白銀の討ち手

己の妄想をネットという広大な海へ送り出すことに若干躊躇いつつも実行してみるブログ。現在は『白銀の討ち手』という灼眼のシャナの二次小説をarcadiaさんにて執筆中。

スポンサーサイト 

スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小説アイデア。ファンタジー世界。勇者(♂)と魔物(TS)の話。(11/20加筆修正)(誰かタイトルを授けてください!お願いしますなんでもしますから!) 

未分類

 人間を心から信じ、護る勇者。その人間への信頼を傷つけようと、ある魔物が傷つき弱々しげな少女に化けて、勇者一行が立ち寄る予定の小さな村に忍び込む。魔物はそこで自らが人間によって酷い目に遭わされ、それを見た勇者が人間に対して幻滅するように仕向けるつもりだった。
 ところがその村は誰も彼もが優しく、少女の姿をした魔物は労られ歓待され、あれよあれよという間に老夫婦に引取られてすっかり村の一員になってしまう。自分が知る意地の悪い人間との激差に混乱する魔物。そこに勇者一行が現れるが、その村はなんとよりによって彼の生まれ故郷だった。



↑というのをTwitterにアイデアとして書いた直後にいろいろ浮かんだので、↓にまとめます。



 物語の舞台はファンタジー世界。人間たちの世界が、魔王率いる魔物たちに侵略されつつある。そんな中、聖剣を手にした勇者とその仲間たちが、魔王を倒す旅をしている真っ最中。

 主人公はとある魔族。中性的な容姿をしていて、紺色の肌に額から伸びる二本のツノがなければ痩躯の青年にしか見えない。魔物に犯された人間の女から生まれた魔族と人間のハーフで、物心がついた後数年は人間の世界に身を置き、地方都市の暗く汚い裏路地で母親に育てられる。しかし、“魔族と交わって生まれた子供”ということで親子は迫害を受け続けた。どこに行っても排外的な人間によって乱暴に追い出され、唾を吐き捨てられた。母親の故郷は遥か遠く、そこまで帰られる金銭的なゆとりはなかった。夫になるはずだった男は、魔族に犯された母親を「汚らしい」とあっさりと捨てた。頼れる物もいない都市で、親子の身よりは呆気なく失われてしまった。若い母親は昼夜問わず働くも生活は常に苦しく、ついに重い病気を患ってしまう。しかし周囲の誰も母親を助けてくれず、母親は見る見るやせ細り、苦しみながら目の前で病死した。それが人間を見限るキッカケになった。人間全体に強い不信感を抱き、以後は自身の血の半分を恨み、魔族の側に立っていた。

『ああ? “勇者”だぁ?』
『ああ。そいつの名前は、なんだったかな、セイランだったか、センガンだったか。まあいい。とにかくかなりの強者らしい。そいつはなんでも魔王様のお命を狙っている不届き者で、人間たちからは勇者様と呼ばれているらしいぞ。ひひ、生意気な奴だ』

 ある時、人間の尖兵として魔族と戦う人間の青年の噂を聞いた。その青年の、お伽噺の勇者そのもののような清廉潔白な立ち振舞いの話を聞いて、胡散臭さと忌々しさを覚え、ゾッとしたサムネを覚える。ハーフは人間のおぞましさをよく心得ていた。

『……いいこと思いついたぜ。これが成功すれば、魔王様に取り入れるかもな』
『あ? おい、今なんつって―――あ、お、おいっ!?』

 ハーフは意地の悪い思いつきを閃いて、実行のために翼を夜空に広げる。ハーフは決して戦闘力に秀でているわけではないが、とある才能があった。今回はそれが大いに役立つと考えたのだ。
 数日後、星を背に夜空から見下ろすのは、勇者一行が向かう先にある小さな村だった。豊かな都市群からは遥かに遠い、山々に囲まれた平野にポツンと存在する田舎村。街灯などとは無縁の村はわずかな灯りしかなく、発見するためにしばし飛び回らねばならないほどだった。ハーフが勇者一行の辿るルートを調べたところ、約1ヶ月後に至るだろう地点の周囲にはその村しかなかった。魔王城への道筋からは大きく迂回することになるが、勇者たちは必ずここに来ると確信していた。

『ふん、なんだ、ここは。なんてつまらない、ちっぽけな村なんだ』

 その村については、ひと目空から観察しただけでその小規模さが窺えた。人間離れしたエメラルドグリーンの双眸が我知らず嘲笑に歪む。子どもが走り回れる程度の広場を中心にして、簡素な木造の家々が転々としている。どれもほとんど同じ大きさで、2階建ての方が少ない。幅を利かせているのは家よりも田畑だが、それらの面積もたかが知れている。それらを広く囲う、獣や魔物の侵入を防ぐ防護柵は、よく手入れされているが見るからに貧弱だ。見た感じ、人口は200人に届かないだろう。戦闘力が低い自分でも大した妨害に合わずに大暴れできそうだ。ちょっと強い魔族の群れが来たら間違いなく一時間と経たずに生きる者のない地獄に変わる。そうなっても面白いが、もっと面白い企みがある。
 コウモリのような翼を折りたたんで近くの森に降り立つと、目を閉じて魔術を行使する。数秒後には、ハーフは姿を変え、成年に満たない少女の形態へと変化していた。だが、普通の少女ではない。飢えて限界まで痩せ細り、頬には頬骨と血管が浮き出ている。落ち窪んだ目元は如何にも不健康そうだ。栄養失調で脱色した淡黄色の長髪に、白を通り越して透明に見えるような病的な肌。昨晩の雨で出来た足元の水たまりを覗き込めば、月を背景にして少女の顔が映り込む。

『ふん、こんなものか』

 自身の魔術の腕前にニヤと笑みを零す。狙い通りの風貌だった。化ける前の自分の顔立ちをそのまま女にして幼くしたような感じだが、コケた頬と紫色に変色した唇は今にも倒れて野垂れ死にそうに見えた。ある目的のために、わざとこうして見窄らしい少女へと化けたのだ。ハーフは変化魔術を得意中の得意としていた。このおかげで人間たちに紛れて情報を収集し、勇者一行の行き先を調べることが出来た。

