
第二話
第三話
第四話
第五話
第六話 前編
第六話 中編
第六話 後編

<ファッキング☆ガンスリ劇場>
シリアス好き?ひゃあ、ブラウザバックだ!【なんぞこれ】
H&Kさんに怒られても文句は言えない【ガンジーですら助走をつけて殴るレベル】

<Her name is Charis!! 第二部一覧>
第一話
第二話 前編
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<名状しがたいオマケ的な何か>

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~ Comment ~

 

ほむほむ。
新たな任務の前に腹が空いては戦は出来ぬ、と。
よかろう、地元宮崎から完熟マンゴーを直送してやる!
パイにしてブリジットに叩きつけてやりな!

 

更新お疲れ様です。
ヒャーリスェ…。
ヘタレな残念イケメン・リヒャルドの貴重な男を魅せたシーンが…(涙)
そして、ヒャーリスの恋のライバル(笑)の登場。
次回の更新も楽しみに待っています。

 

>上条信者さん
マンゴー、たしかに受け取った!ありがとうございます!美味しかったです!パイを作るからもう一個送ってください!

>ふぉるてっしもさん
リヒャルドさんは家もいいし、顔もいいし、性格もいいんだけど、どうにも格好がつかないヘタレな人です。アルフォドさんとは大違い!
恋のライバルのマルガレーテさんは女の目線からヒャーリスと争い、時には助けてくれる存在にしていこうと思ってます。でもどれだけ物語に食い込ませるかまだ不透明です。arcadiaに行くまでに詳しく設定決めとかないとダメですね。

NoTitle 

ブリジットという名の少女を読んでからガンスリ二次創作を探してたら、ここに行きつきました。アルペジオ二次と一緒に楽しませて頂いています。
とりあえず更新を全裸待機!
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