『あとは、服だな』

 独りごちると、衣服をわざと破いて肌のほとんどを露出させ、その辺の野茨に身体を擦り付けて傷だらけになる。少女特有の薄っぺらな皮膚はいとも簡単に鮮血を吹き出し、思わず顔を顰める痛みを発する。風貌までは変化できても、衣服や怪我までは操作できないのが欠点だった。水たまりの底から掬った泥を塗りたくり、泥だらけになる。一気に全身から不衛生な臭いが立ち昇りだした。傷口に泥が染みて鋭い痛みを発し、さらに失血と寒気が背筋を這い登ってきて華奢な肩がぶるりと震える。

『この程度の出血で気分が悪くなるなんて、なんてひ弱なんだ。だから人間は嫌いだ』

 完璧を期するためとはいえ、自らに流れる血の半分の脆弱さを見せつけられたことにハーフは舌打ちをして地に唾棄した。本来、この魔術は自分を真の魔族の姿に近づけるために独学で学び始めたものだった。それだけに人間に化けるというのはプライドを一分一秒ごとに傷つけるもので、あまり進んでやりたくはなかった。

『まあ、一ヶ月程度だろう。勇者を名乗る人間に絕望を見せ付けられるのなら、我慢してやるさ』

 変化魔術にも段階があり、ただ蜃気楼のように他人の姿を自分に投影するものから、自身の肉体そのものを分解・再構成する高度なものがある。今回行使したものは後者だ。これは長期間変化し続けたりすると元に戻れなくなる危険がある。魂が器の形に馴染んで元の姿を忘れてしまうのだ。一年間猫の姿に変化していたら、それっきり戻れなくなった馬鹿な魔族を知っている。しかし、今回の自分の場合は長くとも一ヶ月程度だろうからと、あまり心配はしていなかった。
 こうして無力で弱々しい少女となると、“彼女”となったハーフはよろよろと力ない足取りで村へと向かう。最初はわざと足を引きずる風を装っていたが、やがて疲労によって本当に足が棒のようになった。額に玉のような汗が浮かび、首筋に流れる。変化魔術が完璧過ぎたのだ。『これだから人間は』と口汚い罵倒で毒づく間、彼女の脳裏に結ばれるのは今まで見てきた悪しき人間たちの横暴な振る舞いだ。彼女の知っている人間は、他人の弱みに平気で浸け込むおぞましい生き物でしかない。母親を見殺しにした、情け容赦のない心の荒んだ種族だ。目の前の村の人間たちも同じように、見窄らしい少女が助けを求めても、誰も彼もが逆にさらに奪えるものは全て奪おうと襲いかかるに違いない。そうして人間の暴力性と残虐性を引き出し、勇者に見せつけることで、彼の人間を想う心を引き裂いて、『そら見ろ、人間に救う価値なんて無いんだ』と嘲笑うつもりだった。上手くいけば、魔王やその配下に気に入られて、そのまま取り立ててもらえるかもしれない。ぜえぜえと喉を掠らせながら、彼女は青ざめた顔でほくそ笑んだ。


 ところが、村について早々に彼女の目論見は躓いた。


 村の門を叩き、掠れるような声で助けを求める。小さな覗き窓からこちらを見つけた門番の目がギョッと見開かれる。すぐに扉が開き、村の中では一番力自慢なのだろう中年の農夫が腕を掴んで引っ張り込む。「汚らしい女め、村に近づくな」と罵られるか、飢えた男たちの慰みものにされるかのどちらかだと思っていたが、後者のようだ。『さあ本性を見せろ人間め』と内心でほくそ笑んでいると、彼女の剥き出しになっていた肩にさっと服が掛けられた。土の臭いと体温が染み付いたそれは農夫がたった今まで来ていた上着だった。ポカンとする彼女を、自分が泥だらけになることも厭わずに農夫はさっと抱き上げる。彼は大声を上げながら必死の形相で全力で走り出した。向かった先では農夫の妻やその隣人たちがパタパタと寝巻き姿で集まってきて、かき集められるだけの物資をかき集めて手当を始めた。口々に「大丈夫だったかい」「ああ、嘘でしょう」「気をしっかり持つんだよ」と元気づけられながら、沸かした湯に浸した清潔な布で全身を拭かれ、傷を手当され、口にミルク粥を運ばれ、暖かなベッドに放り込まれて手を握られたまま寝かしつけられる。『こ、これはきっと人間の罠だ。体力をつけさせて長く利用するためにわざとこうして歓待する振りをしているんだ。オレ様は騙されないぞ』。
 とりあえず寝たふりをしてその晩を過ごし、翌日、翌々日と様子を窺う。だが扱いは変わらず、村民たちの態度は優しかった。「誰かに襲われたのか」「他に家族はいるのか。無事なのか」。「助けに行こうか」と親身に問われる質問に、彼女は億劫になって『何も覚えていない』と記憶喪失を装った。村民たちはますます親切になった。困惑しっぱなしの彼女は、しかし勇者一行が来た際にはなんとしてもこの人間たちの汚い本性を暴き出して勇者に目にもの見せてやると決心し、まだそこにいることを決める。

「今日から貴女はうちの娘よ」
「さあ、何も心配はいらない。ゆっくりしなさい」

 そんな彼女は、村の外れに居を構える老夫婦に引き取られることになった。まだそれほど老いてはいないのだろうが、柔らかく落ち着いた佇まいが、良い意味で歳を重ねて達観しているような印象を夫婦に纏わせていた。老夫婦は、事情も知れぬ痩せ細った少女を一目見るだけで、嫌がる素振りなど一切見せずにそれどころか快く彼女を受け入れた。そして“カティ”という名を与え、本物の娘のように可愛がった。家庭的な老婆の料理は質素ながら非常に美味で、貧しい生まれだった彼女は初めて口にするまともな食事に驚き、ついつい食べすぎた。がっつき過ぎると、かつては街に出て教師をしていたという老爺が「これこれ、女の子がはしたない」と窘めながら丁寧にマナーを教えた。老婆は、昔死んだ娘が着ていたという服を彼女に与えて着飾り、裁縫や料理、花の愛で方などを教えた。老爺は穏やかな態度と洗練された訛のない言葉で、読み書きなどの基礎的な教育を施した。娘が使っていたという部屋を与え、貴重であるはずの化粧道具、本、ペン、紙などを与えた。『敵であるオレ様に知識を与えることを後になって後悔するがいいさ』と、負けん気の強い性格だった彼女は“カティ”であることを受け入れ、教えられることを貪欲に呑み込んだ。

「おはよう、カティ。元気そうだね。お二人は元気かい?」
「やあ、カティ。今日も綺麗だね。ほら、今朝取れた野菜をあげよう」
「カティお姉ちゃん、今日は何して遊ぼうかしら?」

 カティはあっという間に回復した。元々、変化魔術を行使する前はピンピンしていたこともあり、栄養を取り戻した金髪は夕日を浴びる稲穂畑のように輝き、肌は冬の朝日のように真っ白で、健康的にふっくらした頬は少女らしいピンク色が差している。唯一、化ける前と変わらないエメラルドグリーンの瞳は、溌剌とした端正な顔つきに深い神秘性を与えて、カティを魅力的な美少女として際立たせていた。

「おはようございます、カーリーンさん。ええ、おば様もおじ様も元気ですわ」
「ありがとうございます、バッツィさん。さっそくおば様と戴きますわ。お礼のパイを楽しみにしててください」
「それじゃあ、トーリーちゃん。今日はお花の冠の作り方を教えてちょうだい」

 カティは一ヶ月で村の一員となっていた。人間の本性を引き出すために、まずは親密になって裏の顔を探り出そうとした。きっと誰もが、裏ではカティを排除したいと願っていると考えた。しかし村民たちは、カティが知っている底意地の悪い人間とはまるで正反対だった。カティの真の目的など露とも知らず、生まれた時から知っていると言わんばかりに気さくに話しかけ、受け入れた。本性を現せと近づけば近づくほど、彼らの善の面を見せ付けられて内心ウンザリするばかりだった。
 その内、生まれて初めて自室というものを与えられ、カティはそこで過ごす時間が少しずつ増えた。老爺から文字の読み書きを教わり、老婆から本を読んでもらった。そうして得た知識で、読書という趣味に目覚めた。最初はほとんどが挿絵の幼児向け絵本だったが、自分でも知らない要領の良さが功を奏し、今は挿絵の方が少ない本を読めるようになった。上手い料理を食べること、上手い料理を作ること、勉学によって自分の成長を目に見えて実感することは楽しかったが、特に読書という行為はそれらよりも頭一つ抜けてカティを夢中にさせた。村にやってきた目的を忘れてついつい没頭してしまうこともあった。本など、文字が羅列しているだけの、記録を残すためだけの面倒くさい紙の束としか思っていなかった。だがそれは違った。カボチャ半分の重さにも満たない本の中には、別の世界が広がっていた。嫌な記憶や荒んだ俗世を忘れさせてくれる未知の世界が内包されていた。その世界に飛び込むことは、カティには純粋な喜びだった。新しい本を与える度に目を輝かせてそれを胸に抱き締めるカティに、老夫婦は微笑ましげに笑い合い、次はどの本を進めようかと楽しそうに吟味した。
 
『それに―――なんだか、懐かしい』

 与えられたその部屋は、どこか懐かしい匂いがして落ち着いた。そこにいて静かに目を瞑ると、ずっと昔に忘れてしまった誰かに抱かれているような気がした。膝の上に座って、頭を撫でてもらっている気がして、穏やかな気持ちになれた。


 ある晩、カティは遠い昔の記憶を夢に思い起こした。死ぬ間際の母親が、棒きれのようになった手でカティの頬を撫でる。もはや名前すらも覚えていない、記憶から締め出したいつらい記憶の象徴。消え入りそうな声で子守唄の一説を呟いて、カティの目を見つめる。自らの死期の訪れを悟り、この世に残すことになる我が子の将来を案じての子守唄だった。

「“幸せにおなり、どうか幸せにおなりよ、愛する子よ、愛する子よ、どうか”―――………」

 つうっと涙を流し、唐突に、その手がズルっと力を失う。「お母さん?」とその手を拾い上げるが、反応しない。生命が抜け落ちた眼球が自分を映す。天井近くを飛んでいたハエがそこに止まる。母親は何も反応しない。眼球の表面をハエが啄む。反応しない。反応しない。自分は一人ぼっちになった。自分にもハエが集る。反応しない。反応しない―――。

「カティ」

 ハッと目を見開くと、枕元に母親がいた。生きて、微笑んでいる。いや、それは老婆だった。似ている、と思った。幻覚と重なった目鼻立ちに共通する部分をいくつも見つけられた。幻覚と老婆の奇妙な一致が尾を引いて意識を混濁させる中、老婆は玉の汗を浮かべるカティの額を自らの裾でそっと拭く。バクバクと動悸する心臓を抱えながら、カティは悪夢を久しぶりに見たこと、他人が近づいても気付かないほど警戒を解いてしまっていたこと、そして、安心して眠りに落ちるほど老夫婦に心を許してしまっている自分を理解してショックを受けた。老婆の隣には老爺もいて、彼の手はカティの手をそっと握っている。カティによって力いっぱい握りしめられた手は蒼白になっていたが、老爺はそれを顔に出さない。うなじを垂れる不快な汗を、老婆が拭き取る。

「貴女の苦しげな声を聞いてね。こんなにうなされて、可哀想に。きっとイヤな夢を見たのね」
「おば、さま。おじ、さま。オレ、いえ、わ、私は」

 何でもないフリをしようと反射的に笑おうとしたカティに、老爺が首を振る。「何も言わなくていい」という意志を視線だけで伝えると、幼子を寝かしつけるように髪を撫でる。分厚く力強い手の平の人肌が心地良い。老婆は月夜に流れる雲のように澄んだ声音で子守唄を歌い出した。そこに老爺の優雅なバリトンも加わり、子守唄は思わず耳を澄ましたくなる見事な音楽となった。

「“幸せにおなり、どうか幸せにおなりよ、愛する子よ、愛する子よ”」
「“いつまでも、いつまでも、草原を踊る子馬のように、風に舞うトンビのように”」

 なんと奇妙なことに、それは遠い昔に母親が聞かせてくれた子守唄と同じだった。しかし、今は驚きよりもさざ波のようなゆったりとした眠気に身を委ねたかった。警戒が解され、身も心も預けていいという安心感に包まれる。荒く上下していた胸元がだんだんと落ち着きを取り戻し、瞼がゆっくりと意識に幕を下げていく。落ち着きを取り戻したカティを見て、老夫婦は心から安堵のため息をついて互いに身を寄せ合う。

「―――なんてこと。本当にあの娘にそっくり。ねえ、あなた。まるであの娘が帰ってきたみたいだわ」
「―――ああ。ああ。きっと偶然なんかじゃない。運命なんだ」

 老夫婦の囁く声が聞こえたが、その意味に思考を巡らす前に眠りに滑り降りていった。ベッドから母親の匂いがした気がした。完全に眠りに落ちる寸前、かつてこの部屋の主だったという、老夫婦が失った娘のことを思った。どんな女だったのだろう。気付いていない断片がたくさんあって、そこに何か答えが隠れているという予感がした。『まあ、たまには、いいか』。その予感をあっさりと手放し、カティは全てを忘れて寝息を立てた。
 迎えた翌朝はこれまで感じたこともないほどに清々しかった。まるで心を洗濯したように軽かった。熟睡したのは母親の胸に抱かれなくなって以来初めてだった。

「カティ、大丈夫かい?」

 老夫婦が心から心配そうに声をかけてくる。ずっと枕元で付き添っていたせいで瞼下にクマを浮かべた二人に、『これくらいはくれてやる』と、カティは剥き出しの感情を見せてやることにした。それはそれは美しい微笑みに、老夫婦はカティを抱擁して応えた。イヤではない。それをイヤだと思わない自分自身も、不思議とイヤではなかった。人間など、情けをかけてやる価値もない、魔王様によって一人残らず殺されてしまえばいい種族だと思っていた。今でもそう思っている。でも―――自分を抱きしめる二人がそうされるのは、想像したくなかった。


 一ヶ月と半を過ぎた頃、ついに勇者一行が村にやってきた。カティは庭に張ったロープに洗濯物を干しているところだった。その手を止めて、遠くに見える勇者の横顔を呆然と見た。すっかり忘れてしまっていたのだ。『本来の目的を忘れるとはなんてことだ。何も準備できてない』と手を握りしめて臍を噛む。
 村の中心広場で、勇者はやけに親しげに村人たちと接している。腰に刺した綺羅びやかな聖剣が、如何にも“私は勇者です”と主張している。しかし、その外見はそこら辺の優男のようだった。“勇者は剣の使い手で魔法にも精通している歴戦の猛者”と噂で聞いていたが、年齢は意外なほど若く、今のカティよりほんの数歳年上といった程度だった。身長も手足もひょろ長いが、筋骨隆々といえるほど膨らんではいない。まだ少年の面影が匂う顔立ちは童顔で、ヒゲを生やしても到底似合わないように見えた。勇者は同年代の若い農夫と肩を叩き合い、初対面にしては砕けすぎている表情でその他の村人たち一人ひとりと握手を交わす。そして旅の仲間たち一人ひとりを人々に紹介し、紹介に預かった仲間たちは誇らしげに挨拶して拍手を受ける。誰も彼もが勇者を慕っていることがわかる。一見して勇者の人柄が知れる情景に腹を立てていたカティは、『いや待て』と考え方を変えることにする。『こうなったら、昔からここにいる村人を装って、勇者に近づいてやろう。そうして無防備になったところで弱みを掴み、その情報を魔族に伝えるなりなんなりして利用してやろう』。カティはニヤと人気のないところに笑みを向ける。老夫婦にはほんの少し心を許したとは言え、人間への恨みが消えたわけではない。
 さあどうやって近づいてやろうかとじっと様子を窺うと、不意に村人の一人が手を仰いで、「あっちを見ろよ」と言わんばかりに勇者を促した。その手がなぜか自分を差しているように見えた。声は聞こえないが、紹介されているような雰囲気を感じ取った。促された勇者がこちらを見る。カティは首を傾げながら勇者を睨みつけていると、歴戦の直感から勇者は自分に向けられる視線を明確に感じ取った。勇者たちのいる中心部からこの村外れまでまだ距離があるというのに、勇者の視線はピタリとカティのそれと交差する。そして、その象牙色の目がカッと見開かれた。

『この距離でオレが魔族だとバレたのか!? そんなはずは……!』

 一瞬、自らの思惑がバレたのかとギクッと肩を強張らせる。それを悟られないように、必要以上に親しげな微笑みを顔に貼り付け、まるでお姫様がするような深々とした会釈を勇者に返した。笑いかけてやるのも頭を下げるのも不愉快だが、勇者の心を引き裂くためには仕方がない。
 会釈していた頭を上げて、ちらりと様子を覗く。勇者は丸くした目をそのままにして動かない。勇者と同年代の農夫が、なぜか石のように立ち尽くす勇者の背中を肘で突っついた。何かを言われたらしい勇者が、その時ばかりは思春期の少年のように顔を真っ赤にして抗議し、逃げ出した農夫を追いかける。農夫が勢い余って干し草の山に頭から突っ込み、勇者もそれを追って干し草に身を沈める。それを見ていた勇者の仲間たちが腹を抱えて笑い出す。まるで昔からの友だち同士のようだ。おかしい、ここは勇者一行が旅の途中に立ち寄った村のはず―――。

「ふふ、立派なお役目を背負っても、昔と変わらずやんちゃな坊やね。カーリーンのところの坊やとは昔っからあんな感じだもの」

 背後から近づいてきた老婆が気になる台詞を口にする。キョトンとするカティになみなみと紅茶を注がれたカップを手渡し、老婆は「そうだったわね」と手をポンと叩く。

「そういえば、カティが会うのは初めてだったわね」
「“が”?」

 現実より先に、第六感が老婆の答えを察した。背中から汗が吹き出て、自分が決定的なミスをしていたことを悟らせる。わざわざ魔王城への直接ルートから大きく外れるコースを取ってまで、勇者はなぜこの村へと向かっていたのか。その目的まで調べようとしなかった過去の自分を悔やむカティに、老婆は驚愕の真実を告げる。

「あれはセイラム。この村の出身で、今は勇者をしているわ」

 カティは額を抑えて天を仰いだ。


 

TS小説アイデア 学園ファンタジー編 

性転換

また思いついたので、本格的に書く予定はないけども、こちらにメモして残します。いや~。Fateの映画見てから創作意欲刺激されちゃって。その刺激が肝心のFateの二次小説に行けばいいのに。


 
 舞台は、現代の学園モノとファンタジーが融合したような世界。主人公の少年は、普通の高校生として生活しながら、隣の席で、仲のいい女の子にすらその正体を隠して、夜の街にはびこる魔物を退治する退魔師。彼は生まれながらに強い魔力を持ち、現代の勇者として運命づけられていた。数年前に隣家に引っ越してきた少女は、可憐で容姿端麗だが病弱で、その護ってやりたくなる儚さを思えば、主人公は力を持たない人々を守護することの使命、好きな人を護ることの尊さを痛感できた。料理が上手で、甲斐甲斐しく毎朝起こしに来てくれて、寂しがり屋で、共働きの両親が家にいないことが多いために頻繁に主人公の家に泊まる。恋をしないわけがなかった。
 そうして人知れず必死に戦っていく内に、同じ学校の級友や新任教師から頼りがいのある仲間たちを得て、彼らと時に衝突し、時に手を取り合いながら、強敵を倒して敵の中枢に近づいていく。しかし、ついに現れた敵幹部の一人、黒衣を纏う竜人が、聞き慣れた声音で主人公に語りかける。

「ねえ、今日はまっすぐ帰ってきてって約束したのに、忘れちゃったの?」

 驚愕する主人公に、竜人はニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべる。次の瞬間、竜人の姿が揺らめき、幼馴染の姿に変わる。なんと、幼馴染の正体は敵幹部の竜人だったのだ。早い段階で主人公が魔物にとっての脅威になると判断した竜人は、病弱な美少女の姿となって密かに主人公の傍に身を置き、彼とその仲間たちを監視していたのだ。そして時が満ち、ついに竜人は正体を明かして主人公たちに対峙した。
 さすが幹部なだけあって、主人公たちは苦戦する。主人公はあまりの衝撃に実力の半分も出せない。それが竜人の目的でもあった。人間は親しい者を殺すことを躊躇うことを竜人は実践したのだ。しかもずっと傍で主人公たちを見ていた竜人は、彼らの弱点も知り尽くしていた。嫌味な態度で挑発し、意地の悪い立ち回りをして調子を狂わせ、いやらしい攻撃を執拗に加える。曇天直下ひどい雨が降りしきる中、一人、また一人と倒されていく。そして遂に主人公の首に鋭いツメを振り落ろす刹那、主人公はなぜか抵抗の剣を降ろして呟く。

「お前になら、いいよ」
「――、――」

 竜人の動きがほんの一瞬だけ止まった。そのコンマ以下の秒は、歴戦の主人公には一分間にも体感できるほどの大きな隙だった。主人公は驚きと共に反射的に剣を一閃し、竜人に一撃二撃と食らわせて地に倒す。仲間たちがようやく立ち上がる中、主人公は見事逆転し、仰向けに倒れ伏す竜人の喉元に刃を突きつけていた。竜人はケケケと軽薄そうに笑い、「俺の用は済んだ。さっさと殺せよ」と挑発する。仲間たちも駆けつけて「倒すべきだ」と同調する。勇者は剣を振り上げ、そして振り下ろし、

「……どうして」

 竜人の片方のツノを両断するのみで、そのまま鞘に閉まった。呆気にとられる仲間たちと竜人を背にして主人公は去る。その背中に向かって、竜人は尚も「どうして殺さない。情けか、哀れみか。勝者の余裕のつもりか」と震える声で食い下がる。

「いつもいつも、自分より他人を優先する。ちょいと煽てりゃあ、なんだってやっちまう。とんだ甘ちゃんだ。今だって偽物の俺にすら情をかけちまう。お前のそんなところが大っ嫌いだったんだ!」

 主人公が振り返る。その瞳は澄んでいて優しかった。恋した少女に向けていた瞳だった。

「そんな俺を支えてくれていたのは、お前だったんだ。お前がいたから、俺は強くなれた。この気持ちは、偽物じゃない。それに、」

 寂しそうに、嬉しそうに、主人公は続ける。

「さっき、お前は俺を殺すことを躊躇った。躊躇ってくれた。だから、お前もきっと、偽物なんかじゃないんだ」

 「さようなら」。そう言って、主人公は降りしきる雨の中に消えた。戸惑う仲間たちも、竜人が一向に動かないのを見てから慌てて主人公の後を追った。竜人は雨に打たれながら、主人公の台詞を頭のなかに何度も繰り返していた。


 翌日。主人公と仲間たちは重い面持ちで登校し、無言のまま席についた。隣の席は空席だ。もう、あの少女と会うことは無いのだ。主人公は自分が失恋したことを今になって自覚して、しかし騙されていたことへの怒りは不思議とわかないことに、理由なく納得していた。普段は明るい主人公が何時になく落ち込んでいるのを見て、クラスメイトたちも心配して敢えてそっとしておいてくれる。みんなに気を使わせていることを察し、情けなさに「はああ」と主人公が深くため息をついて、

「そんなため息ついちゃって、幸せの青い竜が逃げちゃうよ」

 聞き慣れた、二度と聞けないと思っていた声がして、主人公は勢い良く顔を上げる。隣の席に、いつもどおりの表情で、少女は平然と座っていた。

「……青い鳥、の間違いだろ」
「あれ、そうだったっけ?」

 ペロッと舌を出す仕草もいつもと変わらない。美少女だからこそ似合う可愛らしい表情を見せつけて、少女はニコニコと微笑む。

「そんな身近に竜がいたら、たまったもんじゃねえよ」
「まあまあ、そう言わずに。すぐ近くに竜がいる生活も案外いいものかもしれないよ」
「悪さをしなけりゃ、な」
「さあ、それはどうだか」

 言って、少女の瞳が爬虫類の輝きを放ち、そしてまた人間の瞳に戻った。異変を察知した仲間たちが駆けつけてきて、ギョッと声を上げる。騒ぎが起きる中、少女は何事もないかのように仲間たちを一瞥し、そして無言で授業の準備を始める。その横顔を眺めながら、主人公はふっと満足そうに息を吐いて、同じように教科書を取り出し始めた。

 こうして、竜人は少女の形態を取ったまま主人公の傍に居続け、時には遠回しにも知恵を授け、時には窮地を救ったりして、エンディングまで駆け抜ける。という話。以上!!

Twitterの『高性能アンドロイド』ネタで思いついた小説のアイデア保存用(もちろんTS要素あり) 

未分類

 舞台は近未来の日本、東京。元・中国武装特別警察で、色々あって現在は名前を変えて日本で探偵をしている29歳の男『松田 俊作』が主人公。死んだ親友が最期に創った、親友の記憶を微かに秘めた少女ロボを秘書に従えて、裏社会の物悲しい事件を解決していくお話。『ビッグ・オー』のロジャー・スミスとドロシーの関係みたいに、段々とお互いに恋心が芽生えていく。




思いついたシーン


 雨に濡れる墓石は、まるで磨き上げられた黒曜石のように見えた。中国出身である彼の目には、日本の墓は大袈裟で仰々しく見える。だが、日本人は『死』を大事にする民族だ。日本人は『死』に意味を求める。生まれた意味と同じように、死んだ意味を見出そうとする。そこには何か理由があったはずだと。それは、墓の前で冬の雨に身を晒す中年の男にも当てはまるのだろう。隣り合う妻もおらず、身を守る傘も差さず、心を癒やす涙も流さず、たった一人でずっと墓の前に立ち尽くしている。


「俊作様。こんな時、人間は泣くものではないのですか?」


 どんな雨音にも掻き消されない美しい音色で、傍らの少女が尋ねた。黒を貴重とした質素なメイド服に身を包む、小柄な少女。長身の主人を覆うために傘を握る手をいっぱいに伸ばしているが、そのか細い腕が震える様子は微塵もない。色白の肌はどんな時だって雪のように白く、翡翠の瞳はいつだって不自然なまでに透明だ。本人が敢えて操作しない限り、それらに血管の筋が浮き出ることも、緊張に紅潮することもない。当然だ。彼女はアンドロイドなのだから。


「泣くのが得意じゃない人間だっているのさ、フェイ」


 彼―――探偵、俊作は少しぶっきらぼうになって答えた。俊作も、あの中年と同類だからだ。俊作も泣かなかった。兄弟同然だった親友の無残な死体を腕に抱いても、湧き出すのは涙ではなく、他の感情―――果てしない怒りだった。祖国への、そして自分への怒り。「お前が死んだ時もそうだったさ」とは口にしなかった。少女は、かつては自分が人間だったことを覚えていない。それに、俊作はもう少女をかつての親友と同一の存在とは思わなくなっていた。

 視線を男の背中に戻す。彼が父親としては失格の部類に入ることを俊作はよくわかっている。けれども、墓の中の若者のことが羨ましいと心から思った。死を悲しんでくれる人がいる。悲しみ方は人それぞれだ。女々しく涙で送ることだけが死者を弔う最高の行為ではない。雨に濡れてネズミのようになった安っぽいグレーのスーツ、恐竜のように短い手足、不必要に弛んだ贅肉、肌が覗く哀れな頭頂部。全て、男の“仕事着”だ。本来の彼を隠すもの。それらに身を包んでいないと、きっと彼は自分を保てなくなる。地に伏して懺悔する。それくらい悲しんでいるが、その情けない姿を死者に見せるべきでないとわかっている。彼もまた“兵士”だからだ。


「……そういうものですか」


 少女―――フェイは、納得したようなしてないような、如何にもアンドロイドらしいトーンでそれだけ口にした。説明する気分にもならない俊作は、「そういうものさ」と生返事して踵を返す。もうここにいる必要はない。俊作の仕事は終わった。彼一人にしてやるべきだ。息子の死とどう向き合うのかは、彼が決めることだ。

 俊作の予備動作を完璧に察知していたフェイがさっと傘を翻して半歩後に付き従う。俊作にも自身にも雨粒一つの被弾すら許さなかった。彼女は主人を守るためならなんでもする。そういう風にプログラムされたからだと彼女自身は思っている。重要なのは、そのプログラムについて、彼女がどう思っているかだ。


「……もしも、」


 その小さな声は、俊作にとっては銃声のような作用を及ぼした。驚愕に肺が膨らみ、一瞬だけ思考が空白化する。不安と期待がない混ぜになった声音は、そう発しようと狙って出せるものではない。自分の声帯が微かに震え、まるで年頃の少女そのもののようになっていることに、フェイは気付いていなかった。それどころか、俊作が驚いたことにすら気付いていなかった。踵を返す直前の筋肉の微細な動作すら察知できる性能が、役に立っていなかった。その事実もまた俊作をひどく驚かせた。


「もしも、私が死んで―――いえ、再生不可能なくらい壊れてしまったら、俊作様はどうされますか?」


 俊作は少し考えるフリをする。意地悪ではなく、そうしなければならなかった。そうして時間稼ぎをして平静を装いなおしてから、わざと素っ気なく応えた。


「タバコと酒をかっ食らう」

「……今もやってるじゃないですか……」


 そちらを見なくとも、フェイが肩を落とすのが気配でわかった。小さなため息までついて、まるで人間だ。何を期待していたのか自分でもわからず、それでも、今の答えが自分の求めているものとは違っているのだと理解して、視線を落とす。これがプログラムだとしたら、もう人間は神の領域に足を踏み込んでいる。


「もっとやるのさ。これでもかとタバコを吸い、これでもかと酒を呑む」


 「死んじゃいますよ」。呆れのため息とともにそう口にする。いつものフェイの調子に戻った。俊作は何も言わない。いつもの調子に戻ったフェイは、ようやく、俊作の体温が少し高いことに気がついた。思わず傘を持つ手が震えて、雨粒が頬に跳ねる。信じられないほど長い睫毛に雫が溜まり、漣のように震えた。先の言葉の含意を理解して、フェイは存在しない心臓が胸の内で鼓動する錯覚を覚えた。足が止まるなど、身体のパーツが上手くコントロールできなかった。顔の表面を熱いと感じた。俊作はこう言いたかったのだ。「お前が死んだら俺も死ぬ」と。

 俊作は振り返らなかった。フェイは振り返ってほしいと思った。その時、フェイが浮かべた表情は、彼女自身が驚くくらいに衝撃的で、そして美しかった。彼女が世界に類を見ない高性能のアンドロイドだということを―――そんな枠を超えて一人の少女として生きていることを、これでもかと証明するものだった。自失というにはあまりに短く、超高性能のアンドロイドにとっては致命的な二分の一秒の空白を乗り切って、フェイは何も言わずに歩を再開した。さっきの自分を見て欲しかったと繰り返し考えていた。どうしてそう考えるのか、という当然の疑問も押し流し、見てほしかったという理解不能の願いがメイン回路を支配していた。

 

 そうして、フェイはひどく錆びたカーブミラーに見向きもせず、その横を通り過ぎた。普段の彼女なら気付いただろう。しかし、気付ける余裕はなかった。俊作の体温がグンと上がったことにも、右足と右手が、左足と左手が同時に動いていることにも。

 そのカーブミラーは、折れかけてくすんでいても、役目をきちんと果たした。

 俊作は、ちゃんと見ていたのだ。



設定集


 主人公『松田 俊作』。本名は『藍 天(ラーン・ティエン』。長身痩躯、適当に切りそろえて手櫛を通しただけのクシャクシャの黒髪に、くっきりした目鼻立ちに大陸出身の気配をわずかに匂わせる青年。ヨレヨレの黒いスーツに、最後に油を塗られて久しい革靴、そしてそれだけやけに手入れされた黒ハットがトレードマーク。彼が名乗る日本名は、遠い昔に孤児院で観た、日本の探偵ドラマ『探偵物語』の主役からヒントを得たもの(ドラマの主人公は工藤俊作。演じたのは松田優作)。

 以前は中国人で、中国武装特別警察の武警少尉だった。親に捨てられた孤児院出身というつらい過去をバネにして、ハングリー精神で努力し、エリートである武装特警に入隊し、小隊を預かる小隊長に実力でのし上がった。その戦闘能力は非常に高く、国内でロシアンマフィアとチャイナマフィアの抗争事件があった際は単身で元スペツナズ3人を相手に奮戦し、軽症を負うも2人を殺害、一人を病院送りにした。国外では外交官の家族を狙うテロリストを重症を負った状態で撃退し、帰国後に病床で勲章を授与されている。

 孤児院時代からずっと親交を保ち、共に支え合い、励まし合っていた同い年の親友がいた。病弱だが誰よりも頭のいい友の才能をもっとも理解していた主人公は、金銭的な支援を行ったり、政府系の新興ロボット企業に親友を紹介したりした。しかし、実はその企業は裏では悪辣な軍事企業であり、しかも忠誠を誓っていた国家の高官が身勝手な理由でその親友を監禁・利用し、挙句の果てに殺害したことを知り、全てを投げ出すことを決意。一度は高官の暗殺を考えるも、目覚めた少女ロボを守ることを選んで思いとどまった。親友が残した、親友の記憶のカケラを持った少女ロボを引き連れて日本に逃れ、偽名を名乗って隠れていた。その後、様々な事情を経て、ボロアパートの一室で探偵家業を営むこととなる。現役時代に交流があった東京警視庁の警備部警備第一課特殊急襲部隊『SAT』の隊長とは現在も懇意にしており、その伝手で依頼が来たり、時には利用したりする。

 元警察官としての捜査能力、元特殊部隊としての戦闘力、そして裏社会で培った顔の広さと、優秀で生意気な秘書の助力を得ながら、今夜もタバコを夜闇に燻らせつつ怪しい事件の解決のためハードボイルドに奔走する。


 武装特警『雪豹突撃隊(Snow Leopard Commando Unit)』。

 中央軍事委員会隷下の中国人民武装警察部隊。現実にも存在している、北京市の準軍事組織である。正式部隊名は『北京総隊第13支隊第3部隊』。海外での外交官などの要人護衛と国内での対テロ制圧が専門。設立当初は極秘部隊であったことでも知られている。この組織は、言ってみればSWATとSEALsの中間みたいなものだが、可能な限りの逮捕を目指すSWATと違い、敵の制圧(殺害)を優先とする。荒事を引き起こす中国において、正規軍隊が介入すると内外的に具合が悪い際に投入される、一応警察という名の付いた実質軍隊。その戦闘力は極めて高く、航空機からのエアボーン、ヘリボーン訓練まで行っている。実際、世界中の特殊部隊が集まるヨルダン国際特殊兵コンテストではアメリカやイギリスを抑えて何度も優勝経験がある。一般の人民解放軍より遥かに練度は高く、人材も優秀。装備も充実していて、ハイテク機器を優先的に支給される。一個人あたりの装備品は総額400~500万円にも相当し、重装甲車や重火器も配備されている。制約の多い人民解放軍と異なり国外で活動することも多く、他国組織との交流も盛んな為、隊員の社交性や外国語の習熟レベルも高い。組織全体として世界に顔が広いという特徴も持つ。


 少女ロボ。名前は『フェイ(菲)』。同じ孤児院出身だった親友(男)の成れの果て、または残骸。親友が最期に創った、完璧な人型ロボである。フェイという名前は主人公が後から付けた名前。漢字の意味は『花が咲く』。

 彼は、体力は人より劣り、病弱だったが、心は誰より清らかで、幼少の頃から理工学の才能に溢れていた。主人公の金銭的支援と当人の苦学を経て清華大学機械工程学院をトップで卒業し、主人公の紹介を受けて新興のロボット開発企業に招かれた。彼はそこで、病気によって満足に動けない人間に新たな機械の肉体を与える技術を研究しようとしていた。しかし、その企業の裏の顔は戦闘ロボットの開発会社であり、しかも汚職を企む中国共産党高官の命令によって彼は監禁され、違法である様々な殺人ロボットを開発させられていた。ついに我慢できなくなった彼は開発データの引き渡しを拒み、データごと削除したため、怒った高官の配下に拷問され、最後には射殺される。行方不明になった親友を探していた主人公が見つけた時にはすでに死後数日が経過していた。隠されていた親友の最高傑作である少女ロボになんとか手探りで親友の脳から記憶をインプットしようとしたものの、主人公が専門の技術を持たなかったことと、拷問で受けた傷と死後数日の腐食による脳細胞の死滅によって、記憶はほとんど失われてしまっていた。

 フェイは、生前のことは何も覚えておらず、自分をアンドロイドだと定義し、淡々と言動する。自身の何もかもをプログラムされたものに過ぎないと達観している。というより、そう思い込まないと自我のバランスが崩壊することを本能的に理解している。拷問の様子を目にして、死ぬ直前に自身が受けた拷問を想起してトラウマ反応を見せる場面もある。

 目を開けて最初に見た主人公を主人だと認識して以後今日まで付き従う。従順で冷徹だが、実はユーモアがあり、小さな逆襲やイタズラも行い、冗談も口にする。また、根底となっている親友の性格を受け継ぎ、人情深く、優しい。非常に人間らしい所作をするが、当人はそれもまたプログラムされたものだと思いこんでいる。ロボットらしく、記憶能力やハッキング、声真似等などの便利機能を備えていて、探偵家業の秘書としては大変優秀。ただ、戦闘能力は保持しておらず、パワーは大の男に劣らない程度。たまに、微かに親友の気配を漂わせる仕草や話し方をするので、その度に何か思い出したのかと主人公をドキリとさせる。



憑依モードレッドの設定とストーリーアイデア集(試作) 

未分類

【憑依モードレッドの設定】

 Fラン大学に通う資格マニアのなんちゃって大学生の弟。資格集めにうつつを抜かす兄と違って、勉強熱心で頭はよく回る。国公立大でまじめに勉学に励んでいる。特に、高校から継続して航空力学・航空工学を専攻しており、同分野においては同期より頭一つ抜けて優秀。勉強一筋だったので少し世間知らずで気弱な性格だが、面倒見のいい兄に可愛がられてきたため、まっすぐで優しい性格をしている。
 最近、兄の影響を受けてFateシリーズにハマったオタク初心者。遠坂凛とモードレッドに自分に無い要素を感じており、好きなキャラの一位と二位となっている。二次小説や漫画をよく読んでいた。ある日、兄と共有する狭い部屋の二段ベッドの下で寝ていると、見に覚えのない声を聞いた気がして、気づいたらモードレッドに憑依して遠坂邸の屋根をぶち抜いていた。完全に巻き込まれ事故である。
 モードレッドとして、凛のサーヴァントとして、持ち前の頭の良さと原作知識を活かして懸命に戦う。口癖は「よくあるやつだこれぇ」。モードレッドの能力や知識には齟齬なくアクセスできる様子。

【マスター】遠坂凛
【クラス】アーチャー
【真名】モードレッド(憑依)
身長】154cm
【体重】42kg
【出典】アーサー王伝説
【地域】イギリス(日本)
【スリーサイズ】B73/W53/H76
【属性】中立・善
【ステータス】筋力B 耐久B 敏捷A+ 魔力B 幸運D 宝具A
【性別】女性(?)
【イメージカラー】赤
【特技】空力と揚抗比(航空力学)の計算

【固有スキル】
魔力放出:A
直感:C
戦闘続行:C
高速飛翔:A

【クラススキル】
対魔力B
単独行動B

【宝具】
 『燦然と輝く王剣(クラレント)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
オリジナル・モードレッドが武器庫から強奪した宝剣。持ち主として認められない限り、カリスマ付与といったボーナス効果のほとんどは得られない。しかし、魔力増幅機能は健在。憑依モードレッドの邪気の無さに呼応して怨念も抜けたが、ついでに剣のやる気も萎えた。

『不貞隠しの兜(シークレット・オブ・ペディグリー)』
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
オリジナルと変化なし。目を合わせたくない時や、気まずくなった時は、すぐに兜をガシャガシャさせて顔を引っ込める。その度に凛から「顔を隠すのやめなさい!」と爪でガリガリ引っかかれて、「黒板を爪で引っ掻くみたいな音がするぅう」と情けない悲鳴を兜の中で反響させる。

『鎧兜変形・突撃用亜音速到達形態(ジェットストライカー・モードレッド)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
Fate/zeroにおいて、セイバー(アルトリア)がバイクに魔力を流して変形・強化させていたこと、モードレッドの兜が本人の意思に従って瞬時に変形することを思い出した中の人が考案した形態。



【アイデア集】

一番好きなキャラである凛を護ろうと、原作知識を活かしながら懸命に頑張る。序盤、士郎が土蔵で召喚したセイバー(アーサー王)に遭遇し、あわや斬りかかられる寸前、機転を利かせた土下座を超える五体投地で「ごめんなさい父上!!!!」と額を地面に擦り付けて謝罪することで何とか事なきを得た。

「悪かったと思ってますホントに!裏切りとかホントかっこ悪いですよね!若気の至りっていうかなんていうか!今はもうホントに心の底から反省してるんで!ホントにホント!」と凄まじい勢いで謝罪することでセイバーはドン引きしつつ「お前も丸くなったのだな」と納得。以後、不思議な同盟関係となる。


モードレッドの知識にアクセス出来るのでセイバーの質問にもちゃんと答えられるし、モードレッドの複雑な気持ちを客観的に整理した上でセイバーに伝えたりする。なのでセイバーはモードレッドが感じていた惨めさや寂しさ、誰よりも父上に認めて欲しいと願っていたことを知らされ、衝撃を受けたりする。



「……あの時、オレは、認めて欲しかったんだと思います。貴方に対して弓を引けるのは―――貴方を振り向かせられるのは、他でもない、貴方の血を引く自分自身だけなのだと、貴方に伝えたかったんです。でも、素直じゃなくて、口下手で、馬鹿だから、あんな伝え方しかできなかったんです」
「………」



Twitterでギルガメッシュ(“金ピカ”、“冬木”で検索)の場所を特定するなどして戦いの流れを有利に進めることに貢献。終盤、セイバーの『エクスカリバー』と、自らの宝具『クラレント・ブラッドアーサー』を同時に開放して威力を倍増させることに成功し、ギルガメッシュの撃破に成功する。



全令呪をブースターとして使用し、さらに自らを構成する魔力すら総動員しての宝具全力開放だったため、憑依モードレッドはセイバーを残して消滅する。消滅する寸前、自分がモードレッドだったら何と言い残すかを考え、セイバーに「後悔なんてしないでくれ。アンタが王でよかったんだ」と言って消える。


その後、残されたセイバーはスッキリした面持ちで聖杯を破壊し、彼女にとっての英霊の座、即ち死屍累々のカムランの丘に帰還する。けれどもそこにはもう後悔はなく、傍らで血の海に沈むモードレッドを「すまなかった、愛する我が子よ」と抱きしめる。モードレッドは涙を流して微笑み、そっと息絶える。


動く者のいないカムランの丘を見渡しながら、けれどもセイバーは後悔しない。全員がひたすらに全力で走ってきた結果をもう否定しない。そう心に決めて、彼女は再び剣を取って歩き出す。するとチラホラと生き残った騎士たちが立ち上がり、また彼女についていく。そうして、新たな騎士王伝説が始まった。

««

Menu

プロフィール

主

Author:主
どもども。主(ぬし)です。駄文書きです。趣味は映画と小説とニコニコ動画です。灼眼のシャナやFate/zeroのSSなどを書いてます。小説の小ネタや、短編SS、映画のレビューやちょっとした雑記などを掲載していこうと思います。

何かありましたらこちらまでどうぞ↓
hakugin_no_utite※hotmail.co.jp
(※→@)

最新記事

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

白銀の討ち手

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。